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P「ここが893プロか…」

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 21:30:42.44 ID:3Xb4C8wo0
異なる世であれば、とっぷしーくれっととして
隠し通す話ではありますが、この世界の
お客人には特別に私の正体をお教えいたしましょう。

二つ名はお銀、そう、朧月夜のお銀と謳われた、四条組四代目が跡目、
四条貴音とは私のことにございます。

何を隠そう二年前、亡くなった父になりかわって私を育ててくれた伯父貴のご恩に
報いるためには、杯を受ける他になかったのです。

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 21:40:22.47 ID:3Xb4C8wo0
そんな私が仁義の道を外れてまで組を抜けてあいどるになろうと思ったのは、
桜の舞い散る四月のことでした。
伯父貴の背中一面の、桜吹雪が思い出されます。
あゝ、私はやはり逃げられない。

桜の花の呪縛は、否応なしに私を懊悩させました。
そして多分、この先もずっと桜を見るたびこのことを思い出すのでしょう。


桜並木の道の果てにその事務所はありました。


雪歩「あっ……えっとぉ、プロデューサーが言ってた新人アイドルの方ですかぁ?」

貴音「はい、四条貴音と申します。以後お見知りおきを」

雪歩「え……し、四条さん、ですね」

貴音「はい。どうかなされましたか?」

雪歩「いえ……あ、私、萩原雪歩っていいます。よろしくお願いします」

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 21:50:24.68 ID:3Xb4C8wo0
萩原、と聞いて私は警戒しました。
昨年の四条組と萩原組の仁義無き戦いにおいて、
惨敗した萩原組にとって、四条は親の敵よりもにくい敵のはずでしょうから。

さりとてここは堅気の世界。
四条という名もありふれていることでしょう。

貴音「よろしく、雪歩殿」

雪歩「お、お願いします」

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:43:15.67 ID:3Xb4C8wo0
私がこの事務所に入って早一年が過ぎようとしています。

この一年はまったく新鮮でした。
私は知らなかった仲間の顔と、季節の美しさを知りました。


そして、雪歩が気の弱い、とても渡世をわたることのできない
娘だということもじきにわかりました。
このような可憐な娘が、あの萩原組の血縁などあるはずはないのです。

例えばこんなことがありました。


雪歩「四条さん、これ……お花ですぅ……」

貴音「百合、ですか。雪歩」

雪歩「はい……お嫌いですかぁ?」

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:53:32.36 ID:3Xb4C8wo0
貴音「いえ、大好きですよ。
   雪歩はこの花の花ことばが本当によく似合います。
   私に似合うかはわかりませんが」

雪歩「えぇ!?四条さんのほうが、よっぽど百合の花ことばが似合いますよぉ」

貴音「ふふふ。雪歩、もっと自分に自信を持たなくてはダメですよ?」


雪歩だけではなく、ほかのアイドルも私に優しくしてくれました。
例えば伊織。

昼、事務所にいくと、私の机の上にのど飴が置かれていました。
はて、誰からでしょうと不思議に思っていると、伊織が顔を赤らめて
袋から飴玉を取り出し、私の唇に押し当てました。

伊織「あんた、最近風邪気味でしょう?痛いだの辛いだのはちゃんといいなさい!?
   まったく!!プロ意識が全然ないんだから」



74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:01:55.33 ID:3Xb4C8wo0
この後、やよいがあらわれて、伊織を叱りました。

やよい「だめだよぉ、伊織ちゃん!ただの風邪だって思ってても
    ほんとはすごい病気かもしれないでしょう?」

やよいはすごい剣幕で伊織をまくし立てると、私を病院へと連れていきました。
結果は軽い過労で、免疫力が少し弱まっていたようです。
私はしばらく、といっても一週間ほど静養することになりました。


静養中、事務所の面々は忙しいながらも、暇を見つけてはお見舞いに来てくれました。

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:13:17.75 ID:3Xb4C8wo0
いよいよ明日には仕事に出られるという日、
四条組の伯父貴がお亡くなりになられました。
言葉を尽くしてもこの悲しみは表せませんが、
本当の父のように私を慈しんでくれた、私にとって
二人目の父でした。

