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モバP 「余命一年」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:16:01.79 ID:uZkIJaKZ0
「そんな、無理ですよ。」
泣きそうな俺の声を聞いて、嬉しそうに
ちひろさんは言う。

「やるんです」

何を言っても無駄だろう。だからと言って、黙って言う事を聞く気にもなれない。しかし、このまま無理だと言い続けても、余計に面倒な事態になるかもしれない。

「いつまでですか?」

しょうがなく言った言葉を聞いて、ちひろさんはにっこりと笑ったままの表情を少しも変えずに肩をすくめながら言う。

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:17:11.39 ID:uZkIJaKZ0
「さあ?」

「さあっ、て一体どういう意味ですか?」

「わかんないんですよ。私の気分しだいです、もしかしたら一時間かもしれないし、3日かもしれない。一ヶ月かも、一年かも」

「そんな…」

「プロデューサーさんがいけないんですよ。私を裏切るから」

「裏切るって…」

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:17:56.23 ID:uZkIJaKZ0
一体、俺が何をしたと言うのだ。

「あんな事をしておいて、アイドルと同棲するだなんてふざけてます」

あんな事とは何を言っているんだろうか。俺と彼女の同棲生活を妨げるような事を、俺がしたと言うのか?

「本当にふざけてます」

笑ったままで声を怒りに振るわせている。
ちひろさんの記憶がどうにかしたのだろうか、ちひろさんをここまで追い詰めるような事を俺がしたとはとても思えない。

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:18:43.95 ID:uZkIJaKZ0
「私の胸を揉んどいてっ!!!」

驚いた、まさかそんな事だとは。
それはあまりにも理不尽では無いだろうか。サンタのコスプレをして目の前で胸を、ぷるんっと揺らされれば揉むのは仕方なのない事では無いか。
俺はあの時、俺の意思で揉んだ訳では無い。揉む、という選択肢などを選んだ訳では無い。
あの時、俺は揉むしか無かったのだ。

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:22:23.72 ID:uZkIJaKZ0
だって、無理だろう。目の前でぷるんっ、…無理であろう?揉むしか無いであろう?
言うなれば揉まされたのだ、ちひろさんに胸を揉まされたのだ。
何と言う事だ、それでは俺はセクハラを受けた上に脅迫を受けているのか。

「もちろん…」

そこまでは、ちひろさんはまだ笑顔であった。

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:24:11.64 ID:uZkIJaKZ0
だけども、次の言葉を口にする瞬間。彼女の名前を呼ぶ瞬間に、ちひろさんの笑顔が消えた。

「杏ちゃんにもそう言うんですよ。嘘を付いても駄目ですよ、私プロデューサーが嘘をついてるかどうかなんて直ぐに分かるんですから」

ちひろさんはまた、にっこりと笑顔作った。

「プロデューサーさんは、今から余命一年になってもらいます」

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:25:54.34 ID:uZkIJaKZ0
そうして俺は余命一年を演じなくてはいけなくなった。
こんな事をしてちひろさんは何か得をするのだろうか。俺と周りの人間が振り回されるだけではないか。
しかし、俺はちひろさんに逆らうわけにはいかないのだ。理不尽な事に法はちひろさんを守るのだ。
いつだって正義とは暴力的だ。正義というやつは、自分は正しいからといって相手を躊躇う事なくねじ伏せる。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:27:19.54 ID:uZkIJaKZ0
仕事が無い、お金が無い、食べ物が無い、そんな人間はどうすれば良いのか?
そんな人間が盗みをする事がどうして罪なのか?
必死に生きようとする事は罪なのか、必死に足掻いてはいけないのか?
弱き人間は逆らう事なく死を受け入れるしか無いのか?
目の前に食べ物を置かれれば、人の物だと分かりながらでも食べてしまう、生きたいと思ってしまう。
そんな、生きることへの思いを悪だと言うのが正義であるなら、正義とはなんと恐ろしく理不尽なのだろうか。
この世界では目の前にある胸を揉んだ男は理不尽にも罪を背負わされるのだ。
理不尽ではあるが、それでも罪だ。俺はちひろさんに逆らえないのだ。

