10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 18:44:23.94 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「私は音無小鳥。ここ、765プロで事務員をしています!」
小鳥「しかしその裏の顔は……美人トレジャーハンター!」
小鳥「ふっふっふ、私が狙ったアイテムは必ず私の手の中に……」
小鳥「それがトレジャーハンターの矜持! そして生きがいなのだから!」
小鳥「さて、今日の獲物は……とある一室に隠されているらしい」
小鳥「部屋には……ほう。誰もいないと分かったら、お宝に向かわずにはいられない!」
小鳥「さぁさぁ、拝見いたしましょうか……」
春香「ふぅ……わ、わー!! な、なにやってるんですか音無さん!」
小鳥「なっ! トラップだったか!」
春香「い、意味わかんないですよ! なんで私のカバン勝手に漁ってるんですか!」
小鳥「……なんかお宝のにおいがしたんです」
春香「あぁ……あれですか? この前の……」
小鳥「……えぇ。この年になって、って笑われそうだけどあれは私の心にビビッと来たのよ!」
春香「あ、あはは……でも、私のはダメです!」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 18:51:06.01 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「わかったわよぉ……」
春香「でも、そんなに面白かったですか?」
小鳥「えぇ! もともとインディージョーンズとか好きだったから、あの舞台で!」
春香「そうなんですか~」
春香(ちょっと前にやった演劇がトレジャーハンターの物語で、ちょうど小鳥さんが見に来てたらしく)
春香(気が付いたら驚くほどハマっている小鳥さんがいました……それはいいんですけど)
春香「……だからって勝手に人のカバンを漁るのやめてくださいよ!」
小鳥「だってお宝っていうお宝なんてないもの! こう、面白いもの? 私の知の財産になるものが……」
小鳥「はっ! と、ということは春香ちゃんの鞄にはそのようなものが!」
春香「入ってません! でも、嫌じゃないですか、他の人に見られるの。恥ずかしいというか」
小鳥「まあ、それはわかるんだけど……わかるからこそ、そのスリルがね!」
春香「はぁ……」
小鳥「あーあ、私も男の子だったら今から外国に行ってピラミッドでミイラ探しとか鉱山堀りとかに行くんだけどなぁ」
春香「それなら……雪歩に連れてってもらうとか」
小鳥「あっ、それいいアイデアよ春香ちゃん!」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 18:57:22.45 ID:
kyxBzKtxP
春香「いや、冗談で……」
小鳥「そうと決まれば今から練習ね! 何かお宝はないものか……」
春香「もう……でも、小鳥さん若くなりましたよね」
小鳥「え? そ、そうかしら?」
春香「あ、いや元からお若いんですけど! その、イキイキしてるっていうか」
小鳥「まあ、そりゃ朝から晩までデスクワークで? 家に帰っても一人……そりゃね」
春香「……な、なんかすみません」
小鳥「いいのよ、なんだかんだこうやってアイドルの皆と話をしてるのが一番の楽しみなんだから!」
春香「妄想してる時じゃなくて、ですか?」
小鳥「……うーん」
春香「ちょ、ちょっとそれは否定してくださいよ!」
小鳥「……そ、そんなことよりお宝よっ!」
春香「もー! 小鳥さん!」
小鳥「……あら? 何かしら」
春香「え? その本ですか?」
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 19:05:47.74 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「ほら、見て。本に紙が挟まって……何かしら」
春香「私たちの名前が書いてありますけど、次のライブの……予定表か何か?」
ガチャッ
P「おはようございます……」
小鳥「あ、おはようございますプロデューサーさん」
春香「おはようございます! どうかしたんですか?」
P「あ、いやなんでもない……ん? そ、それ!!」
小鳥「え? これ?」
P「と、とりあえずそれを!」
小鳥「……そういうことなら、何かしらあるものじゃないですか?」
P「あ、えっと……それじゃあ明日のお昼おごりますから!」
小鳥「うーん、まあいいでしょう!!」
P「あ、ありがとうございます! よかった……なるほどこんなところに」
春香「それ、なんですか? 私たちの名前が書いてあるから、次のライブの予定表かななんて」
P「え!? あ、いやうん! まあそんなところだよ! あはは! あ、それじゃ俺は一旦出てきますね!」
バタン
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 19:14:13.91 ID:
kyxBzKtxP
春香「なんだったんでしょう……」
小鳥「まあなんでもいいわ! でも、これこそ……トレジャーハンターね!」
春香「……え?」
小鳥「だって間接的にお宝を見つけたんだもの! これだわ……」
春香「な、なんか違う気が……」
小鳥「この感じよ……お宝を見つける、ドキドキとワクワク!」
春香「えっと……」
小鳥「ちょっと探してくるわ! 春香ちゃん、事務所お願いね!」
春香「え、えぇ!? ちょ、ちょっと小鳥さん! ……行っちゃった」
P「ふぅ……よかった」
P(アイドルと同じ名前のAV一覧表をもらったはいいが……どこに置いたか気になってして夜も眠れなかった)
P(見られはしたがあの感じ、多分ばれてないだろう! ……まあ今後は気を付けて)
小鳥「あ、プロデューサーさん!」
P「え? お、音無さん?」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 20:12:02.42 ID:
kyxBzKtxP
小鳥(さっきの恩もあるし、トレジャーハンターといえば聞き込みよ!)
