3 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:04:54.279 ID:
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タプリス「……ッ」ガクガク
女性「危なかったわね」
女性「ごめんなさい、突然タックルしてしまって。大丈夫? 怪我はない?」
タプリス「あ……は、はい……大丈夫です」
タプリス「助けていただいて、ありがとうございます!」
女性「いえいえ」ニコッ
サターニャ「何よ今の……ぜんぜん見えなかったじゃない……」
サターニャ「あなた、いったい今、何をしたのよ!」
女性「何と言われましても……ただ、タックルをしただけですよ」
サターニャ「タ、タックルですって? ふ、ふざけないで!」
サターニャ「突然、あの子が目の前から消えたのよ!」
サターニャ「あんなスピード、普通出せるわけ……」
女性「でしたら、もう一度やってみましょうか?」
サターニャ「え?」
シュンッ ドンッ
サターニャ「なはっ!?」
ズサァァァァ
女性「これで、信じていただけました?」
サターニャ「な、なによこれ。気づいたら、体が飛んで……」
女性「ごめんなさいね。立てますか?」
サターニャ「え、ええ」
4 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:06:23.386 ID:
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タプリス「さおりさん、ですか。レスリングって、わたし、よくわかりませんけど」
タプリス「そのおかげで、あれだけのスピードが出せるんですね」
女性(以下さおり)「ええ、もちろん日々の練習は欠かせませんけどね」
サターニャ「……」
タプリス「胡桃沢先輩? どうしました?」
サターニャ「この人がいなかったら……」
タプリス「え?」
サターニャ「私だけだったら……あんたを助けられなかった……」
タプリス「せ、先輩?」
サターニャ「お願い、さおり! ……さん」
サターニャ「あのタックルを、私にも教えて!」
タプリス「先輩!? な、何を言って……」
さおり「……どうして、タックルを教わりたいの?」
サターニャ「私……強くなりたいの」
サターニャ「あなたには言えないけど、ある野望のために」
サターニャ「私は強くならなきゃいけないのよ!」
さおり「……」
サターニャ「さっき鉄パイプが落ちてきた時……」
サターニャ「頭ではわかってたのに、体が動いてくれなかった……」
サターニャ「正直、自分の弱さを実感したわ」
5 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:07:55.636 ID:
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サターニャ「でも、あのタックルさえあれば!」
サターニャ「そんな弱い自分を、乗り越えられるって思ったのよ!」
サターニャ「だから、お願い! 私にタックルを教えて!」
さおり「……あのタックルは、普通に努力しただけでは、会得することはできません」
さおり「それこそ、血の滲むような訓練の末に編み出されたもの」
さおり「あれを、習得するということは、つまり……」
さおり「死すらも覚悟しなければならない、ということです」
サターニャ「……ッ」
さおり「それでもあなたは、あのタックルを習得したいですか?」
サターニャ「……上等じゃない!」
サターニャ「そんなの乗り越えられないようじゃ、トップになんか辿り着けないわ!」
サターニャ「どんなにつらい訓練だって、やりきってみせるわよ!」
さおり「ふふっ、あなた、面白い方ですね」
さおり「なんだか、昔の自分を思い出しました」
さおり「良いでしょう。あなたに、あのタックルを伝授します」
サターニャ「ほんと!?」
さおり「ええ。その代わり、私のことはコーチと呼んでください」
サターニャ「わかったわ、コーチ!」
タプリス「あはは……胡桃沢先輩は、一度決めたら、曲げませんからね……」
6 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:09:25.520 ID:
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タプリス「ところで、さおりさんは、この街に何故いらっしゃったんですか?」
さおり「この街で二ヶ月後に開かれる大会の、会場の下見に来たのよ」
サターニャ「大会、ですって?」
さおり「ええ、あらゆる猛者たちが集う武道大会」
さおり「そのレスリングのシード枠に、私が選ばれてね」
