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春香「お伽話ですよ!お伽話!」

16 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 06:59:43.40 ID:RQKt+chkO
むかしむかしある所に、正直者の高木じいさんと意地悪な黒井じいさんが住んでいました。
二人は頬にぷっくりとした大きなコブを持っており、そのことをたいそう悩んでいました。

ある日のこと。
高木じいさんは街へいつものように人材探しへ出かけた帰り道、歩き疲れて一休みしておりました。

座っていても疲れがとれないものだから、少しばかりとしげみの陰で横になってしまい……
気付けばすっかり日は落ちて、辺りは真っ暗になっておりました。

灯りもなく家の方向もわからないまま、心細さに途方に暮れていた高木じいさん。
そんな時、どこからか声が聞こえてきました。

「くっ……!」

17 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 07:13:51.88 ID:RQKt+chkO
嫉妬に燃えているような、悲しみに暮れているような、とても複雑そうな声でありました。

他にすがるものもないので、高木じいさんはおそるおそる声のする方へ歩いていきました。
するとやがて、たき火の明かりらしきものが見えてきました。

人に会えた!
高木じいさんは思わず早足で近寄っていきましたが、火を囲んでいたのはただの人間ではありませんでした。

頭にはツノが生え、肌の色もとても人とは思えないものばかり。
ホワイト、イエロー、ブルーにレッド、ノーマルグリーン。
みんな綺麗だね。

それは鬼たちの宴でありました。
着物などは身につけず、獣の皮で胸や尻を隠しただけの野蛮な……
それはそれはティン!とくる光景でありました。

18 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 07:23:47.39 ID:RQKt+chkO
えらいところに迷い込んでしもうた!

高木じいさんは慌てて木陰に身を隠しましたが、どうやら色黒だったおかげで暗闇に紛れて見付からずにすんだようでした。
しかしいつ見つかるかわかったものではなく、高木じいさんは息を殺して様子を伺っておりました。

鬼たちは歌や踊り、自分たちの体つきや衣装を比べあっているようでした。
しかしよくよく見てみると、盛り上がる鬼たちの宴の中でただ一人、群れから離れている鬼がおりました。

千早「くっ……!」

体も雰囲気もブルーな鬼でありました。

もともと心根が優しく、ティンときては黙っておれない性格の高木じいさん。
つい食われてしまうかもしれない危険も忘れ、近寄って声をかけてしまいました。

19 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 07:35:57.10 ID:RQKt+chkO
高木「あー、キミキミ」

千早「……え? 私?」

高木「そう、君だよ君。どうして他のみんなから離れているのかね?」

千早「その体の色……見ない顔だけど、あなたも黒鬼なのね」

千早「……見ての通り、今日はオーディションの日。みんなが歌や踊り、それに見た目の美しさで競い合っているのよ」

高木「それならなおさら、どうして君も参加したいのかね?」

千早「くっ……聞くまでもないでしょう!」

ぷいと青鬼が視線を背けた先。
ちょうどその先では、今夜のオーディションのベスト3が決定したようでした。

20 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 07:42:46.01 ID:RQKt+chkO
あずさ「ありがとうございます~」

貴音「今宵、このような栄誉を頂いたこと……まこと、光栄に思います」

美希「今日の商品は何かな? ミキ、おにぎりがいいの!」


千早「くっ……!」


なるほどなるほど、鬼の世界の流行はVi偏重のようでした。

しかし、そこはティンときては黙っておれない高木じいさん。
それでは納得がいきません。

高木「ふーむ? 私には、君も表彰中の彼女たちに引けをとっているようには見えないがね」

21 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 07:53:44.47 ID:RQKt+chkO
千早「勝手なことを言わないで! 私だって歌の勝負なら負けはしないけれど、こんな体では見た目で勝ち目は……」

