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【モバマス】ヴァンパイアハンター凛

1 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:21:53 ID:bv4
吸血鬼ハンターDみたいな世界
グロと花粉症注意

アイドル要素はない

2 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:23:05 ID:bv4
 文明が衰退する要因。

 世界史を紐解けば、その多くは外部からの侵略が当てはまる。

 海の民。
 
 ピタゴラスを斬殺するローマ兵。

 そのローマ滅亡の間接的な原因である、アッティラの大遠征。

 イスラーム学術文化を粉砕した十字軍。

 宋を滅ぼしたモンゴル帝国…。

 例を挙げるとなれば、両の指では足りない。

 それでは、その衰退が地球規模であるとしたら、侵略者とは誰になるのか。

3 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:24:13 ID:bv4
 21世紀に起こった地球の自転軸のズレは、ほんの数度でしかなかったが、

 人類史に及ぼした影響は甚大であった。

 大規模な地殻変動をもたらしたのである。

 それが原因で絶滅するほど人類は“やわ”ではなかったが、

 その状況で手と手を取り合えるほど賢くもなかった。

 全ての大陸が、また再び1つになり、

 そこで生じた経済的混乱によって、第三次世界大戦が始まった。

 かつて海域に存在する国境とは、すなわち各国が神経をすり減らして

 調整してきた利益圏の升目である。それが崩れてしまったのだ。

4 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:24:56 ID:bv4
 日本は中国、ロシア両国のいずれかに属することを迫られた。

 当時の首相は、アメリカ合衆国に対して、子犬が鳴くように助力を求めたが、

 彼らの防衛におけるキャパシティは、とっくに破裂しており、日本は孤立無援であった。

 ここに至っては平和論者達も口を噤み、独自の戦力を確保せざるおえなくなった。

 兵器開発技術においては1日の長があったが、
 
 それを運用する人間の数が圧倒的に不足している。

 ならば、どうするか。

 政府は非公式に、生体兵器の研究を始めた。

 兵がいないなら作ってしまえ。

 逞しいクラフト精神が、とうとう生命倫理を超えてしまったのである。

5 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:26:06 ID:bv4
 強力な破壊力を有し、かつ、作戦行動を理解するだけの知能を兼ね備える。

 そのような都合の良い種を新たに創造することはできず、

 結局、人間をベースにした開発が始まった。

 当初は、サイボーグのように機械を身体に埋め込んでいく計画が持ち上がったが、

 動力の維持と生体部分からの拒絶反応によって頓挫した。

 主流になったのは薬物投与と遺伝子の組み替えによる、肉体能力の向上であった。

 一度倫理の箍が外れてしまえば、この分野の研究は飛躍的に進行する。

 創り出された超人達は、通常の人間を遥かにしのぐ身体能力を持ち、

 少なくとも始めは従順だった。

6 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:28:08 ID:bv4
調子づいた日本は、尊大な態度で交渉に臨んだ。

 一度優位を確信すると謙虚さや慎ましさ、礼儀正しさが霧消してしまうのであった。

 第二次世界大戦での反省を全く活かせぬ、希望的観測に基づいた外交活動と

 露骨な交戦力の“示唆”で世界各国の顰蹙を買った。

 無論顰蹙だけで動く国際関係ではないが、露中による国境侵犯を促すだけの

 無能さは明らかになった。

 当初の露中は威嚇のつもりであったが、強大な力を突然持った人間は、

 それを試してみたいという衝動に駆られる。

 空戦においてはかつての努力が必要であったが、

 陸戦、殊に白兵戦において超人達は、目覚ましい成果を挙げた。

 攻撃力もその成果に貢献したのは間違いないが、最も特筆すべきは、

 “死ににくい”ということであった。

7 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:29:29 ID:bv4
 空爆をされようが、毒ガスを吹き付けられようが、細菌をばら撒かれようが、

 食糧が汚染されようが不足しようが、そこでぴんぴんしている。

 完全に維持された戦線は、それだけで敵国から見た脅威である。

 椅子取りゲームにおいて、絶対に席から動かない相手がいる。

 そしてその相手は、こちらの椅子を奪うどころか、破壊する力を持っている。

 軍略的なアドバンテージを持っていた露中の目は霞んでしまい、

 とうとう決定的な戦端が切られてしまった。

 はじめは静観してた西欧各国も、日本の生体兵器が戦勝国に渡った

 場合のリスクが顕在化すると、『国際社会の調停者』という旗を掲げて

 アジアに乗り込んできた。これが第三次世界大戦の始まりである。

8 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:30:17 ID:bv4
 結論から言ってしまえば、この勝者はアメリカであった。