小鳥「さっきの、大丈夫でした?」
P「え? あ、えぇホント助かって!」
小鳥「それはよかった! ……実は、私今そういう仕事してまして」
P「そういう仕事……なんでも屋さん、ってことですか?」
小鳥「ち、違いますよっ! トレジャーハンターなんです! 宝探しのプロです!」
P「宝?」
小鳥「流石に本物の埋蔵金やら見つけるのは骨が折れそうなので、身近なお宝を探そうと思いまして」
P「なるほど。でも、そのお宝っていうのは?」
小鳥「そうですね……隠されてて、手に入れるのが難しくて。でも、手に入れたときの興奮が冷めやらぬ、そんなものです!」
P「よ、よくわかんないですけど……頑張ってください」
小鳥「あ、そこでなんですけど! 何か、知りません?」
P「お、俺ですか……?」
小鳥「お宝に関する情報ですよ!」
P「そんなこと言われましても……要は困ってる人を見つければいいんですか?」
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 20:18:09.12 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「なんか違うような……せめて探し物、とか」
P「うーん……」
やよい「あれ? 小鳥さんとプロデューサー、おはようございまーす!」
小鳥「あ、おはようやよいちゃん!」
P「おはよう。あぁそうだやよい、ちょうどよかった」
やよい「なんですか?」
P「何か探し物、とかないか?」
やよい「探し物、ですか? えっと……あ、長介が家の合鍵を一つなくしちゃって、困ってるんですけど」
P「ですって、音無さん」
小鳥「い、いやいや! 私探し物を探す人じゃないですよ! やっぱり何か違います!」
P「……それじゃあどういう」
小鳥「探偵、とかじゃないんです。トレジャーハンターは地図や手がかりがしっかりあって。それに向かって突き進むんです!」
小鳥「もしそこに目的の物がなくてもいいんです! そこまで楽しんだもの勝ちといいますか」
P「まあなんでもいいですよ……そうか、春香もこんな感じで」
やよい「プロデューサー、探してくれるんですか?」
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 20:28:58.68 ID:
kyxBzKtxP
P「え? あ、いやこれからあれを受け取りに……」
小鳥「プロデューサーさん?」
P「いやだって最初は音無さん……」
やよい「……別に大丈夫ですよ? あとで鍵屋さんにお願いしますから」
P「……わかった、やよい探しに行こう!」
やよい「え、本当ですか!」
P「あぁ、まあ確かに暇ではあるし」
やよい「ありがとうございます! えっとそれじゃ……」
小鳥「行ってらっしゃ……あら? やよいちゃん、何か落としたけど」
やよい「え? あ、ごめんなさい……あっ!」
P「どうした?」
やよい「これがです……ということは、私勘違いしてたかも……長介に謝らなきゃ」
小鳥「えっと……」
やよい「小鳥さん、ありがとうございます! おかげで助かりました!」
小鳥「あ、あはは……いいのよ」
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 20:33:43.25 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「……なんか、違うのよねぇ」
P「まだ言ってるんですか?」
小鳥「だって、プロデューサーさんはそういうのないんですか! ワクワクしません? トラップやライバルと……」
P「その話はもう大丈夫ですよ。次何をする、って話じゃないんですか?」
小鳥「あ、そうでした! でも、やっぱり何をしても現実には……」
