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P「あいつらに会いたい」【後編】

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246 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:18:26.67 ID:j3ttDkno0
卯月「ミュージカル?」

P「ああ。前の定例ライブを担当してくれた演出家さんを覚えているか。
  その方がみんなのことを気に入ってくれて、この話を持ちかけてくれたんだ」

幸子「ボクたちに目をつけるとは、
   その演出家さんはなかなか見る目がありますね」

P「この中でミュージカル経験があるのは未央だけだろ。
  みんなのステップアップに繋がるいい機会になると思うんだ」

未央「うんうん、音楽、歌、踊り、演劇……、
   ミュージカルには沢山の娯楽が含まれてるからねぇ。
   技術を磨くには持ってこいだよ」

志希「しつもーん。ミュージカルの演目は?」

P「実はまだ決めてない。
  だからもしやりたい演目があるなら教えてほしい」

P「既存のものでもオリジナルのものでも構わない。
  演目を決める上でみんなの意見を参考にしたいと思っている」

蘭子(オリジナル?)キラーン

凛「やりたい演目……っていわれても、
  ミュージカル自体、私はあまり詳しくないし」

愛梨「私もあまり知らないかなぁ」

P「あまり難しく考えなくていい。好きな映画とかドラマとか、
  ジャンルを挙げてくれるだけでもいいから」

247 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:20:23.77 ID:j3ttDkno0
未央「こういうの考えるのらんらんが得意なのでは?」

杏「蘭子ちゃんならさっきから夢中でノートに書き綴ってるよ」

蘭子「ロストアルテミスと呼ばれる月の崩壊から、
   約百年余り経過した復興暦107年の地球。
   そこには地球に降ってくる砕けた……」サラサラ

アーニャ「これは大作になりそうです」

莉嘉「はい! アタシ恋愛ものがやりたい!」

美嘉「恋愛? そしたら男性役が必要だけど……、幸子ちゃんとか?」

幸子「今、一人称が『ボク』だからと安易に挙げたでしょ」

莉嘉「男役はPくんがやればいいよ」

P「お、俺?」

美嘉「なんでプロデューサーが……ってゆーか、
   男役もそもそもプロデューサーは“男”じゃん」

莉嘉「アタシとPくんはちょー愛しあってて、
   でもミブンが違うせいで悪い人に色々邪魔されちゃうの。
   でー、アタシが毒リンゴ食べて死んじゃうんだけど、
   ガラスの靴履いたら生き返って最後は結婚してハッピーエンド!
   ってゆー話は?」

美嘉「却下」

楓「なんか色々混ざってるわね」

248 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:22:18.09 ID:j3ttDkno0
杏「話はともかく、仮にプロデューサーが舞台に立ったらブーイング間違いなしでしょ」

愛梨「でも、プロデューサーさんが相手なら私もその話やってみたいな~、なんて。えへへ」

まゆ「プロデューサーさんがお相手してくれるというのなら、
   まゆもそのお話を推薦します」

蘭子「コ、コホン。致し方ない。
   仮初の舞台とはいえ婚姻の儀を執り行うというのなら、
   彼と魂の契約を交わした私が相手をしなくてはならないわね……///」
  (私もそのお話やってみたいな~)

未央「あれっ、さっき自分で書いてた話は!?」

幸子「ボ、ボクも立候補してあげてもいいですよ! 
   別にプロデューサーさんとのラブストーリーなんて
   ぜんっぜん興味ありませんけど?
   女優としての演技の幅は広げたいですし?」

卯月「わ、私もそのお話やってみたいです///」モジモジ

莉嘉「え~~っ! これ莉嘉が考えた話だよ?
   Pくんとカケオチするの絶対アタシなんだから!」

杏(結婚するんじゃなかったんかい)

楓「現実的な案はすぐ出そうにないわね」

P「ま、まあ、今月末に会議を開く予定だから
  それまでに考えておいてくれればいいよ。
  ……一応いっておくが、俺の出演はなしだからな」

ちひろ「みんな、そろそろ時間よ。
    第2スタジオで撮影を始めるから準備してちょうだい」

 ハーイ ゾロゾロ

アーニャ(プロデューサー)クイクイ

アーニャ(今夜、晴れるそうです。約束どおり屋上で……)

P(ああ、わかった)

凛「アーニャ、行くよー」

アーニャ「はい、ではまた」

凛「なに話してたの」

アーニャ「アー……、少し仕事のことで」



…………
………
……

249 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:22:55.40 ID:j3ttDkno0
アーニャ「――そうです。
     周りに明るい星がないから見つけやすいと思いますよ」

P「あー……、わかった。あれが『ペガススの四辺形』か」

アーニャ「見つけましたか。そこから南へいくと『みずがめ座』があります。
     これは少し見つけるのが難しいかもしれません」

P「みずがめ座……みずがめ座……」

250 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:25:00.23 ID:j3ttDkno0
P「しかし、東京の空でもこんなに星が綺麗に見えるものなんだな」

アーニャ「今日の星空指数は今年で最高値です。
     こんな夜は滅多にありませんよ。まさに“僥倖”です」

P「また難しい言葉を覚えたな。それも台本に載っていたのか」

アーニャ「ダー。他にも難しい言葉、沢山ありました。
    “邂逅”とか“静謐”とか“闇に飲まれよ”とか」

P「最後のは絶対載ってなかったろ。映画の撮影はどんな調子だ」

アーニャ「トルードナ……、とても大変です。
     私の役『舶来の英国人』は日本語がとても上手。
     アー……、リューチョー? に話せる設定です」

アーニャ「役を演じながら言葉を途切れさせずに話すのは難しい。
     NG、沢山出してしまいます」

アーニャ「ですが、大変だけど楽しい。
     スタッフも役者のみなさんも優しいです。
     アーニャが上手く演じられるよう、導いてくれます」

アーニャ「だから私も周りの期待に応えられるように、最後まで精一杯頑張ります」

P「ああ、アーニャならできるよ」

P「それにしても綺麗な夜だな。満月もよく見える」



 「いいえ、今宵の月は待宵月ですよ、あなた様」



P「……!」クルッ

アーニャ「どうしました?」

P「いや、今の……」

アーニャ「ふふ、そうです。今のも台詞の一つです」

アーニャ「アー……、プロデューサー? お腹空きませんか。
     実は今夜のためにボルシチを作ってきました」

アーニャ「ロシアにいた頃、グランマがよく作ってくれました。
     アーニャの思い出の味、プロデューサーにも知ってほしくて……」

アーニャ「グランマのようにはいきませんが美味しくできたと思います。
     ……食べてくれますか」

P「あ、ああ、それはもちろん」

P(……)


…………………
………………
…………
……

251 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:26:05.07 ID:j3ttDkno0
 『はぁっ!?
  誰もこんなゴスロリ衣装の真なんか見たくないわよ!
  少しは需要ってものを考えなさいよ!』

 『なんだと~! たとえ少ない需要でも応えてやるのがプロってものだろ!』

 『アンタ、自分でも需要がないってこと自覚してんじゃない!』

 『ふ、二人とも落ち着いて……』

 『雪歩は黙ってて!』

 『ひえぇ~』

 『あっ、プロデューサー聞いてくださいよ!
  伊織がこの衣装ボクに似合わないっていうんです! そんなこと――……



P「はっ……」


P「……」


P「…………夢」



………
……

252 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:26:44.93 ID:j3ttDkno0
卯月「『プロジェクト・ピンクチェックスクール』……」

凛「『プロジェクト・トライアドプリムス』……」

未央「『プロジェクト・ポジティブパッション』……」

志希「『プロジェクト・LiPPS』?」

未央「なにこれ」

P「5人それぞれの新ユニットだ」

未央「へー、新ユニット……」

卯月・凛・未央「……」

卯月・凛・未央「……え」

253 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:28:31.54 ID:j3ttDkno0
P「アイドル部門挙げての新プロジェクトが発足されたんだ。
  その一環として新ユニットの結成。
  俺の担当アイドルからはここにいる5人が選ばれている。
  詳細は手元の資料を参照のこと」

志希「はーい」ペラッ

未央「え、ち、ちょっと待ってよ! 新ユニットって……、
   じゃあ、ニュージェネレーションズはどうなんのさ!」

P「もちろん続けてもらう。
  ニュージェネレーションズの解散となればこのプロジェクトに賛同しなかったさ」

凛「じゃあ、プロデューサーはこのプロジェクトに前向きなんだ」

P「まあ……、悪い話じゃない。
  三人の力量ならユニットの掛け持ちでも十分やっていけるだろうし、
  ソロ活動が主だった志希たちにはユニットを組ませる絶好の機会だ」

P「それに新たな可能性を模索するためにも、
  俺と違う環境下で動いてみるのも一つの手だ」

未央「『俺と違う環境』?」

凛「ここ、書いてあるでしょ」

未央「……あれっ! ユニットの担当がプロデューサーじゃない!?」

P「俺はこのプロジェクトに関しては一切のノータッチだ。
  これ以上仕事を増やすなと上からきつく止められている」

凜「まぁ、そうなるよね」

P「どうだろう、当然不安もあるだろうが――」

254 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:28:58.89 ID:j3ttDkno0


美嘉「不安しかないよ……」


255 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:30:12.29 ID:j3ttDkno0
未央「お、おお、美嘉ねえ。そういえばいたんだね」

P「不安しかないって?」

美嘉「このメンバーだよ! メ・ン・バー!」

P「……? LiPPSのメンバーになにか問題があるのか」

美嘉「大アリだよ! プロデューサーはこの三人のことなにも知らないから!」

P「三人?」

未央「へー、美嘉ねえ、志希にゃんと同じユニットなんだ。
   どれどれ、LiPPSのメンバーは……」

卯月・凛・未央「……あぁ」

美嘉「ほらっ! こういう反応が返ってくるの! このメンバーは!」

P「そんなにまずいのか」

凛「別にまずくないよ。
  ただユニット内での美嘉のポジションが確定したってだけ」

未央「そそ、美嘉ねえにピッタリな“苦労人”というポジションが」

P「要は志希並みに一癖も二癖もあるアイドルが揃っているということか」

志希「シッケーな! あたしのどこに癖があるってゆー!」

美嘉「どの口がいう……」

256 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:31:16.90 ID:j3ttDkno0
P「しかしこの三人、うちの事務所でもかなりの実力者だろ。
  一人は次期シンデレラガールの最有力候補だと聞いている。
  正直、許されるなら俺がこのユニットをプロデュースしたいくらいだ」

凛「……」ムッ

志希「美嘉ちゃん、あたしたちとユニット組むのそんなにイヤ?」ウルウル

美嘉「う……、べ、別にイヤだなんていってないでしょ。
   ユニット組むこと自体には賛成。折角のチャンスだもん、やるよ」

P「志希も参加する方向でいいんだな」

志希「うん、やる。面白そーだし」

P「卯月たちは……すぐには答えられないか」

卯月・凛・未央「……」

P「まずは三人でよく話し合ってほしい。
  返事は今週末までに聞かせてくれればいいから」



………
……

257 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:32:05.29 ID:j3ttDkno0
未央「どうする? 二人はプロジェクトに参加したい?」

卯月・凛「……」

未央「実は私は参加もアリかなーって思ってるんだけど……」

凛「え……」

未央「ほ、ほらっ、
   別にニュージェネがなくなるわけじゃないんだしさ、
   プロデューサーのいうとおり、
   私たちならユニットの両立もちゃんとできると思うし……」

未央「……ごめん! 正直にいう。実は新ユニットにかなり惹かれてる」

未央「ポジティブパッションのコンセプトが私にピッタリな気がするんだよね。
   メンバーも顔見知り……っていうか友達だし」

卯月「……私のユニットもそうです」

凛「……私のも」

258 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/26(月) 20:33:21.82 ID:j3ttDkno0
未央「多分だけどプロデューサー、
   プロジェクトにはノータッチとかいってたけど、
   本当はユニットの編成に色々手回してたんじゃないかな」

卯月「それ、私も思いました。プロデューサーさん、
  『悪い話じゃない』なんて歯切れ悪そうにいっていましたけど、
   本当は私たちにプロジェクトに参加してほしいんじゃないでしょうか」

凛「参加してほしい理由ってなんだろ」

未央「そりゃぁ、いってたじゃん。新しい可能性を模索するためだって」

凛「じゃぁ、プロデューサーの下では
  その新しい可能性を模索することはできないのかな」

未央「や、そんなことはないだろうけど……」

卯月「なにか他に理由があると?」

凛「……ううん、ごめん。私がそうこじつけたいだけかも」

凛「いいよ、私も参加する。正直、私も新ユニットには興味があった」

卯月「じ、実は私も……」

未央「あは、なんだ。やっぱり二人も乗り気だったんじゃん」

凛「ごめん、未央。いつもいいにくいことを先陣切っていってくれて」

未央「いやぁ、これでも一応ニュージェネのリーダーですから」

未央「……ユニットの両立、頑張ろうね」

卯月「はい、頑張ります!」

凛「うん、頑張ろう。
  プロデューサーがトライアドプリムスをプロデュースしたくなるように」

未央「あーん、やっぱりさっきのプロデューサーの言葉気にしてたー」



…………………
………………
…………
……

262 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/27(火) 20:37:32.47 ID:Ahx16JAs0
幸子「へぇ、新ユニット」

莉嘉「いいなぁ、アタシもユニット組みたい」

杏「zzz……」スヤァ

美嘉「プロジェクトは今後も継続していくみたいだから、
   莉嘉たちにもまだまだチャンスはあるかもね」

まゆ「でもプロデューサーさん、
   このプロジェクトチームからは外されてるんですよね」

莉嘉「えっ、そうなの?」

美嘉「これ以上仕事増やないよう、上から止められてるんだってさ」

志希「本人はやりたそーだったけどね」

莉嘉「Pくんが担当してくれないならやっぱいい……」

幸子「――と、いいそうな凛さんが参加するのはちょっと意外ですね」

まゆ「そうかしら。ユニットの担当が違うというだけで、
   プロデューサーさんの担当から外されるわけではないのでしょ。
   ユニットに魅力を感じれば、まゆだって参加していたと思うわ」

美嘉「プロデューサーがLiPPSをプロデュースしたいっていってたから、
   それで火が付いたんじゃないかな」

志希「あれ凛ちゃんを焚きつけるためにわざといったよねー」

美嘉「本当にそう思われるくらいのユニットにはしたいけどね」

263 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/27(火) 20:40:34.26 ID:Ahx16JAs0
まゆ「それにしてもどういう選考基準なのかしら。
   プロデューサーさんの担当アイドルから5人も選ばれるなんて」

美嘉「それ、アタシも気になってた。偶然選ばれたとは思えない人数だし」

幸子「うーん、やっぱりあの噂本当なのかな」

美嘉「噂って?」

幸子「プロデューサーさん、昇進の話があるらしいです」

志希「へー、そりゃめでたい」

莉嘉「ショーシンって?」

志希「プロデューサーが今よりもえらーい立場になるってこと」

莉嘉「Pくんが今より偉くなるとなんになるの?」

美嘉「……なんだろ。部長? になるのかな。
   管理職であることは間違いないだろうけど」

幸子「噂では執行役員になるのではないかと」

美嘉「まさか……。さすがにありえなくない?」

まゆ「どうかしら。記憶障害になられたとはいえ、
   プロデューサーさんの業績や会社への貢献度を考えれば
   ありえなくもない話……かもしれない」

264 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/27(火) 20:42:28.59 ID:Ahx16JAs0
莉嘉「役員ってすごいの?」

志希「すごいよー。
   莉嘉ちゃんが都内でヘラクレスオオカブトを発見しちゃうくらいすごい」

莉嘉「ちょーすごいじゃん!
   その話が本当だったらみんなでPくんをお祝いしてあげようよ!」

幸子・まゆ・美嘉「…………」

莉嘉「あれ、どーしたの、みんな黙っちゃって」

志希「仮にその話が本当なら、
   プロデューサーはアイドルのプロデュースを辞めちゃうってこと」

莉嘉「えっ、なんで?」

美嘉「役員はアイドルをプロデュースすることが仕事じゃない。
   会社全体の管理とか方針を決めることが仕事なの」

志希「つまり今回のプロジェクトはその足掛かりってことなんでしょ。
   プロデューサーの担当アイドルの数を徐々に減らしつつ、
   プロデュース業からもゆるーくフェードアウトさせるっていう」

幸子「まぁ、あくまでも噂なので本当かどうかは本人に確かめてみないと……」

莉嘉「……」


 ――ガチャッ


P「おつか――」

莉嘉「Pくん、辞めちゃやだ!!」

P「え……」

265 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/27(火) 20:44:08.98 ID:Ahx16JAs0
P「――耳が早いなあ。確かに昇進の話はあったよ。断ったけどな」

美嘉「断った?」

P「少なくともみんなをトップアイドルにするまでは、
  この仕事を辞めるわけにはいかないからな」

莉嘉「じゃあ、これからもPくんは莉嘉のプロデューサーでいてくれるの?」

P「もちろん」

莉嘉「よかったぁ!」

美嘉「よく断る気になれたね。役員なんて大出世じゃん。
   なりたくてもなれるものじゃないのに」

P「正直、揺れた部分もあったよ。社長にはかなり食い下がられたし」

P「けど、結局はこの仕事が好きなんだろうな。
  経営側に回るより、現場で働いている方が性に合ってる」

志希「あは、キミらしい答え」

幸子「でもまさかプロデューサーさんがそこまで評価されていたなんて、
   一担当アイドルとして鼻が高いですよ」

まゆ「まゆもプロデューサーさんが誇らしいです」

266 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/27(火) 20:46:33.66 ID:Ahx16JAs0
 ――ガチャッ バン!


未央「プロデューサー!」

P「未央? どうした、そんな血相変えて」

未央「プロデューサー、961プロにヘッドハンティングされたって本当!?」

P「えっ」

凛「プロジェクトに私たちが選ばれたのは担当を変更するためだったってこと!?」

卯月「お願いです、961プロに行かないでください!
   私たちにはプロデューサーさんの力が必要なんです!」

267 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/27(火) 20:47:34.57 ID:Ahx16JAs0
 ――ガチャッ バン!


蘭子「プロデューサー!」
  (我が友よ!)

P「ら、蘭子? どうした、標準語になってるぞ」

蘭子「プロデューサー、事務所辞めるって本当なの!?」
  (組織を抜けるとは真か!?)

P「えっ!」

愛梨「独立して新しい事務所を構えるって……」

アーニャ「パジャールスタ……、お願いです、辞めないでください。
     アーニャ、プロデューサーにまだなにも……」

莉嘉「Pくん、やっぱり辞めちゃうの!?」

杏「ふあぁ、さっきからなに騒いでんの……」

P「……」

268 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/27(火) 20:49:50.16 ID:Ahx16JAs0
未央「へ? 昇進?」

P「断ったけどな。どうも噂に尾ひれがついたみたいだな」

凛「尾ひれどころじゃない噂のねじれ方だよ……」

蘭子(な、なんだ……)ホッ

蘭子「……!」ハッ

蘭子「クッ、私としたことがブラフを掴まされていたようね!」
  (やった! “ブラフ”って言葉、一度使ってみたかったんだよね♪)

卯月「プロデューサーさんなら本当にありそうな話だから
   思わず信じちゃいました」

杏「火のない所に煙は立たぬ。
  実は過去に961プロからそういう話が本当にあったりして」

P「まさか。961プロが俺を引き抜くなんてありえないよ」

杏「どうして?」

P「あそこはプロデューサー制を取ってないんだ。
  それにうちと961プロの因縁についてはみんなも知ってるだろ」

杏「因縁?」

莉嘉「Pくん、ほんとに、ほんとーに、辞めたりしない?
   ずっとアタシたちのプロデューサーでいてくれる?」

P「ああ。みんなが望んでくれる限り、ずっとそばにいるよ」

莉嘉「絶対だよ? 指切りだからね?」

蘭子「わ、我とも契りを交わそうぞ!」

まゆ「まゆともいたしましょう」

 キャッ キャッ

杏(……)

269 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/27(火) 20:51:26.91 ID:Ahx16JAs0
P・楓「かんぱーい!」

 カーン

楓「……んぐっ……んぐっ……」グビッ グビッ

楓「はぁ……、五臓六腑に染み渡る。やはり仕事の後の一杯は格別ですね」ウットリ

P「本当に美味しそうに飲みますよね、楓さんは」

楓「いつ酒造メーカーからCMのオファーがくるかわかりませんからね。
  こうして日々お酒を飲んでは表現力を磨いているわけです。
  そう、いわばこれは鍛練なんです」

P「そうですか」

楓「……んぐっ……んぐっ……」グビッ グビッ

楓「ふぅ、なんて厳しい鍛練。……あ、すみませーん、大ジョッキ一つ」

P「……」

270 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/27(火) 20:52:52.43 ID:Ahx16JAs0
楓「――時にプロデューサー、実は折り入って相談したいことが」

P「旅行の件なら駄目ですよ」

楓「ひどい、話を切り出す前から断るなんて……!」

P「なんといわれようとも駄目なものは駄目です。二人きりで旅行なんて」

楓「……」フフン

P「なんですか、その得意げな顔は」

楓「要は記者にバレなければいいんですよね。
  私、ティンときました。これを見てください」スッ

P「……“オクトーバーフェスト”?」

楓「本場ドイツのビール祭りです」

楓「私のお酒好きはもはや公然の秘密、不覚にも世間に知れ渡ってしまいました」

P「不覚もなにも秘密になんかしたことないでしょ」

楓「それを逆手に取り、私たちはこのオクトーバーフェストに
  さも仕事をしているかのような体裁で参加するのです」

P「つまり海外ロケと見せかけた海外旅行」

楓「さすがはプロデューサー。話が早い」

P「駄目です」

楓「さすがはプロデューサー。断るのも早い」

271 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/27(火) 20:54:44.53 ID:Ahx16JAs0
P「楓さんのスケジュールに海外ロケを挟める余地なんてありませんよ」

楓「挟める余地がないのなら作ればいいのです。仕事をキャンセルして」

P「ですから、キャンセルできる仕事がないといっているんです。
  楓さんだって自分が無理をいっていることは十分わかってるでしょ」

P「第一、あなたは大の方向音痴なんだから、
  海外旅行なんて許可できるわけないでしょ。都内ですら迷うのに」

楓「え……、上京して間もないころは確かに迷いましたけど、
  今は迷うことなんてそんなに……」

P「なにをいっているんです。
  駅から事務所までの最短距離の道のりだって
  この前ようやく覚えられたばかりじゃないですか、あず……」



P「…………」



楓「アズ?」

P「あ、いや……」

楓「小豆……、小豆島……、安土城……、あず……」



楓「あずさ」



楓「……という特急列車が確か昔ありましたよね」

P「……」



…………………
………………
…………
……

276 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:13:01.34 ID:cAnkqGWC0
卯月「プロデューサーさん!」ヒョコッ

P「お、おぉ、どうした卯月」

卯月「えへー……実はぁ」ゴソゴソ


  「じゃーん! プロデューサーさんっ! クッキーですよっ! クッキー!」


卯月「私の手作りなんです、よかったら食べてください。
   ママに教わって作ったんで味は――」


P「春香」


卯月「――保証……え?」

P「あ、ああ、いや……、
  へえ、美味しそうじゃないか。それじゃあ一つ……」サク サク

P「……美味しいよ」

卯月「本当ですか! よかったぁ!」

P「なんだろう、ひどく懐かしいような……」



…………………
………………
…………
……

277 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:14:47.44 ID:cAnkqGWC0
幸子「こひゅぅ~………こひゅぅ~……」

P「幸子、幸子」ユサユサ

幸子「……ハッ! プ、プロデューサーさん!?」

P「大丈夫か、過呼吸気味になってるぞ」

幸子「だ、大丈夫、少し緊張しているだけです。
   この緊張感が堪らなく、フ、フフ、フ……」

P「無理しなくていいんだぞ。他のキャストに代わってもらっても」

幸子「いえ……、ボクもプロです。覚悟はできています」

幸子「ファンのみんながカワイイボクの絶叫シーンを待ち望んでいるんです。
   たかがバンジージャンプ……、三途の川に飛び込むくらい楽勝ですよ!」

P「それは駄目なのか楽勝なのかどっちなんだ」

幸子「楽勝です! そう――」


 「なんくるないさー!」


幸子「――ですよ!」

幸子「知っていますか、今の言葉。
   琉球方言で“なんとかなるさ”という意味だそうです。
   前の沖縄ロケで、民宿を営んでいるご主人から教わったんです」

 「輿水さん、スタンバイお願いします」

幸子「はい! それでは行ってきます!」

P「あ、ああ……」



 ナンクルナイサ…… ナンクルナイサ…… ナンクルゥウワアアアアアアアアアアアアッ!!!
 


