2 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)14:57:20 ID:
sFaA
P「今回かなり奮発したからな。いいものが仕上がってきてホッとしたよ。年間年始で今更直しなんて効かないしなあ」
ほたる「ほんとにすてきです。なんだかこう、女神様みたい」
P「実際新年らしく、モチーフは太陽の女神・天照大神だ。衣装は日本神話モチーフで、冠や鏡、装飾品も相当凝った作りになっているんだぞ」
茄子「確かにこの冠なんか、ぱっと見本物みたいです」
ほたる「裕美ちゃんに見せてあげたら喜びそう……」
P「ふふふ、さらにこれだ!!(ピカー)」
ほたる「えっ、なんですかこれ」
茄子「うわあ、太陽みたい」
P「晶葉に作ってもらった『浮遊照明・太陽くん』だ。太陽と同波長の光を発する球形ドローンなんだぞ」
ほたる「まぶしいです……!」
茄子「これ、何に使うものなんですか?」
P「基本的には撮影用の小道具だな。新春の空で茄子が太陽を従えてる、みたいなイメージで撮影して、事務所のCMに使う予定なんだ」
ほたる「おおー……」
茄子「そこで合成じゃなくて、実際太陽みたいに光るメカが出てくるのがこの事務所のすごいところですよね……」
3 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)14:58:30 ID:
sFaA
ほたる「私、ウサちゃんロボがキャッチボールして遊んでるの見たことあります」
P「やっぱりうちの事務所の新春の顔といえば、茄子をおいて他にはないからな。記念すべき十周年、最高のものにしたいんだよ」
ほたる「すごいとおもいます! すてきだとおもいます! なすさんがきれいです!!(ぴょんぴょん)」
P「ハハハ見ろ。あまりの似合いっぷりに、ほたるも語彙力を失って小学生みたいになっておるわ」
茄子「このちょうかわいいほたるちゃんをお持ち帰りしたいんだけどかまわないでしょうか」
P「いやいやかまうかまう。ほたるこれから鳥取に里帰りなんだから」
茄子「あら、そうなんですか」
ほたる「はい。奇跡的に年末の新幹線が予約できたので、年間年始は鳥取で過ごしてきます」
茄子「ご両親と良いお正月が過ごせるよう祈ってますね」
ほたる「はい!」
P「茄子が出るCMは全国区だから。是非元旦に見てやってくれよな」
ほたる「はい、家族にも友達にも宣伝しておきます!」
茄子「あはは」
P「さあ、これでお正月の話題はいただいたも同然。来年も一緒に頑張ろう。えいえいおー!」
ほたる「おー!」
茄子「おー!」
4 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)14:59:33 ID:
sFaA
○元旦/鳥取県・白菊ほたる実家
白菊母「はい、お雑煮出来ましたよー」
ほたる「わああ、あずきのお雑煮です……!」
白菊父「うちはずっと小豆の甘い雑煮だからな」
ほたる「なんだか、やっと鳥取に戻ってきたんだなあって気がします……!」
白菊父「ははは、良かったな、ほたる」
ほたる「うん!」
テレビ(~♪)
ほたる「あっ、お父さんお母さん、テレビ見て、テレビ!」
白菊父「ん?」
白菊母「あら、どうしたの」
ほたる「事務所のCMなの。大好きな先輩が出るんだよ」
白菊父「へえ……おお、これは」
白菊母「まあすごい。きれいねえ」
ほたる「でしょう? でしょう!?」
白菊父「ははは、ほたるの自慢げなこと」
白菊母「ほたるはよっぽどこの先輩が好きなのねえ」
ほたる(二人は笑って、またテレビを見つめました)
ほたる(今思えば、私はこのときもっと、両親の表情に注意を払っておくべきだったのかもしれません)
ほたる(だって、茄子さんをみる二人の目は、どこか。どこか……)
5 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:01:04 ID:
sFaA
○1月4日/東京・某事務所
ほたる「おはようございます! ただ今鳥取から戻りました」
P「おかえり。鳥取はどうだった?」
ほたる「はい、いっぱい休んで、両親とも沢山話をして。とても楽しい休暇でした。あ、これお土産の山くらげです」
P「おお、これ旨いんだよなあ。今夜はこれで一杯やるか」
ほたる「両親も、Pさんにくれぐれもよろしくって……あの、ところで」
P「ん?」
ほたる「事務所の中が妙にまぶしくないですか。あと何か空気がきれいっていうか」
P「いやあ、それがなあ」
光る茄子「あ、ほたるちゃんお帰りなさいー」
6 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:02:00 ID:
sFaA
ほたる「はい、ただ今戻りました茄子さん。これおみやげの、梨のコンポートです」
光茄子「わーい。あとでお茶いれますからみんなで食べましょうね」
ほたる「はい。ところで、あの」
光茄子「なんでしょうか」
ほたる「失礼ですがその、茄子さん光ってませんか? こう、全身がしらじらと」
光茄子「実はそうなんですよ……」
P「実は昨日ぐらいからなんか燦々と光り始めてなあ」
ほたる「ええええ。どういうことなんですか」
P「勿論不明だが」
ほたる「でしょうね! あの、茄子さん。大丈夫なんですか」
光茄子「実は、ちょっと困っているんです」
ほたる「えっ、どこか苦しいんですか」
光茄子「自分が光ってるのでパソコンのモニターとかすごい見難いし、自分でも結構まぶしくて目がシパシパします」
ほたる「地味に大変ですね……」
7 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:02:46 ID:
sFaA
光茄子「あと部屋が常に明るいのでぜんぜん眠れません。まあ眠くはならないんですけど」
ほたる「だ、大丈夫なんですか」
光茄子「体調はむしろいいんです。よく寝た朝みたいに、とっても清々しい気分です」
ほたる「それなら、いいんですけど」
P「病院に連れて行こうかとも思ったがこれ絶対騒ぎになるし、晶葉も芳乃もいないし、どうしたもんかなあと」
ほたる「やっぱり、お仕事はお休みしてもらったほうが」
光茄子「うーん、まあ、そうしたい気持ちもありますが(眉間にしわよせ)」
ほたる「なんだか不本意そうですね」
光茄子「だって今日からしばらくのお仕事って私のソロライブとミス・フォーチュンのライブと春舞佳人のオンステージとかですよ?」
ほたる「見事に茄子さんがいないとだめなやつばかりです!?」
P「茄子はやっぱり新春の顔だからなあ。ほんと引き合いが多いんだよ」
光茄子「それにほたるちゃんとのライブも久しぶりじゃないですか。2人で歌いたい! ステージ上でそっと手を取り合ったりしたい!」
P「こらこら、サラッと欲望を吐露するんじゃありません」
光茄子「えへへ」
ほたる「テヘペロ顔が反則級にかわいい……!」
8 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:03:06 ID:
sFaA
P「さっきも言ったが茄子は新春の顔だからな。替えが効かない。なんとか休ませる方向で調整したいと思うがちょっと時間を」
光茄子「大丈夫ですよ、プロデューサーさん」
P「しかし、茄子」
光茄子「体調はいいですし、光ってるだけですからね。演出とかそういうことで充分ごまかせるんじゃないかと」
ほたる「茄子さん」
P「しかし、茄子。万一騒ぎになったら」
光茄子「大丈夫。きっとうまく行きますよ。こういう時は、私の幸運を頼ってください」
P「……すまん」
光茄子「衣装はしばらく、[ひかり・満ちるとき]を使わせてください。あの衣装ならこういう雰囲気、違和感ないと思いますし」
ほたる「あ、『太陽くん』をつれていれば、茄子さんが光ってるのもそう目立たないかもですね」
光茄子「でしょう?(フフーン)」
ほたる「茄子さんあたまいい!」
光茄子「ふふふほたるちゃんに誉められた。うれしいなあ(ぎゅー)」
ほたる「ふあー!?(///)」
9 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:03:22 ID:
sFaA
P「こらこら新春早々目のやり場に困るハグはおよしなさい……じゃあ茄子。すまないが、頼んだぞ。もし体調に異常が起こったら、すぐにステージを降りてかまわないからな」
光茄子「はい。ありがとうございます」
ほたる「茄子さん……」
光茄子「ね、ほたるちゃん」
ほたる「はい」
光茄子「もし私に何かあったら、助けてくださいね」
ほたる「はい、もちろんです。私も茄子さんを助けられるように、せいいっぱい、がんばります」
光茄子「……ふふふ、ほたるちゃんはいい子ですね」
ほたる(茄子さんは、笑って私の頭をなでてくれました)
ほたる(今思うと茄子さんは、その後に起きることが、わかっていたのかもしれません)
ほたる(そして私は、茄子さんのいいたいことを、ちっとも解っていなかったのかもしれません……)
10 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:04:45 ID:
sFaA
○1月4日夜・鷹富士茄子新春オンステージ4日目
光茄子「みなさん、明けましておめでとうございます。今年もみなさんに幸せがありますように(ぺかー)」