***

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:28:39.83 ID:uZkIJaKZ0
家に帰るとベッドに杏が寝転がっていた。

「おかえり」

「ただいま」

「どしたの?何かあったの」

「別に何もないさ、どうして?」

「んー、何となく」

杏を抱き締めると、杏は目を細めて気持ち良さそうに言う。

「プロデューサー、汗臭いよ」

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:31:18.65 ID:uZkIJaKZ0
「もうお前のプロデューサーじゃないって、いつになったら俺の名前を呼ぶんだよ?」

そう、俺はもう杏のプロデューサーではない。杏はアイドルを引退した、そして俺と暮らしている。
結婚した訳では無い、まぁ俺としてはしたいのだが杏が面倒だからだと言って籍もまだ入れてない。

「杏ー急だけどさ、俺さー何か死ぬみたい、医者が言ってた。癌だってよ。ちゃんと人間ドックに行くんだったなぁ、早期発見出来たかもしれないのに」

俺はちひろさんの命令通りに余命一年になった。

「嘘?」

杏の普段の柔らかな雰囲気が一瞬で消え、ピンと張り詰めた雰囲気になり、今にも消えてしまいそうな声を出した。

「…本当だよ、俺は死ぬみたいだ」

****

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:35:39.36 ID:uZkIJaKZ0
その次の日、俺は事務所で大事な話があるからと言いアイドル達を集めた。

「なに?急に集めてどうしたの」

凛は心配してそう言ってくれた。
他のアイドル達も心配気な視線を俺に向けている。

「実は、先日医者に余命一年と診断された」

みんな目を丸くして何も言えないでいる。沈黙を破ったのはちひろさんだった。

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:37:28.51 ID:uZkIJaKZ0
「杏ちゃんはこの事を知っているんですか」

と、俺の目をしっかりと見つめながら尋ねる。

「ああ、だけども受け入れてくれなくて。嘘を言うなって暴れるんだ」

と、ちひろさんの目を見つめ返し言った。

「と言う事で、暫く仕事を休みます。新しいプロデューサーと仲良くやれよ」

アイドル達は新しいプロデューサーと言う言葉をキーワードのように悲しみ出した。

「今の話し本当なの?プロデューサー」

「ああ、本当だ」
ーーー
ーーーーーー

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:39:18.40 ID:uZkIJaKZ0
事務所を出て、車で自宅に帰る途中にちひろさんから電話が来た。

「何ですか?」

「仕事を休むってどういうつもりですか」

「あぁ、リアルでしょ。どうです本当に俺が死ぬみたいでしょ」

「っ、…勝手にして下さい。でも毎日わたしに電話をして下さい。杏ちゃんにバラさないで下さいよ、嘘をついたら電話の声で直ぐに分かりますから。元々これは杏ちゃんを悲しませる為の事なんです」

「杏に嫉妬してるんです?」

電話を切られた。

*****

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:41:54.35 ID:uZkIJaKZ0
扉の向こうは物音一つしていない。ガチャリと音を立てて俺の家に入る。

「ただいまー」

部屋の中に声を放っても音を吸い込まれるだけで何も返ってこない。
靴をそっと揃えて奥に進むとぐったりと寝ている杏がいた。

「朝と同じ格好じゃないか」

俺は笑いながら杏の頭を撫でた。
その手を杏がギュッと掴んだ。

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:43:17.72 ID:uZkIJaKZ0
「プロデューサー、死ぬの?」

泣き出しそうな杏の声を聞いて今すぐにでも嘘だと言ってあげたくなった。しかし、今のちひろさんは何をするか分からないのでそう言う訳にはいかない。

「ああ、仕事もしばらく休んだから一杯遊べるぞ」

「本当に?」

「本当だ」

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:45:42.09 ID:uZkIJaKZ0
杏は今にも崩れてしましいそうな儚い笑顔で「じゃあ、一杯遊ぼう」と呟いた。