タプリス「シード枠って……さおりさん、やっぱりすごい方なんですね……」
サターニャ「その大会って、私も出ることはできるのかしら」
タプリス「せ、先輩……二ヶ月後ですよ? さすがにそれは……」
さおり「一般参加枠なら、まだ募集してるはずよ」
サターニャ「じゃあ、私も参加するわ!」
サターニャ「そして大会でコーチと戦って、勝ってみせる!」
タプリス「いやいやいや……」
さおり「本当に面白い子ね。でも、目標があるのは良いことだわ」
さおり「その勝負、受けて立ちます。ただし私と当たるまで、あなたが勝ち残れたらね」
サターニャ「絶対に勝ち進んでみせるわよ!」
さおり「ふふっ、待っているわ」
さおり「……そうだ。せっかくだし、大会までの調整をこの街で行うことにしましょう」
さおり「それなら、あなたの相手もできるしね」
タプリス「それは胡桃沢先輩にとっては助かりますけど、良いんですか?」
さおり「ええ、会場の空気に慣れておきたいし」
サターニャ「それじゃあ、さっそく特訓よ!」
タプリス「はぁ……先輩が教わる側なんですからね?」
7 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:10:57.996 ID:
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-翌日早朝 舞天市郊外の山道-
タッタッタッ
サターニャ「ぜぇ……ぜぇ……」
さおり「こんなランニングでバテてるなんて、あなた、口だけだったの!?」
サターニャ「そんなことないわ、余裕よ余裕!」
タプリス「すごい……こんなアップダウンの激しい道をダッシュだなんて……」
さおり「瞬発力をつけるには、まず体の基礎を作らないとダメだからね」
さおり「といっても、胡桃ちゃんは元々、身体能力は高いみたいだし」
さおり「このくらいは、こなしてくれないと」
タプリス「あはは……わたしは見てるだけで、疲れてきそうですが……」
さおり「それにしても、千咲ちゃんは、胡桃ちゃんの学校の後輩なんだっけ?」
タプリス「は、はい、そうです」
さおり「別に練習にずっと付き合わなくても、良いと思うんだけど」
タプリス「それは、そうなんですが……」
タプリス「なんというかこう、放っておけないといいますか」
タプリス「そばで見ていたいといいますか……」
さおり「見ていたい、ね」
タプリス「ええ、胡桃沢先輩って、いつも滅茶苦茶なことばかり言ってるんですけど」
タプリス「でも最後には、それを成し遂げちゃう力があって」
タプリス「魅せられちゃうんですよね、なぜか」
さおり「なるほどね、オーラ、みたいなものなのかしら」
タプリス「そんな大層なものではないと思うんですけど……」
8 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:12:25.594 ID:
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タプリス「ですから、わたしにできることがあれば」
タプリス「いつでも言ってください! お手伝いします!」
さおり「ふふっ、わかったわ。千咲ちゃんは、先輩思いの良い子ね」
タプリス「そ、そんなことは……」
サターニャ「はぁ……はぁ……、言われた回数、終わったわよ……」
さおり「遅い! もう3セット追加!」
サターニャ「はぁ!? 嘘でしょ!?」
さおり「ほら、さっさといく!」
サターニャ「……ま、負けないんだからぁ」
タッタッタッ
さおり「千咲ちゃんがさっき言ったこと、少しわかる気がする」
タプリス「えっ?」
さおり「あの子って、何かを持っている、そんな感じがするのよね」
さおり「ふふっ、かわいい顔をして。これから、しごき甲斐があるわ……」
タプリス「あはは……」
サターニャ「ぜぇ……ぜぇ……」
-数日後 舞天市郊外の山-
さおり「今日から、体幹を鍛えるトレーニングを追加するわ」
サターニャ「体幹?」
さおり「体幹とは体の中心、基礎となる部分のことよ」
さおり「すべての動作に影響してくるから、重要なトレーニングの一つね」
タプリス「具体的にはどのようなことをするんですか?」
9 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:13:55.388 ID:
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タプリス「せ、先輩、重くないですか?」
サターニャ「重いに決まってるでしょ」
タプリス「ひ、ひどい……そこまで重くはないと思うんですけど」
サターニャ「自分と同じくらいの背負ったら、誰だって重いって思うわよ」
さおり「ほら、無駄口叩かない!」