P「……」



…………………
………………
…………
……

278 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:16:28.96 ID:cAnkqGWC0
莉嘉「Pくーん! なにこの衣装、ちょっとヤバすぎだって!」

  『うあうあ~! 兄ちゃん、この衣装激ヤバっしょ~!』

莉嘉「ほらっ、胸のとこ開きっぱだし、
   スカートなんかスケスケで大事なとこ全然隠せてないし!」

莉嘉「莉嘉はこういうエッチなのじゃなくて、
   お姉ちゃんみたいにカッコよくてセクシーな衣装が着たいの! この違いわかる!?」

  『真美はこういうエロエロのじゃなくて、
   大人の色気満載のセェクスィーな衣装が着たいの! この違いわかる!?』

莉嘉「てゆーか、こんなの莉嘉に着せたらPくんハンザイ……」


P「……」


莉嘉「Pくん? どしたの?」

P「え、ああ……。それ、中に着るものがまだあるから」

莉嘉「えっ、そーなの?」

P「俺が莉嘉にそんな格好させて人前に出させるわけないだろ」

莉嘉「なーんだ、ビックリしたー……、あっ」

莉嘉「でもでもー、Pくんと二人きりならこれだけ着てあげてもいいよ?」

  『んっふっふ~、兄ちゃんの前だけならこれだけ着てあげてもいいよ?』

P「……」

莉嘉「あ~、今想像したでしょ~? Pくんのえっち~」

P「……ばか」



…………………
………………
…………
……

279 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:17:00.79 ID:cAnkqGWC0
凛「プロデューサー、準備できたよ。……プロデューサー?」

P「……あ、ああ。それでは千川さん、
  凛たちとアミューズメントミュージックの収録に行ってきます」

ちひろ「はい、気をつけていってらっしゃい」

未央「よーし、今日も張り切ってアミューズメントでミュージックするぞー!」

卯月「はい、頑張ります!」

凛「そのまんまじゃん」



………
……

280 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:18:23.37 ID:cAnkqGWC0
 『それでは参りましょう』

 『ニュージェネレーションズで“流れ星キセキ”です』


 ~~♪


P「……」


 「よお、あんたか」


P「天ヶ瀬冬馬」


卯月・未央・凛『流れ星を探そうよ 転んだら――♪』


冬馬「フン、わるかねーな」

P「聞いたよ、ドームツアーだって。どうやら先を越されてしまったな」

冬馬「ま、俺たちの実力なら当然だ。
   うかうかしてるとトップアイドルの座も俺たちがいただくぜ」

P「そいつはどうかな」

 「ジュピターのみなさん、スタンバイお願いします」

冬馬「ようやく出番か。それじゃあな、またぶっ倒れんなよ」

冬馬「あ、そうだ。そういや見つかったのかよ」

P「……? なんの話だ」

冬馬「前にどこだったかの芸能プロダクション探してたろ。
   なんだっけな、えーと確か……ナ……ナ……」


冬馬「ナムコプロ」


冬馬「だったよな? 見つかったのか」



…………………
………………
…………
……

281 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:19:30.18 ID:cAnkqGWC0
杏「……」グテー

志希「……」ダラー

ちひろ「し、志希ちゃんまでどうしたの。杏ちゃんみたいになっちゃって」

志希「小休止。さすがの志希ちゃんもキビシー舞台稽古の日々に
   疲れ果ててしまったのです。エーキを養わなければ……」

杏「だからって私を抱き枕扱いすんのやめてくんない」

志希「プロデューサーは?」

ちひろ「プロデューサーさんなら今日は一日外回りだから帰ってこないわよ」

志希「ちぇー、新しいパフュームができたから彼で実験したかったのに」

杏「そういえばちひろさん、CGプロって961プロと仲悪い?」

ちひろ「んー、どうかしら……。
    961プロの強引なやり口には困らされてはいるけれど、
    特別悪いなんてことはないと思うわ。
    どうしてそんなことを聞くの」

杏「プロデューサーがうちと961プロには因縁があるっていうから」

ちひろ「因縁? 私は聞いたことないわ」

杏「……そう」



…………………
………………
…………
……

282 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:20:49.85 ID:cAnkqGWC0
P「杏、起きろ杏。仕事に遅れるぞ」

杏「うぅ、今、夢の中で印税生活送ってたのに……」

P「その夢を実現させるためにアイドル頑張ってるんだろ」

未央「おーい、行くよー」

P「ほら、未央が呼んでるぞ」

杏「ん~……」モゾモゾ



 「お願い、もう少しだけ寝かせて、ハニー?」



未央「……プッ」

未央「アハハハハハ!! ハ、ハ、ハニー!?
   なにそれ、超ウケるんだけど! アハハッ!!」

未央「ほ、ほら、プロデューサーも引いてんじゃん、ククク……!」

杏「む、違っ。これは杏のあまりの可愛さに骨抜きになってんだよ。
  そうでしょ? プロデューサー」

未央「ひ、ひぃ、もうダメ、お腹いた……、あれ、プロデューサー、どこ行くの」

未央「お、おーい?」


 ガチャッ バタン――


杏「……え、そんなにドン引きするほどのものだった?
  アイドルとして自信なくすんですけど」

未央「や、どうだろ……」

杏「……」



………
……

283 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:21:35.16 ID:cAnkqGWC0
 ――ガチャッ

美嘉「お疲れー、ふぅ……」

未央「あ、美嘉ねえ、お疲れー」

杏「お疲れ。ごめん、仕事帰りで疲れてるのに」

美嘉「いいよ、杏ちゃんが集合かけるなんて滅多にないことだし。
   それで話って?」

杏「プロデューサーのことなんだけど……」

284 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:23:11.38 ID:cAnkqGWC0
杏「――で、ちひろさんとか他のスタッフにも聞いてみたんだけど、
  誰もCGプロと961プロの因縁なんか知らないって」

楓「私も因縁があるなんて初めて聞くけれど、
  それは単にごく一部の人にしか知らされていない事情だったんじゃない?」

杏「でもプロデューサーはその時『みんなも知ってるだろ』っていってたんだよね」

未央「いってたっけ?」

蘭子「覚えてない」

美嘉「そういわれると確かに変な気もするけど、考えすぎな気もする」

杏「それだけじゃない。今日もプロデューサーといつものやり取りしてて、
  杏がその……普段なら絶対いわなそうなこといって拒否ったんだけど……」

莉嘉「いわなそうって、どんなこといったの?」

未央「『お願い、もう少しだけ寝かせて、ハニー?』」

杏「ぬぁっ!?」


 「…………」


幸子「……プッ」

一同「アハハハハッ!!」

美嘉「ハ、ハニーって! 似合わなっ! アハハッ!」

285 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:24:32.39 ID:cAnkqGWC0
杏「~~ッ! 未央のバカッ! なんでいっちゃうのさ!
  絶対引かれるってわかってたから言葉濁したのに!」

未央「ご、ごめっ。だって、こんな面白いこと黙ってなんかいられないって!」プハッ

杏「ぐぬぬ……!」

凛「はぁ、おかし。ちょっと涙出た。
  それで? プロデューサーはどう反応したの」

杏「黙って部屋を出てったの!」

凛「……プロデューサーが?」

杏「そぉ! ……はぁ」

杏「引かれたのは別にいいんだ。いやよくないけど。
  ただプロデューサーなら苦笑いくらいで済みそうじゃない?」

杏「けど無言で部屋を出てくんだよ?
  そんな反応されたらこっちの方が傷つくっていうか傷ついたし。
  それがわからないような人じゃないじゃん、プロデューサーって」

まゆ「確かに。なにごとにもきちんと配慮される方です」

286 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:25:52.88 ID:cAnkqGWC0
杏「杏の勘違いだったらそれでいいんだ。
  でもこの頃のプロデューサー見てるとなんか不安になっちゃって……。
  みんなもなにか思い当たる節はない?」

愛梨「んー、私はないかなぁ」

アーニャ「私もありません」

卯月「……あ」

卯月「そういえばこの前、
   プロデューサーさんにクッキーを差し入れした時、
   不意にプロデューサーさんが『ハルカ』って呟いたんですよね」

卯月「その時は全く気にも留めませんでしたけど、
  『ハルカ』って多分人の名前ですよね。これってなにか関係あるでしょうか」

凛(ハルカ……)

杏「名前か。
  その『ハルカ』が実在する人物なのか空想の人物なのか……。
  他に気づいたことあるって人」


 「…………」


美嘉「もう少し様子見ない? 正直これだけじゃ判断つかない」

杏「……そうだね、
  みんなもプロデューサーのことちょっと気にかけてみてくれる?
  なにかあればまた集合かけるから」

未央「りょーかーい」

杏「じゃ、今日は解散で。みんなありがとう、お疲れさま」

 オツカレー ジャアネー オヤスミー マタアシター



志希「……」



…………………
………………
…………
……

287 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:27:06.47 ID:cAnkqGWC0
P「――はい、はい、16時ですね。場所は……」



未央「……どう思う?」

愛梨「んー、仕事してる時のプロデューサーさんの真剣な眼差しいいなって」

未央「じゃなくて……」

幸子「ボクにはいつも通りのプロデューサーさんに見えますけど」

未央「一級プロデューサー鑑定士・まゆ氏の見解は?」

まゆ「そうですね、まゆも特に変わりのないように見受けられます」

まゆ「ですが、杏ちゃんの観察眼は確かなものがあります。
   杏ちゃんが覚えた違和感の正体を突き止めるまで楽観視はできないかと」

未央「ふむ」


 コンコン ガチャッ


ちひろ「プロデューサーさん、ちょっといいですか」



………
……

288 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/28(水) 20:29:09.84 ID:cAnkqGWC0
ガラガラガラ ガシャン……


P「志希、志希いるか」

志希「こっちー」

P「……」

志希「あー駄目だ。ジンジャーの香りが強すぎる」

P「千川さんから聞いたよ。LiPPSへの参加を取り消したいって」

志希「この配合比はペケ」

P「理由を聞かせてくれるか」

志希「……きみが担当じゃないから」

P「今の担当プロデューサーではだめなのか」

志希「……うそうそ、じょーだん。
   実は舞台の役作りに結構苦戦してんだ」

志希「監督がフィーリングで物言うタイプでさ、
   あたしって同じタイプと見せかけてのロジカルタイプでしょ?
   演技指導されてもいまいちピンとこないことが多くて」

志希「公演まで一月切っちゃったし、
   こっち一本で集中してかないとヤバイかなーって」

P「……」

志希「そーだ。
   今さら取り消せないならせめて公演が終わるまで待ってくれない?
   ほら、後々新メンバーとして加入した方が話題性出そうじゃん?」

志希「“ケミカルアイドル志希ちゃん LiPPSに電撃加入!”
   なんてどう? にゃはは、あたしなにさまーって感じ……」

志希「……」

志希「ごめん。美嘉ちゃんもきっと怒ってるよね」

P「戸惑ってはいたな」

志希「……」

P「どうしてもいいたくないならいわなくていいさ。
  気まぐれで取り消したいわけじゃないってことくらい、
  俺も美嘉もちゃんとわかってる」

P「LiPPSのプロデューサーには俺から話しておく。
  でも美嘉にはきちんと自分から話しておけよ」

志希「うん……」

P「じゃあ、俺は事務所に戻るから」

志希「ねぇ」

志希「あたしって誰に似てる? あたしといると誰を思い出す?」

P「……? 質問の意味がよくわからないんだが」

志希「そうだよね、変なこと聞いた。忘れて」



………
……

295 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:05:45.97 ID:ucTJmfQf0
 ツカツカ…… ピタッ

P「凛?」

凛「げっ」

P「今『げっ』っていったな。
  どうしてこんな遅くまで事務所に残ってるんだ」

凛「……」

P「また自主トレか。
  子どもがトレーニングルームを使えるのは何時までだったかな」

凛「あーもー、ごめんなさい! わかってるから!
  だから説教はなし! もう帰るから……」

P「まったく。
  ストイックなのは千早のいいところでもあるが悪いところでもあるぞ」

凛「……え」

P「セーブすることを覚えないといずれ身体を壊すぞ……って、
  聞いてるのか、凛」

凛「え、あ、うん」

P「それじゃあ早めに帰るんだぞ」

凛「プロデューサー、今――」

P「ん?」

凛「……ううん、なんでもない。お先に失礼します」

P「お疲れ」ツカツカ


凛(……)



…………………
………………
…………
……

296 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:06:44.32 ID:ucTJmfQf0
ちひろ「『ハルカ』と『チハヤ』?」

凛「うん、そんな名前のタレントうちの事務所にいないかな」

ちひろ「ちょっと待ってね。タレント名簿にアクセスしてみるから」

凛「ありがと」


 ……


ちひろ「んー、該当するタレントはいないわね」

凛「そっか」

ちひろ「その名前がどうかしたの」

凛「前に聞いたことあるような気がしたんだけど思い出せなくて」

ちひろ「……私も聞いたことあるような気がする」

凛「ほんとに?」

ちひろ「ええ、でもいつだったかしら。誰かから聞いたような……」

凛「それってもしかしてプロデューサーじゃない?」

ちひろ「プロデューサーさん?」



ちひろ「……あ」



………
……

297 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:07:29.15 ID:ucTJmfQf0
 ――ガチャッ

P「……ん」

ちひろ「お疲れさまです」

P「お疲れさまです。どうしたんですか、こんな遅い時間に勢ぞろいで」

ちひろ「みんなからプロデューサーさんに話があるそうです」

P「話?」

凛「……」チラッ

卯月「……」コクッ

卯月「プロデューサーさん、
   この前、私がクッキーを差し入れした時のことを覚えていますか」

P「あ、ああ。覚えているよ」

卯月「その時『ハルカ』っていいましたよね」

卯月「ハルカって……誰ですか」



P「……」

298 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:08:30.93 ID:ucTJmfQf0
凛「昨日、私のこと『チハヤ』って呼んだでしょ」

P「え……」

凛「はぁ、やっぱり自覚なかったんだ」

杏「CGプロと961プロの因縁ってなに?
  他のスタッフに聞いても誰もそんなこと知らなかったよ」

凛「『ナムコプロ』なんでしょ」

凛「『ハルカ』も『チハヤ』も『ナムコプロ』のアイドルで、
   961プロと因縁があるのは『ナムコプロ』なんでしょ」

凛「そういう……、妄想の、設定の……」



凛「プロデューサー、記憶障害が再発してるんじゃないの」



 「………………」



299 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:09:53.69 ID:ucTJmfQf0
ちひろ「プロデューサーさん、一度病院へ行って診てもらいましょう」

P「いえ、その必要はありません」

ちひろ「ですが……」

P「みんなのことは覚えています。再発はしていません」

凛「じゃあ、なんで私のこと『チハヤ』って呼んだの」

P「……それは」

美嘉「ねぇ、なにか悩みがあるんでしょ。アタシたちに打ち明けられない?」

幸子「ボクたち、プロデューサーさんの力になりたいんです」

莉嘉「話してよ、Pくん」

P「……違う、そうじゃないんだ」

杏「やっぱり担当アイドルの数が相当な負担になってるんじゃないの」

杏「杏は……いいよ。プロデューサーの担当から外れても」

P「……!」

未央「えっ、ちょっ、杏ちゃん!?」

杏「プロジェクトも昇進の件も本当はそういうことだったんじゃないの?
  プロデューサーにとってやっぱり杏は――」



P「違う!!!」



P「……あ」


 「…………」


P「……すまない、大声を出して。けど本当に大丈夫なんだ。
  誰一人重荷になんて思っちゃいない」

P「ちゃんとわかってるから。俺はCGプロのプロデューサーで」

P「765プロも春香も……存在しないんだって……」



………
……

300 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:11:15.73 ID:ucTJmfQf0
アーニャ「プロデューサー、本当に大丈夫でしょうか」

楓「どうかしらね。前の時のような記憶の改ざんはないようだけれど」

ちひろ「みんなごめんなさい。
    本来いつも傍にいる私がいち早くプロデューサーさんの異変に
    気づいてあげなければいけなかったのに……」

愛梨「ちひろさんが謝ることじゃないです。
   私たちだって全然気づけなかったんですから。唯一杏ちゃんだけが……」

杏「……」

未央「杏ちゃん、どうしてあんなこといったの? 担当から外れてもいいなんて」

美嘉「プロデューサー、前にいってたじゃん。
   記憶障害はアタシたちのせいじゃないって」

杏「じゃあ、なんでプロデューサーはなにもいってくれないの。
  なにがプロデューサーを苦しめてるの」

杏「いってくれなきゃ……わかんないよ……」

蘭子(……)

まゆ「次おかしな言動があればその時は必ず病院へ行くと約束されたんだし、
   今は注意深くプロデューサーさんを見守りましょう」

301 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:12:29.70 ID:ucTJmfQf0
凛「志希」

凛「なんでプロジェクト辞退したの」

美嘉(……)

志希「……あー」

志希「これ以上仕事増やすとキャパオーバーになりそうだなーって。
   やー、失敗失敗。もっとよく考えてから返事するべきだったねー」

志希「美嘉ちゃんとLiPPSのみんなにはわるいんだけど、あたしは……」

美嘉「ほらっ、最近よく杏ちゃんを抱き枕にして倒れてたじゃん。
   舞台稽古が超キツイんだって」

美嘉「志希ちゃんまでプロデューサーみたいになったらもう最悪じゃん?
   一緒にユニット組めないのは残念だけど、
   一緒にステージに立つ機会はいくらでもあるんだし」

美嘉「だからアタシは全然気にしてないっていうか――」

凛「プロデューサーに迷惑かけないで」

美嘉「あ……」

志希「……」

ちひろ「みんな、そろそろ解散にしましょう。明日に響くわ」


 オツカレー マタアシター ゾロゾロ……


志希「ごめん、美嘉ちゃん。気遣わせて」

美嘉「志希ちゃんが気まぐれで辞退したわけじゃないことくらい、
   ちゃんとわかってるから」

志希「あは、プロデューサーと同じことをいう……」



…………………
………………
…………
……

302 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:13:35.41 ID:ucTJmfQf0
P「ふー……」


P「……」


 ――ガチャッ


P「おはよ――」

一同「おはようございます!!!!」

P「……!」ビクッ

未央「いやー、爽やかな朝だなぁ! 実に清々しい!
   プロデューサーもそう思わない?」

P「え、どうだろう。外雨だし」

幸子「鞄持ちますよ」サッ

P「あ、ありがとう」

卯月「席までご案内します」

P「や、知ってるけど」

アーニャ「さぁ、座りなすって」

P「なすって?」

まゆ「紅茶です」コトッ

愛梨「ケーキです」カタッ

P「朝からティータイム?」

莉嘉「Pくん、いつもお疲れさま! 肩揉んであげる!」モミモミ

P「……」

303 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:14:37.29 ID:ucTJmfQf0
P「みんな、普通にしてくれ」

未央「えっ、ふ、普通にしてるけど? ねぇ?」

愛梨「う、うん、普通だよ……ね?」

卯月「は、はい! 島村卯月は普通です! ……よね?」

まゆ「え、ええ。もちろん普通……」

幸子「もう普通が普通過ぎて普通に困っちゃうくらいですよ!」

アーニャ「普通が普通過ぎ……どういう意味ですか」

莉嘉「知ってる! 哲学ってやつでしょ!」

P「……」

P「わかった。けど、過度に俺を気遣う必要はないんだからな。
  みんなはいつも通りでいてくれればそれでいいんだから」


 ――ガチャッ


楓「おはようござんすでがんすー」

P「そうそう、あんな風に」

楓「……?」



…………………
………………
…………
……

304 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:16:36.62 ID:ucTJmfQf0
P「――いいや、普段のお前はそんなものじゃないはずだ」

