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小宮恵那「ね、先輩。キスしてあげよっか?」泉瑛太「は?」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 22:25:19.60 ID:Q5QCi+N6O
青空に吸い込まれる白球を肉眼で追っても、被写体の姿はきちんとセンサー中央に収まったまま、ファインダーを覗けばそこに居る。

一眼レフとレンジファインダーのカメラの違いは、ファインダーの視界に顕著に表れる。

レンジファインダー式のカメラはレンズとファインダーから伝わる実像に相違があり、ファインダーから覗いた景色は撮れない。
対して、一眼レフカメラはミラーを利用してレンズから入った実像をそのままファインダーから覗くことが出来る。

一眼レフの『一眼』はカメラのレンズのことであり『レフ』はレフレックスの略である。
レフレックスとは、先述したレンズから入った光をペンタプリズムと呼ばれる合わせ鏡によってファインダーに映す機構のことであり、これを光学式ファインダーと呼ぶ。

昨今、デジタル化が進み、ミラーレスの電子式ファインダーが搭載されたカメラもある。

液晶ビューファインダーと呼ばれるこの機構はその名の通り、レンズ越しの映像をデジタル処理したのちファインダー内の液晶に出力することで一眼レフと同じ効果を得られる。

「でも、私は自分の目で被写体を見たい」

あくまで個人的な意思として、私は被写体をデジタル処理するよりも肉眼で見たい派だ。

2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 22:28:15.02 ID:Q5QCi+N6O
「泉先輩」
「ん? なんだ、小宮か」

泉瑛太。
二学期の終わりに両親の都合により私の通う柏尾川高校に転校してきた、1学年上の先輩。

「先輩はいつも眠そうだよね」
「ほっとけ」

制服がブレザーである柏尾川高校のものではない見慣れぬ学ランを着た泉先輩は偶然見かけたその時から気になる存在ではあったものの、当初はあくまで好奇心に過ぎなかった。

「またあの時みたいにカッコいい顔してよ」
「あの時?」
「この写真を撮った時」

あの日、グラウンドでファインダー越しに見た先輩は輝いていて私の好奇心を超越した。

「あの時はあの時だろ」
「なにそれ、どういう意味?」
「過ぎ去った過去は戻らないという意味だ」

そんなじしくさいことを抜かす先輩が、あの時撮影した被写体とは誰も信じないだろう。

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 22:42:37.44 ID:Q5QCi+N6O
「また相馬先輩と勝負する予定ないの?」
「あんなこと、何度もやるわけないだろ」
「ちぇっ……つまんないのー」

つまらない物言いにむかついて、パシャリ。

「お前、また勝手に……」
「うん! 我ながら上出来! ほら、見て見て」

勝手に写真を撮られたことに文句を言う泉先輩を黙らせるべく、自信作を見せつける。

「別に、普通に勉強してるだけじゃん」
「なんか、一生懸命な横顔がいいなって」
「……貶したり褒めたり、忙しい奴だな」

さっきはじじくさい発言で幻滅させた泉先輩だけど、推薦で大学が受かっている癖に、好きな女子を追いかけて彼女が通う別な学校を受験するために努力する横顔は素敵だった。

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 22:44:03.43 ID:Q5QCi+N6O
「泉先輩」
「今度はなにさ」
「好きですよ」

一度好きだと言ってから、躊躇いはない。
むしろこうして定期的に好意を告げておかないと、泉先輩のファインダーに入れない。

「……返事、待てないか?」
「ううん。待つよ。いつまでも、ずっと」

告白の返事は結果発表のあと。
私の写真のコンクールの結果も含めて。
泉先輩が志望校に合格するのを待っている。

「なあ、小宮」
「んー? なに? 喉渇いた?」
「いや、そうじゃなくて……」

カリカリとシャーペンを走らせながら、何やら言いづらそうに口ごもる先輩の顔が赤い。

「もしかして、トイレ?」
「茶化すなよ」
「じゃあ、なに?」

あえて茶化すと先輩は覚悟を決めたようで。

「あのさ」
「うん」
「俺、今まで女子にモテたことなくて……」
「だろうねー」
「どういう意味だよ、おい」

どういう意味もなにも、見たまんまだし。

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 22:45:50.83 ID:Q5QCi+N6O
「泉先輩はわかりづらいから」
「だから、どういう意味だよ」
「相馬先輩とは違うって意味」

被写体の泉瑛太は撮りづらい。
別に動きが早いわけでもないのにぼやける。
焦点距離が短く近づかないとピンボケする。

「どうせ、俺は春斗みたいにはなれないよ」
「あ、拗ねた」
「拗ねてない」

でも、近づけば近づくほど、目が離せない。

「ね、先輩。キスしてあげよっか?」
「は?」

思わずそんなことを口走るくらい、好きだ。

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 22:47:36.69 ID:Q5QCi+N6O
「先輩は要するに、自信がないんでしょ?」
「……ああ。ないよ、自信なんて」
「だから私が自信をつけさせてあげる」