さおり「そのまま、千咲ちゃんをおぶって、山道の登り降りよ!」
サターニャ「え!? このままずっと!?」
さおり「もちろん。人の重さっていうのは、うまくバラけているから」
さおり「普通の重りを使うよりも、効果的なのよ」
タプリス「す、すみません、先輩……」
サターニャ「別にあんたが謝る必要ない。それより……」
タプリス「え?」
サターニャ「練習付き合ってくれるのは、感謝してるわ」
タプリス「え、えと……お気になさらず、です……」
タッタッタッ
サターニャ「はぁ……はぁっ……」
タプリス(結構、揺れが激しいですし……わたしも、振り落とされないよう)
タプリス(力を込めるので、疲れてきました……)
10 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:15:25.239 ID:
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タプリス(でも、なんですかね……)
ピトッ
タプリス(先輩の背中……すごく熱いですけど、安心できるといいますか)
タプリス(それに、この匂い……なんだか、好きかもしれません)
タプリス(先輩が頑張っているのに、何を考えてるんでしょう、わたしは……)
ぎゅぅぅ
サターニャ「ぐえええっ!!」
タプリス「えっ?」
サターニャ「首締めるんじゃないわよ! 殺す気なの!?」
タプリス「ご、ごめんなさい~!」
サターニャ「ったく……、まだ重いって言ったの気にしてるの?」
タプリス「え? そんなことは……」
サターニャ「あんたは、なんか体が柔らかいから」
サターニャ「おんぶしてても、そんなに痛くないし、悪い気はしないわ」
タプリス「そ、そうですか……」
サターニャ「と、とにかく、まだまだいくわよ!」
サターニャ「舌噛まないように注意してなさい!!」
タプリス「は、はい!」
さおり「ふふっ、まぁこういうのも、悪くはないわね」
さおり「千咲ちゃん、彼女の原動力になってくれれば良いのだけど」
11 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:16:54.078 ID:
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タプリス(こうして、さおりさんの地獄のような特訓メニューの数々を)
タプリス(胡桃沢先輩は、ヘトヘトになりながら、こなしていきます)
タプリス(わたしや、事情を知った他の先輩たちも、フォローをしつつ)
タプリス(時には弱音を吐く胡桃沢先輩を励ましながら)
タプリス(つらい日々を乗り越えていきました)
タプリス(その努力の甲斐もあり、ついに胡桃沢先輩は)
タプリス(さおりさんの必殺技である、ノーモーションタックルを)
タプリス(会得することができたのです)
タプリス(ここまで短い期間での習得は、本当にすごいことらしく)
タプリス(教えていたさおりさんも驚いていました)
タプリス(それからは、さおりさんと二人で練習試合をする日々が続き)
タプリス(あっという間に時は流れ……)
タプリス(武道大会当日の朝を迎えました)
-武道大会 会場-
サターニャ「ついに、この時が来たわね……」
さおり「よく耐え抜いたわね、私の特訓に」
サターニャ「ありがとう、コーチ」
サターニャ「私の力が、この大会でどれだけ通用するかはわからないけど」
サターニャ「絶対にコーチと戦うまで、勝ち進んでみせるわ!」
さおり「ええ、待ってる」ニコッ
12 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:17:51.843 ID:
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-武道大会 会場 観客席-
ガヴリール「それで、大会ってトーナメント方式なのか?」
タプリス「えっと……先ほど抽選が終わったんですけど」
タプリス「全部でABCDの4つのブロックに分かれてのトーナメント方式で」
タプリス「各ブロックの一位が、準決勝で戦うみたいです」
タプリス「胡桃沢先輩がBブロックで、さおりさんが……」
タプリス「Aブロックなので、直接対決は準決勝ですね」
ヴィーネ「サターニャが、そこまで勝ち進んだら、よね……」
タプリス「ええ、そうです……」
ラフィエル「さおりさんはシードですし、優勝候補の一人と言われていますから」
ラフィエル「準決勝までは確実に勝ち上がるでしょうね」
タプリス「はい、おそらく……」
ガヴリール「ルールって、相手を場外に出すか、ダウンさせるか」
ガヴリール「参ったって言わせるか、だっけ?」
タプリス「はい、そうです」