「どっか、行きたい所はあるか?」

「…プロデューサーの実家」

俺は苦笑する。

「何する気だよ」

杏は何を笑っているのか不思議そうに答えた。

「ご挨拶だよ」

「じゃあ俺の育った所に行ってみるか。」

「うん、プロデューサーの育った所に行ってみたい」

「それじゃあおやすみ杏」

そう言って杏の小さくて薄い桜色の唇に軽いキスをした。

*****

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:48:39.55 ID:uZkIJaKZ0
ガタゴトと揺れている、ガラガラの電車に杏と乗っていた。
行き先は俺の生まれ育った所だ。
杏は静かに寝息を立てながらも、俺にしっかりと腕を絡めている。
ふと、外をみると海が広がっていた。
冬の冷たく寂しい海を見つめながら考え事をしていた。

「プロデューサーどうかした?」

杏はいつのまにか起きていた。

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:55:14.39 ID:uZkIJaKZ0
「思い出してたんだ、死ぬ事」

杏は俺の事を馬鹿にするように笑った。

「じゃあ死なないで」

「ああ、…無理だろう」



俺はそうふざけながら杏を俺の膝の上に抱き上げた。

「なっ、何をする気?」

「おらあっ!」

力強く杏の弱点の脇をくすぐった。杏が俺の腕から抜け出そうとするのを押さえつけて泣き叫ぶまでくすぐり続けた。
他に乗客のいない寂しい車両の中を杏の声で埋めた。
車掌さんに通報されかけるまでそうやっていた。

*****

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 13:59:04.50 ID:uZkIJaKZ0
「ここがプロデューサーの家?」

杏は息を切らせながらそう尋ねる。
無理もない、元々あんまり運動をしない杏がこれだけの坂を登ったのだ。
杏が振り向いて自分の登った坂を睨む。
俺の家は海の目の前の駅から坂をずっとずっと上へと登った所にある。
小さな頃は毎日この坂を駆け下りて海へと遊びに行った。

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:00:47.10 ID:uZkIJaKZ0
玄関の前へと近付くと杏の足取りが急に重くなり、玄関の前まで来ると足が地面にくっついたように動かなくなった。

「入らないのか?」

「入るよ」

「…入れよ」

「…入るよ」

「…もしかして緊張してんの」

俺は思わず笑いながら杏の背中に話しかける。

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:02:16.60 ID:uZkIJaKZ0
「…悪いかっ、杏だって緊張ぐらいするよ!」

「あっはは、なかなか可愛いな。
ただいまー」

そう言いながら杏を抱えて、玄関を開けた。「なかなかですか?」とでも言いたげに杏が睨んでくるので、
「とっても可愛いよ」
と言うと、
「そうじゃない」
と言い照れながら顔を背けられた。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:04:09.24 ID:uZkIJaKZ0
奥の方からドタドタと人が来る音がした。

「おかえり、久しぶりね。元気だった?」

「元気ではないよ」

「あっはっは、確かに元気じゃ無かったね。ごめんごめん」

俺と母とのやり取りを腕の中の杏は何か言いたげな顔をしながら見ていた。
ここでようやく俺が何かを抱きかかえているのに目が行ったのか、母は俺に尋ねた。

「その娘が、…あんたの言ってた」

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:06:06.08 ID:uZkIJaKZ0
「ああ、俺の嫁だよ。ほらっ、杏は自己紹介して」

杏は顔を真っ赤にして、三角にした口をパクパクと動かして喋った。

「杏ッです、…プロデューサーの嫁ですっ、ヨッよよ、よろしく!」

杏の紹介を聞き終わると母の顔がだんだん険しくなった。
それに伴って杏の顔は赤から青へと染まっていった。

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:07:56.27 ID:uZkIJaKZ0
母は俺の方をキッと睨んで

「このロリコンがぁっ!!」

と俺の頬をおもっいきり引っぱたいた。
俺は吹っ飛んで母の前に一人取り残された杏は、今まで見た事もない程に綺麗なお辞儀を母へした。

「ロリでごめんなさいっ!!」

「杏は少し黙ってろ」

杏の小さな口を俺の手で塞いだ。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:09:25.35 ID:uZkIJaKZ0
「こいつはこれでも17歳なの。結婚する気があるからギリ合法」