P「思い出せ、遥か南西より伝わりし古の言葉を。
  それを使いこなせる者はこの世でただ一人……」

P「そう! お前だ、神崎蘭子!」

蘭子「そんなの知らない」プイ

P「……」

P「なあ、いつも通りの言葉遣いに戻してくれないか。
  蘭子の言葉はきちんと理解できているから」

蘭子「じゃぁ、プロデューサーも話して」

P「え、蘭子の言葉遣いで? それはちょっと……。
  正直今のだって恥ずかし――」

蘭子「違う! プロデューサーもなにが苦しいのかちゃんと話して!」

P「……俺はなにも苦しんでないよ」

蘭子「嘘」

P「嘘じゃない」

蘭子「嘘! 絶対嘘! どうして話してくれないの!」

P「蘭子?」

蘭子「杏ちゃん、ずっと心配してる。
   誰よりもプロデューサーのこと気にかけてる。
   今回だって杏ちゃんがいち早くプロデューサーの異変に気づいた」

P「……杏が」

蘭子「でも、プロデューサーなにも話してくれないから!
   杏ちゃん、やっぱり自分のせいなんじゃないかって……」

P「……」

蘭子「話して、プロデューサー。
   プロデューサーがいつも私たちの力になってくれるように、
   私たちもプロデューサーの力になりたい……」

P「……苦しいわけじゃないんだ。ただ思い出してしまっただけなんだ」

P「ふとしたきっかけで過去を思い出すことってあるだろ。
  なんでもない言葉のやり取りが、相手の仕草が、些細なできことが、
  誰かの面影と重なって過去の記憶が蘇る」

P「ずっと、忘れていたのにな……」

蘭子「……」



…………………
………………
…………
……

305 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:17:50.77 ID:ucTJmfQf0
杏「思い出しただけ?」

蘭子「……」コクリ

凛「そんな見え透いた嘘」

美嘉「あくまでも記憶障害じゃないといいはるわけか」

蘭子「……私は嘘じゃないと思う」

未央「どうして?」

蘭子「上手く説明できない、そう感じたとしか。けど……」

蘭子「プロデューサー、寂しそうだった」

卯月「寂しい……」

蘭子「ねぇ、ナムコプロって本当にプロデューサーの妄想なの?
   ハルカさんもチハヤさんも本当は実在する人なんじゃ……」

凛「ちょっと待ってよ。蘭子、プロデューサーの言葉に感化されすぎ。
  だったらどうして誰もナムコプロを知らないの?」

まゆ「少なくともナムコプロという芸能プロダクションがないことは確かだと思います。
   以前、ちひろさんらスタッフの方々が調べてみても見つからなかったそうですから」

蘭子「……」

306 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:18:56.43 ID:ucTJmfQf0
幸子「そういえば、プロデューサーさんのストレッサーって結局なんなんでしょうね」

幸子「決して目を逸らしてきたわけじゃないですけど、
   こうなってくると結果的に問題を先送りにしただけでしたね」

杏「ストレスの原因なんてわかりっこないよ。
  それこそ記憶を取り戻さない限り」

卯月「……本当にストレスなんでしょうか」

卯月「ずっと気になっていたんです。
   記憶を改ざんするほどの深刻なストレスを抱えていたのなら、
   発症する前になにか前兆のようなものがあったと思うんです。
   たとえば表情が暗いとか、食欲がないとか、仕事でミスが続くとか」

卯月「でも、私が覚えている限りそんなことは全くなかったと思います」

美嘉「……いわれてみればそうだったかも」

307 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:20:05.31 ID:ucTJmfQf0
未央「ねぇ、まゆちゃんって確か日記つけてたよね、プロデューサーの」

まゆ「ええ」

杏(マジかい……)

未央「記憶障害になる数日前のプロデューサーってどう書いてある?」

まゆ「お待ちください、確か5月のことだからVol.3の……」ゴソゴソ

杏(三冊目……)

まゆ「……」ペラ

まゆ「読み返す限り、前兆と思われるようなものはなにも」

幸子「……まさか、原因はストレスじゃなくて外傷?」

凛「それなら記憶の“改ざん”じゃなくて記憶“喪失”になるんじゃない」

蘭子「もしや洗脳!」ハッ

美嘉「あるいは別人、とか?」

杏「マンガやゲームじゃないんだから」

まゆ「卯月ちゃんはどう考えているんですか」

卯月「私は……本当は記憶障害ではないんじゃないかって」

凛「記憶障害じゃないならなんなの」

卯月「だからその、記憶障害の振りを……」

凛「振り? なんの意味があってそんな――」

杏「やめよ。ここであーだこーだいったってなにがわかるわけでもないんだし。
  今は経過観察に徹してプロデューサーの状態をちゃんと見極めようよ」

卯月「……」

凛「……」



…………………
………………
…………
……

308 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:21:37.89 ID:ucTJmfQf0
 『こら、亜美! アンタでしょ、またこんなクモのおもちゃを扉に仕掛けて!』

 『ギクッ。な、なんのことでござんしょう? 亜美にはさっぱり……』

 『こんなイタズラ仕掛けるのアンタか真美以外ありえないでしょ!』

 『じ、じゃぁ、真美がやったんじゃない? とにかく亜美は知らな―ー』

 『あっ、亜美。このクモのおもちゃ亜美のでしょ。床に落ちてたよ』

 『や、やよいっち! シーッ!』

 『亜ぁ美ぃ~……!』

 『うあうあ~! 兄ちゃ~ん、助けて~! りっちゃんが――……




P「はっ!」ガバッ

凛「……!」ビクッ

P「……凛」

凛「ごめん、起こした?」

P「いや……、いいんだ」

凛「夢でも見てた?」

P「見てたような気がするが、どんな夢だったか思い出せない」

凛「あるよね、そういうこと。コーヒー淹れよっか」

P「ああ、ありがとう」



………
……

309 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:22:29.03 ID:ucTJmfQf0
P「凛、いつまでここにいるつもりだ」

凛「んー、あと少し」

P「そういって30分が過ぎたぞ。
  用事がないなら帰るんだ。明日も学校だろ」

凛「……前にさ」

凛「仕事帰りによく連れてってくれた喫茶店あったじゃん。
  あそこ改装して綺麗になったんだって。また今度連れてってよ」

P「……いつの話だ。俺が喫茶店に連れて行ったことなんてあったか」

凛「……」

P「凛?」

凛「私、帰るね。お先です」

P「え、お、おい、凜」


 ガチャッ バタン


P「……?」

310 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/29(木) 20:23:33.74 ID:ucTJmfQf0
凛(……)ツカツカ

凛(喫茶店に行ったのはプロデューサーが記憶障害になる前)

凛(これに引っかからなかったってことは、
  振りとかじゃなく、本当に覚えてないってことでいいんだよね)

凛「……」

凛(ばかみたい。だからなんだっていうの、こんなわかりきったことを確かめて)



凛(結局、ナムコプロに囚われてんじゃん……)



…………………
………………
…………
……

317 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 19:48:18.23 ID:Xx4eulTo0
愛梨「どうしてナムコプロなんだろ」

アーニャ「……?」

愛梨「ナムコプロってプロデューサーさんが
   現実逃避のために作り出した妄想の芸能プロダクションなんだよね」

愛梨「仮にストレスの原因がお仕事にあったとして、
   それならどうしてまた同じ職種である
   芸能プロダクションを現実逃避先にしたのかな」

アーニャ「……それは」

楓「仕事のなににストレスを感じていたのかにもよるわね。
  幸いなことに“アイドルをプロデュース”することに関して
  不満はないみたいだけれど」

アーニャ「愛梨、ストレスの原因はもう永遠にわかりません。
     プロデューサーは記憶を諦め、私たちもそれを受け入れたんですから」

愛梨「うん……、でもなんかさ、予感がするんだよね。なにかが変わりそうな」

愛梨「今の私たちではいられなくなるような……」



…………………
………………
…………
……

318 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 19:49:55.94 ID:Xx4eulTo0
美嘉「クロウェ?」

P「ああ、美嘉ならいわなくてもわかるだろ。
  フランスの名門ファッションブランド」

P「先月のフランス出張で、
  クロウェのディレクターと偶然話す機会があって、
  その時俺のつけている香水に興味を持たれたんだ」

凛「え、プロデューサーって香水つけてたっけ」

P「ああ、普段はつけてないけど大事な時に」

志希「それってあたしがあげたやつ? 使ってくれてんだ、嬉しい!」

凛「……」

P「志希が作ったと話したらとても驚かれたよ。
  素人が作ったとは思えない繊細な香りだって」

P「それで来週そのディレクターが来日されるんだが、
  ぜひ志希と直接会って話がしたいってさ」

美嘉「マジ!? スゴイじゃん!
   クロウェと繋がりが持てるチャンスだよ!」ユサユサ

志希「……」ユラユラ

319 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 19:51:15.17 ID:Xx4eulTo0
P「急な話だけどスケジュールの調整はできたから。
  志希はこれまでに作った香水をいくつか――」

志希「会わない」

P「――持って……え」

志希「クロウェなんて興味ない。あたしから話したいこともないし」

美嘉「えっ! なっ! えっ!? なんで!!?
   会いなよ! 絶対会った方がイイって! アタシ会いたい!」

幸子「いや、ご指名は志希さんですから」

P「相手はプロ中のプロだ。
  話せば香水作りに役立つ情報を引き出せるかもしれないぞ」

志希「ないない。あたしが知りたい情報なんて企業秘密レベルだし。
   そんな情報、一介の小娘に教えてくれるわけないじゃん」

P「しかし……」

志希「会うだけ時間のムダムダ。時間を空費するなかれ。
   つねに何か益あることに従うべーし」

美嘉「しょんにゃぁ……」グスッ

幸子「なんで美嘉さんが涙ぐむんですか……」

P「……わかった。そこまで気が進まな――」

 ガタッ

320 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 19:52:25.22 ID:Xx4eulTo0
未央「ふあぁ……」

卯月「未央ちゃん、おはようございます」

未央「あ、おっはよー、しまむー。今日は朝から寒いねぇ」

卯月「はい、先週まで暑かったのに。もうすっかり秋ですね」

未央「秋用のコートが全然見当たらなくてさ、これ実は冬用のなんだよね。
   お母さんに聞いてみたらクリーニングに出してるって。
   今出すんかーい! って」

卯月「ふふ」

未央「そういえばさ、ミュージカル、なにするか考えた?」

卯月「……いえ」

未央「私も。なんかこの数日いろいろありすぎちゃって
   ミュージカルのこと自体忘れちゃってたよ……」

卯月「……」

321 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 19:53:19.30 ID:Xx4eulTo0
 ガチャッ


未央・卯月「おはようござ――」


凛「いい加減にしなよ、志希! 勝手が過ぎるよ!」


未央・卯月「……!」 ビクッ


凛「偶然なわけないじゃん!
  プロデューサーが志希のためにクロウェに売り込んだことがわからない!?」

志希「……え」

凛「会うだけ無駄? 時間を空費するな?
  プロデューサーの苦労も知らずよくそんなことがいえるね?
  せっかくのチャンスを棒に振って自分が一番益のないことしてんじゃん!」

P「凛、落ち着け」

未央「なになに、なにがどうした?」

幸子「あ、未央さん、卯月さん……」

凛「私たちにとっても侮辱だよ!
  こっちはアンタみたいに遊びでやってんじゃないんだよ!」

P「凛、いいから。志希とは俺が話す。美嘉、凛を頼む。志希は応接室へ」

志希「……」

322 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 19:54:38.33 ID:Xx4eulTo0
 ガチャッ バタン

志希「……凛ちゃんのいってたことほんと?」

P「……まあ」

志希「……………ごめんなさい」

P「次は志希が身を乗り出して面白がってくれるような話を持ってくるよ」

志希「え……、クロウェの人と会わなくていいの?」

P「いいよ。凛のいっていたことは本当だが、
  話はどう転んでもよかったんだ。
  歓談して終えてもそれはそれでよかったし」

P「ほら、趣味で香水を作る人なんて滅多にいないだろ。
  加えて志希のレベルに合わせるとなるとプロの方がいいかなって」

志希「そこまで考えてくれてたんだ……」

P「お前が一筋縄でいかないことは十分わかっていたはずなんだがな。
  昔の美希を思いだ……」ハッ

志希「……ミキ?」

P「あ、いや、そういえば昔の知り合いに志希みたいな子がいたなって、はは……」

志希「……」

323 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 19:55:23.03 ID:Xx4eulTo0
 ――ガチャッ


P「凛は?」

幸子「美嘉さんに連れられて下のカフェに」

志希「あたし行ってくる」タッタッタッ

324 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 19:57:30.67 ID:Xx4eulTo0
美嘉「どう? 少しは落ち着いた?」

凛「……」

美嘉「凛の気持ちもわかるけどさ、
   志希ちゃんだって遊びでアイドルやってるわけじゃないんだから」

凛「わかってる。いいすぎた」

美嘉「凛、志希ちゃんに対抗意識あるでしょ。
   二人だけだもんね、プロデューサーに直接スカウトされたの」

美嘉(ほんと羨ましい)

凛「……私じゃない」

美嘉「……?」

凛「プロデューサーが一番信頼してるのは、私じゃない……」

美嘉「……」

美嘉「そりゃそうでしょ」

凛「えっ!」

美嘉「えっ! って、自分でいっといてなんでそんな驚くの。
   否定してもらえるとでも思った?」

凛「え、だ、だって……」アタ フタ

美嘉「アタシよ、ア・タ・シ。プロデューサーが一番に信頼してるのは」フフン

凛「は?」

美嘉「実際今だってアタシを頼ってくれてるわけだし?
  『美嘉がいれば安心だ』っていつもいってくれるもん///」

凛「……は、はぁ!? なに急に惚気だしてんの?
  それってただいいように使われてるだけじゃん!
  プロデューサーの前だとすぐヘタれるくせに!」

美嘉「それ今カンケ―なくない!? ……って」

凛「……?」クルッ

凛「あ……」


志希「……」コソコソ


美嘉「あんなわかりやすく物陰に隠れてる人初めて見たわ」

美嘉「志希ちゃんと話せる? アタシいた方がいい?」

凛「……大丈夫。二人で話す。話して、ちゃんと謝る……」

美嘉「わかった。じゃぁ、アタシは先に戻るから」スッ

凛「あ、美嘉、その……ありがとう」

美嘉「いいよ」テクテク



志希「美嘉ちゃん……」

美嘉「もう大丈夫だから。凛とちゃんと話してきて」

志希「うん、ありがとう」テッテッテッ

325 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 19:58:09.41 ID:Xx4eulTo0
 ――ガチャッ

美嘉「ふぅ……」

P「美嘉、二人は」

美嘉「大丈夫、今話し合ってる」

美嘉「凛、いいすぎた自覚あったみたい。
   最近その……色々あったし、溜め込んでたんじゃないかな。
   それがさっきの志希ちゃんの発言で爆発しちゃって……」

P「……そっか」



…………………
………………
…………
……

326 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 19:58:44.82 ID:Xx4eulTo0
  「プロ――――」

  「――デューサー」

未央「プロデューサー、ねぇ、プロデューサーったら」

P「……え、あ、わるい、どうした」

未央「しまむーから電話。
   電車が止まっちゃってこっち来るの遅くなるってさ」

P「わかった。それなら先にミーティングを始めよう。みんな、席に着いてくれ」

327 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 19:59:48.57 ID:Xx4eulTo0
P「――案は大方出尽くしたな。それじゃあ、ここから絞って――」


 ――ガチャツ


卯月「すみません、遅れっ、きゃっ!」ドテッ

P「大丈夫か」

卯月「う~~、いたたた……」

P「春香が転ぶところ久しぶりに見たな」

卯月「……え」

P「どうした、立てるか、はる、か……」



P「……あ」



 「………………」



328 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 20:00:47.78 ID:Xx4eulTo0
志希(……)

凛「……プロデューサー、やっぱり――」

志希「ねぇ、プロデューサー、教えて。ナムコプロのこと」

凛「……!」

志希「ナムコプロにはどんなアイドルがいるの」

美嘉「ち、ちょっと志希ちゃん――」

志希「ハルカちゃんは? チハヤちゃんは? ミキちゃんは?」

まゆ「志希さん、なにをいって――」

志希「他にはどんな子たちがいるの」

アーニャ「志希」

志希「教えて」

凛「やめてよ志希! いたずらにプロデューサーを惑わせないで!」

凛「プロデューサー、志希のいうことに耳を貸さないで!」



凛「ナムコプロなんてないんだから!!」



志希「凛ちゃん」

凛「……っ!」ハッ

志希「……」

329 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 20:01:43.60 ID:Xx4eulTo0


P「…………は、春香」


P「天海…春香は、リボンがチャームポイントの」


P「明るく、前向きな、時々ドジを踏んでしまう」


P「一番の、仲間思いなやつで」



P「如月千早は、歌うことがなによりも好きで」


 ツー…… ポタ


愛梨「……!」ハッ


P「ストイックな反面、脆い部分もあって」


 ポタ ポタ


莉嘉「あ……」


P「周囲と壁を作りがちだけど、本当は、素直な、優しい子で」


志希「うん……」



P「ほ、星井美希は……!」



330 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 20:02:48.37 ID:Xx4eulTo0


真『律子はなにを失くしたのか知ってるの?』

律子『もちろんよ。失くしたものは……』



律子『“仲間”よ』



律子『これは出会いと別れの物語なの。
   強い絆で結ばれた仲間を失ってしまうの』

やよい『えーっ! そんな悲しい物語なんですかー!』

伊織『なるほどね。大切な“もの”ってそういう……』

真『ボク、この主人公にすごく感情移入しちゃうなぁ。
  ボクも765プロのみんなが大切だもん』

雪歩『私も。もしみんなを失くしてしまったら立ち直れないかもしれない』

響『ま、自分たちなら失くすことなんて絶対にありえないさー』

あずさ『そうね、私たちなら大丈夫。
    仲間の大切さをきちんとわかっているんだから』

331 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/30(金) 20:03:39.31 ID:Xx4eulTo0
P(ああ、そうだ)


P(夢でも妄想でもない)


P(彼女たちは確かに存在して)


P(絆を結んできた)


P(俺の、大切な者たち……!)



P「……お、俺は……俺は……」



凛「……」



 ――――俺は、あいつらに会いたい





…………
………
……

339 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 18:54:19.70 ID:VwwaHNdc0
卯月「……」

凛「……」

未央「……」

杏「……」

楓「……」

美嘉「……」

莉嘉「……」

蘭子「……」

愛梨「……」

まゆ「……」

幸子「……」

アーニャ「……」

志希「……」

340 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 18:56:16.01 ID:VwwaHNdc0
未央「……ナムコプロって、きっとあるんだよね。
   プロデューサーの妄想なんかじゃなくて、現実に」

未央「あの涙が嘘だなんて思えないよ」

愛梨「私、男の人の涙って初めて見た……」

美嘉「……アタシも」

楓「正確には“ある”じゃなく“あった”のでしょうね。
  理由はわからないけれど突然ナムコプロが消えてしまい、
  プロデューサーが必死に捜したけれど見つからず――」

アーニャ「結果、諦めたんですね」

凛「……」

莉嘉「でもさ、なんでナムコプロ消えちゃったの?
   会社潰れちゃったってこと?」

楓「それならなにかしらの倒産情報が必ず出てくるはず。
  ナムコプロが法人登記されている企業ならばだけど」

蘭子「ふむ……」

蘭子(ほーじんとーきってなんだろう。後で調べなきゃ)

杏「重要なのはナムコプロという企業じゃなく、
  そこで活動していたアイドルたちなんじゃないかな」

杏「ナムコプロがどの程度の規模なのかはわからないけど、
  最低でも3人のアイドルが在籍していて、
  その担当をしていたと思われるプロデューサーが、
  彼女たちの個人情報、住所を知らないはずがない」

杏「にも関わらず捜し当てることができなかった。誰一人として。
  これってどういうことだと思う?」

幸子「ど、どういうことなんですか……」ゴクリ

341 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 18:56:47.66 ID:VwwaHNdc0



杏「プロデューサー、もしかしたらパラレルワールドから来た人かもしれない」



 「…………」



342 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 18:58:04.55 ID:VwwaHNdc0
杏「そんな痛い子を見るような目で杏を見ないでよ」

アーニャ「蘭子の目は輝いていますよ」

蘭子「並行宇宙……!」キラキラ

美嘉「パラレルワールドってよくSF映画とかでやってる
   別の世界がどうとかーとかいうアレ?」

杏「それ」

愛梨「つまり、CGプロが存在する世界とナムコプロが存在する世界があって、
   今私たちと一緒にいるプロデューサーさんはナムコプロの世界から来たってこと?」

杏「そう!」

楓「じゃぁ、CGプロの、私たちの本当のプロデューサーは別にいて、
  彼は今ナムコプロの世界にいるということ?」

杏「そゆこと!」

凛・まゆ「マンガの見過ぎ」

杏「いうと思ったー!」

杏「でもそうとしか考えられないよ。
  これがプロデューサーの妄想じゃないっていうなら」

杏「ナムコプロの人たちがある日突然消えたこと。
  プロデューサー以外誰もその存在を知らないこと。
  そしてプロデューサーがCGプロのことをなにも知らなかったこと」

杏「これ全部パラレルワールドくらいのぶっ飛び理論じゃなきゃ辻褄合わないでしょ」

凛・まゆ「……」

343 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 18:59:11.36 ID:VwwaHNdc0
杏「で、ほんとのところはどうなの、志希ちゃん」

志希「……えへ、なんであたしに聞くの」

杏「さっきの口ぶりからして本当は気づいてたんじゃないの。
  ナムコプロがあるってこと」

凛「……!」

杏「ずっと前から気になってた。
  志希ちゃん、プロデューサーの記憶障害の話題になると
  口数少なくなるし、敢えて避けてるように見えた」

杏「LiPPSへの参加をやめたのもそれと関係してんじゃないの」

美嘉「そうなの?」

志希「……」

志希「あたしはただ……、プロデューサーを信じただけ」

344 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 19:01:06.54 ID:VwwaHNdc0
志希「彼が現代科学では証明できない、
   特殊な状況下に置かれていることに関してはあたしも同意」

志希「ただ、本当のところはあたしにもわからない。
   こういうのあたしの専門じゃないし、なんの科学的根拠も示せない」

志希「だから今からいうことは、単なる憶測でしかないけれど……」

志希「おそらく、変わったのはプロデューサーではなく、あたしたちの方」

志希「プロデューサーが……便宜上、記憶障害というけど、
   それになったと思われる5月の朝もしくは前日の夜、
   ナムコプロはCGプロに造り変わった。プロデューサーだけを残して」

アーニャ「造り変わった……」

未央「それって杏ちゃんのいうパラレルワールドとは違うの?」

志希「二人のプロデューサーが互いの世界を入れ替えっこしたんじゃなくて、
   一つの世界がプロデューサーだけをそのままに他の全てを造り変えたの」

志希「つまり5月以前の世界にあたしたちは存在してなくて、
   それ以降にあたしたちが誕生したってこと」

美嘉「ま、待って。それパラレルワールドよりもありえなくない?
   アタシ5月前の記憶ちゃんとあるよ?
   ずっと昔の小っちゃかった頃の記憶だって」

志希「過去の記憶があるからとそれが過去の証明とはならない。
   なぜなら5月前の記憶があるように造り変えられたかもしれないから」

美嘉「そんな……」

蘭子「世界五分前説……!」ハッ


345 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 19:01:57.36 ID:VwwaHNdc0
凛「じゃぁ、なに、今までの私の人生なにもかもが嘘だったってこと?
  私の気持ちも? すべて?」