ヴィーネ「だとすると、レスリングって結構有利なのかしらね」
ガヴリール「どうだろな。相手がそこまで近づけさせてくれるか、次第じゃないか?」
タプリス「あっ! 胡桃沢先輩の一回戦、始まるみたいです!」
13 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:20:02.321 ID:
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司会者「Bブロック、第一試合、始めっ!」
カーンッ
女レスラー「ふんっ、こんなひょろひょろの小娘が相手だなんて」
女レスラー「ナメられたものだわ!」
サターニャ「……」
ガヴリール「おい、サターニャのやつ、微動だにしないぞ」
ヴィーネ「緊張しているのかしら」
タプリス「いえ、違います。これは……」
女レスラー「瞬殺! 滅殺!」ダッ
サターニャ「……ッ」
シュンッ
女レスラー「え? 消え――」
ドゴォォォォッ
女レスラー「ぐわぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
ガヴリール「なっ!?」
ヴィーネ「相手が勝手に場外に吹っ飛んでいったわ!」
ラフィエル「な、なにが起きて……」
14 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:22:02.734 ID:
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タプリス「勝手に、ではありません」
ヴィーネ「えっ?」
タプリス「あれが、胡桃沢先輩が会得した……ノーモーションタックルです」
ガヴリール「ノーモーション、タックルだって?」
タプリス「ええ。あれは、事前動作が一切ない、超高速タックル」
タプリス「予測不能、回避不可、高威力、の三拍子そろった必殺技です」
ガヴリール「なんだよそれ……最強じゃんか」
ラフィエル「それが、さおりさんの強さの秘訣なんですね……」
タプリス「もちろん、それを繰り出すためには、相応の体作りが必要です」
タプリス「この二ヶ月の半分以上を、胡桃沢先輩は、それに費やしてきました」
ヴィーネ「でも、たった二ヶ月で、そんな……」
タプリス「さおりさんも驚いていました。この短期間で、ここまでの成長を遂げた」
タプリス「胡桃沢先輩の才能に……」
ガヴリール「体力馬鹿もここまで極まると、清々しいな……」
カンカンカーンッ
女レスラー「」
司会者「勝者! 胡桃沢!」
サターニャ「……ふっ、当然!」
さおり「ふふっ、これは……ひょっとする、かもしれないわね」
15 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:24:04.716 ID:
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タプリス(一回戦を見事に勝利した胡桃沢先輩は)
タプリス(その後も、ノーモーションタックルを武器に、快進撃を続けます)
タプリス(さおりさんの方も、圧倒的な試合内容で白星を重ねていき……)
タプリス(ついにお二人は、準決勝で激突することとなりました)
-武道大会 準決勝-
サターニャ「……勝ち進んできたわよ」
さおり「……そうね」
サターニャ「私の全てを賭けて、あんたを倒してみせるわ、コーチ!」
さおり「ふふっ、私も燃えてきたわ」
サターニャ「……」
さおり「胡桃ちゃんのような子を見るとね、すぐに倒したくなるのよ」
さおり「なんでこんな、カワイイ子が同じ舞台にいるんだ、ってね」ギロッ
サターニャ「……」ゾクッ
サターニャ(こ、これが、コーチの本気……まるで獲物を狙う猛獣のようね)
サターニャ(だけど私だって……絶対、負けないわ!)
司会者「それでは準決勝、一試合目! 始めっ!」
カーンッ
サターニャ「……」ジリッ
さおり「……」ジリッ
16 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:26:06.761 ID:
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サターニャ(コーチは絶対に、初手でタックルを撃ってくる)
サターニャ(ノーモーションタックルは……)
サターニャ(予測不能、回避不可、高威力の必殺技。どうせ、当たるのなら……)
サターニャ(カウンター、それしかない!)
さおり「……ッ」
シュンッ
サターニャ(来たッ!)
ガシッ
サターニャ(よし、掴んだッ! このまま――)
さおり「……」ニヤッ
グィィィィッ
サターニャ「あがっ!?」
サターニャ(ガ、ガードごと、押し込まれるッ!?)