P「……」
ガチャッ
伊織「はぁはぁ……」
小鳥「あら、おはよう伊織ちゃ……ってどうしたのそんな慌てて」
P「どうしたんだ、伊織?」
伊織「……とんでもないものが見つかったらしいの」
P「え?」
伊織「なんでも、水瀬家の財産、先祖の埋蔵金が見つかった、とか」
小鳥「そ、それ本当なの伊織ちゃん!?」
伊織「え、えぇ……」
小鳥「これよこれ! これですよプロデューサーさん! 行きましょう!」
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 20:37:07.18 ID:10FSwnGl0
人ん家の財産狙うなよwww
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 20:42:04.69 ID:
kyxBzKtxP
伊織「え? 小鳥、興味あるわけ?」
小鳥「大有りよ伊織ちゃん! それで、どういう状況なの?」
伊織「それが……どうも狭い道の先にあるらしいんだけど誰も入れなくて」
伊織「今応援を呼んでるの。地下につながる道をこじ開けようって話」
小鳥「だ、ダメよ! そんなことして落盤したら財宝が!」
伊織「あぁ……まあ、確かに。でも、そうしないと入れないくらいなのよ」
小鳥「……女性だったら入れる、とかそういう可能性は?」
伊織「え、あぁ……わからないけど、もしかしたら。何せゴツイ男しかいないからどうしようもないわ」
小鳥「わかった、それなら私行ってみるわ! プロデューサー、ここお願いします!」
バタン
伊織「……アンタの言われたとおりにしたけど、これでよかったの?」
P「……流石に、このままだと本当にピラミッドとか行きそうだからなぁ」
伊織「確かに、ここまでとは思わなかったけれど。すんなり信じたし……むしろ、これで諦めてくれるか心配だわ」
P「そこは祈るしかあるまい……」
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 20:47:17.55 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「っと、そういえば人様の財産よね……いえ、大丈夫」
小鳥「映画じゃ土足でお墓に入り込んでめちゃくちゃやってるんだから! それに見つけたら返せばOK!」
小鳥「ここかしら、うわぁ、いつみても大きいお屋敷……」
黒服「音無小鳥様ですね?」
小鳥「わっ! び、びっくりした……は、はい」
黒服「お嬢様からお話は伺っております。どうぞこちらへ」
小鳥「は、はい!!」
小鳥(ふふっ、ドキドキしてきたわね……まさかこんな身近に落ちてるなんて……」
小鳥(でも、こんな機会もうない……慎重に……)
小鳥「……暗くなってきたわね。お屋敷の中にこんな洞穴が……?」
小鳥「ってあれ? 黒服の人……大丈夫よ、私一人でみつけてみせるんだから!」
小鳥「……暗い、それに狭くなってきたわ、本当」
小鳥「でも、私の直感が言ってる、この先に大きなものが待ってるって!」
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 20:51:07.02 ID:
kyxBzKtxP
ゴゴゴ……
小鳥「……な、何この音、まさか!」
バシャァ
小鳥「ひっ、つ、つめたっ……な、なんのこれしき……」
小鳥「いいじゃない、これぞトレジャーって感じで……ふふっ、血がたぎるわね……」
小鳥「……くしゅん!」
小鳥「や、やっぱり厳しかったかしら……いつまでたっても先が見えないし……」
小鳥「服がぬれてるから、体温が……」
ゴゴゴ……
小鳥「う、嘘……また?」
……ゴゴ
小鳥「……止まった、わね」
ドドド!!