志希「そんな深刻に捉えないでよ。いったでしょ、憶測だって。
   それを観測する手段がないから、否定することも証明することもできない」

卯月「……どちらの説が正しいのか私にはわかりませんが、
   二人の話を聞いてようやく腑に落ちたような気がします」

卯月「プロデューサーさんが記憶を諦めた時どうして簡単に受け入れることができたのか、
   二度と過去を共有できなくなるのにどうして悲しくなかったのか」

卯月「きっと心の奥底では気づいていたんですね。
   プロデューサーさんが、私たちのプロデューサーさんではないことに」

凛「……」

346 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 19:02:39.72 ID:VwwaHNdc0
卯月「私、プロデューサーさんをナムコプロの人たちに会わせてあげたいです」

杏「どうやって?」

卯月「それは、わかりませんけど……、でもきっとなにか方法が」

美嘉「待って。もし志希ちゃんのいってることが正しければ、
   プロデューサーとナムコプロを引き合わせるには
   世界を元に戻さないといけないってことでしょ?」

美嘉「それってつまり、アタシたち消えるってことじゃ……」

未央「……!」ハッ

卯月「それでもやります。たとえ私が消えることになって、
   プロデューサーさんと二度と会えなくなっても、
   泣いている人がいたら、私は手をさし伸べてあげたい」

347 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 19:04:13.29 ID:VwwaHNdc0
未央「わかった。私、協力する。一緒にナムコプロ捜そ!」

卯月「未央ちゃん……!」

愛梨「私も協力する。あんな泣いてる姿見せられたら、
   なにがなんでも助けてあげたくなっちゃうよ」

アーニャ「あの泣き顔はずるいです」

莉嘉「アタシもやる!
   Pくんとナムコプロの人たちを会わせてアタシも消えないように頑張る!」

美嘉「頑張るって……、ま、やってみないことにはどうなるかわかんないか。
   それじゃぁ、アタシも消えないように頑張ってみよっかな」

幸子「そうですね、ボクたちなら絶対に消えることはありませんよ!
   根拠はないですけど!」

蘭子「ククク、面白い。ならば我も力を貸そう。
   どのような終局を迎えるか、この眼でしかと見届けさせてもらう!」バーン

杏「杏もやるよ。なにをどうすればいいのかさっぱりだけど、
  プロデューサーのためなら、たまにはやる気出す」

楓「それなら私もやるわ。杏ちゃんが自発的にやる気を出すなんて
  天地がひっくり返るよりありえないことが起きているんだから、
  きっとナムコプロは見つかるわ」

杏「あぁ、そういわれるとそんな気がしてきた。見つかるわ、ナムコプロ」

 アハハ

348 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 19:05:26.48 ID:VwwaHNdc0
凛「ち、ちょっと待ってよ、みんな本気?
  本気ででそんな話信じるわけ? 現実的に考えてありえないでしょ」

杏「じゃぁ他に説明つく? ナムコプロが見つからない理由」

凛「だから! なんでナムコプロがあるって信じられるの?
  見つからないのはプロデューサーの妄想だからでしょ!」

卯月「私は信じます、ナムコプロのこと。ハルカちゃんはきっといます」

凛「……ばかばかしい、話にならない。
  頭おかしくなってんの卯月の方なんじゃないの」

卯月「……!」

未央「しぶりん!」

凛「……とにかく、私は信じないし、協力もしない。
  ナムコプロ捜したければ勝手に捜せば?」スッ

まゆ「ごめんなさい、まゆもみなさんのいっていることが信じられない。
   たとえそれが本当だったとしても、協力できません」

まゆ「まゆは、プロデューサーさんと離れたくない」

まゆ「ナムコプロに、
   まゆのプロデューサーさんを返してあげないんだから……!」スッ

美嘉「あ……」



 ガチャッ バタン――



志希「……」

349 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 19:06:15.01 ID:VwwaHNdc0
未央「なんなのしぶりん、あのいいかた! ひどくない!?」プンスカ

卯月「未央ちゃん、私は気にしてませんから」

杏「まぁ、そう怒らさんな。
  杏だって正直、まだ半信半疑なところあるもん。
  二人の信じられない気持ちも理解できる」

楓「いいえ、“信じられない”のではなく“信じたくない”のよ。
  まゆちゃんのいっていたことがすべてだわ」

アーニャ「プロデューサーと離れたくない」

美嘉「そりゃ、アタシだって……」

幸子「でも離れるとまだ決まったわけじゃないですよね?
   もしかしたら杏さんの説が正しいのかもしれませんし」

愛梨「うん、やってみないことにはわからないよ」

志希(……)

350 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 19:07:23.75 ID:VwwaHNdc0
莉嘉「じゃぁ、これからどうする? 作戦会議?」

卯月「あの……」

卯月「私、凛ちゃんとまゆちゃんにも一緒にやってもらいたいです。
   私たち13人の力を合わせないと……」

卯月「そうしないと、いけない気がするんです」

愛梨「私も全員揃ってやった方がいいと思う。
   こういう時こそ全員が納得して全員で協力しないと」

未央「そうはいっても、愛の重いツートップだしなぁ」

美嘉「あの二人を説得するのはかなり……」

楓「骨が折れるわね」

杏「複雑骨折するよ。バッキバキに」

アーニャ「なら、みんなで骨折しましょう。
     骨折して繋ぎ合わせれば前より強度が増します。
     そう、私たちの絆も」

幸子(いいこといってるようなそうでもないような……)

蘭子「ではオペレーション“ボーン・ブレイク”を直ちに発動せよ!」ババーン

志希・莉嘉「ラジャー!」



…………………
………………
…………
……

351 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 19:08:12.28 ID:VwwaHNdc0


凛「は?」ギロリ


352 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 19:09:08.91 ID:VwwaHNdc0


まゆ「……」プイ


353 : ◆nx90flyJCa6p 2020/10/31(土) 19:10:16.74 ID:VwwaHNdc0
未央「もうやだ! マジ無理! 私は死んだ!
   今のしぶりん狂犬だよ! あんなの説得できるわけない!」ウワーン!

杏「諦めるの早すぎでしょ」

卯月「まゆちゃんの方はどうでしたか」

美嘉「こっちも似たようなもん。聞く耳すら持ってくれない」ハァ

幸子「まぁ、昨日の今日ですし、少し冷静になる時間が必要かもしれませんね」

蘭子「しかし『鉄は熱いうちに打ち滅ぼせ!』ともいう」

杏「滅ぼしちゃいかんでしょ」

愛梨「そういえばプロデューサーさんって今どんな様子かな。誰か会った人いる?」

莉嘉「アタシ会ったよ。けっこーふつーだった。
   あと昨日はカッコ悪いとこ見せてゴメンって」

美嘉「莉嘉、プロデューサーにナムコプロのことは……」

莉嘉「大丈夫、聞いてない」

杏「……根気だ、根気。粘り強く二人と話そう。二人ならきっとわかってくれるよ」

楓「よもや、杏ちゃんから“根気”なんて言葉を聞ける日がくるなんて……」

志希「感慨深いわぁ」

アーニャ「生きていてよかったです」

杏「ねぇ、一周回って杏のことバカにしてない?」



…………………
………………
…………
……

358 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:09:52.70 ID:f+TQKMdP0
 ――パシャッ パシャッ


 「いいよー、まゆちゃん。ノッてきたねぇ。
  もう何パターンか続けて撮ってみようか」



P「……」

359 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:10:39.96 ID:f+TQKMdP0
まゆ「あ、プロデューサーさん、おいでになられていたんですね」

P「お疲れ。どうだ、久しぶりのファッションモデルは」

まゆ「楽しいです。まるで昔に戻ったみたい――」ハッ



志希『つまり5月以前の世界にあたしたちは存在してなくて、
   それ以降にあたしたちが誕生したってこと』



P「どうした」

まゆ「い、いえ、なんでも」

 「まゆちゃん、そろそろ続き始めようか」

まゆ「は、はい」

P「まゆ、撮影終わったら一緒に帰ろう」

まゆ「……」コクッ

360 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:11:13.57 ID:f+TQKMdP0
まゆ「プロデューサーさん、お待たせしました」

P「じゃあ、行こうか」

361 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:12:18.71 ID:f+TQKMdP0
 ブウウゥゥン……


P「まだ昼とってないだろ。どこかで食事してから帰るか」

まゆ「でしたらまゆおススメのお店があります」



愛梨『つまり、CGプロが存在する世界とナムコプロが存在する世界があって、
   今私たちと一緒にいるプロデューサーさんはナムコプロの世界から来たってこと?』



まゆ(……この人が別人なわけない)

まゆ(ずっと見てきたのよ。この人のことならなんでも知ってる。
   私が好きな人を間違えるはず――)



志希『過去の記憶があるからとそれが過去の証明とはならない。
   なぜなら5月前の記憶があるように作り変えられたかもしれないから』



まゆ(……)

P「そうだ。食事の前に少し寄り道していいか」

まゆ「いいですけど、どこへ行かれるのですか」



……

362 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:12:55.28 ID:f+TQKMdP0
まゆ「ここって……」

P「ゲームセンターだな」

まゆ「……」

P「さあ、入ろう」

363 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:14:40.59 ID:f+TQKMdP0
まゆ「少し意外です。プロデューサーさんはゲームがお好きだったんですか」

P「まあ、人並みに。学生時代はよく友人と遊んでたよ。今はからきしだけど」

まゆ「では、なにをされに」

P「これだな」

まゆ「プリクラ……」

P「前に一緒に撮った時のことを覚えているか。
  あの時、ぎこちない笑顔で上手く笑えてなかったから、
  いつかまた撮り直したかったんだ」

まゆ「……」

P「一緒に撮ってくれるか」

まゆ「……ごめんなさい、今度は私が上手く笑えそうにありません……」

P「……」

P「この前のことを気にしてるなら謝るよ。すまなかった、取り乱して。
  まゆたちはなにも気にすることはないから」

まゆ「……わからないんです。
   ずっと貴方を見てきてなんでも知っているはずなのに、
   もし貴方が私の知っているプロデューサーさんではなかったなら」
   
まゆ「私が抱いているこの想いは、この気持ちは一体なに?」

364 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:16:01.00 ID:f+TQKMdP0
P「……俺は」

P「まゆの知っているプロデューサーじゃない」

P「おそらく5月以前の“俺”がまゆの知っている本物の“俺”だ。
  過去と現在の俺は容姿も性格もほぼ一緒みたいだから、
  まゆが間違えても仕方がなかったんだと思う」

まゆ「仕方なくなんかない。
   結局それを見抜くことができなかったんだから、
   私の気持ちなんて所詮その程度……」

まゆ「それとも、志希さんのいっていることが正しいのかしら」

P「志希?」

まゆ「志希さん曰く、変わってしまったのは貴方ではなく私たちの方。
   貴方だけを残し、他の全てが造り変わってしまった」

まゆ「私たちが誕生したのは5月以降で、5月前の記憶があるのは
   そのような記憶があるように作られたから、らしいです」

P「……」

365 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:17:53.82 ID:f+TQKMdP0
まゆ「貴方が決めてくれませんか」

P「……?」

まゆ「もう私にはなにが本当でどれが嘘なのかわかりません。
   結ばれたリボンの先に誰がいるのか。
   この想いに名前をつけてほしい。そうしたら私は……」

P「それはまゆが自分で決めることだ。自分の想いを他人に委ねてはいけない」

P「自分で考え、行動し、決断するんだ。そうして俺はまゆたちを選んだよ」

まゆ「え……」

P「765プロではなく、CGプロを選んだ……はずだった」

P「ずっと忘れていたはずなのに、
  あいつらの面影がふとした瞬間に重なって……」

P「忘れろ、765プロは俺の妄想なんだ、って必死に思い込もうとしたよ。
  未練がましい自分が嫌になった」

P「けど、それでようやく本当の自分の気持ちに気づいた」

P「俺はあいつらに会いたい。なにがなんでもだ。
  必ず、765プロのみんなを見つけ出す」

まゆ「……」

P「そして、まゆたちのプロデュースも続ける」

まゆ「……え」

P「俺はまゆやCGプロのみんなが好きだ。
  765プロのアイドルに負けない情熱と個性の塊のような面々。
  みんなのプロデュースが楽しくて仕方がなかった。
  それこそ765プロを忘れてしまうほどに。  
  その気持ちもまた本当なんだ」

P「だからもし、まゆたちの本物の“俺”がいたとしても、
  今さらそいつにみんなを返すつもりはない。
  こんな面白いやつらをみすみす手離してたまるか」

P「俺がこの手で必ずみんなをトップアイドルにしてみせる」

まゆ「……」

366 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:19:24.39 ID:f+TQKMdP0
まゆ「それってつまり、
   ナムコプロのアイドルの方々をCGプロに引き抜くということですか。
   それとも私たちがナムコプロへ?」

P「え……、あ、いや、それは多分無理だろうから、
  俺が独立してフリーになるしかないか……?」

まゆ「それにもし本物のプロデューサーさんがいたとして、
   私たちがそちらの元へ戻りたいといったらどうするんですか。
   私たちの意見は無視ですか」

P「えっ! そ、それは……、や、やっぱり戻りたいか?」

まゆ「…………ぷっ」

まゆ「あははははっ!」

P「え、ま、まゆ?」

まゆ「はぁ……、
   なんだか真剣に悩んでいたのがバカらしくなっちゃいました」

P「そんな風に笑えるんだな」

まゆ「そうですね、私もこんな風に笑うのは初めてかも」

まゆ「……プリクラ、撮りましょうか」

P「ああ。今なら飛び切りの笑顔で撮れる」

まゆ「ふふ……」

まゆ(……)



………
……

367 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:19:58.04 ID:f+TQKMdP0
卯月「――まゆちゃんが?」

美嘉「協力してくれるってさ」

未央「マジ!?」

杏「ほーれ、ちゃんと話せばわかるっていったじゃん」

美嘉「アタシはなにも話してないよ」

杏「へ?」

美嘉「なにがあって心境を変えたのかわからない。
   ただちょっと寂しそうだったかな」

卯月「……」

杏「まぁ、とりあえずは『よし』としようよ」

未央「残るは……」

368 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:21:43.76 ID:f+TQKMdP0
未央「しぶりん!」

凛「……」チラッ

未央「うっ……え、えーと、き、今日は大変お日柄もよく……」

凛「……」

未央「……」ダラダラ

卯月「凛ちゃん、お願いです。一緒に協力してくれまんせか。
   プロデューサーさんをナムコプロの人たちに会わせ――」

凛「いやだ」

凛「やりたければアンタたちだけでやってって前にもいったよね」

美嘉「ねぇ、凛だって今この状況のままでいいとは思ってないでしょ。
   ナムコプロを信じられない気持ちもわかるけど、とりあえず協力してくれない?
   なにか解決の糸口が掴めるかもしれないじゃん」

凛「解決って……、それ誰がなにに対しての解決?
  私の解決はプロデューサーをナムコプロって妄想から解放することなんだけど」

卯月「どうして妄想って決めつけるんですか。
   凛ちゃんはプロデューサーさんの涙を見てなにも感じなかったんですか」

凛「……っ」

卯月「大切な人と離れ離れになるのがどれだけ辛いことか、
   今の私たちならわかるはずです!」

凛「涙を流したからなんだっていうの!?
  それがナムコプロの存在証明にはならないでしょ!」

卯月「~~っ! どうして! 凛ちゃんは! いつも!
   いつも自分の気持ちばかり優先して!」

卯月「その頑な態度がプロデューサーさんを苦しめてるって
   どうしてわからないんですか!」

未央「し、しまむー……らさん?」

卯月「凛ちゃんだって本当は気づいてるんじゃないですか!?
   ナムコプロが本当はあるって! 私たちが――」


凛「やめてよ!!」


凛「やめて……。ナムコプロなんて知らない。
  お願いだから私を巻き込まないで……!」ダッ

美嘉「あ、凛!」



………
……

369 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:22:38.49 ID:f+TQKMdP0
卯月「ごめんなさい……。
   私のせいで凛ちゃんをさらに意固地にさせたかもしれません……」

未央「いえ……、島村さんの怒りはごもっともかと思われます」

卯月「み、未央ちゃん、いつもみたいに『しまむー』でいいですからね?」

美嘉「ってゆーか、どーする?
   あの様子じゃもうまともに聞き入れてくれないんじゃない」

卯月「……まゆちゃんに話してもらうのはどうでしょうか。
   自分の心境の変化を語ってもらえれば……」

370 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 11:23:17.42 ID:f+TQKMdP0
まゆ「――いえ、まゆでは凛ちゃんの気持ちを変えることはできないと思います」

まゆ「自分で考え、行動しなければ、自分の気持ちを変えることはできません」

未央「ううむ……、どうします? 島村さん」

卯月「……未央ちゃん、『しまむー』でお願いします」

まゆ「もっとも、そういうまゆは結局、
   プロデューサーさんの言葉に心を動かされましたけど」

未央「うぇ?」

まゆ「少し、待ちませんか」

まゆ「凛ちゃんの心を動かせるとしたらやはり……」



…………………
………………
…………
……

373 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 20:53:59.62 ID:f+TQKMdP0
P「参ったな。完全に渋滞にはまってしまったな。事故でもあったか」

凛「……」

P「凛、ここで車降りて、先に電車で事務所に戻るか」

凛「……いい。今変装グッズ持ってないし、私ってバレたら面倒だし」

P「そっか」

凛「……」






P「ごめんな、凛」

374 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 20:55:51.17 ID:f+TQKMdP0
凛「……え」

P「俺は……765プロを捜すよ。信じられないだろうけど本当にあるんだ。
  俺の妄想なんかじゃない。大切な仲間なんだ。必ず取り戻したい」

凛「……」

P「心配しなくていい。
  だからって凜たちのプロデュースを投げ出したりはしない。
  約束は守る。たとえ765プロを見つけても、
  みんなのプロデューサーとしてずっとそばにいるよ」

凛「……嘘」

P「ん?」

凛「約束を守るなんて嘘。
  ナムコプロ見つけたら私たち消えるかもしれないのに」

P「え……」

凛「もう、いいよ。
  プロデューサーにとってナムコプロが
  どれだけ大切な存在なのかよくわかった。
  私じゃプロデューサーの涙は流せない」

375 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 20:56:55.40 ID:f+TQKMdP0
凛「どっちか片方しか選べないならナムコプロを選ぶでしょ」

P「いや、凛たちを選ぶよ」

凛「…………え」

P「片方しか選べないのなら凛たちを選ぶ」

凛「なんで……、二度とナムコプロの人たちと会えなくていいの?」

P「ああ、構わないよ」

凛「…………嘘、絶対嘘。気休めでいってるならやめてよ。
  私たちを選んだらきっと後悔する」

P「765プロを選んだって後悔するさ。
  俺にとってCGプロのみんなも大切な仲間だ。
  大切な者を、二度も失いたくないんだ」

凛「……」

376 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 20:58:08.56 ID:f+TQKMdP0
P「それにあいつらなら俺がいなくても平気だ。
  どんな逆境も全員で力を合わせて乗り越えてきた」

凛(あぁ、やめてよ)

P「今頃どこでなにをしているのかわからないが、きっと元気でやってるさ」

凛(そんな風に笑わないで)

P「もっともっと、凛やみんなと一緒にいたいんだ」

凛(本当は辛いくせに)

P「もっと、みんなとの過去がほしいんだ」

凛(どうしてそんな風に優しく笑えるの)

P「凛の未来を見届けたいんだ」

凛「……」ジワッ

凛「うわああぁぁぁぁぁっ!」ポロ ポロ

P「り、凛!?」

凛「嘘なんかじゃないもん……、作りものなんかじゃないもん……!」ヒック ヒック

P「凛……」

凛(そうだ、嘘じゃない、作りものなんかじゃない、私の気持ちは)



凛(私は、この人のことが――)



……………
…………
………
……

377 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 20:58:49.10 ID:f+TQKMdP0
卯月「……」


未央「……」






凛「………………私も協力する」

378 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 20:59:22.19 ID:f+TQKMdP0
卯月(目、腫れてますね)ヒソヒソ

未央(明らかに泣いたあとだけど触れないでおこう)ヒソヒソ

凛「なに」

未央「なんでもない、なんでもない!」

凛「卯月、この間はごめん。いいすぎた」

卯月「いえ、そんな。全然気にしていません」

未央「よし、それじゃぁ……」

379 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 21:00:52.51 ID:f+TQKMdP0
P「――え、俺を765プロに?」

卯月「はい、私たちも協力します」

P「……信じてくれるのか、765プロのこと」

未央「うん、信じるよ」

杏「杏は正直半信半疑だけどー」

美嘉「ナムコプロのアイドルがどんな子たちか興味あるし」

P「しかし……」チラッ

凛「……」

まゆ「……」

P「765プロを見つけたらみんな消えてしまうかもしれないんだろ。
  それでも協力してくれるのか」

楓「それはあくまでも可能性の話です。
  CGプロもナムコプロも両方残るかもしれません」

志希「あるいはキミが消えるかも」

P「それじゃあ、捜す意味ないだろ……」

アーニャ「見つけてみないことにはわからない、ということです」

莉嘉「Pくん大丈夫。アタシ消えないから!」

幸子「ボクも消えませんよ。ボクが消える、それすなわち、
   世界から『カワイイ』の定義が失われると同義ですからね。
   それだけはなんとしても阻止ですよ!」

愛梨「一緒に見つけましょう、ナムコプロを」

P「みんな……ありがとう」

蘭子「ではこれより作戦会議を――!」

P「それよりまず仕事だ。ほら、支度」

蘭子「あ、はい」



……………
…………
………
……

380 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 21:01:52.33 ID:f+TQKMdP0
蘭子「――ではこれより作戦会議を始める!」

莉嘉「はーい」

蘭子「友よ、ナムコプロに関する情報の開示を要求する!」

P「ああ。簡単にだが資料を作ってきたから回してくれるか」



381 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 21:03:40.34 ID:f+TQKMdP0
未央「へー、『765』で『ナムコ』ね」