高木「いやいや、それこそ偏見というものだよ。君の引き締まった体は、それはそれで魅力的だ」

高木「なにせ私がティンときたからには間違いない」

千早「自信満々に何をそんな……私だって、あんな肉の固まりの有無で勝負が決まるのに納得は……!」

振り向いて声を荒らげた青鬼でしたが、そこではたと何かに気付いたように動きを止めました。

高木「どうしたんだね、急に……私の顔に何かついているかね?」

ついていました。
あろうことか、はたから見れば実に柔らかそうで弾力のありそうな見事なコブが。

千早「これよ! これさえあれば私だって……!」

社長「あ、君!? 何をするんだね!? やめ……」


ぶ ち ん


そこで高木じいさんの意識は途切れてしまいました。

24 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 08:04:18.65 ID:RQKt+chkO
翌朝。
たいそう心配して一睡もせずに待っていた小鳥さんと、何だかんだで人手を尽くして捜索にあたっていた黒井じいさんは、村のすぐ前で気を失っている高木じいさんを見つけました。

どこをどうさ迷ってきたのか、高木じいさんはなんとか自力で帰り着くことができたのでした。
そして、不思議なことに頬からはあの大きなコブが綺麗さっぱりなくなっているではありませんか!

やがて目を覚ました高木じいさんへ、黒井じいさんは詰め寄りました。

黒井「高木……いったいどんな手であのコブを消した? いや、昨夜お前に何があったというのだ?」

26 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 08:15:46.03 ID:RQKt+chkO
高木じいさんから話を聞いた黒井じいさんは、さっそく高木じいさんに道案内をさせて鬼たちのいた場所を訪ねました。
悪知恵の回る黒井じいさん、どうやら鬼に自分のコブも取ってもらえるに違いないと踏んだようです。

ほどなくしてたき火の跡が見つかり、そこで木陰に隠れて日が落ちるのを待ち……
やがて草木も眠るころ、今宵もたき火が起こり、どこからともなく鬼たちが集まってきました。

黒井「さて高木よ、話に出た鬼はどいつだ? どこにいる?」

高木「そうは言っても黒井よ。私もはっきりとは覚えていないが、私のコブを取った時に彼女はとても満足げだった。
探し出してもお前のコブまで取ってもらえるかは……」

と、その時。
また複雑な声が、今宵は火からさらに離れた草むらから聞こえてきました。

千早「くぅっ……」

27 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 08:23:55.59 ID:RQKt+chkO
高木「あー、キミキミ。昨日私からあんなに嬉しそうにコブを取ったというのに、今日はどうしてこんなに離れてしまっているのかね」

千早「どうしても何もないわ……自分が馬鹿らしく思えて」

膝を抱えた青鬼の、腕の隙間から覗く胸元。
そこには片方だけが不自然に膨らんだ、なんともアンバランスなバストが完成しておりました。

千早「一つだけでは役に立たないどころか、元よりひどい有り様で……きっと欲に目が眩んだ罰が当たったんだわ」

鬼の目にも涙。
その哀れむにも滑稽な青鬼の姿に、さすがの高木じいさんも何と声をかけていいか困ってしまいます。
しかし根性のねじ曲がった黒井じいさんは違いました。

黒井「案ずることはないぞ、鬼の娘よ!」

千早「誰……!?」

28 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 08:36:11.43 ID:RQKt+chkO
黒井「鬼の身とはいえ美を追求するその姿勢……称賛に値する!」

千早「その肌の色……見ない顔だけどあなたも黒鬼なのね」

千早「って、ああ! その頬は……!」

黒井「そう、お望みのもう一つがここにある。さあ、栄光を手にしたまえ!」

千早「で、でも……」


欲にかられた結果誕生してしまった片乳がよほどこたえたのか、青鬼はどうにも尻込みしてしまっているようでした。
しかし人の良い高木じいさんならいざ知らず、押しが勝負の黒井じいさんは一味違う。

黒井「欲深、大いに結構!」

千早「!?」

黒井「鬼の娘よ……毒を食らわば皿まで。一度踏み出してしまったものは悔やんでも仕方ない。
むしろ中途半端に立ち止まってしまう者が一番醜い!
一度欲にかられたならば、貫き通してこそ華も咲こうというものだ!」