さおり「せいやっ!!」
ドゴッ ズサァァァァ
サターニャ「ぐぅぅぅぅぅぅっ!!!」
司会者「おおっと! 胡桃沢選手、吹っ飛ばされた!」
タプリス「せ、先輩!!」
グッ
サターニャ「うぐっ……はぁ、はぁ……」
司会者「これは……、胡桃沢選手! 足一つ分、手前で持ちこたえました!」
17 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:28:05.331 ID:
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さおり「……これを耐え抜いた人は、片手で数えられるくらいしかいないわ」
サターニャ「ぜぇ……ぜぇ……そ、それは……どうも」
さおり「カウンター、いい判断ね。だけど……」
さおり「私に挑んでくる人は皆、このタックルを熱心に研究して対策をしてくるのよ」
さおり「でも私は、そんな人たちを全員……、このタックルで倒してきた」ギロッ
サターニャ「……ッ」
サターニャ(圧倒的な場数の違い……それに、コーチのタックルは)
サターニャ(予測不能、回避不可、高威力、に加えて、ガードも崩される……)
サターニャ(差し詰め……ノーモーションタックル・破、ってところかしら)
サターニャ(これが、私とコーチの実力の差、だというの……)
タプリス「胡桃沢先輩! 諦めちゃダメです!」
サターニャ「タプリス……」
タプリス「わたしとの練習を思い出してください!!」
タプリス「先輩には先輩の良さがあるってこと! わたしは知ってますから!」
サターニャ「……ッ」
タプリス「誰よりも先輩が頑張ってきたこと、知ってますから!」
サターニャ「……そうね、思い出したわ!」
サターニャ「見てなさい! この、サタニキア様の真の実力を!」
タプリス「はいっ!」
さおり「……次の一撃で、終わりにしてあげる」
サターニャ(私が唯一、コーチに勝っている点、それはッ!)
サターニャ「いくわよ!」
18 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:30:01.216 ID:
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シュンッ ドゴッ
さおり「ぐっ!?」
シュンッ ドゴッ
さおり「……み、見えないタックルがッ」
シュンッ ドゴッ
さおり「あらゆる方向から、当たってッ!?」
タプリス「胡桃沢先輩がさおりさんに唯一、勝っている点、それは……スピード」
タプリス「ノーモーションタックルで相手に接触後、体をひねって反転飛びし」
タプリス「逆方向から再度、ノーモーションでタックルを繰り出し続ける」
タプリス「その名も、ノーモーションタックル・舞、です!」
ヴィーネ「速すぎてよく見えないわ……」
タプリス「先輩のスピードと体のしなやかさがあってこそ、可能にした」
タプリス「……先輩オリジナルの必殺技なんです」
ガヴリール「でも、普通の人なら一発で吹っ飛ぶようなタックルなんだろ?」
ガヴリール「それを何度も食らってるのに、なんで、あの人は吹っ飛ばないんだよ」
タプリス「それは……、さおりさんの桁違いの体幹力に他なりません……」
ラフィエル「しかし、そのダメージはボディブローのようにジワジワと」
ラフィエル「さおりさんの体力を奪っている。そうですね? タプちゃん」
タプリス「ええ、そのはず、です……」
20 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:32:01.966 ID:
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シュンッ ドゴッ
さおり「ぐッ!」
サターニャ(効いてる! あのコーチを追いつめているわ!)
