950 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:33:59 ID:
hdu
病室のベッドの白いシーツ。
真っ白な天井と、真っ白な壁。
幼い頃のアタシにはそれが世界の全てだったし、今もその風景は心に焼き付いてて。
きっと一生、忘れる事なんかできないんだろうな、って。
そう、思ってたんだ。
951 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:34:19 ID:
hdu
~7年前~
加蓮(9歳)「けほっ……けほ……っ……」
加蓮母「ゆっくりで良いのよ加蓮、慌てて食べなくても大丈夫だから…」サスサス
加蓮「…はぁ……っえほ!……うぅ……」
食事は3食、決まった時間に。
当たり前だけど病院って、消灯時間が早い。
だから必然的に生活のリズムも整って、患者であるアタシは規則正しく早寝早起き……
なんてことにはならなかった。
952 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:34:34 ID:
hdu
加蓮「おかぁさん……くるしい……よぉ………」
看護師「お母さんすぐ来るからね、大丈夫だからね~」
加蓮「ひっく………もぉ……やだぁ……」
医者「はい、じゃあチクッとしますからね。いい子だからね、我慢できるよね~……はぁい、よくできましたー」
加蓮「うっ……ひっく……ぐすっ……」
医者「お母さん来られるまでついといて」
看護師「わかりました。はーい加蓮ちゃん強かったねー…」
加蓮「強くないもん…」
953 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:34:47 ID:
hdu
何回、泣いただろう。
何回、諦めただろう。
たまに外出の許可がおりても、行けるのはせいぜい近所の公園くらいで。
退屈な病室で、眠れないときや、お母さんがいなくて一人の時はよくTVを見てた。
ドラマ、アニメ、バラエティ、ドキュメンタリー、映画、教養番組、時代劇……。
とにかく、その時TVに映る世界が、アタシを病室から連れ出してくれていた。
そして………それから少しして。
アタシはどうやら一度、心停止してしまったらしい。
954 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:35:08 ID:
hdu
奏「お目覚めみたいね」
加蓮「……アタシ……どうなったの……? お姉ちゃん、誰?」
奏「そうね……私は奏。あなたと同じ入院患者………だった」
加蓮「だった……?」
奏「気分はどう? 呼吸も、頭痛も、体のあちこちの痛みも、薬の副作用も……随分楽なんじゃないかしら」
加蓮「本当だ……何でだろ……苦しくない……ちっとも……」
奏「…これ以上、無為に苦しむことはないと思ったのよね……心苦しいけれど、魂の輪廻に堕ちてしまえば、このまま楽に……」
加蓮「……言ってること、よくわかんないけど……もしかしてお姉ちゃん、ユーレイ…?」
奏「あら、よくわかったわね。まぁ、正確には違うのだけれど」
加蓮「見慣れてるから…ここにいると……でも、違うの?」
奏「ええ……私は、あなたの命を終わらせるためにここへ来た。あなた達の言葉で言うのなら、死神……ということになるのかしらね」
加蓮「死……神……」
955 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:35:19 ID:
hdu
ショックだった。でも、その一方で「なんだ、やっとなんだ」とも思ったんだ。
いつかその時が来るんじゃないか
そう怯え続けて、ここまで来たけど。
やっと、それも終わるんだなって。
…でも。
956 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:35:44 ID:
hdu
加蓮「ねえ、死神のお姉ちゃん。アタシね、アイドルになりたかったんだ」
奏「……そう」
加蓮「子供っぽいって笑わないんだね」
奏「だって実際あなた、まだ9歳の子供じゃない。女の子が女の子らしくするのに理由なんか必要ないでしょう?」
加蓮「うん……そうかも。でもね」
加蓮「TVで見たんだ、アイドルのステージ……夢みたいにキラキラで……アタシもあんな風になれたらなぁって……でも、終わっちゃうんだよね」
奏「…そうね」
957 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:36:00 ID:
hdu
加蓮「もっと色んな事したかったな……」
加蓮「美味しいものいっぱい食べてさ」
加蓮「色んな人と友達になって」
加蓮「それでね、元気に外で遊び回るの、泥んこになりながら…」
加蓮「たまにドジなんかしちゃって怒られたりしてさ」
加蓮「それでも、絶対に諦めないんだ……夢に見た世界に……体当たりでぶつかっていくの」
加蓮「……アタシ、まだフライドポテト一本も食べたことないんだよ」
加蓮「……食べてみたかったなあ…」
958 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:36:14 ID:
hdu
奏「………」
P「……見つけた!」
加蓮「えっ」
奏「えっ」
959 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:36:40 ID:
hdu