幸子「事務所は雑居ビルの3階……雑居ビル?」

美嘉「え、所属タレントたったの13人しかいないの?」

愛梨「あ、でも、契約予定のスクール生が39人いるって」

楓「従業員は事務員とプロデューサーの二人だけですか」

杏「……弱小事務所?」

P「そ、そんなことは……ない……」

卯月「社長を含めた上記の全員が消えてしまったんですね」

アーニャ「消えてしまった原因は一体なんなんでしょうか」

凛「神隠しにでもあったんじゃんない」

卯月「凛ちゃん……」

杏「いや、案外それ当たってるかも。
  この事象を常識の範疇で考えちゃだめだ。もっと発想を飛躍させないと」

未央「発想の飛躍ねぇ……、宇宙人にさらわれたー、とか?」

まゆ「ですが、まゆたちで解決できるとしたら、
   それは常識の範疇だけではないでしょうか」

まゆ「神隠しにしろ、宇宙人にしろ、消えた原因がそれなら、
   まゆたちが太刀打ちできる相手ではないんじゃ……」

未央「ううむ、確かに……」

幸子「これがもし神さまの仕業なら、どうしてこんなことをしたんでしょうね」

蘭子「こんなの神のすることじゃない、悪魔のすること!」

美嘉「いえてる」

凛「罰が当たったんでしょ。
  神の怒りを買うようなことでもしたんじゃない」

P「……かもな」

凛「え……」

P「消えた原因に心当たりがある」

382 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 21:05:09.34 ID:f+TQKMdP0
P「その日、事務所でミュージカルの企画説明をしていたんだ」

P「オリジナル脚本の、
  律子を抜かした765プロのアイドルとスクール生全員が出演する予定だった」

美嘉「その律子、さんはどうして出ないの」

P「律子はもともとマネジメントや経営に興味があって、
  プロデューサーへの転身を希望していたんだ」

P「俺の下でプロデュース業を学ぶ傍ら、
  アイドル業と並行して仕事をしていたんだが、
  今回は俺のサポート役に徹することにしたんだ」

未央「へー、765プロってそんなアイドルがいるんだ」

杏「杏には無ぅ理ぃ~」

志希「そのミュージカルはどんな話なの」

P「……大切なものを失くしてしまう話だ」

愛梨「それって……」

383 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 21:06:49.06 ID:f+TQKMdP0
P「その時用意していた台本があったんだが、
  所々台詞が抜けていて後半は全て白紙だった」

P「印刷ミスかと思った。
  だが事前に目を通した時にはそんな箇所はなかったはずなんだ。
  チェック漏れだとしても、
  後半全て白紙なのにそれに気づかないはずがないだろ」

幸子「確かに」

P「なにを失くしてどんな結末を迎えるのか、
  その台本からでは読み取れなくなっていた」

P「あずささんになにを失くしたのかを聞かれ、俺は答えられなかった」

P「脚本の制作には俺と律子が携わっていた。
  何度も作家と打ち合わせをしたはずなのに、
  まるでそこの記憶だけがすっぽり抜けたように急に思い出せなくなった」

P「代わりに律子が答えたんだが、なぜかその声が聞こえなかった。
  律子だけじゃない、他のみんなの声も。
  失くしたものについて話しているのか、その声が一切聞こえない」

P「結局思い出せないまま、翌日には765プロが消え、現在に至る。
  思い出せたのはつい最近だ」

卯月「その大切なものって……」

P「仲間だ」



やよい『プロデューサーは大切なものってありますかー』



P「自分の大切なものがわからなかった。
  本当はずっと前から持っていたのに、ずっと前から傍にあったのに」

P「あまりにも近すぎて、気づけなかった」

凛「……」

384 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 21:08:12.36 ID:f+TQKMdP0
楓「物語の結末はどうなるんですか。大切な者は取り戻せるんですか」

P「いえ、失くした者は失くしたままです。
  最後は新しい仲間とともに生きていくんです」

杏「なんとまぁ、プロデューサーの未来を暗示するかのような」

美嘉「なんか怖い。あまりにもできすぎっていうか、
   マジで神が仕組んだことなんじゃ……」

蘭子「神の試練、というわけね」

凛「神でもなんでもいいけど、要するに、
  プロデューサーに大切な者の存在を気づかせるために、
  世界が変わっちゃったってこと?」

P「おそらく」

未央「スケールでかすぎー!」

アーニャ「どうやらプロデューサーは“神に選ばれし者”のようですね」

楓「この場合“神に恨まれし者”では?」

志希「上手い!」

まゆ「上手くありません」

愛梨「けど、それなら気づいた時点で世界は元に戻るものなんじゃないかな。
   それが果たされた今も状況が変わらないということは……」

卯月「まだ他に気づいてないことがある……?」

385 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/01(日) 21:09:10.28 ID:f+TQKMdP0
莉嘉「わかった! Pくん本当は765プロの中に好きな人がいるんでしょ!」

凛「そうなの!?」

まゆ「そうなんですか!?」

P「765プロの大半は未成年だぞ。子どもは恋愛対象に入らない」

莉嘉・凛・まゆ・卯月・未央・美嘉・蘭子・幸子・アーニャ「え……」

楓「おっとここに素敵な成人女性がー?」

P「同じ業界人と恋愛するつもりもない」

楓「いなかった……」

未央「じゃぁ、他に気づいてないことって一体なんなんだー!」

杏「いやいやいやいや、もう答え出てるでしょうよ……」

未央「え?」

杏「ミュージカル! 765プロのアイドルが
『大切な者を失くす』話をやる予定だったんでしょ!」

杏「だったら、CGプロの杏たちが
『大切な者を取り戻す』話をやればいいんじゃないの!?」


一同「……」



一同「……!」ハッ



……………
…………
………
……

391 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 16:48:06.44 ID:x9u+415j0
P「ミュージカルの脚本ができた」

莉嘉「おー!」

杏「年明けると思ったけど早かったね」

蘭子「ついに動き出すのね、禁断のプロジェクトが……!」ゴクリ

アーニャ「765プロが大切な者を取り戻す物語、ですね」

P「卯月、凛、未央、杏、楓さん、美嘉、莉嘉、
  蘭子、愛梨、まゆ、幸子、アーニャ、志希」

P「奇しくも律子を含めた765プロのアイドルと同じ13人。
  みんなには765プロのアイドルたちを演じてもらう」

幸子「まさかアイドルがアイドルを演じることになるなんて
   夢にも思っていませんでしたよ」

凛「ほんと、変な感じ」

P「台本と一緒に765プロのアイドルの特徴をまとめた資料を配るから、
  それを参考に配役を決めていこう」




392 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 16:49:38.16 ID:x9u+415j0
卯月「天海春香ちゃんには転ぶ癖があり、
   多い時には一日三回以上転んでしまうが、
   転ぶにつれ受け身が上手くなり、
   今では転んでケガをすることはない……」

莉嘉「双子の双海真美ちゃん・亜美ちゃんは
   時々内緒で入れ替わって仕事をすることがあり、
   未だそれに気づかれたことがない……」

杏「その手があったかー。杏にも生き別れの双子の姉妹いないかなー」

楓「水瀬って、あの水瀬財閥の? すごいところのお嬢さまがいるんですね」

まゆ「萩原雪歩ちゃんは落ち込んだり緊張したりすると
   穴を掘って埋まってしまう癖がある……」

愛梨「三浦あずささんは極度の方向音痴で
   忽然と姿を消してしまうことがありロケでは目が離せない……」

幸子「我那覇響さんは大の動物好きで……蛇に豚にワニを飼ってる!?」ギョッ

凛「……なんていうか765プロのアイドルって」

志希「個性的なアイドルが揃っていますなぁ」

P「いっておくがみんなも大概だからな?」

393 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 16:51:38.89 ID:x9u+415j0
未央「天海春香ちゃん役はしまむーがいいんじゃない。
   うちの正統派アイドルっていったらしまむーでしょ」

凛「私、如月千早さん役やりたいかな。歌に対する姿勢とか尊敬する」

美嘉「萩原雪歩ちゃんのキュートな感じはまゆちゃんっぽいね」

杏「三浦あずささん役は愛梨ちゃん一択でしょ」

幸子「双海姉妹はどうします?」

莉嘉「そりゃアタシとお姉ちゃんの城ヶ崎姉妹がやるっきゃないでしょ!」

美嘉「アタシとアンタじゃ双子には見えないでしょ」

杏「杏がやるよ。杏なら莉嘉ちゃんと同い年くらいには見えるし」

莉嘉「わぁ、よろしくね、杏ちゃん! 真美ちゃんと亜美ちゃんどっちやりたい?」

杏「どっちでもい……これどっちの方が省エネタイプ?」

P「どっちもアクティブだ」

杏「……どっちでもいいっすわ」

莉嘉「じゃぁ、アタシ、真美ちゃんやる」

394 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 16:53:08.03 ID:x9u+415j0
凛「ちょっと待って。そっちより杏にうってつけの子がいるんだけど」

杏「うってつけ?」

凛「星井美希」

凛「歌もダンスもそつなくこなす天才肌。
  しかし面倒くさがりで飽きっぽくマイペース。
  時間さえあればいつでもどこでも眠る、って」

未央「まんま杏ちゃんじゃん」

杏「だねぇ。自分のプロフィールが載ってるのかと思った」

楓「どうやら生き別れの妹は765プロにいたみたいね」

美嘉「けど替え玉は無理だね。
   学生離れした抜群のプロポーションをしてるってさ」

杏「なにをーっ。杏だってある意味、高校生離れしたプロポーションしてるぞ」

杏「……ん」

美嘉「どした?」

杏「ねぇ、この子ってもしかしてさぁ、
  プロデューサーのこと『ハニー』って呼んでた?」

P「……っ」ギクッ

アーニャ「ハニー……」

P「俺がそう呼ばせてるわけじゃないからな。やめろといっても聞かないんだ」

莉嘉「どうしてPくんをハニーって呼ぶの」

P「……それは」

杏「ラブなんでしょ、プロデューサーに」

P「……」

志希「沈黙は肯定なりー」

莉嘉「えーっ!
   Pくん子どもは恋愛対象に入らないって前にいってたじゃん」

P「俺はちゃんと一線引いてるよ。
  けど美希がそれを問答無用で飛び越えてくるんだ」

莉嘉「どーする、お姉ちゃん! 765プロにもライバルいるって!」

美嘉「ななななんでアタシに振るのかなーっ!?」

395 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 16:54:13.30 ID:x9u+415j0
愛梨「杏ちゃんが美希ちゃん役となると双海姉妹のもう一人は誰がいいかな」

杏「いや、杏は美希ちゃん役やらないよ。『ハニー』呼びはもうこりごりだし。
  代わりにマジもんの天才に美希ちゃん役をやってもらおう」

志希「えーっ、それって誰のこと誰のことー?」

美嘉「あぁ、そだね。悔しいけど歌とダンスに関しても天才だし」

志希「そ、そんな天才がこの中にー? はっつみみー!」

凛「じゃ、志希で決まりで」

志希「って、あたしのことかー!」タハー!

まゆ「では次の役を決めましょう」

幸子(完全無視……)

志希「ねぇ、ハニー、シキとデートしよ?」

P「……!」ドキッ

美嘉・凛・まゆ「……!!」ガタッ

志希「どぉどぉ? 美希ちゃんに似てた?」

P「勘弁してくれ……」

396 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 16:54:50.11 ID:x9u+415j0
蘭子「……」

蘭子(四条貴音さん、ミステリアスで高貴……)

蘭子(この人がいい!)

まゆ「四条貴音さん役はどなたがいいでしょうか。
   ミステリアスで高貴な振舞い、古風な喋り方」

蘭子「わた――」

凛「アーニャはどう? 趣味が天体観測とか共通点あるし」

未央「いいんじゃない。
   映画の役のおかげで古い言葉遣いもできるようになったしね」

アーニャ「左様」

蘭子「……!」ガーン

397 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 16:55:50.58 ID:x9u+415j0
美嘉「ねぇ、見てよ、この高槻やよいちゃんって子。
   すごくいい子。アタシお友達になりたい……」

未央「ほんとだ。爪の垢を煎じて杏ちゃんに飲ませてあげたい」

杏「はっはっは、それを飲んだところで杏は変わらないぞ」

凛「で、誰がやるの。私たちの中にはいないタイプだけど」

未央「う~ん……」



楓「私がやるしかなさそうね」



未央「楓さん!?」

杏「なんでそうなる」

P「いいんじゃないか」

未央「いいの!?」

P「別に年齢の近い者が演じる必要はないだろ」

凛「いやいやいや、それでも年齢開き過ぎてるし」

まゆ「精神年齢でいえば逆転してるかもしれませんけどね」

398 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 16:57:01.36 ID:x9u+415j0
楓「大丈夫、任せて。完璧にやよいちゃんを演じてみせるわ」

楓「コホン……」

楓「うっうー! お酒大好きですーっ!
  プロデューサー、一緒にビール祭りをしましょーっ!」

未央「やよいちゃん未成年! 飲酒できない!」

美嘉「やめてよ! 楓さんみたいな飲んだくれが演じたら
   やよいちゃんが穢れちゃうじゃない!」

幸子「穢れ……」
   
美嘉「そうだわ! やよいちゃんみたいな天使を演じられるのはみり――」

アーニャ「蘭子はどうですか。純粋で無垢なところは似ていると思います」

未央「あぁ、そうだね。らんらんだ。らんらんじゃん。らんらん以外ないでしょ」

凛「うん、楓さんより断然いい」

美嘉「……まぁ、蘭子ちゃんなら許す」

アーニャ「どうですか、蘭子」

蘭子「あ……う……」

未央「ほれほれ、『うっうー』っていってみ?」

蘭子「う……う……」プルプル

蘭子「うっうー! ///」

未央「最高」パチパチ

凛「最高」パチパチ

楓「最高」パチパチ

蘭子「ま、まぁ、よかろう。天使を演じるのもまた一興」

399 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 16:57:59.52 ID:x9u+415j0
アーニャ「それと四条貴音役はアーニャより楓の方があっていると思います。
     楓も黙ってさえいればミステリアスで高貴に見えます」

楓「ひとたび口を開けば?」

アーニャ「ジャールカ……残念です」

楓「……」ホクホク

未央「なんで嬉しそう?」

凛「まぁ、アーニャがいいっていうなら楓さんでいいんじゃない」

楓「では私、高垣楓が四条貴音ちゃん役を務めさせていただきます」

アーニャ「うむ。精進されよ」

美嘉「ねぇ、いないタイプがもう一人いるんだけど。秋月律子さん」

未央「いや、いるでしょ、ここに」スッ

美嘉「……え、アタシ?」

楓「これは美嘉ちゃん一択よね」

幸子「逆に美嘉さん以外の選択肢は考えられないですね」

卯月「はい、二人とも似ていると思います」

志希「似てる、似てる」

美嘉「え、そう? どのへんが似てる?」

一同「苦労人なところが」

美嘉「そこかい……」ガクッ

凛「面倒見のいい、しっかり者といったらやっぱり美嘉だよ」

美嘉「わかった。じゃぁ、アタシが律子さん役ね」

400 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 16:59:10.06 ID:x9u+415j0
凛「菊地真くん……さん役は幸子で決まりでしょ。
  一人称が『ボク』とか『カワイイ』に固執してるところとか
  共通点あるし」

幸子「いいかたぁっ! 固執なんて――」

凛「してないの?」

幸子「しぃぃぃてますけどそれがなにかぁっ!?」

まゆ「幸子ちゃんなら水瀬伊織ちゃん役もあっていると思います。
   自信家で負けず嫌いなところとか似ていますし」

愛梨「我那覇響ちゃん役もあってると思うよ」

楓「幸子ちゃん自身はどう? この中で演じるとしたら」

幸子「そうですね、ボク的には水瀬伊織さん役がいいかなって」

幸子「自信の裏に努力があるところとか、
   自分自身の力で切り開こうとする姿勢とか、
   そういうところにシンパシーを感じます」

卯月「確かに、そういうところは二人とも似ていますね」

アーニャ「では幸子は水瀬伊織役をお願いします。
     菊地真役はアーニャがやりましょう」

未央「じゃぁ、私が我那覇響ちゃん役だね。元気担当頑張るぞ!」

401 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 16:59:41.83 ID:x9u+415j0
P「これで全員役は決まったな」

P「これから年末に向けてライブやイベントで忙しくなる。
  本格的な稽古は年が明けてからだ」

P「公演は来年の5月を予定している」

一同「……」

P「いいミュージカルにしよう」

402 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/02(月) 17:06:32.86 ID:x9u+415j0
未央「5月かぁ……。あと半年とちょっと」

愛梨「きっとあっという間に過ぎちゃうよね、半年なんて」

美嘉「自分で決めたことだけどやっぱ複雑。
   プロデューサーと別れるために頑張るなんてさ」

凛「ほんと腹が立つ。こんなことをした元凶に文句いいたい」

卯月「でも最後は笑顔で別れたいです。
   心残りがないよう、一日一日を無駄に過ごさないように」

幸子「みなさん、別れる前提で話していますけど、
   まだそうと決まったわけじゃないですからね?」

凛「幸子だってわかってるんでしょ。
  志希のいってることが正しいんだって妙な確信が私たちにはある」

凛「プロデューサーに協力すると決めたなら、ちゃんと覚悟しないと」

幸子「……」

杏「とかいって、これでなにもなかったらどうする?」

まゆ「その時はまゆたちのプロデューサーさんとして、
   これからも一緒にいてもらうだけです」

楓「でもプロデューサーは765プロを捜し続けるのでしょうね。
  見つかるまでずっと」

アーニャ「妬けてしまいますね。765プロに」



……………
…………
………
……

407 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:37:56.31 ID:OdxR38lg0
ちひろ「これで全曲揃いましたね。
    プロデューサーさんが歌ったとはいえ、
    まさかたった一週間で3曲もできるなんて」

ちひろ「これが765プロの……」

P「元々は彼らが作った曲ですから。
  覚えていなくても、なにか感じるものがあったのかもしれません」

ちひろ「……」

P「やっぱり、信じられないですか」

ちひろ「……いいえ。私スタジオをおさえておきますので、また後ほど」

408 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:39:17.56 ID:OdxR38lg0
愛梨「あれ、プロデューサーさん?」

未央「あ、ほんとだ。おーい、プロデューサー」

P「……見つかったか」

未央「なになにその恰好。なんでトレーニングウェア着てんの」

P「これからミュージカルで使用する楽曲の振り付けを
  トレーナーさんに教えるんだ」

愛梨「教える?」

P「ああ、使用する楽曲の中には765プロの曲もあるから。
  だからその、俺が踊って……」

未央「え、プロデューサーってダンスもできたの?」

P「みんなみたいにキレよく踊れるわけじゃないぞ。
  けど振り付けは全て覚えているから」

愛梨「全て、って……」

P「765プロの曲全て。みんなの曲も全て覚えているよ」

未央「マジっ!?」

P「プロデューサーなんだ。そのくらいは覚えないと」

未央「絶句ー」

P「そろそろ行っていいか。トレーナーさんを待たせているし」

愛梨「あ、待って、写真撮らせてください。
   プロデューサーさんのトレーニングウェア姿って貴重だし」

未央「いいね、いいね。三人で撮ろ。しぶりんたちに自慢しなきゃ」ウッシッシッ

P「この姿見られるの恥ずかしいんだけどな……」



……………
…………
………
……

409 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:46:39.15 ID:OdxR38lg0
莉嘉「メリークリスマス!」

美嘉「なに急に。クリスマスは来週なんだけど」

莉嘉「そうだけど、アタシ24日仕事入ってるから、
   みんながいるうちにいっとこーかなーって」

未央「あぁ、そうだね。私もその日、仕事入ってるわ」

凛「未央、その写真送ってよ」

まゆ「まゆにもお願いします」

未央「ほんじゃ、ちょいと早めのクリスマスプレゼント」

杏「ていうか、その日は全員仕事入ってるでしょ。
  あーっ、クリスマスくらい仕事したくなーい!」

楓「メリー苦しみマス」

幸子「いいことじゃないですか。クリスマスに仕事があるなんて」

美嘉「むしろない方がアイドルとしてヤバいでしょ」

アーニャ「でも今年はなんとかしてみんなで集まりたいですね。
     アーニャたち最後のクリスマスになるんですから」

卯月「そうですね……」

未央「ね、プロデューサーにダメもとでお願いしてみようよ。
   その日空けられないか」

410 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:48:02.53 ID:OdxR38lg0
P「無理だな」

P「愛梨と蘭子は24・5日の二日間クリスマスライブがあるし、
  志希は24日が舞台の最終公演だ」

杏「はい、かいさーん」

P「唯一空けられるとしたら29日だな。それも仕事終わりになるけど」

凛「それだとクリスマスっていうより年越しの準備になるじゃん」

莉嘉「じゃぁ、みんなで年越し準備パーティーだーっ!」

美嘉「意味わからん」

卯月「いいじゃないですか。
   みんなが集まれるなら年越し準備パーティーでも」

幸子「そうですね。この際贅沢はいってられません」

美嘉「名前に関しては再考の余地ありだけど」

まゆ「では、29日に年越し準備パーティー(仮)開催ですね」

アーニャ「ウダヴォーリストヴィイ。とても楽しみです」

楓「お酒、お酒」ウキウキ

未央「プロデューサーとちひろさんも時間空けといてね」

P「ああ、わかったよ」



…………
………
……

411 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:48:38.39 ID:OdxR38lg0
志希「年越し準備パーティー?」

美嘉「名前は気にしないで。クリスマスパーティーの代わりと思って」

愛梨「年越しの代わりじゃないんだ」

蘭子「して、饗宴の場はどこに?」

美嘉「それなんだけどさ……」

412 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:50:07.15 ID:OdxR38lg0



楓「やだやだっ! お酒飲みた~いっ!」



413 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:51:40.24 ID:OdxR38lg0
蘭子「……!」ビクッ



凛「わがままいうんじゃないの!
  予約取れないんだから仕方ないでしょ!」

楓「やっ! 絶対やっ! お酒飲むのっ!」

アーニャ「楓、我慢を覚えましょう。
     そうしないとダメな大人になってしまいます」

楓「お酒ーっ!」

杏「もう手遅れでしょ」

未央「いやー、まさか1軒も予約取れないとはねぇ」

幸子「忘年会シーズンですからね。
   予約するなら1か月前から動かないと」

卯月「未成年がいるとわかると途端に渋い声出されちゃいますね」

莉嘉「7時なんてまだ全然遅い時間じゃないのに」ブー

まゆ「事務所のバーとレストランもダメでしたし、
   このままお店の予約が取れないとなると……」



美嘉「――最有力候補がここってわけ」

蘭子「我らがサンクチュアリ……」
  (プロデューサーのオフィスルーム)

