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竈門炭治郎「義勇さんは、泣かないんですね」富岡義勇「俺は水柱だからな」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/12/20(日) 20:14:29.88 ID:oGbsfrUpO
『そんなだからみんなに嫌われるんですよ』

胡蝶しのぶのその発言に俺は衝撃を受けた。
咄嗟に「俺は嫌われない」と返したが、「自覚が無かったんですね」と指摘されてしまった。
そこまで言われては認めるしかないだろう。

俺は、他の柱たちから嫌われている。

それを自覚するのと同時に疑問が生じる。
何故俺は嫌われているのか、と。不思議だ。
最近胡蝶と任務に就くことが多いとはいえ、基本的に他の柱たちとは疎遠であり、気に触るようなことをする機会すらなかったのに。

考えられるとすれば、ひとつしかない。
俺が最終選別を乗り越えていないからだ。
錆兎に鬼を倒して貰い、1匹も鬼と戦うことなく隊士となった俺のことを柱たちは認めていないのだ。そう考えれば、当然とも言えた。

俺は他の柱たちとは違う。隊士ですらない。
彼ら彼女らは俺と違い、本当の意味で柱だ。
尊敬すら抱く存在であり、自分が対等な立場だとは到底思えなかった。俺は弱い。

水柱の不在を補うために仕方なくその座についた俺はしかし、最終選別の件もあり、堂々と継子を育てる権利すらなく、新たな水の呼吸の使い手が育つのをただひたすらに待つ選択肢しか持ち得なかった。俺は待ち続けた。

「お前は水柱にならなければならなかった」

待ち侘びた水柱となる資質を持った者、竈門炭治郎に、俺は少なからず期待していた。

2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/12/20(日) 20:17:28.10 ID:oGbsfrUpO
「義勇さんがいるじゃないですか」

炭治郎はそんな惚けたことを言う。
それはある意味、俺のことを信頼しているのかも知れないが、過大評価に過ぎない。

それからしばらく炭治郎に付き纏われて根負けした俺は、包み隠さずに全てを打ち明けた。
最終選別の際の情けない過去も全て。
しかし炭治郎は俺が水柱であることに疑問を感じた様子すらなく、こんなことを尋ねた。

「義勇さんは錆兎から託されたものを繋いでいかないんですか?」

その瞬間、目が覚めた。夢から醒めた。
俺はただ錆兎の代わりに生き残ったのではなく、錆兎にたしかに託されていたのだ。
あの時死んでしまった錆兎がこれからしようとしていたこと、出来なかったことを俺はしなければならなかった。それが務めだ。

その後、何故かざるそばの早食い勝負に付き合わされつつ、俺は炎柱の最期を知った。
炎柱、煉獄杏寿郎。彼は真なる柱だった。
死してなお、炭治郎や他の隊士の柱として支え続けている事実に、俺は自らの体たらくを恥じた。俺も柱ならば見習わねばなるまい。

「うまい!!」
「いや、それは義勇さんには合わないかと」

ひとまずざるそばに舌鼓を打ってみたが、違ったらしい。俺と炎柱は違う。何もかも。
あの燃えるような情熱を持った真っ直ぐな男を懐かしく思う。柱の中でも彼は柱だった。

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/12/20(日) 20:19:48.65 ID:oGbsfrUpO
「今思えば炎柱には随分と苦労をかけた」

食後、茶をすすりながら炭治郎に語る。
どうしようもなく炎柱のことを話したい気分だった。炭治郎は静かに聞いてくれた。

「他の柱たちと反りが合わない俺を、どうにか孤立させないように手を尽くしてくれた。突然怒りだした柱を宥めるのも炎柱だった」
「本当に自覚がないんですね」

たしかに俺は自覚に欠けていた。
錆兎から託された水柱という立場。
それを軽んじていたことは否めない。

錆兎ならば、どうするか。
錆兎から託されたならば、どうすべきか。
俺は俺なりに立居振る舞いを考えねばならなかったのに、それを放棄していた。

「情けない限りだ」

今すぐ、炎柱に謝りたい気分だった。
炭治郎に柱としての在り方を見せてくれた彼のおかげで、ようやく間違いに気づけた。
炎柱、煉獄杏寿郎。俺は彼に会いたかった。

「義勇さんは、泣かないんですね」
「俺は水柱だからな」
「やっぱりすごいなぁ。俺なんか、大泣きしちゃって。今だって、煉獄さんのことを思い出すだけで泣けてきます」

水の使い手は誰よりも冷静でなくてはならない。感情のさざ波は波紋となりて刃が狂う。
それでも俺は炭治郎が流す涙を美しく思う。

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/12/20(日) 20:22:03.81 ID:oGbsfrUpO
「お前はそれでいい」

炭治郎のぶんも代金を払い、席を立つ。
堪えきれない涙を不甲斐なく思う後輩に説教する必要は感じなかった。水柱は俺だから。

「お前と俺は違う。お前はお前にしか出来ないことをしろ。俺は俺に出来ることをする」

炭治郎はきっと、いずれ柱となる。
俺の代わりではなく、俺とは違う柱に。
炎柱も炭治郎とそして妹のことを認めた。
蠱柱の胡蝶しのぶも、音柱の宇髄天元も、霞柱の時透無一郎も、恋柱の甘露寺蜜璃も、岩柱の悲鳴嶼行冥も炭治郎のことを認めた。