サターニャ(この調子で、一気に――)
さおり「いい動きです、しかし……」
サターニャ「……ッ」
さおり「一撃が、軽いッ!!」
ブンッ ドガッ
サターニャ「かはっ!!」
ズサァァァッ
タプリス「なっ!? ど、どうして先輩の位置が……」
サターニャ「……」
さおり「あなたの動きは、単調すぎるのです」
タプリス「ま、まさか……動きを見るために、ワザと食らっていた……んですか?」
タプリス「そんな……そんなのって……」
さおり「もう少し打撃に重みがあったら、私を追いつめることができた」
さおり「……かもしれませんね」
サターニャ「……」フラッ
さおり「おや、まだ立ちあがる力が残っていますか」
21 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:34:11.747 ID:
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タプリス「先輩、もういいです! 先輩は、死力を尽くしました!」
タプリス「だからもう……立たなくていいんです!」
サターニャ「……負けない」
さおり「えっ」
サターニャ「私は、絶対に負けられない……」
さおり「あなたをそこまで突き動かすのは、一体何なんです」
サターニャ「強すぎるあんたには、わからないでしょうね」
さおり「……」
サターニャ「目の前にいた後輩を守れなかった、私の気持ちなんて!」
タプリス「……ッ」
サターニャ「私は誓ったのよ、誰よりも強くなるって」
サターニャ「誰かを守れる強さを手に入れるって、決めたのよ!!」
タプリス「先輩……」
サターニャ「……諦めない限り、私は負けない。負けないんだから!」
さおり「……そう、わかったわ」
さおり「それじゃあ……」
さおり「私の全力タックルで、あなたを叩き潰してあげるッ!」
サターニャ「望むところッ!! 私の本気タックルを見せてやるわッ!!」
22 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:35:59.683 ID:
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さおり「……」ジリッ
サターニャ「……」ジリッ
タプリス「……お願いっ」ギュッ
さおり「……ッ」ダッ
サターニャ「……ッ」ダッ
シュンッ ガッ
ドゴォォォォォッ
サターニャ「……」
さおり「……」
サターニャ(これが……背負っているモノの、ちが、い――)
サターニャ「……ごふっ」
バタンッ
カンカンカーンッ
司会者「胡桃沢選手、ダウン! 勝者、さおり選手!」
ワァァァァァ パチパチパチパチッ
タプリス「先輩っ!」ダッ
ガヴリール「おい、タプリス! 危ないぞ!」
タッタッタッ
タプリス「先輩! 胡桃沢先輩! しっかりしてください!」
23 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:38:10.242 ID:
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サターニャ「……ごめん、負けた」
タプリス「いいんです、そんなの……ぐすっ、いいんですってば……」
ぎゅぅぅ
サターニャ「……ちょっと、痛いって」
タプリス「先輩は、格好良かったんですっ……そして、本当に強かったんですっ」
タプリス「わたしにとって先輩は、一番なんですからっ」
サターニャ「……泣くんじゃないわよ、バカ」
タプリス「だって……だってぇ……」
サターニャ「……次は必ず、守ってあげるわ」
タプリス「ぐすっ……はい……はいっ……」
さおり「胡桃ちゃん、ナイスファイト」
サターニャ「コーチ……、試合、ありがとうございました」
さおり「やっぱりあなた、面白い子だわ」
さおり「私と同じだけ練習をしていたら、危なかったかもしれない」ニコッ
サターニャ「ほんとはそんなこと思ってないくせに……よく言うわね」
さおり「ふふっ、バレた?」
サターニャ「ねえ、コーチ」
さおり「何かしら」
サターニャ「自分を将来、負かせてしまう弟子、いらない?」
さおり「そんな人はいないと思うけど、そうね……考えておきましょうか」
サターニャ「次は絶対に、負けないんだから」ニコッ
さおり「ええ、その時も、受けて立つわ」ニコッ
24 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:40:06.885 ID:
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ラフィエル「お疲れ様です、サターニャさん。いい試合でしたよ」
サターニャ「何、あんたたちもいたの」
ヴィーネ「まさかサターニャが準決勝まで勝ち上がるとは思わなかったわ」
ガヴリール「ああ、さすが運動馬鹿だな」
サターニャ「馬鹿って何よ! このアホ天使!」
ガヴリール「あ? なんだって!?」
タプリス「もうやめてください、胡桃沢先輩。ケンカなんてダメですよ」
サターニャ「……わかったわよ」
ヴィーネ「あのサターニャが、タプちゃんの言うことは聞くのね……」
ラフィエル「あらあら、うふふ」
タプリス「ありがとうございます、胡桃沢先輩」ニコッ
サターニャ「ふ、ふんっ。と、ところで、コーチの次の相手は誰なのかしら」
ガヴリール「ああ、決勝か? さっき準決勝の、もう一試合が終わったみたいだけど」