美嘉「なんだけど、ここで飲酒なんか当然ダメじゃん。
   だからあの駄々っ子(25歳)が猛反対してて」

愛梨「駄々っ子……」

美嘉「10軒以上断られてもうお手上げって感じ。
   誰かいい店知らない?」

志希「予約取れるかわかんないけど行ってみたいとこならあるよん」

美嘉「いいよいいよ、どこどこ?」




……………
…………
………
……

414 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:53:22.17 ID:OdxR38lg0
未央「――それでは、幹事長・城ヶ崎莉嘉さまよりご挨拶をいただきます」

莉嘉「はいっ!」

 パチパチパチ……

莉嘉「みなさんお疲れさまです」ペコリ

 オツカレサマデース

莉嘉「お忙しい中集まっていただき、まことにありがとうございます。
   みなさんのご協力のもと、年越し準備パーティー(仮)の
   開催にこぎつけることができました」

美嘉「結局名前そのままなのね……」

莉嘉「また、お店を貸してくださった『たるき亭』のみなさまに
   厚くオンレー申し上げます」

莉嘉「今宵は沢山食べて飲んで
   お店に迷惑がかからないようセツドを守って楽しんでください」

楓「はーい」

莉嘉「かたくるしい挨拶は手短にといわれたので、
   早速乾杯に移らせていただきます。
   みなさんグラスをお取りください」

 アハハ

莉嘉「お取りになりましたか。では……」オホン


莉嘉「メリークリスマス!」


一同「……メ、メリークリスマス!」


美嘉「もうわけわからん」


 ワー パチパチパチ

415 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:54:37.84 ID:OdxR38lg0
美嘉「はーい、お皿まわしてー」

まゆ「サラダ取り分けますね」

莉嘉「見て見て、串にお肉と玉ねぎとピーマンが刺さってる。
   バーベキューみたい!」

杏「バーベキューなんだよ」

未央「おっしゃー、じゃんじゃん焼いちゃうよー。
   肉投下、肉投下ー」

蘭子「ククク、我が贄となる最初の供物はどれだ……」

幸子「居酒屋なのに焼肉とはこれ如何に」

志希「細けーこたー気にするなー♪」

楓「さぁさぁ、ちひろさん、沢山飲んで」ウフフ

ちひろ「楓さんは自重してくださいね」オホホ

 キャッ キャッ

アーニャ「フフ、お店の予約取れてよかったですね。
     楓、お酒が飲めて嬉しそう」

凛「ほんと、幸せそうな顔しちゃって」

416 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:55:24.45 ID:OdxR38lg0
愛梨「プロデューサーさん、ビール注ぎますね」

P「ありがとう」

卯月「ここが765プロの入っているビルなんですね」

P「まさかここを見つけてくるなんて思わなかったよ」

愛梨「志希ちゃんがここがいいって。ね?」

志希「ヤミィヤミィ」ムシャムシャ

P「ああ、そうだったな。あの時は偶然志希が通りかかったんだっけ」

幸子「あぁ、例の行き倒れの」

417 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:57:56.72 ID:OdxR38lg0
小川「はーい、お肉の追加でーす」ゴトッ

P「今日はありがとうございます。店を貸し切らせていただいて」

小川「いえいえ、
   こっちもみなさんと写真を撮らせてもらえたうえ、
   サインまでいただけましたから。
   店長があんなに嬉しそうにするの初めて見ましたよ」

小川「まさかCGプロのプロデューサーさんだったなんてビックリです」

P「その節は申し訳ありませんでした。
  部屋を開けてもらっておきながら、なにもいわず飛び出して」

莉嘉「部屋ってなにー?」

P「前に3階の空き部屋を見させてもらったことがあるんだ」

莉嘉「それって765プロの? アタシも見たい!」

P「見たってなにもないぞ」

莉嘉「えー、あるでしょ。Pくんの過去が」

P「……」

凛「私も見てみたいな。プロデューサーの“元”職場」

P「なんで“元”を強調する」

まゆ「ではまゆがプロデューサーさんに相応しい職場環境かチェックします」

アーニャ「765プロへかちこみですか。アーニャもおともします」

杏「どんどん変な日本語覚えてくな」

蘭子「我も加勢しよう。我が友をかけた運命の戦いに!」デーン

志希「血がたぎるわー」

楓「者ども行くわよ!」

志希・莉嘉「おーっ!」

P「おーっ! じゃない。行かないからな。お店の迷惑だろ」

小川「別にいいですよ」

P「え……」

418 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 19:59:27.66 ID:OdxR38lg0
 ゾロゾロ……

P「ほんとすみません……」

小川「いえいえ。けどナムコプロってなんなんです。
   確か前にもいってましたよね」

小川「どこかで聞いたことあるような懐かしい響きなんですよね」

P「……」

愛梨「きっと来年の5月になればわかりますよ」

P「そうだな……」

莉嘉「あれ、このエレベーター、ボタン利かないよ?」ポチポチ

P「ああ、それ故障してるんだ」

杏「えー、じゃぁ3階まで歩いて上るの? めんどー」

未央「いいじゃん。足腰鍛えられるよ」

杏「なら鍛えるついでに杏をおぶってってよ」

莉嘉「アタシがおぶってあげよっか!」

杏「コワいんでいいです」

P「……」



伊織『まったく、ここのエレベーターいつになったら直るのかしらね。
   この階段上るの地味に疲れるのよね』

真『いいじゃない。歩いた方が足腰鍛えられるし』

美希『真く~ん、ミキを三階までおぶって~』

真『うわっ、美希、ちょ、重いって』



P「……」フッ

幸子「どうしたんですか」

P「いや、なんでもない」

419 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 20:00:28.90 ID:OdxR38lg0
 テクテク ゾロゾロ……

 カチッ ガチャッ


小川「どうぞ」

未央「へー、ここが765プロ。なんにもない」

P「だからそういったろ」

まゆ「これでは仕事ができる環境とはいえませんね。0点です」

凛「埃っぽい。ちゃんと掃除してるの」

杏「いじわる姑か」

蘭子「もぬけの殻とは。恐れをなして逃げ出したか」フッ

楓「戦いを放棄するとは憐れなものね」

アーニャ「やはりプロデューサーは我らのものです」

幸子「完全に悪役の台詞ですね」

P「お前ら……」

420 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 20:03:30.60 ID:OdxR38lg0
志希「ねぇ、部屋のレイアウトはどんな感じ? キミのデスクはどこ?」

P「ああ、俺のデスクは窓際にあって、その向かいに音無さんのデスクが」


小鳥『“意中の男性を落とす5つのマル秘テク”!?
   ふむふむ、これでプロデューサーさんを……って、
   はっ、プ、プロデューサーさん!?
   し、書類のチェックお願いしますね? オホホホッ!』


P「隣には応接室兼休憩室があって、美希がよく昼寝に使っていて」


美希『あふぅ……。あ、ハニーおはようなの~……zzz』スヤァ


P「そっちにテレビとソファーがあってここによくみんなが集まるんだ。
  雪歩の淹れてくれたお茶を飲みながらみんなで楽しそうに喋って」


雪歩『あ、プロデューサーもお茶飲みますか。すぐ淹れますね』


P「事務所を入ってすぐ左の部屋が社長室で、
  そういえば真美と亜美が聞き耳を立てて律子に怒られてたっけ」


律子『くぅおらっ! 真美! 亜美! またそんなことしてっ!』

真美・亜美『あわわわっ、助けて兄ちゃ~ん!』


P「右は給湯室で、備え付けの棚の中には
  貴音が補充したカップラーメンがぎっしり詰まって……」


貴音『らぁめんは真に美味なる食べ物。あなた様もお一ついかがですか』


P「……」

莉嘉「Pくん?」

P「そうだな。今でも鮮明に思い出せる。ここには、俺の過去がちゃんとある」

421 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/03(火) 20:04:30.87 ID:OdxR38lg0
愛梨「なんだか賑やかで楽しそうな事務所ですね。
   765プロが戻ったら遊びにきてもいいですか」

P「ああ、もちろん。歓迎するよ」

卯月「……」

美嘉「卯月、どしたの」

卯月「……765プロのみなさんにお願いしていました」

卯月「もう少しだけ、プロデューサーさんを貸してくださいって」

卯月「きっと、プロデューサーさんと離れ離れになって
   寂しい思いをしているだろうから」

美嘉「そだね……」

未央「君たち、少しはしまむーを見習ったらどうかね」

凛「ふーん」

莉嘉「へくちっ。うー、さぶっ」

P「そろそろ戻るか」

P(次この部屋へ来るときには、きっと温かくなっている)



――――――――――――――――
――――――――――――
――――――――
――――
――

425 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/04(水) 19:40:47.16 ID:e8XA5lnt0
P「今日からミュージカルの稽古を始める。台詞は覚えてきたか」

幸子「完璧に覚えてきました!」

蘭子「呪文を覚えるよりも容易かったわ」

莉嘉「ばっちしーっ!」

未央「おっ、えらいね莉嘉ちゃん」

美嘉「アタシが無理くり覚えさせた」

杏「……」

楓「……」

志希「~~♪」ピュー ピュー

未央「先生ー、ここに覚えてきてなさそうな三人衆がいまーす」

426 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/04(水) 19:41:57.63 ID:e8XA5lnt0
杏「……仕事が忙しくてさぁ」

まゆ「杏ちゃんが仕事をいいわけにしても説得力皆無です」

楓「……痛風がひどくてさぁ」

卯月「えっ、楓さん痛風だったんですか?」

愛梨「やっぱりお酒の飲みすぎで……」

凛「楓さん、それリアリティーがありすぎて冗談で流せない」

志希「一度台本に目を通せば覚えられるからまだいいかなーって」

アーニャ「一度で覚えられるなんてさすがは志希です」

杏「ずるいぞギフテッド」

志希「えへっ」

P「まあ、しばらくは読み合わせがメインだから、
  志希はもとより楓さんと杏ならその間に覚えられるだろ」

杏「おっ、お咎めなし?」

P「演出家さんは俺のように甘やかしてくれないからな。
  それじゃあ、稽古場へ移動するぞ」

杏「杏は甘やかして伸びるタイプなのに」

楓「楓は酒を飲ませて伸びるタイプなのに」

志希「志希は好き勝手させて伸びるタイプなのに」

美嘉「全部人をダメにする要素じゃん」



………………
……………
…………
………
……

427 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/04(水) 19:42:48.67 ID:e8XA5lnt0
杏「えっ、兄ちゃんが迷子? あずさお姉ちゃんじゃなくて?」

楓「いえ、あずさはあずさで行方不明です」

志希「あずさはともかくプロデューサーが迷子って珍しいね」




愛梨「すごいなぁ、もう台本なしで台詞いえてる」

まゆ「一度スイッチが入るとまるで別人ですよね」

凛「普段はアレなのに」

幸子「いいかたー」

未央「そういえば志希にゃん、LiPPSに加入するって聞いたけど」

美嘉「あぁ、うん、そう」

愛梨「そうなんだぁ、よかったね」

美嘉(……)

428 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/04(水) 19:43:56.21 ID:e8XA5lnt0
 ――数日前――


美嘉「マジ!?」

志希「ごめんね、抜けたり入ったり勝手ばかり」

美嘉「そんな、全然いいって!
   アタシ嬉しい! 志希ちゃんと一緒にユニット組めて」

美嘉「いつから入れるの?」

志希「7月からだって」

美嘉「え……」

志希「7月に次の曲をリリースするから、そのタイミングで正式加入させるって」

美嘉「でもアタシたち、5月の――」

志希「それはミュージカルが終わってからのお楽しみ。
   どうなのるかは誰にもわからない。神のみぞ知る」

美嘉「……」

志希「プロデューサーはあたしたちが消えないことを願ってる。
   あたしもまだ消えたくないし、もうちょっとアイドル続けたい」

志希「美嘉ちゃんたちと……LiPPSやりたい」

美嘉「……ねぇ、どうして最初参加するの辞退したの」

志希「もう、ダメなんだろうなって」

志希「別れの時が近づいてる。
   だったらその時がくるまで少しでも長く、あの人のそばに……」




……
………
…………

429 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/04(水) 19:44:24.09 ID:e8XA5lnt0
美嘉「消えないように頑張る、か」

愛梨「え?」

美嘉「ううん、なんでも」



………………
……………
…………
………
……

430 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/04(水) 19:46:07.01 ID:e8XA5lnt0
P「全員揃ったな。今日から曲の練習を始める。
  台本の通り、劇中にはライブパートがある」

P「今から聴いてもらう曲は
  実際に765プロのアイドルたちが歌って踊っていたものだ」

未央「おぉ、なんかドキドキする……」

P「トレーナーさん」

トレーナー「はい。では一通り流しますね」


 ~~♪


幸子「へぇ、これが765プロの」

莉嘉「アタシ2曲目好きー」

トレーナー「それじゃぁ、全体曲から練習始めるわよ」



………
……

431 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/04(水) 19:47:00.96 ID:e8XA5lnt0
トレーナー「――オッケー。次のグループと交代。同じところから始めるわよ」



凛「ふぅ……」

まゆ「こうして実際に踊ってみると765プロの実感が湧いてきますね」

凛「……まぁね」

まゆ「……」

まゆ「凛ちゃん、ごめんなさい」

凛「……?」

まゆ「ずっと謝りたかったの。
   去年、プロデューサーさんの記憶障害で
   担当アイドルを凛ちゃんだけにするって話があったでしょ」

まゆ「私その時、凛ちゃんに八つ当たりを……」

凛「あぁ……。別に、気にしてない。
  もし逆の立場だったら私の方がもっと口汚く罵ってた自信あるし」

まゆ(否定できない……)

432 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/04(水) 19:48:31.75 ID:e8XA5lnt0
志希「ふー、あつあつ、お水お水」

凛「ねぇ、志希はいつから気づいてたの。765プロのこと」

志希「んー、最初から」

凛「さ……」

志希「確信したのはもうちょい後だけど」

まゆ「どうしてそんなすぐに気づくことができたんですか」

志希「なんかこう……、ビビッときたみたいな。
   前もいったけどなんの科学的根拠もないただの“勘”。
   きっと765プロはあるんだろうなーって、ただそれだけ」

凛「なんか意外。志希ってそういう非科学的なこと信じないと思ってた」

志希「信じないよ」

凛「え?」

志希「けどプロデューサーのことは信じてる。
   だって、あの人があたしに嘘ついたこと一度もないもん」

凛「……悔しいな。
  私はプロデューサーのことなにも信じてあげられなかった。
  妄想だと決めつけて、ちゃんと話を聞こうとしなかった」

凛「自分のことしか、考えてなかった」

まゆ「……」

志希「あたしだって同じだよ。
   ずっと前から気づいていたのに、ただ黙って見てた」

志希「あの人と、離れたくなかったから……」

凛「……志希ってさ」

まゆ「重いですよね」

志希「二人には負けるかなーっ!」


………………
……………
…………
………
……

439 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:43:25.03 ID:H6IxBIZH0
まゆ「みなさん集まりましたねぇ」

未央「集まりましたぁ……」

蘭子「淀みを感じるわ……」

アーニャ「まゆ、大事な話とはなんですか」

杏「まゆちゃんが集合かける時なんて大抵プロデューサー絡みじゃん」

まゆ「みなさん覚えていますか。
   ひと月前、まゆたちはある誓いを立てましたね」

莉嘉「誓い?」

440 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:45:13.34 ID:H6IxBIZH0
  ――1か月前――



幸子「みなさん、今年のバレンタインはどうします。
   去年は全員で一つのチョコをプロデューサーさんに贈りましたけど」

未央「そういえばもうそんな時期かぁ」

幸子「最後のバレンタインですし、個別に渡すのもありではないかと」

志希「いいと思ーう」

莉嘉「アタシもさんせー!」

まゆ「いえ、今年も全員で一つのものを贈りましょう。
   数が多いと却って迷惑になります」

莉嘉「えーっ! でもうちのクラスの男子、
   女子にチョコくれーって、ちょーアピールしてくるよ。
   Pくんもいっぱい貰えた方が嬉しいんじゃない?」

まゆ「大人と子どもを一緒くたに考えてはいけません。
   プロデューサーさんの場合、仕事付き合いのある女性から
   毎年沢山のチョコをいただいています。去年は54個でした」

未央「ひえーっ、54!」

杏「なんで数を把握してんの」

まゆ「そのうち26個が本命でした」

美嘉「なんで特定できてんの」

蘭子(こわい)

凛「でもそれって作られた過去での話でしょ。本当の過去じゃそんなに貰えて……」

凛「……もらえて」

楓「貰えてるわね、間違いなく」

杏「あの人、プロデューサーじゃなくてアイドルやった方がいいんじゃないの」

441 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:47:22.36 ID:H6IxBIZH0
まゆ「想像してみてください。
   54個のチョコを一人で食べなければいけない日々を。
   毎日毎日、明くる日も明くる日も、チョコ・チョコ・チョコ……」

蘭子「うっ……」

まゆ「そしてホワイトデーにはお返しが必要です。
   プレゼントにかかる費用は当然自腹です」

楓「去年だと66人分かしら。えらい出費になってそうね」

愛梨「ちょっとプロデューサーさんが可哀想になってきちゃった」

アーニャ「アーニャたちにお返しはいらないと断らなければいけませんね」

杏「ていうか、そんな食べきれないほどのチョコ貰ってるなら、
  杏にいえば喜んで食べてあげたのに」

まゆ「ですから少しでもプロデューサーさんの負担を軽くしてあげるべきかと」

杏「なら贈らないのが一番いいんじゃないの」

まゆ「それは乙女的にNOです」

美嘉「そんな事情があるなら仕方ないか。
   じゃ、今年も全員で一つのものを贈るってことで」

卯月「そのかわり13人分のありったけの気持ちを込めてチョコを作りましょう」

莉嘉「はーい」

未央「愛梨先生、今年もチョコ作りの指導よろしくお願いします」

愛梨「いいよ~。じゃぁまずはどんなチョコにするかみんなで決めよっか」

 キャッ キャッ



まゆ(うふ、これで誰も抜け駆けできなくなったわね)シメシメ

杏(……とか思ってそう)




……
………
…………

442 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:48:33.79 ID:H6IxBIZH0
まゆ「――あの日、まゆたちは密約を交わしました。抜け駆けはしないと」

杏「やっぱり狙いはそれか」

幸子「誓いから密約になってるし」

まゆ「それなのに……それを……よくも……まゆだって本当は……!」ワナワナ

まゆ「……今年、プロデューサーさんに贈られたチョコの数は72個。
   そのうち本命は34個でした」

未央「大幅に記録更新してる……」

美嘉「なんで当然のように数を把握してんの……」

楓「結局出費が増えたわね。プロデューサーの台所は火の車ね」

杏「あの人高給取りだし大丈夫でしょ」

美嘉「そういう問題か」

443 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:50:14.62 ID:H6IxBIZH0
まゆ「ここからが本題です。
   今年プロデューサーさんが用意していたお返しの品は73個でした」

愛梨「73? 私たちの分はいらないから71個でいいはずだよね。
   2つ余分に用意していたってことは……」

幸子「まさか、この中に抜け駆けした者がいる、と?」

まゆ「裏は取れています。
   まゆたちのように多人数で一つのチョコを贈られた方は他にいませんでした」

杏「なんなのその興信所顔負けの調査力」

蘭子「こわい」

凛「で、その2人は特定できてるわけ?」

まゆ「いいえ、ですから名乗り出てほしいんです」

まゆ「なにもまゆはその方たちを咎めたいわけじゃないんです。
   ただちょっとお話をさせてほしいだけなんです。
   まゆのいか……悲しみをわかってほしいだけなんです」

未央「今『怒り』っていいかけたよね」

まゆ「このまま黙っていたって時間の無駄ですよ。
   まゆの力を以てすれば必ず捜し当てることができるんですから」



まゆ「ねぇ、ちひろさん?」

444 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:52:15.85 ID:H6IxBIZH0
ちひろ「……っ」ビクッ


アーニャ「ちひろ?」

ちひろ「ま、待って!
    確かに私はプロデューサーさんにチョコを贈ったけど!
    そもそもそんな集まりがあったなんて私は知らなかったし!」

ちひろ「私はただ同僚として日頃の感謝を込めてチョコを贈っただけでそんな――」

まゆ「とても可愛らしいラッピングをされていましたねぇ。
   チョコは手作りですか」

ちひろ「……」

まゆ「あ、そういえば、
   ホワイトデーにプロデューサーさんと一緒に行かれたホテルはどうでしたか。
   最上階から望む夜景はさぞロマンティックで綺麗だったんでしょうね」

美嘉「ホ、ホテルッ!!?」

卯月「……///」カアッ

ちひろ「ディナーよ! ディナーを一緒にしただけ! それ以外なにもないから!」

凛「ふーん、
  私たちは渋るプロデューサーを説得してお返しを断ったのに、
  ちひろさんはホテルでディナーだったと」

凛「ふーん?」

ちひろ「……」ダラダラ

莉嘉「ズルーい! アタシもPくんとホテル行きたーい!」

幸子「り、莉嘉ちゃん、
   そんな誤解を招きかねないことを大声でいっちゃだめですよ!」

楓「どうして私を呼んでくれなかったんですか。絶対上等なワイン飲んだでしょ」

未央「そこ?」

蘭子「……二人は付き合ってるの?」

ちひろ「付き合ってません!」

愛梨「告白したんですか」

ちひろ「してません!」

まゆ「みなさん、この辺にしておきましょう。まだ後ろに2人つかえています」

未央「え、あと1人じゃないの」

まゆ「密約の場にいた者が2人です。
   ちひろさんは一番いい思いをされていたので名を挙げさせてもらいました」

ちひろ「ひどいっ!」

まゆ「残りの2人も名乗り出てくれませんか。
   実はその方々に対してはそれほど怒っていません。
   怒りの9割はちひろさんに対してですから。
   事実確認がしたいだけです」

445 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:53:17.94 ID:H6IxBIZH0
アーニャ「……これは」