ファン「ウオオオオ、茄子さーん!!」
光茄子(ぺかーー)
-------------------------------------------
・鷹富士茄子の新衣装が神すぎる件について(120)
-------------------------------------------
11 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:05:18 ID:
sFaA
○1月5日昼・ミス・フォーチュン新春初ライブ
ほたる「私たち」
光茄子「ミス・フォーチュンです(ぺかーー)」
ほたる「今年初めての私たちのライブ、楽しんでいってください」
光茄子「では聞いてください。一曲目はやっぱり私たち思い出のあの曲」
ほたる&光茄子「幸せの法則~ルール~!!」
ファン「ウオオオオ、茄子さーん!!」
光茄子(ぺかーーー)
-------------------------------------------
・鷹富士茄子の新衣装が神すぎる件について【その2】(340)
・鷹富士茄子の幸運伝説(221)
-------------------------------------------
12 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:06:36 ID:
sFaA
○1月5日夕・春舞佳人新年名古屋ライブ
高垣楓「お屠蘇気分ももう尾張、ふふふ」
光茄子「でも、御正月の晴れやかな気持ちは、忘れないでいたいものですね(ぺかーーー)」
楓「ええ。茄子ちゃんは今日も福が来そうな服ですしね♪ ふふっ」
光茄子「ふふふ、新年を祝う衣装ですよー♪」
ファン「ウオオオオ、茄子さーん!!」
光茄子(ぺかーーーー)
-------------------------------------------
・鷹富士茄子の新衣装が神すぎる件について【その4】(510)
・鷹富士茄子の幸運伝説【その5】(580)
・鷹富士茄子の奇跡エピソード(48)
-------------------------------------------
13 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:07:00 ID:
sFaA
○1月5日夜・新春特番鷹富士茄子の神社探訪
光茄子「はい、大吉です」
おわらい芸人「うわあ、やっぱりこの人持ってはるわぁ」
光茄子(ぺかーーーーー)
-------------------------------------------
・鷹富士茄子の新衣装が神すぎる件について【その5】(910)
・鷹富士茄子の幸運伝説【その11】(480)
・鷹富士茄子の奇跡エピソード(889)
・茄子大神はなんの神(108)
-------------------------------------------
14 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:07:29 ID:
sFaA
○1月6日夜・某芸能事務所
光茄子(ぺかーーーーーーーーーーーーーーーーーー)
ほたる「茄子さんが! まぶしい!!」
P「もうサングラスなしでは見るのがつらいレベル!!」
光茄子「もうなんだかお仕事するたび光量があがって行って……」
ほたる「今日のお昼のミス・フォーチュンのライブとか、照明がいらないレベルでした」
P「いやあ電気代も高い昨今茄子は事務所の経営に優しいなって違う! さすがにまさかこんなことになるとは思っていなかったまぶしい」
光茄子「プロデューサーさん、無理せずサングラスかけてください。ほら、ほたるちゃんも」
ほたる「は、はい(サングラス装着)」
光茄子「うーん、ほたるちゃんはサングラスかけても可愛いですねえ。そう思いませんかプロデューサーさん」
P「いやもう周り中まぶしくてよくみえない。茄子には見えてるのか」
光茄子「はい。確かに眩しいんですが、意外なくらいはっきり見えて……あらっ?」
ほたる「茄子さん?」
15 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:09:07 ID:
sFaA
光茄子「ほたるちゃん、そのお守り、どうしたんですか」
ほたる「え? あの、ファンの人からの頂き物で……」
光茄子「なんだかすこし、よくない感じがしますよ。手元から離しておいてはどうでしょうか」
ほたる「は、はい」
P「おいおい、まるで芳乃みたいなことを言うな」
ほたる「……見えるんですか」
光茄子「ええ、なんとなくですが」