 放射能の危険から核が封じられた状態では、中長距離からのミサイルを

 湯水のように使える国に利がある。

 くわえ、アメリカにも非公式で開発していた兵器が存在した。

 『神の杖』。地上1000kmから、地球を周回する軍事衛星。

 その地点から、タングステンやチタン、ウランからなる全長6.1m、

 直径30cm、重量100kgほどの金属杭を落下させる。

 その杭は重力によって加速し、最終的には11,587km/h(約マッハ9.5)で

 地表に衝突する。

 破壊力は水爆ほどではないが、防衛手段が全くないという点で当時最強の兵器であった。。

9 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:31:16 ID:bv4
 これが日本に対して使用されることはなかったが、

 圧倒的な武力を前に、茹で上がる寸前だった日本政府の頭は一気に冷めた。
 
 その頭で露中と終戦協定を結び、最終的には独立を保つことができた。

 戦後超人達は人権を付与され、社会生活を始めた。
 
 だが、その強大すぎる力ゆえに、強大な差別を受けることになった。

 救国の英雄ではなく、戦端を開いた原因として。

 自分達は決して、望んで破壊活動や殺人を行ったわけではない。

 それでも身を粉にして国に尽くしたのに、なぜこのような目に遭うのか。

 超人達の不満は、数世紀に渡って消えなかった。

10 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:32:08 ID:bv4
 なぜなら、超人達は数世紀に渡って生き続けたからである。

 開発当初の段階では、寿命はざっと100年ほどだと見積もられていた。

 しかし、試算を行った研究員らの孫が亡くなった後も、

 超人達は一切年を取らず、世代を変えずに生活をしていた。

 差別は次第に恐怖に変わり、『超人絶滅計画』なるものが、

 民間“から”秘密裏に草案されることになった。

 これはナチスのような虐殺ではない。
 
 平和を切に願う者達による“交戦力の放棄”なのだ。
 
 パラノイアを発症した研究者と、それに罹患した資本家によって、

 超人達を殺す手段が練られた。

11 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:32:57 ID:bv4
 表立った死に方をさせてはいけない、あくまで、自然死に見せかけるような…。

 完成したのは、造血幹細胞の異常を引き起こす、マイクロ波照射装置であった。

 つまるところ、人為的に白血病を作り出す装置。
 
 この効果は凄まじく、超人達は次々にその数を減らしていった。

 しかし急激な体調の変化に、疑問を抱かぬ者がいるだろうか。

 超人の中から、装置の存在を突き止める者が現れた。

 その彼女が抱いていた感情もはや、不満ではなく、

 人類種に対する憎悪に達していた。

 超人に対する骨髄移植の提供が、意図的にされていなかったためである。

 骨髄は数に限りがあり、超人には効果があるかわからないから。

 これが正論であるかどうか、判断できる者はいない。

 だが、当事者達が怒り狂うのは正当である。

12 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:33:53 ID:bv4
 白血病に罹った超人達は治療のために、骨髄バンクを襲撃した。

 その事件当初は、命がかかっているいるということもあり、

 同情の声が寄せられた。

 しかし、移植された骨髄は数ヶ月ほどで、拒絶反応によって溶けてしまう。

 超人達は継続的にバンクを襲うようになり、時には一般人から骨髄を奪うようになった。

 それによって、“公式での”殲滅計画が始まった。

 これは虐殺ではない。

 人類種の存亡をかけた戦いなのだ。

 何代目の首相がそう言ったのか、記録は残っていない。

 メディアは、正常な造血幹細胞を血眼になって探す超人達を
 
 “吸血鬼(ヴァンパイア)”と呼び、政府を後押しした。

13 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:34:33 ID:bv4
 物理的な攻撃力では太刀打ちできない。

 したがって殲滅といっても、その手段は間接的、かつ陰湿であった。

 骨髄を秘匿し、生きている人間はひたすら逃げる。

 そして、相手が病魔に倒れるのを待つ。
 
 この作戦は功を奏し、白血病を患っていた超人達は死に絶えた。

 あとは生き残った超人達にマイクロ波を当ててしまえばいい、世論はそう思っていた。

 しかし、いつの時代にも少数ながら反体制、反大衆的な人間達が存在する。

 この時の多数にとって不幸だったのは、その少数の中に2人の天才と、

 1人の秀才がいたことである。

14 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:35:32 ID:bv4
一ノ瀬志希。

 池袋秋葉。

 柳清良。
 
 彼女達は、それぞれの事情・興味・信条に基づいて行動した。

 そして、人工骨髄・血液の発明に成功。

 超人達の唯一の死因は取り除かれ、立場は逆転し、多数派は弑殺された。

 日本政府は崩壊し、そこに権力の空白地帯が発生した。

 世界は“旧日本”を巡って再び戦火の狼煙を上げ、地球環境は更に荒廃。

 とうとう、人類の生存が困難なほどの大気汚染が進み、

 戦争の集結後、蓋を開けてみれば種としての危機に陥っていた。

15 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:36:28 ID:bv4
 それでも平然と生きていた超人達は、自身らを“新人類”と称し、