母親は穏やかな顔に戻った。

「あら、ごめんなさい。ちょっと最近変な事があって敏感になってたわ」

ふむ、これは俺が仕掛けていたトラップが発動したな。
リビングに行くと親父が仁王立ちで待ち構えていた。

「言い残す言葉はあるか?」

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:11:09.81 ID:uZkIJaKZ0
「藪から棒に何だよ親父」

「これの事に決まっているだろう!!」

そう言って親父は俺の宝物のLOを突き付けた。

「何だよ女の子の前で出すもんかよ」

杏は「おおー、これがLOか、生では初めて見た」と興味心身ではあったが、そう言っておいた。

「とぼけるなっ!これはお前のものだろう!何故おれの部屋に置いてあったんだ!!」

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:12:46.36 ID:uZkIJaKZ0
「あなた、いい加減にしてっ!まだ言い訳するの!?」

「ちがっ、本当に俺のじゃ無いんだ!」

親父は泣きそうな声をあげていた。というか、泣いていた。
いい年をした親父が泣いているのは非常に情けない光景だ。
この光景を見ると、俺の宝物を捧げてまでトラップをした甲斐があったと思う。
しかも俺の帰る少し前に見つかるとはナイスタイミング。

「杏、俺の部屋に来いよ」

「ん」

ロボットのような動きをしている杏が俺の後ろをついて来る。
後ろでは誰かが俺の名前を、親の仇のように怨念の込もった声で叫んでいる。

****

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:14:10.44 ID:uZkIJaKZ0
杏は縮こまって、落ち着きなく辺りを見回している。

「どした?」

「やっぱり落ち着かない」

「何でよ?」

「わかんないー」

俺の膝を軽く叩きながら言った。

「膝の上においで」

杏はちょこんと俺の膝の上に乗った。

「どうだ?」

「少しは落ち着いた」

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:15:14.95 ID:uZkIJaKZ0
「杏、俺の両親に会ったんだから今度は俺に行かせろよ。嫁にくれって言わないといけないからな」

と少し強めにガシガシと杏の頭を撫でた。

「ん」

と短く杏は答えた。

「何だよ一年しか無いと、不満なのかよ」

と冗談気味に本音をぶつけた。

「不満だよ」

杏の聞いた事のない、酷く低くて暗い声に驚いて俺は固まってしまった。

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:16:43.43 ID:uZkIJaKZ0
「何で一年なの?」

杏は抑えていたものをボロボロと流し始めた。

「もっとッ、…一緒に。居たかったよ ぉ」

ちひろさんに言わされている、だなんてとても言えない。

「ごめんな杏、…泣くなよ」

本当は余命一年じゃないんですから。

「杏、明日は海へ行こう」

「ん」


****

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:18:05.44 ID:uZkIJaKZ0
俺の携帯が小刻みに震えるているのに気付いて目を覚ました。
隣で寝ている杏を起こさないようにコッソリとベランダへ出てから、電話に出た。

「もしもし?」

「杏ちゃんにバラしてませんか?」

開口一番それですか。
俺はため息をつきながら答える。

「バラしてません」

「そうですか」

「ちひろさん」

夜空を見上げながら言う。

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:19:09.13 ID:uZkIJaKZ0
「何ですか?」

「こっちは凄く星が見えて綺麗ですよ。ちひろさんにも見せてあげたいです」

「誰にでもそんな事を言うんでしょ」

失礼な人だ、それではまるで俺が女たらしみたいではないか。

「好きな人にしか言いませんよ」

「じゃあ、杏ちゃんと別れて私と付き合って下さい」

「杏が一番好きだから駄目です」

「プロデューサーの言葉は軽いです、全然信用出来ません」

「俺は自分に素直なだけですよ。悔いを遺したくないじゃないですか」

「ちひろさん報告があります」

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:21:03.31 ID:uZkIJaKZ0
「何ですか?」