P「茄子に、そういう力は無かったはずだろう。なんか、おかしいんじゃないか」
ほたる「その上燦然と輝いていますものね。いえ、茄子さんは前からステージの上ではとっても輝いていましたけれど」
光茄子「えへへ、照れます」
ほたる「照れてる場合じゃないですよ。絶対おかしいですこんなの。どうして落ちついているんですか」
光茄子「……ついに逃れられなくなったのかなあ、って」
P「逃れられなく? 茄子、それは一体」
サングラス芳乃「やはり、こういうことになっていたのでしてー(ガチャー)」
ほたる「芳乃さん!」
16 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:09:28 ID:
sFaA
光茄子「おかえりなさい。サングラス装備済みとは用意がいいですね」
サングラス芳乃「遙か彼方より、茄子さんの輝きは見えておりましたゆえー。それはそれとして、これはお土産のさつま揚げ詰め合わせですー」
ほたる「わあ、まだ暖かいです」
P「おお、今夜はこれで白飯を……いやいやそうじゃなくて。芳乃、これは一体、どうなっているんだ」
芳乃「茄子さんは今、カミになりかかっているのですー」
ほたる「神様、に?」
光茄子「ああ、やっぱりそんなことだったんですねえ」
P「えっ」
芳乃「そなたが誂えた衣装は、とてもすばらしいものでした。茄子さんに、とても似合っておいででしたー」
ほたる「はい。とってもすてきで、きれいで。まるで」
光茄子「女神様みたい、でしたっけ」
ほたる「はい。そのくらい、すてきでした」
芳乃「左様。きっと皆が、そう思ったことでしょー」
P「まあ、そういうイメージで発注したんだからな。今回のは、茄子の魅力を強く押し出せたと思ってる。自信作だよ」
芳乃「ときにみなさま、カミとはどのようにして生まれるものか、ご存じでしょーかー」
P「なんだ突然。いや、そういう話はうとくてな」
ほたる「すみません、私も……」
光茄子「……神様というのは『神様かな?』って思われるところから生まれるんですよ」
P「茄子?」
17 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:15:26 ID:
sFaA
芳乃「よくご存じでー。もともとカミであるもの、恐ろしい力を持ったものが、祀られてカミの形にされるもの。カミといっても様々ですが、人々がカミを見いだすことによって産まれる、という場合があるのです」
ほたる「神を、見いだす、ですか」
光茄子「……」
芳乃「たとえば不自然な形の岩。永い時を生きた樹木。人々を拒む険しい山。一度も枯れたことのない水源……人々がそうした物にカミを見ることで、神性が芽生えることがありますー。人々が『これは神様かもしれない』とおもうこと。それがカミの産まれる第一歩なのですー」
ほたる「つまり、みんなが、茄子さんは女神みたいだ、って思ったから?」
芳乃「もともと、茄子さんにはたぐいまれな幸運があり、それは皆の知るところでした。下地はあったのです……そこにあのすばらしい衣装。皆は、思ったことでしょう。もしかして、と」
P「つまり、俺の用意した衣装のせいで、茄子はこうなっているのか」
芳乃「衣装はきっかけにすぎませぬー。しかし、一度きっかけを得たならば、言動が、振る舞いが、それを補強してゆきます。カミに近付いてゆくのです」
P「……このままだと、どうなるんだ」
芳乃「茄子さんは、カミとなられましょー」
光茄子「……」
18 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)15:15:52 ID:
sFaA
芳乃「そして、ここではない場所に赴くことになります。人には人の、カミにはカミのおわすところがあるのです」
P「いやそんな。うちの事務所には、いろんなのが居るじゃないか。わざわざ離れなくても」
芳乃「カミと人が一緒にいることは、不幸ですよ」
ほたる「……不幸」
芳乃「光は目を灼くことでしょー。カミには人の、人にはカミの思うことがわからないでしょー。人のそばにいるカミは、たくさんの欲を向けられるでしょー。ことなるものがともにあろうとする事は、くるしみの多いことなのですー」
ほたる「……あの、止めることは、できないんですか。茄子さんが神様にならないように、なにか」
光茄子「難しいと思います」
P「茄子」
芳乃「まことそのとおり。難しいでしょー」
ほたる「どうしてですか。茄子さんは、決して神様になりたいなんて、思っていないはずなのに」
芳乃「カミになりたい、と思った岩があったでしょうか。山がもし、カミになりたくないと言ったなら、山はカミにならずに済んだでしょうか」