楓「意外なメンツが揃ったわね」



志希「いやまったく」

杏「こりゃ予想外」



未央「君たちのことだぞー」

まゆ「まずは志希さんから理由を聴きましょうか。なぜこのような真似を」

志希「実験したかったんだよねー」

美嘉「実験? まさかチョコに変な薬でも混ぜたんじゃないでしょうね」

志希「惚れ薬を」

美嘉「コラ――――ッ!!!」

凛「なんてもの混ぜてんの!!!」

志希「でも失敗だったみたい。効果なかった」ハァ

美嘉「ほんっとこの子は……」

凛「ちひろさんより悪質じゃない」

まゆ「これはさすがに看過できませんね」

志希「ごめーん、許してー。完成したらみんなにも分けてあげるからーん」

まゆ・凛・美嘉「……っ」

未央「揺らぐな、揺らぐな」

446 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:54:25.45 ID:H6IxBIZH0
凛「……で、杏の方はどんな理由」

幸子「杏さんがチョコを用意していたのは本当に意外ですね」

杏「いや、違うんだよ。
  杏もまさかお返しを貰えるとは思ってなくて」

蘭子「……?」

杏「バレンタインの日、自分用のおやつに板チョコを持ってきてたんだけど――」



杏『ほれ、プロデューサー、ハッピーバレンタイン。お返しは最高級キャンディーでいいよ』



杏「――って、1ピースほど恵んであげた」

未央「せこっ!」

卯月「板チョコ1ピースの対価が最高級キャンディー……」

凛「これも結構悪質じゃない?」

美嘉「用意してくる方も用意してくる方だけど」

杏「でしょ? 杏はなにも悪くないよ。冗談を真に受ける方が――」

凛「……」

杏「――悪くないな! 杏が悪かった!」

凛「まったく」

447 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:55:37.79 ID:H6IxBIZH0
ちひろ「誠に申し訳ございませんでした」

志希「深く反省しております」

杏「平にご容赦ください」


美嘉「どうする?」

まゆ「不問に付しましょう」

楓「あら、お優しい」

凛「いいの?」

まゆ「実害が出なかっただけよしとします。次があるかもわかりませんし」

アーニャ「三人とも命拾いしましたね」

蘭子「ではこれにて一件落着!」

ちひろ・志希・杏「はは~」



ちひろ(本当は集まりがあったこと知っていたけど)

志希(実はなにも混ぜてないんだよね)

杏(食べかけの部分をあげたっていったら怒り狂うだろうな)



まゆ「……なにか?」

ちひろ・志希・杏「なんでもない! なんでもない!」ブンブン



………………
……………
…………
………
……

448 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:56:49.83 ID:H6IxBIZH0
莉嘉「お腹空いたー。なんか食べたーい」

杏・志希「みーとぅー」

美嘉「じゃぁ、ミーティングの前に腹ごしらえでもする?
   プロデューサーいい?」

P「ああ、いいよ」

莉嘉「やった! なんにする? なんにする?」ピョン ピョン

未央「あれ、なんかピザみたいな匂いしない?」

愛梨「ほんとだ。オリーブとチーズの香ばしい……」

P(まさか……)

志希(くふふ……)シメシメ

凛「でも今はピザって気分でもないかな」

美嘉「わかるー。もうちょいお腹が膨れそうなのが食べたいよね」

志希「……!」ガーン

P「はは……」

卯月「出前にしませんか。美味しいって評判の中華料理店があるんです」

449 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:57:56.10 ID:H6IxBIZH0



美嘉「……お腹が膨れるとはいったけどさ」

アーニャ「すごい量ですね」

幸子「大盛りで頼みました?」

卯月「いえ、そんなはずは……」

楓「この炒飯、一人前で三人分くらいの量はありそうね」

杏「餃子も何個あるのこれ。ひーふーみー……」

愛梨「プロデューサーさんのいうこと聞いて正解だったね。4人前で十分だって」

蘭子「恐るべきかな佐竹飯店」

まゆ「とりあえずお皿に取り分けましょうか」

450 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 19:59:03.16 ID:H6IxBIZH0
莉嘉「――ではみなさん手を合わせてください。いただきます!」

 イタダキマース

美嘉「うん、美味しい」

幸子「なかなか繊細な味付けをしていますね」

志希「はふはふっ!」

楓「なんだかビールがほしくなっちゃうわね。すみませーん、大ジョッキ一つー」

未央「ありませーん」

卯月「でもまさか765プロのスクール生がいるお店だったなんてビックリです。
   美奈子ちゃんでしたっけ」

P「ああ、明るく家庭的な子だったよ。
  そういえば回鍋肉は美奈子の得意料理だったっけ」

凛「……え、プロデューサー、その子の手料理食べたことあるの?」

P「ああ、とても美味しかったよ。この回鍋肉に負けなくらい」

凛「ふーん……。名前なんていうんだっけ。美奈子? 美奈子ね。覚えた」

蘭子(こわい)

451 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 20:00:53.78 ID:H6IxBIZH0
P「――わるい、急な打ち合わせが入った。俺はすぐに出るけど、
  みんなは休憩が終わったら予定通りミーティングを始めてくれ」

美嘉「え、もうちょっとなんか食べてから行きなよ」

アーニャ「沢山食べないと力出ませんよ」

P「大丈夫、十分食べたよ。
  今日はもう戻って来れないけど代わりに千川さんが来るから。
  それじゃあ行ってくる」

未央「行ってらっさーい」


 ガチャッ バタン……


未央「……なんか、ここのとこずっと忙しそう」

幸子「まぁ、ミュージカル本番まで1か月切りましたからね」

楓「それだけじゃないわ。その後のことも踏まえて行動しているのよ」

未央「その後?」

楓「ミュージカルが終わった後。私たちが消えるのか、存在し続けるのか、
  あらゆる可能性を想定して手を打っている」

楓「私たちのプロデューサーとして、
  最後の最後まで責任を果たそうとしてくれている」

杏「ありがたいこって」

志希「その餃子もらってもいい?」

美嘉「だめ」

452 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/05(木) 20:01:55.70 ID:H6IxBIZH0
未央「今さらだけど、
   こんな重大なこと私たちだけで決めちゃってよかったのかな。
   他の人にも知らせるべきだったんじゃ」

杏「知らせたところで誰も信じてくれないよ。杏たちだってそうだったじゃん」

未央「それはまぁ、そうだけど……」

楓「いいんじゃないかしら。愛する人のために全てを犠牲にする。
  なかなか憧れるシチュエーションじゃない」

蘭子「カッコイイ!」

幸子「ボ、ボクは別に愛とかそんな動機じゃないですからっ!」

美嘉「ア、ア、アタシだって違うしっ!」

凛「マジありえないんだけどっ!」

杏「ほんとわかりやすいな、この人たち」



……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……

459 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:14:07.67 ID:FlIW9w0M0


P「明日、ミュージカル本番当日を迎える。
  今日は早めに身体を休めて明日に備えるように」


460 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:15:36.03 ID:FlIW9w0M0
未央「いよいよ明日かぁ」

愛梨「なんかあっという間の半年間だったな~」

美嘉「一日一日を大切に過ごそうとかいって
   結局いつも通りに過ごした感がハンパない」

凛「確かに」

アーニャ「ですが、アーニャにとって
     そのいつも通りの日常がなによりも大切でした。
     みんなと過ごした日々はアーニャの宝物です」

莉嘉「アタシも! みんな大好きっ!」ダキッ

志希「あたしも莉嘉ちゃん大好きっ!」ダキッ

  キャッ キャッ

まゆ「明日消えてしまうというのに、ほんといつも通りなんだから」

楓「不思議と恐怖感がまったくないのよね」

蘭子「運命を受け入れた我らに恐れなどあらず」

杏「正直今もピンときてないだけなんだけど」

幸子「どちらかといえば、
   ミュージカルに対しての高揚感の方が大きいですね」

卯月「私もです。とても楽しみ」

美嘉「泣いても笑ってもこれが最後」

美嘉「アタシたちの、最後のステージ……」


 「…………」

461 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:17:16.21 ID:FlIW9w0M0
未央「ねね、今からさ、みんなで自分の秘密を打ち明けない?」

杏「なんで?」

未央「いんじゃん、いいじゃん。これで最後なんだし。私からいうからさ」

幸子(あ、これ自分がいいただけのパターンだ)

未央「じゃぁ、いい? いうよ?」コホン

未央「実は私、プロデューサーのことが好きでした! ラブ的な意味で!」

一同「……」

未央「ごめん、しぶりん、美嘉ねえ、まゆちゃん。
   こんな強力なライバルがいたなんて驚くだろうけど……」

凛「いや、気づいてたし」

未央「……え?」

凛「え、まさか気づかれてないと思ってたの? そっちの方が驚くんだけど」

未央「え? えっ!? えぇっ!!? うそっ! なんで!?」

美嘉「なんでって、見てればわかるし」

未央「いつから!?」

まゆ「だいぶ前から」

凛「去年の夏みんなで海に行ったじゃん。その時の未央の水着姿を見て私は確信した」

美嘉「あー、確かにあの水着はヤバかった。未央らしからぬかなり攻めた水着だった」

まゆ「着ていた本人も顔真っ赤でしたね」

凛「ずっとプロデューサーのそばにいて離れようとしないし、
 『私を見て』アピールが露骨すぎて見てるこっちがいたたまれなかった」

美嘉「まさか未央があんな露骨な方法で男を誘惑しようとはねぇ」

まゆ「単純ですけど男性には効果抜群なんですよね。
   未央ちゃんスタイルいいですし。
   実際プロデューサーさんも少したじろいでいました」

未央「……」

未央「今すぐ消えてなくなりたい」

蘭子「明日まで待たれよ」

462 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:17:57.56 ID:FlIW9w0M0
未央「はいっ、次はしぶりんの番!」

凛「え、じゃぁ、私もそれで」

未央「それでってなに!? そんなの公然の秘密じゃん!」

凛「でも公言はしてなかったし」

未央「ズルい! 他の秘密を晒しなさいよ!
   これじゃぁ私が生き恥かいただけじゃん!」

凛「いやそれ未央が勝手に自爆したんじゃん」

まゆ「そもそもここにいる全員プロデューサーさんのことが好きですよね」

未央「……え」

美嘉「まぁ、そうでしょ」

未央「うそっ! マジッ!? しまむーも!?」

卯月「え……、は、はい……///」カァッ

未央「アーニャは!?」

アーニャ「好きですよ」

未央「とときんは!?」

愛梨「好き~」

未央「……」パク パク

凛「いや、その三人かなりわかりやすく好意示してたから」

美嘉「女にあるまじき鈍さね」

463 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:19:10.56 ID:FlIW9w0M0
まゆ「なんだか未央ちゃんがあまりにも不憫なので、
   他のみなさんも一応告白しませんか」

莉嘉「ハーイ、アタシもPくん好き~。絶対結婚するんだ~」

アーニャ「結婚するのはアーニャですよ」

まゆ「まゆですよ?」

凛「は? 私だし」

美嘉「早速始まったよ」

幸子「ボクもプロデューサーさんが好きです!
   プロデューサーさんを想う気持ちは誰にも負けませんよ!!」

凛「声おっき」

杏「あ、プロデューサー、お疲れー」

幸子「え゛っ! わ――――っ!!
   ち、違いまっ、今のは違いますっ! いや違わなっ……! ///」アワワワッ

杏「うっそー。ここ寮なんだからいるわけないじゃん」ウッシッシッ

幸子「…………」

蘭子「魂が抜けてる」

凛「幸子で遊んでないで杏も告白しなよ」

杏「杏はべつに好きじゃないもーん。
  まぁ、養ってくれるっていうなら今すぐ婚姻届け持ってくるけど」

美嘉「やっぱ好きなんじゃん」

杏「違いますー。ただ一緒にいたいだけでーす」

アーニャ「杏も素直じゃないです」

464 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:20:19.16 ID:FlIW9w0M0
蘭子「わ、我も、わがと、とっも……」プルプル

蘭子「ぷ……ぷろでゅぅさぁがしゅきぃ~ ////」プシュ~

美嘉「オッケー。頑張った頑張った」

蘭子「こっ、これは禁断の呪文! 未熟な者が唱えれば呪いが返ってくる!」
  (とっても恥ずかしかった!)

凛「うんうん、そうだよね。わかるわかる」

楓「うっうー! 私もプロデューサーが大好きですーっ!」

杏「なんで急にやよいちゃんモード?」

アーニャ「面妖な」

楓「照れ隠しかなーって」

美嘉「楓さん、二度とやよいちゃんの真似をしないで」

未央「はい、最後はしきにゃんだよ」

志希「あたし? あたしもやよいちゃんモードでいっていい?」

美嘉「だめ。したら許さない」

志希「にゃはは、参ったな。ちょっと恥ずかしい」

志希「……」

志希「あたしもプロデューサーが好き」

志希「本当は765プロなんかどうだっていい。
   明日のミュージカルだって投げ出してやりたい」

志希「でも、あの人の泣いてる姿はもう見たくないんだ」

凛「……」

未央「誰か告白する?」

美嘉「しないしない」

幸子「返事もわかりきってますしね」

465 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:21:02.20 ID:FlIW9w0M0
ちひろ「あらみんな、まだ起きてたの」

卯月「ちひろさん」

愛梨「最後の女子会を開いていました」

未央「あっ、そうだ、ちひろさんも告白して!」

ちひろ「告白?」

美嘉「今好きな人暴露大会してんの」

未央「ちひろさん実はプロデューサーのこと好きなんでしょ!」

ちひろ「そうだけど?」

未央「えっ」

ちひろ「それがどうかしたの?」

未央「……この人動じない」

蘭子「強い」

ちひろ「ほらみんな、そろそろ休みなさい。明日に響くわよ」

凛「そういえばちひろさんはどうして765プロのこと信じる気になったの」

ちひろ「一番765プロの存在を信じたくないあなたたちが信じたんだもの。
    それなら私も信じてみようって」

ちひろ「明日のミュージカル、必ず成功させましょう」



………………
……………
…………
………
……

466 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:22:39.26 ID:FlIW9w0M0
 ――ミュージカル当日――



加蓮「おーい、凛ー」

奈緒「おーっす」

凛「加蓮、奈緒」

加蓮「アンタ感謝しなさいよ~。
   こんな豪華なアンサンブルキャストなんて滅多にないんだから。
   次アタシたちが主役のミュージカルがあったら
   うんとこき使ってやるんだから覚悟しなさいよ」

凛「ふふ、わかった」



きらり「きらり、今日のミュージカルとぉーっても楽しみにしてた!
    みんなの力でぜぇーったい成功させるにぃ☆」

みりあ「みりあも頑張るーっ!」

莉嘉「アタシもちょー頑張るーっ!」

杏「おーおー、若者は血気盛んなこって」



藍子「未央ちゃん、ポニーテールとっても似合ってるよ」

茜「結わえた髪が元気に揺れてめっちゃイイ感じですよー!」

未央「そ、そう? 私ここまで髪長くしたことないから結構違和感が」アハハ

467 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:23:22.75 ID:FlIW9w0M0
美穂「う~、緊張する~。ミスしちゃったらどうしよう……」

卯月「大丈夫、美穂ちゃんならできるよ」

響子「うん、あれだけ練習したんです。自分を信じて!」



乃々「もりくぼも緊張しすぎてむぅりぃ~。机の下に帰りたぁい……」

美玲「ビビるなって! ライブと同じでなんか楽しんでりゃ成功するって!」

幸子「なんたるアバウト」

まゆ「乃々ちゃん、まゆたちがついています。一人じゃないですよ」

小梅「うん、この子たちも一緒に頑張ろうって」

輝子「この子たちって……どの子たち?」

小梅「ほら、幸子ちゃんの後ろの」

幸子「え? ボクの後ろって誰もいない……」

一同「……」

 キャーッ

468 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:24:08.62 ID:FlIW9w0M0
飛鳥「存外セカイとは単純なのかもしれないね。
   なにせ歌い踊ることで物語を紡ぐことができてしまうのだから」

蘭子「そう、セカイを混沌に陥れているのは私たち。
   ただそれに気づいていないだけ」

飛鳥「ならばボクたちが示してあげるんだ。
   セカイはこんなにも簡単で、光に満ち溢れていることを……」



フレデリカ「よーし、うえきちゃん役頑張るぞー」

美嘉「そんな役はない!」

奏「今からサメに襲われるシーンが待ち遠しいわ」

美嘉「そんなシーンもない!」

周子「どれ、ちょっくら売店で八つ橋売ってくるか」

美嘉「公演もう始まるから!」

志希「みんな頑張って! あたし客席からみんなのこと見守ってる!」

美嘉「アンタはメインキャストでしょうが~っ!」

469 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:25:06.75 ID:FlIW9w0M0
P「――みんな、時間だ」

楓「さぁ、渋谷凛グになりましょう」

美嘉「ごめんねー、円陣組みましょーって意味だよー」


 ゾロゾロ……


美嘉「メインキャストは真ん中ー」

愛梨「莉嘉ちゃんこっちだよ~」

莉嘉「狭ーい」

杏「ちょいちょい通して通して」

470 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:26:20.17 ID:FlIW9w0M0
楓「みなさーん、渋谷凛グになりましたかー」

 ハーイ

凛「それやめてー」

未央「みんなー、しまむーにちゅーもーく!」

アーニャ「卯月」

卯月「はいっ」

卯月「みなさんよろしくお願いします。
   力を合わせて最高のミュージカルにしましょう。
   それではいきますよ」


卯月「すぅ……」


卯月「CGプロー……ファイト―!!」


一同「オーッ!!!」

 ワー パチパチパチ


 「キャストのみなさんはスタンバイお願いします」

幸子「プロデューサーさん、それでは行ってきます」

まゆ「まゆのこと、片時も目を離さないでくださいね」

蘭子「しかと括目せよ!」

P「ああ、みんなのことちゃんと見てるよ。行っておいで」

一同「はいっ!」



 『ただいまより、ミュージカル“アイドルマスター”を開演いたします――……



……………
…………
………
……

471 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:27:08.15 ID:FlIW9w0M0
『これにて、ミュージカル“アイドルマスター”は閉演いたします。
 ご来場、誠にありがとうございました――』


 パチパチパチ……


愛梨「みんなお疲れさま~、ありがと~」

かな子「おめでと~、大成功だったね~!」

雫「すっごく楽しかった~!」



美波「お客さんの反応すごくよかったし、公演数増やしてもいいんじゃないかな」

みく「うん、一度きりの公演なんてもったいないにゃ!」

アーニャ「……そうですね」



ちひろ「メインキャストのみなさんは楽屋に集まってくださーい」



楓「……それじゃぁ、行ってきます」

瑞樹「ええ、打ち上げの席でまた会いましょう」

早苗「たらふく飲むぞー!」

楓「……」

472 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:27:42.62 ID:FlIW9w0M0
 タッタッタッ…… ガチャッ


莉嘉「Pくん、生きてる!?」

P「えっ、う、うん、生きてるよ」

莉嘉「よかった~」

未央「公演中にポックリいかれたらどうしようかと思ったよ」

美嘉「病気で死ぬみたいにいわないで」

473 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:28:28.74 ID:FlIW9w0M0
P「みんな、あらためてお疲れさまでした。最高のミュージカルだった」

杏「そりゃよかった」

未央「これで……終わりなのかな」

楓「でしょうね」

美嘉「じゃ、最後に一言ずつ別れの挨拶して終わりにしよっか。
   それくらいの猶予はあるでしょ」

474 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:29:52.26 ID:FlIW9w0M0
卯月「プロデューサーさん、1年間お世話になりました」

未央「短い間だったけど楽しかったよ。元気でね」

杏「あんまり頑張りすぎないでね。杏くらいがちょうどいいんだから」

美嘉「今までありがと。765プロのみんなによろしくね」

莉嘉「バイバイ、Pくん。アタシをプロデュースしてくれてありがと。
   Pくんののおかげで毎日がキラキラだった」

まゆ「どうかお元気で。
   まゆはプロデューサーさんをいつも見守っています」

幸子「さようなら、プロデューサーさん。
   世界一カワイイボクをプロデュースできて幸せでしたね。
   ……そうですよね?」

愛梨「時々でいいから、私たちのことを思い出してください」

蘭子「うむ、忘れてはならぬぞ、我らがいたことを」

アーニャ「忘れたらオバケになって出てきます」

楓「オクトバーフェストの夢はプロデューサーに託します」

志希「……ばいばい」

ちひろ「一年間お疲れさまでした。あなたは素晴らしいプロデューサーでした」

未央「ほら、しぶりんも」

凛「……」

P「……」フッ

P「みんな、今日までありがとう。みんなと出会えて本当によかった。
  みんなのこと、絶対に忘れない」

P「凛も、ありがとう」

凛「……」コクッ

P「それじゃあ」





凛「プロデューサー、す――――



――――――――
―――――――
――――――
― ― ― 
…………
……

475 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:30:43.77 ID:FlIW9w0M0
春香「千早ちゃん?」

千早「春香、おはよう」

春香「おはよう。どうしたのこんな朝早くに。もしかして千早ちゃんも事務所に?」

千早「ええ、そういう春香も?」

春香「うん。せっかくのオフだけど家にいても落ち着かないし、
   友達と遊んでいても心から楽しめないし、
   なんか、自然と事務所の方へ足が向いちゃうんだよね」

千早「そう……」

千早「もう、一年になるのね。プロデューサーがいなくなってから」

春香「……」

476 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:31:39.08 ID:FlIW9w0M0
小鳥「あら」

春香「おはようございまーす」

千早「おはようございます」

小鳥「おはよう。どうしたの、今日は二人ともオフだったわよね」

春香「なんだか家にいても落ち着かなくて、
   ちょっと事務所にお邪魔させてもらおうかなぁって」

千早「迷惑のかからないようにしますので、いさせてもらえませんか」

小鳥「それは構わないけど……」

477 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:32:14.62 ID:FlIW9w0M0
 カチッ ガチャッ


小鳥「……!」

 ドサッ

春香「小鳥さん? 鞄落としましたよ」

小鳥「プロデューサーさん……」

春香「え……」

千早「……!」ハッ


P「……」


春香「プロデューサーさん!!」



…………
………
……

478 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:33:08.73 ID:FlIW9w0M0
P「……」パチッ


P「……」


P「……!」


P「はっ」ガバッ

P「ここは……病院……?」キョロキョロ

P「どうなったんだ、みんなは……」


 ――ガチャッ


P「……!」

春香「……!」

P「は、春、香……?」

春香「……っ」ブワッ

春香「うっ、うぅ……」

千早「春香、もう少ししたらみんなもこっちに来――」

千早「……!」

P「……!」

千早「プロデューサー……」

P「あ……」

479 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:33:39.88 ID:FlIW9w0M0
 タッタッタッ――


 「何号室!?」 

 「502号室!」

 「早く早くっ!」

 「コラッ、病院は走らない!」

 「あった、ここだ――!」

480 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:34:23.24 ID:FlIW9w0M0
 ――ガチャッ!