よくそんな都合の良い言葉がポンポンと口から飛び出るものだと自分自身に驚く。

「私とキスすれば、きっと自信つくよ?」
「小宮……」

無論そんな根拠不明の妄言に手応えはなく。

「その気持ちだけ……受け取っとく」

ああ、もう。拒否られたのにほっとしてる。

「先輩のそういうところ、好き」
「お前のそういうところ……いいよな」

これはもう付き合ってるのではと錯覚する。

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 22:50:14.15 ID:Q5QCi+N6O
「心配しなくても大丈夫だよ」
「は? なにが?」
「泉先輩は大丈夫」
「だから、なにが?」
「だから、そのままで良いってこと」
「はあ? 全然、意味がわからないぞ」

自信がない男の子に元気を出させるにはキスするのがてっとり早いと本能的に思うけれど、それが出来ない相手ならば、致し方ない。

「泉先輩はわかりづらいけど、よく見ると良いところが沢山あって、そしてそれはちゃんと伝わってる。だから、大丈夫なんだよ」

想いを言語化して出力すると照れ臭そうに。

「お、おう……サンキュ」
「どーいたしまして!」

本当は、他のみんなに見せたくない。
私だけのファインダーで泉先輩を見たい。
他の人にはピンボケであって欲しい。
けれど、それは自分勝手なわがままだ。
むしろ、ピンボケで先輩を取られたくない。
だから、なるべく鮮明な姿にしてあげたい。

「私がなんで先輩に惹かれたか知りたい?」
「いいよ……照れ臭いから」
「まあまあ、そう言わずに聞いてよ」

故に私はわざわざそれを言語化してあげる。

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 22:52:02.16 ID:Q5QCi+N6O
「正直先輩は地味であんまりパッとしない」
「お前……酷すぎないか?」
「でも、一生懸命になれる人だから、好き」

どれだけ地味でパッとしなくて鈍くて不器用で情けなくても一生懸命な人間は輝くのだ。

「一生懸命な人は評価されるべきだと思う」
「小宮……」
「どれだけ迷惑がられて、余計なお節介と言われて、時には怖いとまで言われても、それでも先輩は報われるべきだと私はそう思う」

先輩のシャーペンが止まりふと顔が上がる。

「小宮」
「なに、先輩」
「俺もさ、小宮は報われるべきだと思うよ」
「っ……」

別に私のことじゃないのに。ほんとお節介。

「でも、どうなんだろうな」
「ん? なんのこと?」
「俺は報われるために努力してるのかな」

またわけのわからないことを。不器用め。

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 22:53:52.30 ID:Q5QCi+N6O
「泉先輩は夏目先輩に想いを告げるために努力してるんでしょ? 報われたくないの?」
「もちろんそれはそうだけど、それと結果は違うっていうか、あくまで過程だしな……」
「なにヘタれてんの! しゃきっとしろ!」

ここが泉先輩のダメな部分。分からず屋だ。

「違う。俺が言いたいのは、たとえ結果が伴わなくても、努力したことそのものに意味があるんじゃないかって、そういうことだよ」

綺麗事を。意味のない空虚な言葉に苛立つ。

「なにそれ。そんなの私は認めない!」
「小宮は俺を認めてくれたじゃないか。努力という過程を認めて、好きになってくれた。だからさ、俺はもう報われているんだよ」

たしかにそんな先輩が好きだけど。ずるい。

「じゃあ、私と付き合えばいいじゃん!」

思わず涙が溢れる。癇癪を恥じ入りながら。

「私のこの想いが先輩の努力に対する報いなら、素直にご褒美を受けとってよ!?」
「それは……ごめん……小宮」

今更失言に気づいても遅いよ。先輩のばか。

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 22:56:00.02 ID:Q5QCi+N6O
「悪かった」
「許さない。すっごく傷ついた」
「傷つけるつもりはなかった……ごめん」

涙を流した甲斐もあり、珍しく殊勝だ。
ここはひとつ、先輩をこらしめてやろう。
ぐしぐしと涙を拭い、にやりとほくそ笑む。

「ねえ、先輩。許して欲しい?」
「小宮……まさか俺を罠に嵌めたのか……?」
「今のは先輩が全面的に悪いじゃん」
「ぐっ……それは、そうだけど……」

嵌めるなんてひどい。徹底的に躾けてやる。

「許して欲しかったら言うことを聞いて」
「やっぱりそうなるのか……」
「この期に及んでまだなんか文句あんの?」
「……ありません」

よし、勝った。満を持して、要求を告げる。

「写真撮らせて」
「写真?」
「うん。撮らせてくれたら許してあげる」
「なんだ。そんなことか。それならいいぞ」
「やったー!」

撮影許可が下りたので先輩の膝に飛び乗る。

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 22:59:15.20 ID:Q5QCi+N6O
「ちょっ……小宮、降りて……!」
「だぁーめ。このまま写真撮るんだから」