ほたる「それは……」
19 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)22:26:26 ID:
sFaA
ほたる「でも、でも。神様になりたいわけじゃないんですよね」
光茄子「ほたるちゃん」
ほたる「神様になって、そういうものとして扱われたいわけじゃないですよね。私、知ってます。茄子さんがそういうのはいやなんだ、って」
光茄子「……」
ほたる「いやだったら、いやだって言ってください。お仕事は、大事だけど。茄子さんを神様にしちゃうなんて、あんまりです。してはいけないことです」
P「ほたる……」
芳乃「……誰のせいともいえませぬー。あるいは、時間の問題であっただけのことかも。茄子さんは、それを知っていらしたのでしょー」
ほたる「だけど!」
光茄子「ほたるちゃん」
ほたる「芳乃さん。茄子さんが神様になるのを、止めることは出来ないんですか」
芳乃「さきほども言いましたように、いちど人がカミを見いだしたら、あとはそこに思いが注がれ、カミとなるもの。これを止めることは難しいでしょー。もともとあいどるには、そうした思いが集まりやすいこともありますゆえー」
P「しばらく、仕事を休ませたらどうだ」
芳乃「隠れたことにより神秘がたかまる、ということがありましてー」
ほたる「お仕事のたびに、茄子さんは神様じゃありませんって言ったら」
光茄子「たぶんそれ、逆効果です」
ほたる「茄子さん!」
20 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)22:26:46 ID:
sFaA
光茄子「さっきの話ですが、私も、神様になんてなりたくありません。みんなと、当たり前の人間として頑張っていきたい」
ほたる「だったら」
光茄子「だけど、世の中には、強い力があります。幸運が私を押し流そうとしたように、人をどこかに運んでいこうとする力が。もしかしたら私は」
ほたる「……そういう話は、聞きたくないです!!!」
P「うわあほたるが叫んだ」
芳乃「こんな大声初めてききましたー」
光茄子「ほたるちゃん」
ほたる「私は、茄子さんがどっか行ってしまうなんてイヤです。茄子さんも神様になるのがイヤで。それなら絶対納得しません。しかたないとか、こうなる運命だとか、そんな話はもう聞き飽きてるんです!!」
P「ほたる……」
ほたる「私、絶対に茄子さんを神様になんかしませんからね! 絶対ですからね!!」
P「だが具体的にどうやって」
ほたる「……それはこれから考えますけど!」
光茄子「ノープランだけど一生懸命なほたるちゃん可愛い」
芳乃「あめちゃんあげましょー」
21 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)22:37:05 ID:
sFaA
ほたる「ちゃかさないでください。というか、芳乃さんは何かアイデア無いんですか。取り返しがつきません、ダメですってだけ言うの、ずるいです」
芳乃「耳が痛いのでしてー……方法は、あります」
ほたる「えっ」
芳乃「ですが、教えることはできかねますー」
ほたる「ずるい!!!!」
芳乃「カミの産まれをゆがめることは、本来してはならぬこと。かんなぎであるわたくしがそれをなせば、わたくしのみならず、周囲にも必ずやよくない事が起きるでしょう」
ほたる「そんな」
芳乃「だから、わたくしはひんとを伝えに来たのです。茄子さんをひきとめる方法のひんとを。それがわくしに許される、ぎりぎりのところです」
光茄子「芳乃ちゃん」
芳乃「今お話ししたことの中に、ひんとはあります……どうか、茄子さんを引き留めてあげてくださいませ(ぺこり)」
ほたる「よ、芳乃さん」
22 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)22:43:25 ID:
sFaA
芳乃「わたくしも、茄子さんと、皆と、まだあいどるをしていたい。その思いは本当なのですから」
ほたる「……はい、絶対なんとかします!」
P「だから具体的にはどうやって」
ほたる「それは今から考えるんですけどおー! だから茄子さん」
茄子「は、はい」
ほたる「絶対に、ものわかりのいいこと言わないでくださいね。絶対がんばるって。絶対、なりたくない自分にはならないんだって、そう言ってください」
茄子「……もちろんです」
茄子「もちろんですよ、ほたるちゃん。もちろんです」
23 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)22:53:45 ID:
sFaA