ヴィーネ「随分早く終わったのね。でもどうせ決勝は、さおりさんの圧勝じゃないの?」
タプリス「あ、始まるみたいですよ!」
司会者「それでは、決勝戦の始まりです!!」
司会者「両者、前へ!!」
さおり「……」スタスタ
ゼルエル「……」スタスタ
ガヴリール「はぁっ!? あれ、ゼルエル姉さんじゃないか!!」
25 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:41:59.156 ID:
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ゼルエル「おお、ガヴリール。お前も来ていたのか」
ガヴリール「ど、どうして姉さんが、試合に?」
ゼルエル「ん? そんなの決まってるだろう」
ガヴリール「え?」
ゼルエル「これは、天界一武道会、なのだから」
ガヴリール「は? 天界一?」
ゼルエル「まさに、私のためにあるような大会! これに出ずして何とする!」
タプリス「で、でも、さおりさんは人間じゃ……」
さおり「ああ、私は人間枠の中にある、レスリング枠から出ているんです」
タプリス「じゃあ今までの相手の中には、天使が混ざってたってことですか……」
ヴィーネ「それを勝ち進んだ、さおりさんとサターニャっていったい……」
ラフィエル「悪魔であるサターニャさんが、出場できたのも驚きですね……」
さおり「あなたは……、ふふっ、相手にとって不足はありませんね」
ゼルエル「ふっ、私も久しぶりに、本気を出せそうだ」
司会者「それでは、試合開始!」
シュンッ
ガヴリール「え? 二人が消えた?」
サターニャ「上よ!」
26 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:44:54.936 ID:
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シュンッ バシッ シュンッ バシッ
シュバババババッ
ヴィーネ「な、なにこれ……」
タプリス「何も見えません……」
サターニャ「二人が、空中を高速移動しながら、殴り合っているわ……」
ガヴリール「これ、球を集める漫画で見たことあるぞ……」
ラフィエル「もうレスリングってレベルじゃないですね……」
サターニャ「私との勝負なんて、茶番だったんじゃない!」
ゼルエル「やぁぁぁぁぁっ!!」
さおり「はぁぁぁぁっっ!!」
ズドンッ
シュタッ
タプリス「あ、下に戻ってきました!」
ゼルエル「……すごいな。君は、本当に人間か?」
さおり「ふっ、そういうあなたこそ、ただの天使だとは思えない」
ゼルエル「力を温存していても、埒が明かないな」
ゼルエル「一気に決めさせてもらうぞ!」
さおり「その言葉、そっくりそのまま、お返しします!」
27 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:46:05.162 ID:
N76dqjZG0.net
二人「はぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
ピシッ ピシピシッ
サターニャ「く、空気が、震えてる……」
タプリス「な、何が起きてるんですか!?」
ゼルエル「いくぞ!!」
ゼルエル「エ、ン、ジェ、ルゥゥゥゥ、波ぁぁぁぁぁぁっ!!!」
バシュゥゥゥゥゥッ
さおり「チャージ完了!!」
さおり「ア、ル、ソォォォォ、ビィィィィィィィィィムッ!!!」
ギュィィィィィンッ
サターニャ「うおっ――」
カッ
ガヴリール「まぶしっ――」
ドゴォォォォォォォォォォォン
28 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 21:48:15.128 ID:
N76dqjZG0.net
シュゥゥゥゥ
みんな「」
ゼルエル「これでも、無傷……か」
さおり「……あなたもね」
タプリス「……ハッ! い、いったい、なにが……」
ゼルエル「言っておくが、私はあと二回、変身を残している……」
さおり「私も見せましょうか。100%中の100%を……」
ゴゴゴゴゴゴゴッ
タプリス「あわ……あわわわわ……」
ゼルエル「いざ尋常に!!」
さおり「勝負!!」
タプリス「誰かあの二人を……止めてくださぁぁぁぁぁぁいっ!!」
おしまい
30 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 22:15:12.538 ID:
N76dqjZG0.net
タプリスはビリビリクラッシュメン
32 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 22:28:15.474 ID:0zkNNpDO0.net
おつおつ
サターニャちゃんは強い子
33 :
以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/24(水) 22:29:40.131 ID:lBuv35uP0.net
乙
途中からドラゴンボールになっていただと・・・
元スレ:
ガヴリール「千咲ちゃん、霊長類最強女子に命を救われる」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1495627394/
ペコリーヌ:M・A・O(出演), コッコロ:伊藤美来(出演), キャル:立花理香(出演), ユウキ:阿部敦(出演), 金崎貴臣(監督)