小鳥「えっ……きゃああああああ!!」
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 20:56:27.75 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「うそ、落盤……?」
小鳥「う、動けない……嘘、でしょ……」
小鳥「こんな、こんな見知らぬところでこのまま生き埋め……?」
小鳥「流石に映画じゃないもの、ここから脱出なんてできるわけないし」
小鳥「……ちょっと、後先考えなさすぎたかしら」
小鳥「いつも妄想ばっかりだから、とか。ちょっと張り切って」
小鳥「……私には、便利屋さんの方がお似合いなのかも」
小鳥「……寒い、暗いよ」
小鳥「プロデューサーさん……春香ちゃん、やよいちゃん……伊織ちゃんも……みんな」
小鳥「こんなところで死にたくない……私はまだ、みんなの成長を……だから」
小鳥「……助けて!!」
――
小鳥「……すーすー」
小鳥「……ん、眩しっ……あれ?」
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 21:00:35.22 ID:
kyxBzKtxP
P「……お宝発見、ってところですか」
小鳥「プロデューサーさん……私」
P「全く、心配かけないでください」
小鳥「……ぐすっ、怖かった」
P「……」
小鳥「やっぱり、私には向いてませんでした……みんなに迷惑かけただけで……」
やよい「そんなことないです!」
小鳥「えっ……?」
やよい「小鳥さんは私のカギを見つけてくれました! それって、とれじゃーはんたー?だからですよね!」
小鳥「あ、えっと……」
P「……俺の資料も、見つけてくれましたし。いつもの小鳥さんとは、また違って」
小鳥「……ちょっと考えが甘かったみたいで」
P「あはは、そういうところもいいんじゃないですか?」
小鳥「……すみませんでした」
P「……もう、トレジャーハンターはやめるんですか?」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 21:03:44.81 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「……やめますよ」
P「そうですか……」
小鳥「……もう、もどきは!」
P「……え?」
小鳥「これからエジプトに行ってきます! 本当のトレジャーハンターとして!」
P「あ、あの音無さん?」
小鳥「今日かぎりでこの事務所は辞めます! ありがとうございました!」
小鳥「よーし、あの失敗をいかして、最高の女トレジャーハンターになってみせるんだから!」
小鳥「頑張れ小鳥、えいえいおー!!」
P「……ふふっ、そういうことなら仕方ありませんね」
小鳥「え?」
P「応援してますよ。だから、必ず戻ってきてください」
小鳥「プロデューサーさん……」
P「……それなりなお宝を持ってきたら、その……それに見合う報酬を差し上げますよ」
小鳥「ほう……例えば?」
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 21:06:06.85 ID:
kyxBzKtxP
P「……音無さんが、欲しいもの」
小鳥「……わかりました。待っててください」
P「えぇ、必ず。だから、もう無茶はしないでくださいね?」
小鳥「それはどうかな。無茶してこそ、ってところありますから!」
P「ははっ、全く……困ったものですね。貴方のそういうところ」
小鳥「嫌いじゃ、ないですよね?」
P「……さぁ」
小鳥「それじゃ、お世話になりました!」
P「えぇ、また!」
小鳥「また!」
小鳥「私は、トレジャーハンター!! 世界中のお宝は私の者よー!!」
――
―
小鳥「わたしのものなんだから……えへ、えへへ……」
P「……あの、音無さん?」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 21:14:17.35 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「……はっ! 私のお宝は!?」
P「何馬鹿なこと言ってるんですか……早く仕事してください」
小鳥「あ、えっと……はい」
小鳥「……全部、夢?」
小鳥「……あ、カバン」
小鳥「……何も、入ってないわね。うん」
小鳥「ふふっ、そういえばいらないわね。……お宝なんて、いくらでもあるじゃない」
小鳥「この事務所にいたら、毎日お宝に囲まれて過ごしてるようなもの」
小鳥「光輝く原石たちを眺めながら……仕事をするなんてこんな贅沢な事……」
小鳥「……なーんて、ちょっと言ってみたけれど」
小鳥「そういうトレジャーハンターの方が、確かに私に向いてる……か」
小鳥「……いいでしょう! これからも、お宝発掘に全力を……」
律子「今までずっと寝て、今度はなんですかぁ?」
小鳥「あ、り、律子さん? あ、あはは……」
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 21:16:43.78 ID:
kyxBzKtxP
律子「お宝ならほら、目の前に沢山ありますから。お好きなのから磨いてください?」
小鳥「そ、そんな……いや、やりますけど今の最後のセリフを……」
律子「こーとーりーさん?」
小鳥「は、はいっ!」
小鳥「……わたくし音無小鳥は、今日もせっせと……」