P「はぁ……たまたま過労で入院してたらどえらい美人を見てしまってな……ふぅ……あ、これ名刺ね」
奏「ええと、あの……貴方、どうして私が視えて……? というか、今の会話……」
P「あー…出待ちでうっかり聞こえちまったよ、スマン…」
奏「いえ…待って、よく見たら貴方、死相が出てるわね、物凄くくっきりと…」
P「ナルホド。まぁだからキミが視えたんだろうし結果オーライって事で…」
奏「良くないわよ、どんなブラック企業なの」
加蓮「げいのうじむしょ……の……プロデューサーさん?」
P「いや、参ったよ。うちの社長が急に思い立って、アイドル部門を設立するぞ!今から手回ししなくては!なんて言い出してさ」
P「とりあえず200人くらいスカウトなり目星付けろって無茶振りしてきてな」
960 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:37:03 ID:
hdu
奏「…因みにそのプロジェクト、いつ始まる予定なの?」
P「大体十年後かちょっと早まるかくらいだとさ」
奏「バカなの?」
P「というか俺一人で社員も集めなきゃならんわけでね…まだ事務員1人と社長だけだし」
奏「いつか死ぬわよ?」
P「人はいつか死ぬ!」
加蓮「ぷっ………あははははは……!」
奏「…………笑われてるわよ」
P「ほう……よくよく見れば笑った顔がなかなかの逸材……よし、アイドルにならないか」
加蓮「へ?アタシ、今から死ぬんだよ?」
P「…何とかなりません?」
奏「はぁ………出来ない事はないけど……でも、それはつまり……」
961 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:37:19 ID:
hdu
~~~~~~
ぷちかれ「カレン」「ポハヨー」「アソボ!」ユサユサ
加蓮「……ん、んん……」
加蓮「……夢……か」
ぷちかれ「ハラヘタ」キュルル
ぶつかれ「ポテンドーン」ぷちかれ「ポヒャア」
ポテポテ……ポテポテ……
962 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:37:30 ID:
hdu
加蓮「……体当たりで食べたがりで元気で泥んこで夢いっぱいだね、アンタ達」クスッ
ぷちかれ「「「「「ポテェ?」」」」」
963 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:37:45 ID:
hdu
~事務所~
周子「死神ってアレでしょ、枕元に出るからひっくり返して念仏唱えてがっぽがっぽ……アレ、違ったっけ…?」
奏「落語じゃないわよ」
P「しかし……奏はあの頃からちっとも変わんないな……そのまんまだ」
奏「享年17なの、私。歳は取らないわ」
菜々「なん………だと………!?」
心「パイセンパイセン、顔が死神になってるゾ☆」
964 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:38:01 ID:
hdu
P「あの日、加蓮は生きる事を選んだ。苦しんで苦しんで、苦しんだ先にもしかしたらあるかもしれない、一縷の望みに賭けたんだ」
奏「生きるという事はつまり……また病の苦しみと戦うことを選んだ、と言うこと。治る可能性なんて万に1つ、それでも……」
加蓮『だって病気に勝てばアイドルだよ……!? えへへ……!』
P「荒れた時期もあったけど、アイツは乗り越えた。そして、俺も何とか部門設立にこぎつけた。」
P「そして………あの芋が生えた。」
965 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:38:16 ID:
hdu
~~~~~
加蓮『あそこのツタ…また食べる気だよきっと!』
P『あ、おい加蓮』
加蓮『こら、芋泥棒、出てきな、よっ!』グイッ
ズポズポッ
P『な……』
加蓮『芋に何かかぶりついてる…』
もぐら(?)×5「ジタバタジタバタ」
966 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:38:35 ID:
hdu
~~~~~
P「加蓮……知ってるか? じゃがいもってツタは出来ないんだよ」
P「あの日…あの畑に俺が植えていたのはじゃがいもだけだった」
P「おかしいとは思ったんだが、結局ノリでここまで来ちまった」
芳乃『恐らくはー…加蓮さんの夢を見る心が強かったがゆえー 5匹ものぷちかれが生まれ出てしまったのでしょうー』
P「後で芳乃に聞いてみたら、そう言ってたっけな…」
P「そして……今日」
P「また1つ……夢が叶う時が来た」
967 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:38:51 ID:
hdu
~ドーム・コンサート会場~
加蓮「それじゃいくよ~!最後はこの曲っ! 皆~!出てこーいっ!」
「「「「「ポテポテポー♪」」」」」
968 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:39:11 ID:
hdu
泥んこスマイル
歌 加蓮&ぷちかれ隊
加蓮&ぷちかれ隊「ポテテ ポテテ ポテポテポー ポテテ ポテテ ポテポテポー」
加蓮「ちょっと目離すとすぐに」(ポテテ)
加蓮「何かトラブルまみれ」(ポテテ)
加蓮「ホント元気で困っちゃう」(ポテテ)
加蓮「泣いてる暇もないくらい」(ポテェ♪)
加蓮「きっといつもの毎日」(ポテテ)
加蓮「だけど何かが違ってる」(ポテェ?)