○同日夜/女子寮・白菊ほたる自室
ほたる「……あぁ、もう!!!」
ほたる(芳乃さんから聞いたことを考えて、どうすればいいか考えて。私は煮詰まり果てました)
ほたる(あんな大見得を切ったくせに、どうしたら茄子さんが神様になるのを止められるか、ぜんぜん解らないのです)
ほたる(プロデューサーさんが言ったように、仕事を控えて、隠れたらどうでしょう)
ほたる(いいえ、神様じゃないかと思われたら神様になる、のなら。それは逆効果ではないでしょうか。神様のように光り輝いた後、姿を消した。それは、神様らしさを補強するのではないでしょうか)
ほたる(茄子さんはそういうのじゃないんです、そんな風に祭り上げるのをやめてください、と言ったらどうでしょう)
ほたる(それもきっと、逆効果です。それはつまり『神様みたいになりかかってる』と認めることに他ならないじゃないですか)
ほたる(神がやどっていると思われれば、神になる。人の言葉がわかる神はみんなが望むし、茄子さんの幸運はみんなが知ってるから、みんなが期待する。だって、産まれてくるのはきっと、幸運の神なのだから……)
ほたる(なんだか、詰んでいる気がしました。一度神になりかかった人を引き留めるのは、とても難しい気がします)
ほたる(……私にも、それは、覚えがありました)
ほたる(不幸の子。その噂か広まって、皆が私をそうみるようになりました。噂に尾鰭がつきました。私の不幸は、うんと大きく見られ、忌み嫌われるようになりました)
ほたる(それは私のせいじゃない、と言っても、聞いてくれる人はいませんでした。人が思いこむということは、自分の思った姿を見ようすることは、止めようの無い事なのです)
ほたる(煮詰まったすえ、私はスマホをいじりはじめました。何か、ヒントになることがないかと思ったのです)
ほたる(神様、茄子さん。いろいろなキーワードで調べるうちに、どこかの掲示板が引っかかりました。茄子さんの名前のスレッドがたっています)
24 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:03:14 ID:
sFaA
-------------------------------------------
・鷹富士茄子の新衣装が神すぎる件について【その5】(910)
・鷹富士茄子の幸運伝説【その11】(480)
・鷹富士茄子の奇跡エピソード(889)
・茄子大神はなんの神(108)
-------------------------------------------
ほたる(無責任なスレッド名を見て、私はため息をつきました。もう、茄子さんが大変なのに!!)
ほたる(もし、このスレッドや、いろんなSNSで交わされているであろう茄子さんの話に、全部そんなことはないんです、茄子さんはそうなりたくないんです、と書き込めば、この人たちは解ってくれるでしょうか。きっと、そんな事は無いのでしょう)
ほたる(ああ、どうしたら、茄子さんを神様にせずにすむのでしょう。私は考えて、考えて……)
ほたる「……あれ」
25 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:03:53 ID:
sFaA
ほたる(ふと、何かが引っかかった気がして、私はスレッド名を見返しました)
ほたる(『茄子大神はなんの神』その言葉が、妙に目に止まったのです)
ほたる(……茄子さんは、神にされようとしています。幸運の神、人の言葉が解る神。そういったものになるだろうと、期待されています。その期待が、茄子さんを神へと押し上げています。その力は、止めようがない、気がします)
ほたる(振る舞いが、それを加速する。茄子さんは幸運の神になるかもしれないから……)
ほたる「……あっ!!」
ほたる(ひらめいた、と思いました。私は大慌てでプロデューサーさんに連絡をとりました。そうだ。たぶん、これでいい)
ほたる(神様にしようとする力が止まらないなら、神様になってもらえばいいのです。きっとそれだけが茄子さんを神様にせずにすむ、たったひとつのやり方なのです)
26 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:10:07 ID:
sFaA
○翌日昼/浅草演芸ホール
P「待て待て待てちょっと待て訳が分からない」
ほたる「止めないでくださいプロデューサーさん!これは茄子さんを神様にしないために必要なことなんです!」
P「演芸ホールで腹踊り披露することがァ!?」
芳乃「いかなる物も、適した時に処方すれば、希代の妙薬となるのでしてー」
P「腹踊りが妙薬? ええええ」