P「……!」

一同「……!」

美希「ハニ~~~ッ!!」ガバッ

P「わっ、み、美希!?」

真美・亜美「兄ちゃ~~ん!!」ガバッ

P「真美、亜美?」

やよい「プロデューサ~、よがっだ~!」ウワーン!

伊織「このバカッ! 今までどこほっつき歩いていたのよっ!」

響「すっごく心配したんだからねっ!」

律子「あんたたち病院は静かにしなさい!」

貴音「律子嬢もお静かに」

雪歩「プロデューサー……」グスッ

真「はは、ほんとにプロデューサーだ……」

あずさ「プロデューサーさん……」ウルッ

P「みんな……」

高木「キミ……」

P「社長……」

481 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:35:29.54 ID:FlIW9w0M0
P「――俺が、一年もの間、行方不明……」

伊織「そうよ。水瀬の総力を挙げて世界中捜し回ったんだから」

P「それで今朝、事務所で倒れていた俺を春香たちが発見し、現在に至ると……」

P「美希、いいかげん離れてくれ」

美希「やっ! 絶対離さないの!」ギュッ

P「……警察に捜索願を届け出なかったのか」

律子「もちろん出しましたよ。
   けど、事件性は薄いと判断されて捜査までには至らず」

P「世間に公表は」

高木「していない。
   本当は会見を開いて広く情報を募ろうとしたんだが、
   キミのご両親に固辞されてね」

高木「『息子なら必ず帰ってくる』と、そう仰られていたよ」

P「そうですか……」

482 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:36:25.05 ID:FlIW9w0M0
貴音「この一年間、どこでなにをなされていたのか、
   本当に覚えていらっしゃらないのですか」

P「……ああ、覚えていない」

響「自分たちがどんな活動をしていたのかも?」

P「全く知らない」

真「でも去年起きた世の出来事は知っているんですよね」

P「多少なりの記憶違いはあるだろうけどな。
  概ね、みんなの記憶と一致していると思う」

雪歩「不思議ですね。
   そんなピンポイントで記憶を失くしちゃうなんて」

真美「そっか。兄ちゃんは知ってはいけないことを知ってしまったんだね……」

亜美「謎の組織に拉致され、記憶を抹消されてしまったと……」

やよい「知ってはいけないことって?」

真美「それはぁ……あれだよ。
   やよいっちがもやし炒めに使う秘伝のタレとか」

やよい「別に秘伝じゃないよ? スーパーで売ってる普通のソースだもん」

483 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:37:18.71 ID:FlIW9w0M0
P「それにしても真美も亜美も一年見ない間に随分と大人びたな。驚いたよ」

真美「でっしょー? 真美、育成に大成功ー! って感じだよー。
   これは将来あずさお姉ちゃんを超える器かもしれんね」

亜美「兄ちゃんを悩殺できる日も間近だぜぇ」

美希「ハニー、ミキは? ミキもグッと大人っぽくなったでしょ?
   もう15歳だよ? 結婚する?」

P「しません」

真「プロデューサー、ボクはどうですか。
  前より女の子っぽくなったと思いません?」

P「ああ、真、髪伸ばしたんだな。ボーイッシュな印象が大分薄れたよ」

真「でしょ! 本当はもう少し伸ばしたいんですけど
  みんなに止められているんです」

美希「だってそれ以上伸ばしたら王子さま感なくなっちゃうもん」

雪歩「うん、真ちゃんは今くらいが丁度いいよ」

P「あずささんはショートに変えたんですね。思い切りましたね」

あずさ「はい、自分では結構気に入っているんですけど、どうでしょうか」

P「もちろん似合っています。伊織もそのヘアスタイル似合っているよ」

伊織「当然じゃない」

484 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:38:33.35 ID:FlIW9w0M0
P「律子のそのスーツ姿は」

律子「申し遅れました。
   私、765プロダクション・プロデューサーの秋月律子と申します」

P「完全にアイドルから転向したんだな」

律子「あなたがいないのに誰がこの子たちをプロデュースするんです?」

P「律子一人でみんなを見ていたのか。よく一人で持ち堪えたな」

律子「もちろん私一人の力ではありません。
   社長が、小鳥さんが、アイドルのみんなが協力してくれたおかげです」

高木「律子くんも新米プロデューサーとは思えない働きをみせてくれてね。
   キミの抜けた穴を見事に埋めてくれたよ」

P「へぇ、すでに俺を追い抜いたんじゃないか」

律子「まさか。周りの助けがなかったらすぐ潰れていましたよ」

P「それは俺だって同じさ。よく頑張ったな、律子」

律子「ま、まぁ、どうも……//」

美希「でも律子、オニみたいに厳しいの。ミキはやっぱりハニーがいいの」

律子「律子?」

美希「さん」

485 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:40:02.32 ID:FlIW9w0M0
P「スクール生のみんなは今どうしています」

高木「765プロ所属アイドルとして元気に活動しているよ」

P「無事全員と契約できたんですね」

亜美「そうだ、聞いて聞いて兄ちゃん。亜美ね、今、
   いおりんとあずさお姉ちゃんと一緒にユニット組んでんだよ。
  『竜宮小町』っていうの」

亜美「捕まってた謎の組織で聴かなかった? 『SMOKY THRILL』って曲。
   知らぬが~♪」

伊織「こら、病院で歌わない」

律子「みんな、そろそろ時間よ。もう行かないと」

P「仕事か」

律子「はい、みんな仕事の合間を縫ってここに駆けつけたもので。
   春香と千早はオフですけど」

千早「プロデューサーがお疲れなら私たちも帰ります」

P「いや、至って元気さ。なんなら今すぐ退院して事務所へ戻りたいくらいだ」

律子「だめですよ。精密検査して健康状態が確認できるまでは退院させませんから」

伊織「うちのボディーガードもつけておくわよ。
   本当に誘拐されていた可能性もあるんだから。
   用がある時は彼らを呼びなさい」

あずさ「それではプロデューサーさん、失礼します」

雪歩「ほら、美希ちゃんも行こ」

美希「やっ! ミキもここに残るの!」

真「響、美希をプロデューサーからはがすの手伝って」グイッ

響「ほ~ら美希~、仕事の時間だぞ~」グイッ

美希「あ~ん、ハニ~ッ!」ズルズル……

486 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:41:07.41 ID:FlIW9w0M0
P「相変わらずだな。なんか、戻ってきたって実感するよ」

春香「あはは」

P「二人は元気だったか」

春香「はい、とっても元気に――!」

春香「…………元気な、振りをしていました」

P「……」

春香「プロデューサーさんならきっと大丈夫、必ず戻ってくる、
   そう信じてこの一年間頑張ってきました」

春香「でも、ふとした時にやな想像しちゃって、
   プロデューサーさんが危険な目にあっていたらどうしよう、
   二度と会えなくなったらどうしようって」

春香「そう思うと不安で、心配で、胸が苦しくてっ……!」ボロボロ

P「春香……」

春香「私、わだぢっ、
   プロデューサーさんが無事に戻っでぎでぐれで本当によがっだ~」ウアーン

千早「春香、泣きすぎ」

P「ごめんな、心配をかけた」


P「俺も、みんなとまた会えて本当に良かった」



………………
……………
…………
………
……

487 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:42:50.61 ID:FlIW9w0M0
 ――ガチャッ


小鳥「お帰りなさい、プロデューサーさん」

P「ご無沙汰です、音無さん。ただいま戻りました。
  今まで大変な心配と苦労をかけました」

小鳥「いえっ、プロデューサーさんがご無事でっ、本当にっ……!」ブワッ

春香・雪歩・やよい「うえ~~」

伊織「なんであんたたちも泣くのよ」

亜美「兄ちゃん、こっちこっち」

亜美「紹介するね。765プロの新しい仲間のみさきちだよ」

美咲「初めまして。今年の春に入社した青羽美咲です。
   主に劇場の事務員としてみなさんのサポートをさせていただいております」

P「話は聞いています。これからよろしくお願いします、青羽さん」

美希「美咲すごいんだよ。ライブの衣装作ってくれるの」

貴音「職人と見違えるほどの腕前です」

伊織「明らかに就職先間違えてるわよね」

律子「こら」

美咲「いえ、もともとかわいい衣装を着るアイドルが大好きでしたから。
   765プロに就職できて本当によかったです」

488 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:43:33.75 ID:FlIW9w0M0
真美「どーお、兄ちゃん。1年ぶりの事務所は」

P「……空っぽじゃない」

真美「え?」

P「いや、全てが懐かしいよ。なにも変わってないな」

律子「プロデューサーのデスクもそのままにしてありますよ」

小鳥「やよいちゃんが毎日、プロデューサーさんのデスクを拭いてくれたんですよ」

P「ありがとな、やよい」

やよい「えへへ、プロデューサーがいつ戻ってきてもいいように、
    ピカピカにしておこーって」

489 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:44:19.01 ID:FlIW9w0M0
P「……!」スッ

あずさ「それ、企画していたミュージカルの台本ですね」

雪歩「そういえばミュージカルの話をした翌日でしたね、
   プロデューサーがいなくなったのは」

響「確かその台本ってところどころ台詞が抜けてて、
  後半はページ全部真っ白だったよね」

P「……」ペラッ

千早「でもこれ、ちゃんと台詞が書かれていますね。
   白ページもないみたい」

真「別の台本ですか」

P「……わからない」

P「『企画していた』ということは、このミュージカルはやらなかったのか」

律子「はい、永久凍結にしました」

P「なんでまた」

律子「大切な者を失くすのは、もうこりごりですから」



………………
……………
…………
………
……

490 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:46:08.42 ID:FlIW9w0M0
P(どうやら世界は元に戻ったらしい)

P(この世から、CGプロの痕跡が跡形もなく消えている)

P(あらゆる情報媒体を調べてもCGプロに関する情報は一切見つからず、
  CGプロのビルや女子寮が建っていた敷地には全く別の施設が建っていた)

P(家の写真立てに飾っていた凛のシークレットライブの集合写真は、
  765プロのみんなで撮った花見の集合写真に戻っていた)



P「律子、シンデレラガールズプロダクションって知っているか」

律子「いえ……、初めて聞きますけど、芸能プロダクションですか」

P「いや、知らないならいいんだ」



P(俺は大切な者を取り戻し、そしてまた、大切な者を失った)

P(だが不思議と寂しくはなかった)

P(必ずあいつらとまた会える。なぜかそんな気がしてならなかった)



………………
……………
…………
………
……

491 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:46:45.91 ID:FlIW9w0M0


未来『みんなーっ、ありがとーっ! また会おうねーっ!』


 ワァーッ!


492 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:47:47.07 ID:FlIW9w0M0
未来「プロデューサーさーん!」

加奈「どうでした? 私たちのステージ」

P「よかったよ、正直驚いた。
  スクール生だった頃とは比べものにならないくらい、
  歌もダンスも上手くなっている。二人とも成長したな」

未来「でへへ~」

加奈「えへへ~」



静香「プロデューサー」

志保「二人を甘やかさないでください」



未来「はっ! 静香ちゃん!?」

加奈「志保ちゃん!?」

静香「未来、あなたまたBメロの出だしを右足から始めたでしょ。
   Bは左足からだって何度間違えれば気が済むの」

志保「加奈、サビの音程が外れていたわよ。
   気持ちよくなるとすぐ周りの音が聴こえなくなるんだから」

静香・志保「帰ったら反省会よ」

未来・加奈「あわわわっ」

P「はは……」

493 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:48:34.93 ID:FlIW9w0M0
P「しかし本当に『見ないうちに』ってやつだな。
  まさかここまで力をつけているとは思わなかったよ」

律子「去年はとにかく場数を踏ませましたからね。
   ライブの数でいったら春香たちよりも多いくらいです」

律子「あの子たちもあなたの帰りをずっと待っていました。
   あなたが帰ってくるまでにうんと力をつけて驚かせてやろうって」

P「……それなら、彼女たちの努力に報いなければいけないな。腕が鳴るよ」

律子「期待していますよ、プロデューサー殿」



……………
…………
………
……

494 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:49:38.96 ID:FlIW9w0M0
P「どうだった、ここのラーメン」

貴音「真に美味しゅうございました。黄金色に輝くスープはまさに絶品。
   東京の名高いらぁめん店は全て網羅したと思っておりましたが、
   まだ私の知らぬ名店があるようですね」

P「連れて来れてよかった。
  偶然通りかかった時にここを見つけたんだ」

貴音「それはいつの話で」

P「えっ…と、いつだったかな。だいぶ前だったから覚えてないな」

貴音「……あなた様がいなくなる前、私たちは東京中のらぁめん店を巡りました。
   二人で調べ上げ、知り得た情報を共有し、そこに齟齬はなかったはず」

貴音「それなのに、私は今日までここのらぁめん店を存じておりませんでした」

貴音「あなた様の仰る『だいぶ前』とは、
   あなた様がいなくなった『後』の話ではないでしょうか」

P「……敵わないな、貴音には」

495 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:52:58.76 ID:FlIW9w0M0
貴音「やはり、覚えておられていたのですね」

P「貴音は知っているんじゃないのか。俺がこの一年、どこでなにをしていたのか」

貴音「あなた様は少し、私を誤解されているようですね」

貴音「確かに私は謎多き乙女と自負しておりますが、
   なにも不思議な力が備わっているわけではありません」

貴音「もしかような力が備わっていたのなら、このような事態にさせておりません」

P「それもそうだな」

P「……いろいろあったんだ。面妖なことが」

貴音「どうやらそのようで。無理に真相を聞き出すことは致しません。
   誰しもトップシークレットの一つは持っているもの。
   時には明かさず、胸のうちに秘めておくことも大切です」

P「……ありがとな、貴音」

貴音「では、もう数軒梯子しましょうか」

P「えっ」



………
……

496 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:53:48.75 ID:FlIW9w0M0
貴音「ふぅ、お腹と心が満たされました。
   こうして再びあなた様とらぁめんを食べることができて、
   私は大変嬉しく思っておりますよ」

P「……俺もだよ……」ウップ

貴音「夜風が涼しいですね。ゆっくり歩いて帰りましょうか」

P「あ、ああ」

P(……ん)

P(花屋がある)



 ――今、似合わないって思ったでしょ



P「……」

貴音「どうされました」

P「いや、なんでもない。行こう」

P(まさかな。いるわけがない)

497 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:54:28.24 ID:FlIW9w0M0



 「……」

 「ねぇ、ちょっとそこの花器運ぶの手伝って」

 「……うん」



………………
……………
…………
………
……

498 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:55:07.34 ID:FlIW9w0M0
律子「プロデューサー、以前よりもタスク管理が上手くなっていません?」

小鳥「ほんと、ブランクがあるとは思えない仕事ぶりですね」

P「そ、そっか? 一年分の遅れを取り戻そうと必死なだけだよ」ハハ……

高木「キミたち、私の部屋まで少しいいかね」

P・律子・小鳥「はい」




真美・亜美「……んっふっふ~」キラーン

499 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:55:43.84 ID:FlIW9w0M0
真美「……」ピターッ

亜美「……」ピターッ

貴音「真美、亜美、また社長室に聞き耳を立てて。
   律子嬢に気づかれたら雷が落ちますよ」 

響「聴診器まで持ち出してやりすぎだぞ」

亜美「ちっちっち。聴診器は最先端のトレンドアイテムなんだぜ。
   アイドルたるもの流行にビンカンでなくてはいけませんなー」

貴音「なんと、それは真ですか」

響「真じゃないぞ」

真美「……えっ、兄ちゃんが346プロに?」

貴音・響「……?」

501 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:57:06.57 ID:FlIW9w0M0
P「わかりました、では俺が――」


 ドア バーンッ!!!


一同「だめ~~~っ!!」バタバタバタッ

P「……!」ビクッ

春香「反対! 絶対に反対ですよ、反対!」

伊織「一体なに考えてるのよ!
   プロデューサーを346プロに移籍させるなんて!」

あずさ「そんなこと、私たちは到底受け入れられません!」

雪歩「せっかくみんな揃ったのに……」

美希「ハニーが346プロに行くならミキもついていくの!」


 ギャー ギャー


高木「キミたち落ち着きたまえ、誤解しているよ。
   一時的に346プロのプロデューサーになってもらうんだよ」

響「一時的?」

高木「346プロが新しくアイドル事業に進出することになってね。
   その新人アイドルたちを期限付きで彼にプロデュースしてもらうんだ」

一同「……」

真「じゃぁ、プロデューサーが765プロを辞めるわけじゃないんですね」

P「辞めないよ」

亜美「な、なんだ、もー、驚かさないでよー」

真美「まったく人騒がせですなー」

伊織「それはあんたたちよ」

律子「真美、亜美、また盗み聴きしていたわね」

真美・亜美「……逃げろー!」ピューッ

律子「くぉらっ、待ちなさーいっ!」

502 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:58:43.45 ID:FlIW9w0M0
千早「あの、どういった経緯で346プロのアイドルを?」

高木「実はかつてない大規模なフェスが計画されていてね、
   今回はそこに複数の事務所からなる
   スペシャルユニットを参加させたいと思っている」

高木「まだ確定ではないが、
   我が765プロと283プロ、そして346プロの3社で組むことになる」

真「283プロって確かそこも新しく出てきた事務所ですよね」

高木「うん、新興ながら今一番勢いに乗っている事務所だね。
   キミたちに引けを取らない実力を備えたアイドルたちが沢山いる」

伊織「そんな中に346プロのアイドルを混ぜて大丈夫なの?
   デビューすらまだなんでしょ」

高木「フェス開催はちょうど一年後。
   それまでにキミたちと同じステージに立てる力をつけてもらう」

伊織「たった一年で?」

高木「現にキミたちは一年でトップアイドルを目指せる位置まで上り詰めた。
   そしてそのアイドルを育てたプロデューサーがここにいる」

503 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 00:59:32.23 ID:FlIW9w0M0
千早「プロデューサーの腕が確かなのは
   プロデュースをされている私たちが一番よくわかっています」

千早「けど、プロジェクトのためとはいえ、
   ライバル事務所のアイドルを育てる義理はないと思いますけど」

響「同感だなー。ペットは責任持って自分で育てないと」

真「ペットじゃないし」

高木「キミたちのいいたいこともわかるがこれもアイドル界を盛り上げるた――」

伊織「ビジネスのためだってはっきりいえば?」

高木「……うん」

504 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 01:00:32.17 ID:FlIW9w0M0
伊織「ま、別にいいじゃない。会社の利益になるなら」

千早「水瀬さん、結構ドライなのね」

伊織「現実を見ているだけよ」

美希「ミキはヤだな。
   やっとハニーが戻ってきたのにプロデュースしてもらえないなんて」

P「大丈夫、みんなのこともちゃんとプロデュースしていく。
  一緒にいてやれる時間は確かに少なくなるけど、今は律子だっているし」

P「それに純粋に楽しみなんだ。
  ライバル事務所のアイドル同士でユニットを組めることが」

P「美希やみんながその中でどんな輝きを放てるのか見てみたいんだ」

美希「……」

高木「向こうのアイドルをうちで預かるかたちになるから、
   彼と会えなくなるわけではないよ」

美希「……浮気しちゃだめだからね」

高木「早ければ来週からプロデュースが始まる。
   顔を合わす機会もあるだろうから仲良くしてあげてほしい」

春香「どんな子たちなんだろうね」

やよい「会えるのが楽しみですねー!」



…………
………
……

505 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 01:03:09.61 ID:FlIW9w0M0
律子「本当に引き受けちゃってよかったんですか。
   うちのアイドルだけでも51人いるのにさらに13人ですよ。
   ちゃんとプロデュースしていけるんですか」

P「なんなら律子もアイドルに復活していいんだぞ」

律子「茶化さないでください」

P「わるい。だがみんなを信頼しているからこそ引き受けたんだ」

P「今回の件で俺がいなくてもみんなは成長できることを証明してくれた。
  俺の力なくしてもトップアイドルを目指していける」

律子「……なんか、別れ際の台詞みたいに聞こえるんですけど」

P「俺が想定していた以上に律子の腕が確かだったってことだ」

律子「……」

P「今年は律子のやりたいようにプロデュースしてみるといい。
  俺が全力でバックアップするから」

律子「あ、ありがとうございます……//」モジモジ

律子「そ、それにしても346プロのアイドルってどんな子たちなんでしょうねっ!」

P「かなり個性豊かな面々と聞いているけど」

律子「個性でうちのアイドルたちの右に出る者なんていないと思いますけど」

P「確かに」クスッ



………………
……………
…………
………
……

506 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 01:04:48.33 ID:FlIW9w0M0
 ――ガチャッ


P「お疲れさまです、ただいま戻りました」

小鳥「あ、お帰りなさい、プロデューサーさん。
   ちょうどいいタイミングで戻りましたね」

P「……?」

小鳥「つい先ほど、346プロのアイドルたちが到着したところです。
   みんな社長室にいますよ」

P「そうですか、どんな子たちだろ」

小鳥「プロジェクト資料も届いてますけど見ます?」

P「ありがとうございます」

P「……」ペラッ



P「……!」

507 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 01:05:50.46 ID:FlIW9w0M0
 ――コンコン ガチャッ!

P「失礼します!」

高木「おお、キミか」

高木「ちょうどいい、紹介しよう。
   彼がキミたちを担当するプロデューサーだ」



 「ふーん、アンタが私たちのプロデューサー?」




          ――――まぁ、悪くないかな




                    おわり

517 : ◆nx90flyJCa6p 2020/11/08(日) 10:09:31.83 ID:FlIW9w0M0
長いことお付き合いしていただき誠にありがとうございます
お暇なら大分昔に書いたこっちもよろしく


春香「ムラムラするなあ」

美希「神さま、お願いします」

508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/08(日) 01:16:59.20 ID:zugngacLo
真よき物語でした
お疲れさま、ありがとう

510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/08(日) 01:53:05.96 ID:w0Cn4U+go
乙!
いやー、綺麗に纏まりましたな

516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/08(日) 03:51:03.86 ID:GDbEldho0
お疲れさまでした!
Pが「ちょっと違う世界」に転移してプロデュースするSSは色々と名作があるけど
これも本当に素晴らしい名作でした

最初の時の記憶の混同のゾクゾクするホラー感が良かったです
向こうの世界ではまた元のPに戻ったのかな



SS速報VIPに投稿されたスレッドの紹介です

元スレ: P「あいつらに会いたい」【後編】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1603119079/


コメント
13899: 2020/11/13(金) 06:48
良き
13923: 2020/11/28(土) 20:25
ぶっちゃけ名作だと思う
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