しかし順当に行けば、私が跡目。
されど、反伯父貴派は年若い娘が跡目など決して許しはしないでしょう。
伯父貴派も実績や経験が十分でない私は担げないはず。

伯父貴がいない今、どんな狼藉をはかられるかわかりませんでした。

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:21:37.80 ID:3Xb4C8wo0
事務所へ向かう並木道。
まだ桜は咲いていません。
幼い頃、私と一緒に湯につかっていた伯父貴の背中が思い出されました。
あの桜吹雪は、桜が咲いてももう見れないのです。

そのとき、車がききぃっと止まりました。
咄嗟に身構えます。
しかし女と男。
私はすぐに組み伏せられ、車に乗せられ古巣の四条組へと連れて行かれました。

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:32:31.02 ID:3Xb4C8wo0
若頭「おう、貴音ちゃん。ひさしぶりやなぁ」

貴音「お久しぶりです、若頭。して、これはどのような趣向でしょうか?」

若頭「あらぁ、こりゃあ失礼したな。SMは嫌いけ?」

背後に控えている組員が、私の手縄を切りました。

貴音「それで、このような狼藉を働いてまで私に伝えた義とはなんでしょうか?
   おおよそ察しはついておりますが」

嫌な予感がしました。しかし、私はもうこの家とは関係がない。
そんなお気楽な声が頭の中から聞こえてきてもいました。


若頭「貴音ちゃんがおるとなぁ、わしが失敗したときえらい困るんよ。
   やからなぁ……四条組のためにしんでくれへんかなぁ思て」

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:49:26.42 ID:3Xb4C8wo0

背後から、足音が忍び寄ってきました。
はじきなど使わず、私を締め殺し、そのまま海へと沈めるつもりなのでしょう。

高みを目指していたのに、地よりも低き海の底へ。
本当にままならぬ生だったと思います。


――もう覚悟を決めましょう。


いえ、決められるわけがない。


――もっと超然と、達観して死にましょう?


いいえ、私は高みに登らねばならぬのです。父に、そしてもう一人の父に約束したのですから。
絶対にとっぷあいどるにならなければならないのです。
だからどんなに不格好でも、せめて生きて、少しでも高みへ。


心の声にいくら抗っても、時は過ぎてゆきます。
首に縄が掛かりかけたそのとき、広間の襖を開ける音が、遠くからしました。
その音はどんどん近くなってゆきます。
近くなって、近くなって、ついに私の真後ろにある襖が開きました。

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 00:04:17.67 ID:dr68BTgv0

雪歩「萩原組が跡目、萩原雪歩ですぅ!四条さん、助けにきました」

伊織「あんたらねぇ、私らの身内になんてことしてくれてんのよぉおお!!」

響「沖縄のヤクザはなぁ~、米軍横流しの銃流れてるから戦後は無法地帯なんだぞ!!」バリバリ

真美「真美たちのパパねぇ~」

亜美「この業界じゃブラックジャックって言われてるんだよ?」

真美「ってことで、お姫ちん、ケガはないかなぁ~?ないね?」

真「あ、父さん?うん、あれがボクの大切な仲間だよ」

真父「おっしゃあ!!てめえら準備はいいか!!!?」

暴走族「ういっーす!!オヤジさん!!!」


美希「あいつらが悪者なの!!」

美希父「電話一つで警視庁は動く。安心しなさい、美希」




春香「私たち、場違いだね、千早ちゃん」

千早「ええ……」

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 00:25:55.06 ID:dr68BTgv0
長ドスをもって、白装束を着た雪歩は目に涙をためながら、若頭を睨みつけておりました。


若頭「おいおい、こりゃなんの冗談だい」

若頭が苦笑いしながら合図をすると、階下から十人以上の手下が集まってきました。
己の命だけならともかく、夢を共にした仲間の命までも奪われるのは、私にはとても
看過できないことでした。


貴音「雪歩、伊織、響、真、美希……ここまで来てくれて、本当にありがとうございます……
    それだけで、私はもう満たされました。さぁ、ケガをしないうちに逃げて
    ください。若頭は、あなたがたを本当に殺すおつもりです」