ほたる「とにかく、昨日お伝えしたように、とにかく茄子さんをたくさんテレビに出して、ライブさせてあげてください。あと、亜子さんと笑美さんにお願いして、出来る限り一緒にステージを」
P「『笑う門には福来たる』か……え、それ、なんか意味があるの」
ほたる「あります。今の茄子さんには、きっとそれが一番の薬です」
P「解った。茄子がこれで神にならずに済むのなら」
ほたる「いえ、神様にはなるんですれどね」
P「だめじゃん!!!!」
27 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:10:26 ID:
sFaA
ほたる「信じてください!」
P「具体的になにを!?」
超眩光輝茄子「ほたるちゃん」
ほたる「茄子さん……」
超眩光輝茄子「それで、いいんですね」
ほたる「はい。茄子さんは、思い切りやってください。新春ですもの。隠し芸の、出番です」
超眩光輝茄子「……それで、いいんですね」
ほたる「はい。絶対、それで、いいんです。茄子さんのなりたい茄子さんでいいんです」
超眩光輝茄子「解りました。では……行ってきます!!」
ほたる「茄子さん、頑張って。頑張ってー!!」
ほたる(私は茄子さんの背に、思い切り声援を送りました)
ほたる(茄子さんは満面の笑顔で、ステージに飛び出して行きました……)
28 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:11:10 ID:
sFaA
○同日夜/浅草演芸ホール・茄子オンステージ夜の部
超眩光輝茄子「ポイントはおなかの動きでね? 別にじょうずに顔を描かなくても……」
29 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:17:10 ID:
sFaA
○翌日昼/某テレビ局・バラエティ撮影
超光輝茄子「では定番のどしょうすくいから! ポイントは扮装でね? 割った割り箸を鼻に……」
司会者芸人「こんな熱心にどじょうすくい語るアイドル初めて見たわ。ええの? このままやらせてええの? 事務所の許可は出てる? そう……」
30 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:17:39 ID:
sFaA
○さらに翌日/武道館・笑う門には福来る特別ライブ
光輝茄子「人間福笑いはですね、こう、すこしずつ変な顔を」
笑美「いやー、普段『隠し芸じゃなく隠さないといけない芸』とか言われてるの解るわー……」
亜子「アタシらもこのへんは見習いたいなー」
光輝茄子「はい、特別に大アップでお送りしております。是非みなさん、覚えて帰ってくださいねー!!」
31 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:22:19 ID:
sFaA
○別の日
光茄子「はい、いつもより多く回しておりまーす♪」
32 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:22:32 ID:
sFaA
○また別の日
茄子「はい、今日はほたるちゃんと二人羽織でおそばを食べまーす♪」
ほたる「がんばります」
茄子「はい、まずは七味をいっぱいかけてー」
33 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:22:50 ID:
sFaA
ほたる(そうして、そうして)
ほたる(ステージ上で、テレビで。茄子さんは普段封印されている隠し芸の数々を炸裂させました)
ほたる(反応は様々だったと思います。神秘的なイメージが壊れたという人がいます。これぞ茄子さんだと言う人もいます)
ほたる(ともかく、清楚な美女である茄子さんが体当たりにも程がある隠し芸の数々を繰り出す光景はインパクト満点で、大きな話題となりました)
ほたる(そしてその話題がSNSで毎日語られるようになったころ)
ほたる(茄子さんの体からでる光はすっかり消えて、いつもどおりの日常が戻ってきたのです……)
34 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:30:58 ID:
sFaA
○二月一日/某芸能事務所応接室
P「……じゃあ、もう茄子が神になる心配は無いのか」
芳乃「はい、ひとまず、今のところはー」
ほたる「茄子さん、体の調子とか、どうですか」
茄子「実はちょっと悪いです」
ほたる「えええっ」
茄子「ふつうに眠くなるようになりましたし、疲れるようになりました。うーん、こんな風に疲れるのって久しぶり♪」