千早「わ、私は……!」

29 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 08:47:27.55 ID:RQKt+chkO
真「今日のオーディションもあずささんで決まりかな」

亜美「ううっ……格差社会ですなあ」

真美「泣くな……真美たちには明日が、未来があるのだよっ……!」

春香「それじゃ、今夜のエントリーはここまでに……」

千早「待って!」


賑わっていたたき火の周りが水を打っように静まり、視線が一点に集まりました。

そこには先程までのいじめられっ子スタイルはどこへやら、威風堂々たる足どりの青鬼の姿が。
さらにその胸元には、細身の体にあるはずがなかった紫鬼も真っ青などたぷーんなバストが存在しているではありませんか!

そしてバストおかげで自信に満ち溢れた青鬼は、本来の実力を存分に発揮したボーカルアピールが可能となっていたのでした……!

30 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 08:55:32.18 ID:RQKt+chkO
亜美「ち……千早ねーちゃんが裏切っただと……!?」

真美「いや、逆に考えるんだ……諦めてはいけない、奇跡は起こると! 千早ねーちゃんは身をもって示してくれだのだ……!」

春香「でもそれはそれとして、凄い……この歌……」

そう、バストに目を奪われたことなどきっかけに過ぎず。
青鬼の透き通るような歌声は姿を越えて、鬼たちの心を揺さぶっていたのでした。


高木「さて、一件落着といったところかな。どれ、ここらで音無君の持たせてくれた弁当で腹ごしらえでも……」

黒井「む、それはもしや音無嬢の……? 高木、この場で一人占めは美しくない! 私にも寄越すべきだ!」

高木「ああ、こら! 急に押すな押すな、そんなにされると……!」

32 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 09:04:23.29 ID:RQKt+chkO
美しい鬼の歌声とは裏腹に、人間の争いは醜いもの。

高木じいさんの広げた竹の葉包みから、小鳥さんが愛情込めて握ったお弁当が転げてしまいました。
それは鬼たちの方まで転がっていき……


美希「おにぎりなのー!」

千早「……!?」


お弁当めがけて飛び出したフレッシュグリーンの影。
その体に足を取られ、青鬼の歌は中断。
さらに。


春香「ち、千早ちゃん……? その胸……」

千早「え? きゃあああっ!?」


なんということでしょう!
転倒の衝撃のせいか、豊満になったはずのバストはすっとんとん!とばかりに転げ落ち、元の大平原が広がっているではありませんか!

錯乱した鬼たちの怒声、罵声……
これには高木じいさんも黒井じいさんも、人の良し悪しに関わらず逃げざるをえませんでした。

33 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 09:11:16.29 ID:RQKt+chkO
さて、命からがら逃げ帰った高木じいさんと黒井じいさん。
夜が明けるころにようやく村に帰り着き、目に焼き付いた鬼たちの動乱の衝撃に、翌日は二人揃って寝込んでしまいました。

その次の日からはいつも通り仕事に出かけることができましたが、日の暮れる前にはしっかりと村へと帰り着き、鬼たちのもとへ向かうことはありませんでした。

次の日も、また次の日もそうでした。

そうして、村と街を行き来する道を外れないよう日々を過ごしていきました。

34 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 09:20:47.84 ID:RQKt+chkO
小鳥「社長……社長!」

高木「お? おお、何だね小鳥君?」

小鳥「何だね、じゃないですよ。どうしたんですか、このところ毎日ぼんやりして。
せっかくコブもなくなって過ごしやすくなったって喜んでいらしたのに」

高木「おお、そうだね……うん」

言われて、高木じいさんは自分の頬をさすりました。
そこはまるで最初からコブなんてなかったかのようにツルリとしていました。
けれどもその感触を手の平に感じる度に、あの青鬼の胸が頭をよぎるのです。