 遂に世界の覇権を掴むために行動を開始。

 優れた知性と、永きに永過ぎる時間によって、個体それぞれが優れた研究者となっていた

 彼ら/彼女らは池袋博士の研究を受け継いだ。

 人工呼吸器・臓器、大気を浄化するナノマシン、

 汚染に強力な対抗性を持つ作物・動物…。

 超人達はこれらを“旧人類”に提供することによって、種の最上位に立つことに成功した。

 その時から超人達は『貴族』を自称するようになり、平民達から力を奪うべく、

 優れた研究者や技術者を囲い、多くの凡人達には中世的な生活を強いた。

 畑を耕せ。家畜を飼え。せめて寿命が来るまでは、生存を保証してやる……。

16 :名無しさん@おーぷん 2017/07/28(金)16:36:55 ID:bv4
 勿論、これに対して抵抗がなかったわけではない。

 しかし超人達は、遺伝子工学によって生み出した怪物達を野に放ち、

 それらに平民達を襲わせた。

 怪物達を倒すために、何も知らぬ平民達は貴族に頭を垂れ、

 プラズマ・ライフルや指向性超音波発生装置などを借り受けた。

 隷属関係は年月を経るごとに強化されていき、旧人類達は奴隷にまで身を落とした。

 だが、運命は奴隷達に手を差し伸べた。

 世代交代によって脳構造に変化が訪れたのか、

 それとも大気に含まれるナノマシンが突然変異を促したのか。

 彼らの中から、超能力を行使する者が現れ始めた。

 予言、交感能力、念動力、発火能力…。

 貴族達すらも脅かす力を手に入れた奴隷達は、反旗を翻した。

 これが、『ヴァンパイアハンター』の誕生である。
 

18 :名無しさん@おーぷん 2017/07/30(日)15:06:20 ID:Ujx
西暦9000年。 

かつて那須塩原と呼ばれた平原を、馬が駆ける。

黒い芦毛に逞しい脚が、陽光に照らされている。

だが、その馬の肉体の随所には排熱用のスリットと、

外部化された人工血管がはみ出しており、神々しさよりも不気味さを覚える。

それに跨るのは、皮鎧の上に透き通るような蒼いローブを纏った少女。

 
切れ長の瞳。整った小鼻。小さく艶めいた、美しい唇。

風にゆらめく、長い黒髪。

美しい、途方もなく美しい少女だった。
 
彼女は前方に、自分に依頼を出した村を発見すると、

手綱を引いて速度を緩めた。

その一挙一動すら様になる。

見た目にそぐわない、

ヴァンパイアハンターとしての長い経験を感じさせた。

19 :名無しさん@おーぷん 2017/07/30(日)15:06:51 ID:Ujx
村人達は、現れた少女を見てため息を漏らした。

凄腕のハンターと聞いていたから、筋骨逞しい偉丈夫を想像していたのだ。

「ようこそ、凛様。

 大したもてなしも出来ませぬが……」

老齢の村長が歩み出て、少女に挨拶をした。

凛と呼ばれた少女は、軽く手を上げ、口を開いた。

「報酬さえもらえれば、どうでもいいよ。

 長居する気はないし」

他者を拒むようなその言葉に、何人かの村人は反感を持った。

しかし彼女は、村を救ってくれる凄腕のハンターであり

口を出せるような相手ではない。

20 :名無しさん@おーぷん 2017/07/30(日)15:07:25 ID:Ujx
「討伐目標は“ヴァンパイア・ロード”、星輝子で間違いない?」

村長は頷いた。

「相違ありませぬ。

 あやつは、我らが先祖から受け継いだ土地を奪い、

 時には村の少女を攫って血を吸う鬼にございます…」

凛は危うく吹き出しそうになった。

「…まあ、なんでもいいけど」

彼女は現在の時刻を確認した。

太陽が燦々と輝く、午前の11時。

相手は、あくまで通称のヴァンパイアであるから、

時間帯によるアドバンテージは期待できない。

くわえ、星輝子は戦争を体験した第一世代。

奇襲なども当然考慮し、罠を張っていることは疑いようもない…。

21 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:03:22 ID:QuQ
凛が思案していると、突如太陽が翳り、雷鳴が響いた。