小鳥「トレジャーハンター、やっております!」
終
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 21:17:53.23 ID:
kyxBzKtxP
思ったより難しい題だったグダグダ夢落ち申し訳ない
次>>60
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 21:21:46.47 ID:DcW28ZCqO
P「音無小鳥はトップアイドル」
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 21:48:41.29 ID:
kyxBzKtxP
P「一人のアイドルがいた」
P「でも、そのアイドルは日の目を見る前にステージを降りてしまった」
P「数年たった今では、彼女の名前を憶えているのはほんの一握りだろう」
P「そして今、彼女は……」
――
P「おはようございます」
小鳥「あ、おはようございますプロデューサーさん!」
P「……すみません音無さん、ちょっとお話があるんですが」
小鳥「え? あ、はい」
P「その、着て早々申し訳ないです」
小鳥「いえいえ、それでお話と言うのは」
P「その……小鳥」
小鳥「! ……はい」
P「別れよう」
小鳥「……え?」
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 21:53:12.72 ID:
kyxBzKtxP
P「……」
小鳥「ちょ、ちょっと待ってください! どうして……」
P「もう、決めたことなんだ」
小鳥「そ、そんな……せめて理由を」
P「……言ったら多分傷つく」
小鳥「……知らないで別れるなんて絶対に嫌、ですよ」
P「……俺はな」
小鳥「はい」
P「全部だ」
小鳥「……え?」
P「もう、全部嫌いなんだ」
小鳥「い、いや……その……」
P「……それじゃあ」
小鳥「……待って、ください」
P「……なんだ」
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 21:57:52.75 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「そんなの……あんまりじゃないですか」
P「だから言ったら傷つくって……」
小鳥「他に好きな人ができた、とかじゃないんですか?」
P「……あぁ」
小鳥「……じゃあ、どうして今まで付き合って」
P「さぁ、俺にもわからない」
小鳥「そんな……」
P「……でも、ただひとつ言えるのは」
小鳥「……」
P「できれば、もう二度と会いたくない」
小鳥「……なん、で」
P「……でも、仕事だから」
小鳥「い、いや……プロデューサーさん……」
P「……もうアイドルが来る」
小鳥「そんなの、そんなの信じないです! だって私たち……」
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 22:01:05.35 ID:
kyxBzKtxP
P「愛してた、のは嘘じゃない。でももう昔のことだ」
小鳥「……ひどい、ですよ」
P「仕事に戻ろう」
小鳥「ぐすっ……」
P「な?」
小鳥「……」
小鳥「……プロデューサーさん」
高木「おはよう、諸君」
小鳥「……」
高木「音無君?」
小鳥「……え? あ、は、はいすみません! おはようございます!」
高木「あぁ……ちょうどよかった。社長室にきてくれるかね?」
小鳥「は、はい」
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 22:10:36.56 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「解雇……」
高木「すまない……だが、うちとしてもこれが最善の策でね」
小鳥「……」
高木「君は良くやってくれた。それでは……」
小鳥「しゃ、社長! 納得がいきません! 私、私はそんなに役立たずでしたでしょうか……」
高木「……」
小鳥「事務活動に問題があるなら、これから何倍も努力しますから!」
小鳥「人気が落ちて路頭に迷っていた私を拾ってくれた社長のために、もっと……」
高木「……もういい」
小鳥「社長……」
高木「正直に言ってしまうと、そういうことになる」
小鳥「え?」
高木「君の代わりなど、いくらでもいるということだ」
小鳥「なっ……」
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 22:19:16.95 ID:
kyxBzKtxP
高木「君はいい声を持っていた。だからこそ私はその可能性にかけた」
高木「しかし、君は淡々と事務員をやるだけでそんな気持ちは微塵もださず」
小鳥「そ、それは……」
高木「君が決して無能なわけではない。しかしこちらも慈善事業でやってるわけではないということだ」
小鳥「そんな……社長……うぅ」
高木「納得してくれたなら近いうちに荷物をまとめてくれると助かるよ」
小鳥「……はい」
小鳥「あー……♪」
小鳥「……はぁ」
小鳥「やっぱり、路上で歌っても……」
チャリーン
小鳥「え? あ、ありがとうございます!!」
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 22:24:45.68 ID:
kyxBzKtxP
姉ちゃんいい声してるね
小鳥「そ、そんな……」
よかったらうちの店来ない?