高木「私がティンときたのは……コブが胸につくまえの彼女だったはずだ」

35 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 09:29:11.23 ID:RQKt+chkO
夜。
小鳥さんもすっかり寝静まったころ。
高木じいさんは忍び足でそっと村を出ました。
暗い中ではあれだけさ迷った道でしたが、自然と足は確信を持って鬼たちのもとへ向くのです。

黒井「む……!」

高木「黒井、お前も……」

黒井「ふん、お人よしのお前と一緒にしてもらっては困るな! あの鬼の娘などどうでもいいのだ!」

黒井「ただ……頬が疼いてな。あんな物でも私の一部だ、落としたままでは寝覚めが悪い」

高木「はは、忘れ物を取りに行くだけの割には大荷物じゃないか」

黒井「ぐ……お前こそ人のことを言えない大荷物ではないか!」

36 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 09:41:29.34 ID:RQKt+chkO
鬼たちのたき火が見え始めたころ、あの鬼の声が聞こえました。
けれどもその声は以前と似ているようで似つかない、深く沈んだ声でした。

千早「……っく、ぐすっ……」

高木「今日はこんなに離れてしまって……どうして君はオーディションに入っていかないんだい?」

千早「だって、せっかく手に入った胸が落ちてしまったのよ……」

黒井「ふん、欲を貫き通せと言ったはずだがな……お前の欲はその程度か」

千早「だって、何度もつけ直そうとしたけれど……何回やってももうくっつかないのよ」

青鬼は抱えた膝に顔を埋めたまま、二人の顔を見ようともしませんでした。
高木じいさんと黒井じいさんは、顔を見合わせて頷きました。

高木「何、大丈夫だとも。もともとあんな物、君には必要なかったんだ」

黒井「さっさとその無益な行為をやめるべきだ。せっかくの喉を潰されてはたまらん」

千早「……え?」

ようやく顔を上げた青鬼の前で、二人が荷物を広げます。

高木「言っただろう、ティンときたって」

黒井「私は忘れ物を取りにきただけだ……中途半端は醜いのでな」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/27(土) 09:50:26.57 ID:RQKt+chkO
真「千早、今日も来ないね……」

亜美「ちかなないよ……千早ねーちゃんはやってはならないことをやっちまったんだ」

真美「真美たちの期待を裏切った……上げて落としたんだ!」

春香「千早ちゃん……」


----♪----


春香「……!」


その時、どこからともなく歌声が響きました。

あの夜と同じく透き通った、しかしあの夜と違い、鋭く芯の通った声が。


黒井「ふ……元より、あの娘に無駄な肉塊など蛇足だったのだ」

高木「ああ……私はありのままの彼女にティンときたんだ」


青鬼の胸に膨らみはありませんでした。
その代わり。

39 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 10:02:01.64 ID:RQKt+chkO
春香「綺麗……」


その姿は鬼のものではありませんでした。

高木じいさんが髪を結い、頬と唇に艶を。

黒井じいさんが絹を仕立て、着物と足袋を。

二人に背を押され送り出された青鬼は、本当の自信を手にしていました。


高木「……さて、忘れ物は無事に拾えたか」

黒井「ふん、ようやく顔のバランスが取れたわ」


立ち去る二人の頬には元通り、大きなプックリとしたコブがついていました。

40 :こぶとり社長 2012/10/27(土) 10:06:26.51 ID:RQKt+chkO
それから。
小鳥さんをはじめ村の者は、なくなったはずのコブを再びつけて帰った二人にたいそう驚いたそうです。

けれども、もう二人がコブを気にして悩むことはなかったといいます。


また時折、草木の寝静まったころ。
どこからともなく風に乗り、村に透き通るような歌声が届くようになったとのことです。


おしまい。

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/27(土) 10:13:37.53 ID:v+UWF3eA0

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/27(土) 10:19:15.44 ID:lgaoExRI0
どっちかっていうとこぶとりちーたん、



元スレ: 春香「お伽話ですよ!お伽話!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1351280195/


[ 2020/04/17 22:55 ] アイマスSS | TB(0) | CM(0)
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