加蓮「ワクワクのメモリアル」(ポーイ!)
加蓮「立ち止まってなんかられない」
加蓮「壁にぶつかってしまっても 道に迷ったりしちゃっても」
加蓮「ぶつかって穴掘って乗り越えてがむしゃらに進め~」
(ポテ工エエェェェェエエ工)
加蓮「絶対諦めない!」
969 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:39:26 ID:
hdu
加蓮「強く 弾んだら 高く 飛んじゃって きっと 夢の先 手が届く」
加蓮「膝を抱えて落ち込むなんて 膝がないからできないもんね?」
ぷちかれ「ポッテン!」
加蓮「いつもニコニコハリケーン たまにホントに大爆発」ポテェ
加蓮「泥んこまみれで走り回って うるさいくらいにはしゃぎまわって今日も~」
加蓮「ご飯食べて みんな仲良し~」(ナマイモー)
加蓮&ぷちかれ隊「ポテテ ポテテ ポテポテポー ポテテ ポテテ ポテポテポー」
970 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:39:44 ID:
hdu
加蓮「一緒にーっ!」
「ポテテ ポテテ ポテポテポー ポテテ ポテテ ポテポテポー」
「ポテテ ポテテ ポテポテポー ポテテ ポテテ ポテポテポー」
「「「「「ポテ工エエェェェェエエ工!」」」」」
ワアアアアア……
~~~~~
971 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:39:58 ID:
hdu
~ライブ翌日~
P「全く…前代未聞だぞ…もぐら5匹の飛び入り参加ドームコンサートなんて…」
ぷちかれ「プチカレ アイドル!」「ポーイ!」「ヤッポー」「ポッテン」「ポテポテポー♪」
加蓮「あ、フライドポテトのお店っ!」
「「「「「フライドポテテ!!」」」」」
ポテ工エエェェェェエエ工………!!
972 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:40:09 ID:
hdu
P「行っちまった………なーんか最終回っぽい雰囲気だな、オイ」
ぷちみお「ナンテジダイダー…」
P「ん……? 何故ぷちみおが…?」
ぷちみお「リュセ?」キョトン
次回、ぷちみおシリーズ始動!!
P「!?」
ぷちみお「オワァ!ナンテジダイダー!」
おわれ。
973 :
◆6RLd267PvQ 2019/02/10(日)23:44:32 ID:
hdu
加蓮とぷちかれの物語は、ひとまずここまで。
これからもちょこちょこ出番はあるでしょうが、一旦主人公を交代します。
具体的には次スレは「彼女」達の当番回という感じで。
勿論、ゲスト回はちょいちょいはさみます、今までの感じで。
加蓮「じゃ……任せたよ、未央。」
未央「よーっし……!張り切ってやっちゃおうっ!」
ぷちみお「リューセー☆」
ではではお目汚し、失礼をば。
次回からも心機一転、よろしくお目通しの程…
おーぷん2ちゃんねるに投稿されたスレッドの紹介です
元スレ:
加蓮「イモ掘ったら何か食いついてきた」ぷちかれ「ポテエエ」
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1527793435/
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