「杏に本当の事を言います。お陰で覚悟ができたんで」

「どういう事ですか?」

「俺はあと一ヶ月で死ぬんです」

「嘘です」

「本当です」

「嘘です」

「癌です、発見が遅くて手遅れでした。抗がん剤は使ってません。少しでも動いていたいんで、副作用が怖いですから」

「嘘です」

「なかなか言う勇気がなかったんで、良いきっかけになりましたよ」

「そんなの認めませんよ」

「ちひろさん」

「本当にあなたの事は好きでしたよ。俺は好きでも無い女の胸は揉みませんから、事務所の皆の胸も凄く揉みたいです」

「…それじゃあ葬式にはきて下さいよ」

******

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:22:09.36 ID:uZkIJaKZ0
砂浜の砂を引き込んでは戻してを繰り返しているこの海の光景が俺は好きだ。
同じ様に見えて少しずつ引いたり満ちたりしているとこも。
砂浜を踏んだ感触も。
金属を酸化させる風の匂いも。
要は海が好きだ。
きっと幼少の頃に遊んだからだろう。
砂を踏んだ感触が乾いたものから濡れたものへと変わった。
波打ち際に立っていると砂が引き込まれるのがよく分かる。
振り返って呼んだ。

「どうしたー、来いよ」

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:24:08.86 ID:uZkIJaKZ0
杏は水着の上にパーカーを着て脱ぐ気配が無ければ、海へ入る気配もない。

「杏にだって、羞恥心があるんだー。何だこの水着は羞恥プレイかー!」

我儘な奴である、水着が無い杏の為にわざわざ買って来てやったのに。

「何が気に入らないんだー?」

「マニアックすぎるわー!」

何と、スクール水着はマニアックなのか。

「マジでー、王道だと思ってたー」

杏は呆れて何も言わなくなった。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:25:06.31 ID:uZkIJaKZ0
このままでは杏の水着が見れないので無理矢理に剥がして連れて行く事にした。

「やーめーろー!」

「ぐへへへ!」

こんな事を近くの家族に通報されかけるまでしていた。


*****

「もう引き返そうよぉ」

何度目か分からない杏の提案を先程と同じように断わる。

「やーだ」

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:26:08.16 ID:uZkIJaKZ0
杏は水面を恐ろしそうに見た後、振り返って俺に怒鳴った。

「怒るよ!深過ぎて怖いよ。戻って」

「んー、もう少しー」

杏は何かを言おうと口を開けるが、言葉を飲み込んで黙った。
そうして、砂浜の上にいる人が見えなくなるぐらいまで遠くに来た。

「杏ー実はさ俺、余命一ヶ月だったんだよ」

「何それ?」

「ビックリした?」

「冗談?」

「これが割とマジ」

「もう、訳がわかんない」

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:29:00.51 ID:uZkIJaKZ0
「まぁ、そんなどうでもいい事はほっといて」

「どうでもいいって…」

「どうでも良いよ、余命一ヶ月ていってももしかしたらあと何年、何十年と生きるかもしれないだろ。明日死ぬかもしれないけど、つまり今まで通りだ」

「馬鹿なの?」

「ははっ、よく言われる」

「バーカ」

「まぁ、死んでも悔いはないよ。幸せだし」

「私は嫌だよ」

「まぁ、我儘を言うならもう少し生きたいな」

「馬鹿」

「泣くなよ杏、笑っとけ」

「馬鹿」

そうやって俺を罵りながら杏は笑った。
そんな杏の頭を撫でて俺は笑った。

「幸せだなぁ」

オワリ

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:31:46.70 ID:uZkIJaKZ0
ついでに俺の落書き見てって

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/13(日) 14:33:38.42 ID:j0cXxafc0
ドリンク漬けが祟ったか



元スレ: モバP 「余命一年」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1358050561/


[ 2019/08/20 20:55 ] モバマスSS | TB(0) | CM(1)
[タグ] モバマス 双葉杏
コメント
12693: 2019/08/21(水) 07:58
最後加山雄三じゃねーかwww
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