あとは風柱と蛇柱だが、彼らは俺から見ても気難しいので一筋縄ではいかないだろうが、炭治郎ならきっと仲良くなれるだろう。
根拠はない。しかし。

「はい、頑張ります!」

炭治郎は素直で、頑張り屋だから。
あの雪山で、俺に一矢報いた感性もある。
いずれ、全ての隊士に一目置かれる存在になると俺は信じてる。炎柱と同じく、信じる。

「義勇さん、どちらに行かれるんですか?」
「厠だ」

行き先を告げると、炭治郎は目を輝かせて。

「俺も是非お供させてください!!」

理解しかねる後輩の発言に、衝撃を受けた。

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/12/20(日) 20:23:58.29 ID:oGbsfrUpO
「もしかして、義勇さんは仲間たちと連れションをした経験がないんですか?」
「連れ、ション……?」
「俺も隊士になってから善逸に教えて貰った作法なんですけどなかなか良いものですよ」

連れションが作法? 善逸とやらは馬鹿か?

「山の中だったらどこまで遠くに飛ばせることが出来るか競い合ったりも出来て……」
「やめろ!!」
「え? 義勇さん……?」

いけない。つい感情を発露してしまった。
己の修行不足を嘆きつつ、説教をする。
他ならぬ炭治郎だからこそ俺が正さねば。

「炭治郎、お前も水の呼吸の使い手ならば排尿で遊ぶことはやめろ。静かに用を足せ」
「やはり呼吸によって尿の飛び方が異なるんですね? うわ~義勇さんの見たいなぁ!」

つい呼吸を引き合いに出したのが裏目に出てしまった。キラキラ輝く眼差しが眩しい。
期待されているのだろう。俺は水柱だから。

「義勇さんほどの水の使い手なら軌道も自由自在なんだろうなぁ。鬼だっておしっこをひっかけるだけで倒せるんですよね!?」
「い、いや……」
「すごいなぁ。やっぱり凄いひとたちはもっとずっと先で戦ってるんだ……憧れるなぁ。俺も義勇さんみたくなれるかなぁ」

憧れられている。柱ならば、応えなければ。

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/12/20(日) 20:25:45.01 ID:oGbsfrUpO
「ついてこい、炭治郎」

もうあとには引けない。ひとまず店を出た。

「義勇さん、どこまで行くんですか?」
「山の中でなくては本気を出せない」
「やっぱり山の中が一番ですよね!」
「ああ」

何が、ああ、なのか。自分でも意味不明だ。

「この辺りで済ませよう」

しばらく登山をして、町並みを見下ろせる景色のよいところに陣取った。解放感がある。
炭治郎は俺の隣に並んで、ニコニコ笑った。

「義勇さんと連れション出来るなんて光栄です。煉獄さんともしたかったなぁ」

炭治郎。お前は本当に良い後輩だ。
思えば俺も炎柱と連れ立って小便をした覚えはなかった。一度はやってみるべきだった。
あとからそのように後悔するならばやはりこの機会に炭治郎と済ませておこうと思えた。

「炭治郎。今一度水の呼吸の心得を伝える」
「はい!」
「水は特定の形を持たず、常に変化し続けて、時に受け流し、時に押し流す」

腰の刀を抜く動作すら、悟られることなく。

「終わった」
「え?」

排尿を終えた証拠に濡れた土を見せてやる。

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/12/20(日) 20:27:45.69 ID:oGbsfrUpO
「ええっ!? 全然見えなかった!?」
「次はお前の番だ」

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ。

「う、上手くできるかなぁ」
「出来なくてもいい。今お前が出来る限りを俺に見せてみろ。俺はお前を信じる」
「わ、わかりました!」

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。

「今ここで、義勇さんに見せつけるんだ!」

やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

「ど、どうでしたか!?」
「全然駄目だな」
「ううっ……ごめんなさい」
「いや、謝る必要はない。炭治郎、お前はたしかに成長している。それが実感出来たことを、俺は嬉しく思う。これからも精進しろ」
「はい!」

山を下りる際に、鼻の良い炭治郎は気づく。

「あれ? 義勇さん、この匂いって……?」
「ざるそばの量が思ったよりも多かった」
「フハッ!」
「ムフッ!」

凪いだ世界に音が戻り、脱糞が発覚する。
炭治郎の嗤い方は気に入らないが俺も人のことは言えまい。ともあれ、愉快だった。

「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「ムフフ」

山を下りたらこの"おはぎ"ならぬ"ぼた餅"を不死川に手渡してやろうと画策しつつ、俺と炭治郎は上機嫌でいつまでも嗤い合った。


【鬼滅のやいフハッ! 糞の呼吸・参の型】


FIN



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元スレ: 竈門炭治郎「義勇さんは、泣かないんですね」富岡義勇「俺は水柱だからな」
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[ 2020/12/21 06:55 ] その他 | TB(0) | CM(1)
[タグ] 鬼滅の刃
コメント
13965: 2020/12/24(木) 20:41
途中までまともだったのに…
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