光学式ファインダーは肉眼で被写体を覗く。
とはいえ、レンズ越しには違いない。
天体望遠鏡で星を見るのは肉眼ではない。
肉眼とはこうして肌との触れ合いを指す。

「くふっ。先輩、固くなってる」
「な、なってない」
「でも、たしかに硬い感触が……」
「それはスマホだ!」

なんだ、スマホか。残念。ま、いいけど。

「さあ、先輩。準備いい? 撮るよ?」
「さっさと撮って降りてくれ!」
「むー。その反応、むかつく」

さっさととは、なんたる言い草だ。
膝に乗っていちゃいちゃして一緒に写真を撮るだけで勘弁しようと思っていたのに。
予定変更する必要があると、私は判断した。

「先輩」
「なんだよ!?」
「おしっこ漏れそう」
「は……?」

サッと血の気が引いた顔に、ゾクゾクする。

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 23:00:42.16 ID:Q5QCi+N6O
「ま、待て、小宮」
「やだ。待てない」
「待ってってば!? 頼むから!!」
「先輩が悪いだもん」

全部全部、泉先輩が悪い。
私の気持ちを弄んだ泉先輩が悪い。
だからおしっこをひっかけられて当然だ。

「お、俺が悪かった! ほんとにごめん!」
「じゃあ、泉先輩も一緒におしっこしよ?」
「はあっ!?」

ん。我ながら名案だ。良い写真になりそう。

「フライングしちゃダメだからね」
「フライングも何も俺は催してなんか……」
「へーきへーき。私に考えがあるから」

先輩の懸念は杞憂だ。撮影技術は学んでる。

13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 23:02:27.42 ID:Q5QCi+N6O
「小宮……お前ってほんと強引だよな」
「でも、そんな私がいいんでしょ?」
「……かもな」

なんでMaybeなのよ。
そこはBecauseでしょうが。
本当に先輩は駄目な人だ。
それでも私は泉瑛太が好き。
なぜならば、Because。
欠点以上に良いところがたくさんあるから。

「瑛太、好き」
「小宮……いや、恵那」
「ありがと、名前で呼んでくれて」

にっこり笑って、瑛太先輩の耳たぶを喰む。

「はむっ!」
「んあっ!?」

ちょろろろろろろろろろろろろろろろんっ!

「フハッ!」

パシャリ!

あーあ。先輩ったらフライングしちゃった。

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 23:04:43.25 ID:Q5QCi+N6O
「あ、あああ、あああああああっ!?!!」
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

ちょろろろろろろろろろろろろろろろんっ!

カシャカシャカシャカシャカシャカシャッ!

先走った先輩に出遅れてしまったものの、私も無事放尿して互いの尿が混ざり合う。
立ち込めるアンモニア臭に酔い痴れ、嗤う。
愉悦に浸り、哄笑しながら連写し続ける。

カシャカシャカシャカシャカシャカシャッ!

一眼レフカメラは構造上ミラーが可動する。
センサーを遮るミラーが跳ね上がる仕組み。
その衝撃が手のひらに伝わるのが心地よい。

ミラーレスのほうが連写性能は高いけど。
どうしても拘る。何故ならば、because。
この手に伝わる感触を大切にしたいから。
故に私はミラー式の一眼レフを使い続ける。

「ふぅ……おや?」
「うう、こんなの……あんまりだ」

ふと我に返ると、泉先輩が泣いていた。
好きな相手の泣き顔を撮る趣味はない。
because。努力が報われて欲しいから。
私はそっと、泉瑛太の頬にキスをする。

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 23:07:04.71 ID:Q5QCi+N6O
「そろそろ、落ち着いた?」
「うん……なんとか」

先輩が泣きやむまで、何度も頬を啄んだ。
流れた涙を舌先で舐め取ってあげた。
先輩の涙はしょっぱくて、癖になりそうだ。

「反省した?」
「海より深く」
「なら、よし」

とはいえ、一応釘を刺すのが後輩の務めだ。

「もう報われなくていいなんて言わないで」
「……もしも、また言ったら?」
「またおしっこひっかけるから」

そつ告げると、瑛太先輩はくすりと笑って。

「じゃあ、また言う……かも」
「Maybe禁止!」
「フハッ! ……じゃあ、また絶対言う」
「~~~~っ……ばか瑛太! 分からず屋!」

ほんとばか。それでも好き。because。
欠点よりも良いところが沢山あるから。
だから私は、泉瑛太のことが大好きだ。


【It's not just because I love peeing】


FIN

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/12(日) 23:38:34.78 ID:Q5QCi+N6O
余談なのですが、小宮恵那の所有カメラは2台ありまして、1台はCanon Power Shot G5 Xという機種で、こちらはコンデジです

もう1台は同じくCanonの 7D Mark Ⅱ という機種でして、こちらが一眼レフとなります
高校のグラウンドで望遠レンズを装着して泉瑛太を撮影したのはこの機種です

なので、普段持ち歩いているのは一眼レフではないのですが、そこは物語の構成上の齟齬としてご理解頂ければありがたいです

最後までお読みくださりありがとうございました!



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元スレ: 小宮恵那「ね、先輩。キスしてあげよっか?」泉瑛太「は?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1586697919/


[ 2020/04/13 09:55 ] その他 | TB(0) | CM(0)
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