小鳥「……え?」
出るとこ出てるし、今よりは稼げると思うよ? 職ないんだろ? ほら
小鳥「い、いや……」
小鳥「……」
小鳥「私は、これでも恵まれている」
小鳥「一度は夢を諦めるところまで来て、人生が決まるようなところで。一度は息を吹き返した」
小鳥「信用できる人、安心して身を置ける職場、それにパートナー。全部、一度手に入れて」
小鳥「……全部、失った」
小鳥「ううん、もともとなかったのよきっと
小鳥「……歌を歌い始めたころはもっと」
小鳥「それこそ、トップアイドルなんて目指しちゃって」
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 22:29:01.33 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「運が悪いなんて、とてもじゃないけど言えないわ」
小鳥「それまで、運がよかっただけのこと……」
小鳥「あーもう何やってるんだろ」
小鳥「……わかってるのにな」
小鳥「涙が止まらないの……」
「……小鳥」
小鳥「……はっ」
P「……おはよう」
小鳥「……」
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 22:33:22.53 ID:
kyxBzKtxP
スッ
小鳥「えっ……」
P「どんな怖い夢をみてたんだ?」
小鳥「あっ……ありがと」
P「……大丈夫」
小鳥「そ、っか……今のは」
P「うん?」
小鳥「……ううん、なんでもない」
P「そうか」
小鳥「こっちが、現実なんだよね?」
P「少なくとも、俺はそう思ってる」
小鳥「なら、うん。……よかった、本当」
P「……」
小鳥「ギュッてして……」
P「……あぁ」
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 22:36:34.08 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「……すごく、すごく本当みたいな夢で」
P「……」
小鳥「私は路上でライブしてたり、会社を辞めることになったり、それから……」
P「それから?」
小鳥「……」
P「……俺がなんか言ったのか」
小鳥「う、うぅ……」
P「夢、ってたまに怖いよな。でも、それだけ現実が幸せだろ?」
小鳥「そうだけど……やだ、あんな夢もうやだよぉ……」
P「よしよし……今日の小鳥は、随分とおしとやかだ」
小鳥「……今日だけです」
P「そうかそうか」
小鳥「……ねぇ」
P「ん?」
小鳥「……私が、別れようなんて言ったらどうする?」
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 22:46:39.65 ID:
kyxBzKtxP
P「……小鳥がそういうなら」
小鳥「本当に?」
P「嘘」
小鳥「ちょっと……」
P「そんなの、想像もつかないし……ってそういうことか」
小鳥「……」
P「……理由があるなら仕方ないけど、理由もないなら諦めるしかないよな」
小鳥「うん……」
P「でも、俺は絶対に忘れないと思う」
小鳥「うん、そうだよね……」
P「……歌が歌えなくてもダンスが踊れなくても」
小鳥「え?」
P「……もし、小鳥がどうなっても」
P「今の俺は、絶対小鳥の側にいたい、いられるって、約束できる」
小鳥「……」
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 22:54:00.55 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「……すごい、嬉しい」
P「……うん」
小鳥「今こうやって、幸せだって感じられるのって」
小鳥「幸せの裏側を見て……すごく嫌だって感じたからなおさら」
P「どうした、小鳥らしくもない……」
小鳥「あのころの私に比べたら、もう私らしさなんてないですよ?」
小鳥「貴方に会えて、こうして一緒に暮らして……」
小鳥「……年上だってことまで忘れて、なんて」
P「まあ、それはさ……」
小鳥「ふふっ……」
小鳥「プロデューサーさん!」
P「わっ、びっくりした……懐かしいな」
小鳥「……ふふっ、何年経ったんでしょうね」
P「つい最近のようだけど、もうしっかり……アイドルたちもそれぞれの道を歩いてる」
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 22:57:56.01 ID:
kyxBzKtxP
小鳥「そうですね……」
P「……でも、やっぱり俺は小鳥だ」
小鳥「……」
P「なぁ、小鳥」
小鳥「何?」
P「愛してるよ」
小鳥「……私も」
P「俺の中では、どんな時も」
P「音無小鳥はトップアイドル、だ」