亜美「どうする→真美?って決まってるよねぇ?」

真美「あったりまえじゃ→ん!!」

伊織「馬鹿ねぇ、あんた……」

響「自分、貴音と心中する覚悟できたんだぞ」

真「へへーん。か弱いレディをさらうようなゲスには負けないもんね」

美希「ハニー、出番なの!!」

美希ちち「ちょっと待て、ハニーっておい!!」

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 00:51:04.05 ID:dr68BTgv0
いくつの襖の向こう側なのでしょうか。

普段の背広ではなく、着流しを着たプロデューサーが役者のようにこちらへと
近づいてきます。手には抜身の匕首が握られておりました。


若頭「なんだぁ!てめぇは!!」


P「分からずんば教えてやろう。手前、生国と発しますは江戸目黒にござんす。
  渡世の縁をもちまして、親分は本郷の高木順二郎、平成の後に実子盃を
  いただきやした名前の儀は、健治、赤羽根健治と発します。ご覧のとおり
   メガネの青瓢箪につきまして、赤羽のPの二つ名をこうむりやす。平成の
   初年に命を授かりましてこの方、一天地六の賽の目稼業、ふつつかものでは
   ありやすが、向後お見知りおかれまして、よろしくお頼み申し上げやす」

  (参考:天切り松闇がたり)


若頭「……なんてぇ仁義だ……」



美希「やっぱりハニーの仁義はかっこいいの……」

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 01:12:52.52 ID:dr68BTgv0
ぷろでゅーさーは若頭の前に片膝をついて座ると、匕首を畳に刺したて、
ぐい、っと若頭を睨みつけました。

若頭「ちょっ……ちょっと待て……高木順二郎ってのはあの高木順二郎なのか」

P「てめぇがいう高木順二郎ってぇのがどの高木かは知んねぇがよ。ただてめえらの先代が
  俺っちとおんなじ桜吹雪を背中に背負ってたつ、それはそれは立派な男だったってぇのは知ってるぜい」

そういうと、ぷろでゅーさーは片肌を脱ぎ、まだ来ぬ春の、いずれ来る春の桜を私たちに見せつけました。

それは、かつて伯父貴が見せた、いえ、それ以上の桜吹雪でした。



若頭「てめぇ……まさか、893プロの若頭、人呼んで返り血蝶々の赤羽じゃねぇのか」


P「はっ、分かりゃあいいんだ。てめぇらみてぇな三下といちいちかかずりあうほどこっちは暇じゃ
  ねぇんだ。これに懲りたら、うちの身内にゃ今後一切手ぇ出すな。分かったな」


若頭「ひぃ!!分かりました」

P「さぁて、これにて一件落着。みんな、事務所に戻ろう」

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 01:18:42.52 ID:7IjEIHIX0
赤羽Pなにやってんだよw

101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 01:31:52.58 ID:dr68BTgv0
事務所までの帰り道、私はずっと黙っておりました。
千早も、春香も肩身が狭そうに、道の端を歩いていました。

伊織「あんた、ああいう時だけはカッコいいんだから」ポッ

真「いやぁ、やっぱりプロデューサーは貫禄が違うなぁ」

響「沖縄弁もいいけど、下町言葉はかっこいいな!」

美希「パパ、美希の言ってた通り、ハニーはかっこいいでしょ?」

美希父「おほん!!今度娘のことで話し合いたいのだが……」

亜美「今度亜美にもおしえてね!」

真美「あ~ずっるーい!!真美にも真美にも!!」

雪歩「私も、貫禄つけたいからお願いします!!」

P「あはは、また今度な」

ぷろでゅーさーはいつもの優しい山の手言葉で皆の言葉に答えていました。

そして、ぷろでゅーさーは、小指の欠けた左手を私に差し出して、私たちの事務所、
そう、私の帰るべき場所である893事務所まで、手を引いて私を連れ帰ってくれたのです


            FIN

102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 01:34:49.60 ID:RJQnJO/80



元スレ: P「ここが893プロか…」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1327920635/


[ 2019/05/14 02:55 ] アイマスSS | TB(0) | CM(0)
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