ほたる「もー! もー!」
茄子「ふふふ、ごめんなさい。そして、ありがとう、ほたるちゃん」
ほたる「茄子さん……」
P「……いつも通りの茄子に戻った、ということか。しかし、どういうことだ。神様になるのは、止めようがなかったんじゃないのか。茄子に集まる思いとかは、止めようがなくて……」
芳乃「ええ、ですから」
ほたる「茄子さんに、神になってもらったんです」
P「えっ、何の神に」
35 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:31:19 ID:
sFaA
ほたる「そればずばり」
茄子「隠し芸の神、です!」
P「えええ何そのニッチすぎる神。そんなの誰も……あ」
芳乃「はい、そういうことでしてー」
P「つまり、茄子の幸運イメージを、強烈な隠し芸を連発することで、隠し芸イメージで上塗りして」
ほたる「はい。そして、隠し芸の神様をありがたがる人は、きっと本当に少ないですから」
茄子「ありがたがる人が居なくなって、茄子大神はすっかり廃れてしまったと、そういうわけです」
P「はー。成る程」
芳乃「あのとき、茄子さんはほとんどカミになりかかっていらっしゃいましたー。その光輝燦々たるあたらしきカミが日夜『私は隠し芸のカミです』と振る舞えば、その印象の強烈さたるや、想像を越えるものがあるでしょう。幸運のカミと期待していれば、なおさらのことー」
P「わざと、期待はずれの神になったわけか」
芳乃「はい。そして、信仰されなくなった岩は、もとの岩に戻る定め。茄子さんもまた、ただの人に戻ったと、そういうわけです」
P「なるほど……つまりこれは、言ってみれば神の殺し方なんだな。確かに芳乃が口にしていい事じゃなかったわけだ」
芳乃「おわかりいただけて、ありがたく存じますー」
P「しかし、ほたる。よくこんな事を思いついたな」
ほたる「スレッドが立ってたんです。茄子大神はなんの神、って」
P「ふむ」
36 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:31:46 ID:
sFaA
ほたる「それを見て思ったんです。岩が何の神かは、きっと拝む人が決めるんでしょう。でももし、産まれた神が、私はこういう神ですと自分から主張したら」
P「その神と思うしかなくなる、か。じゃあとにかく、これで一段落か」
茄子「はい。明日からも、アイドル鷹富士茄子として。よろしくお願いします」
P「ああ、こちらこそ……しかしなあ」
ほたる「?」
茄子「どうしたんですか、プロデューサーさん」
P「勝手だなと思ってさ。自分らで勝手に祭り上げて、思ったものと違ったからポイ、ってさ。いや、こんな商売してる俺が言えることじゃないんだけどさ」
芳乃「それもまた、人というものでしょー」
ほたる「うわあ、芳乃さんがすごい悟ったお顔してる……」
茄子「でも、それでいいんですよ、きっと」
P「茄子?」
37 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:32:14 ID:
sFaA
茄子「たしかに現金だなあ、とは思いますけど。でも……ちょっと感じるんです。少ないけど、かくしげいの神を喜んでくれた人も、ちゃんと居たんだって」
P「……」
茄子「たしかに、幸運の神様のほうが、みんな好きになるんでしょう。だけど、ほたるちゃんは、なりたくない自分にはならなくていい、って言ってくれました」
ほたる「……」
茄子「私は、納得のいく自分を好きになってもらいたいです。隠し芸の神を喜んだ人がいるみたいに、私が好きな私を好きになってくれる人は、きっと居ます。私は少しずつ、そんな自分を目指して進みたい。大きな波に、流されて行くんじゃなくて、自分で」
P「……ああ、そうだな」
茄子「私は、そういうアイドルとして、これからも成長していきたいんです」
ほたる(……その時、私には、茄子さんがまた輝いたように思えました)
ほたる(あの、かみさまのあの光ではありません)
ほたる(それはきっと、アイドル鷹富士茄子さんの輝きだったんです)
ほたる(目には見えない、でも、確かにそこにある輝き)
ほたる(私の目には、茄子さんが、神様だったときの何倍も輝いている。そう思えたのです……)
(おしまい)
38 :
◆cgcCmk1QIM 22/01/21(金)23:32:30 ID:
sFaA
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元スレ:
白菊ほたる「茄子大神はなんの神」
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