小鳥「……それなら、もっともっと私は貴方に魅せてあげないとね」
P「それも大事だけど、トップは象徴だ。そこにいてくれるだけでいい」
小鳥「……うん」
P「……ずっとずっと」
小鳥「えぇ、これからもずっと、貴方のトップアイドルでいたいから」
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 23:11:10.15 ID:
kyxBzKtxP
――
「初めて会ったときから、この人と結ばれたいと思った」
「全部」
「そう全部が好きだった。好きになってた」
「見た目もさながら、仕事に対する姿勢からちょっと変な癖や趣味まで」
「最初は戸惑ってたけど、少しずつ仲良くなって」
「気が付いたら強引に付き合ってた。でも、彼女はそれに好意的で」
「お互いのこと話すたびに、お互いに確実に好きになってて」
「できれば、もう絶対に離れたくない」
「それがより二人の間を強くして」
「その後聞いた話、社長が雇ってくれたのは本当に奇跡だったとか」
「その才能が惜しい。でも、気が向いたらでいいからうちで働いてくれないか、と」
「そう言われて。本当は歌う気があったみたいだが本人は事務の方を優先した」
「なんでかと聞いても、いつも答えてくれない」
「でも、社長はそんな彼女により好感を抱いてくれたようで、たまに歌う場まで与えてくれた」
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 23:19:41.36 ID:
kyxBzKtxP
「そうして少しずつ歌う彼女は少しずつ名を戻して、ブレイクか、と思われたとき」
「倒れた」
「突然のことだった。それは、結婚という話を持ちかけようというところで」
「頭の中は真っ白になった」
「と、同時に思い出したのだ。アイドルに興味を持った自分が最初に聞いた曲が」
「彼女の曲であったことを」
「彼女は日の目を見る前にステージを降りてしまった。だから名はそれほどない」
「だが、俺にははっきりと思い出すことができた。それは、まぎれもなく彼女で」
「惹かれたのにも合点がいった、がそれと同時に絶望に追いやられ」
「俺だってなんども悪夢をみた。それでも、それでも必死に考えた」
「……意外なことに彼女は事を重く見てなかった。俺が来るたびに眩しいほどの笑顔で」
「何度も泣くのをこらえた。それくらい彼女が愛おしくて」
「……それなら、最後は彼女の好きにさせてあげよう」
「彼女こそが俺のアイドルなんだ」
「俺が、彼女をプロデュースすればいい」
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 23:27:44.74 ID:
kyxBzKtxP
「とは言ったものの、それほど状態はよくなく」
「ただ彼女が歌いたい曲を歌わせてあげるだけ」
「でも、彼女は喜んでくれた」
「……時間がなかった」
「それでも、それでもただ彼女に会えることが楽しくて」
「会うたびに好きになっていくのが余計悔しくて」
「どうして……」
「……小鳥」
「小鳥が諦めることは、最後までなかった」
「それも、俺のために。他人を心配する余裕まである。流石は年上と言ったところか」
「……あぁ小鳥。俺からも一つ言わせてほしい」
「……でも、言ってしまったら。もうそこで終わりな気がして」
「だからまだ、取っておく。……先に小鳥の話を聞かせてくれ」
――
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 23:28:41.59 ID:
kyxBzKtxP
P「いつか、見せてくれたあの素晴らしい歌声をもう一度聞きたい」
小鳥「……いつか、きっと。だから」
小鳥「貴方は、体を大切にしてね?」
P「……あぁ」
小鳥「私が生きることで、みんなが笑顔になってくれるなら」
小鳥「私はいつまでも、変わらないあなたのトップアイドルのまま――」
――
P「……なんてずるいんだろうな、彼女は」
P「音無小鳥は、日の目を見る前に、ステージを降りてしまった」
P「今、彼女の名前を憶えているのは、ほんの一握りだろう。でもそれは、決して忘れる事のない仲間。そして」
P「……俺は絶対に忘れない。音無小鳥という、俺のただ一人のアイドルを」
終
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/09(金) 23:29:33.58 ID:N9qWGqwf0
やめてくださいかなしすぎてしんでしまいます
乙
元スレ:
小鳥「サイドストーリー」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1352453147/
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