村人達が悲鳴を上げて、

蜘蛛の子を散らすようにそれぞれの家に隠れる。

「芝居がかってる」

凛は肩をすくめた。

これは、ヴァンパイアが人里に“君臨”する際の演出である。

大気に含まれるナノマシンによって、天候ははるか昔に彼らの所有物になっていた。

雷光に照らされ現れるは、雪のように白い、優雅な4頭の馬。

その馬達が引く、南瓜のような丸みを帯びた豪奢な客車。

ある種、滑稽ですらある貴族趣味の賜物。

凛が苦笑し、腰に下げた長剣の柄に手をかけた時、

その馬車めがけて走る閃光があった。

村の誰かが、レーザーライフルを撃ったのだ。

しかし光線は、馬車に施された鏡面装甲によって拡散し、

地面や土塀にいくつかの焦げ跡を残しただけだった。

22 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:04:23 ID:QuQ
「随分な…ご挨拶じゃあないか…」

馬車の中から、小柄な少女___に見える貴族が現れた。

畏怖というよりは、やはり滑稽さを抱かせるような、

装飾過多の伯爵衣装を纏って、

おどおどしたように、銀色の瞳を動かしている。

変わってない。

凛はそう思った。

彼女は幼い頃、星輝子を遠目に見たことがあったが、

その時も臆病な顔をして、周囲を見回していた。

「早速ハンターの処分に来たっていうわけ?」

凛は挑発するように、輝子を指さした。

しかし相手は薄く微笑むに留めた。

23 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:04:52 ID:QuQ

「領内に客人がやってきたら…挨拶をするのが領主の務めだよ…フヒ…」

輝子の態度はともかく、言動は理想的な君主の様であった。

レーザーを撃った人間を咎めたり、凛の挑発に腹を立てるような素振りもない。

「さて…遠路はるばる申し訳ないが…帰ってくれないか…?」

輝子は凛の足元に金貨の詰まった袋を投げた。

村が払った倍以上の額である。

しかし凛は、手を横に振った。

「人助けが仕事で、ヴァンパイア狩りは趣味だから」

「趣味…そうか…ならば、受けて立とう…!」

輝子は飛び上がって村から離れた。

自分に有利な地形まで移動するつもりだろうか。

凛は臆さずにそれを追った。

24 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:05:23 ID:QuQ
村から5kmほど離れた森林。

 その樹々には無数のキノコが群生している。

 「自己紹介を…忘れていた…」

 輝子はジャケットを鬱陶しそうに脱いだ。

「日本陸上自衛隊第142部隊…戦鬼丙種3号…星輝子」

 貴族達は独自の社会を築き、公爵、伯爵を自称する者が多いが、

 輝子は戦時中の所属を名乗った。

「ヴァンパイアハンター、渋谷凛」

 凛は長剣を抜いた。

 木漏れ陽が刃を照らして、そこに刻まれた紋様を浮かび上がらせた。

「渋谷…渋谷……貴様、まさか裏切り者の渋谷の娘かッ!?」

 輝子が手をかざすと、キノコ達が一斉に胞子を吐いた。

25 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:05:58 ID:QuQ
ただのキノコではない。

 輝子が自ら開発した、

ナノマシンと細菌によって構築される兵器である。

 胞子は相手の皮膚の下まで入りんで発芽し、

筋組織、内臓を破壊する。

 しかし、その胞子は凛の肌に触れることはなかった。

 彼女の身体を這う様に咲いた花々が、花粉を放って胞子を絡め取ったのだ。

 それは輝子が知っている渋谷の能力ではない。

 超人である凛の父親は、超能力者の女との間に子を成し、それが凛であった。

 技を破られた輝子は、とても寂しげな表情をした。

26 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:06:30 ID:QuQ
 そして、細く枯れたようなキノコを懐から取り出し、食した。

 青白い顔に赤い血管が浮かび上がり、

 彼女の全身の筋肉は倍ほどに膨れ上がった。

 「ヒィィィアッハー!!」

 胞子など無くとも、輝子はかつての日本が作り出した生体兵器。

 拳を震えば、人が紙細工のように吹き散る。

 ただ走って体当たりをするだけで、相手は血飛沫に変わる。

 輝子は凛に殺到し、腕を振り上げた。

27 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:06:53 ID:QuQ
一方凛には間合いの長さがある。

凛は横薙ぎ、相手の首を狙って神速の剣を振るった。

常人の目にも留まらぬ一撃、しかし、輝子は常人ではない。

剣を前転で回避、その勢いで踵落としを繰り出す。

躱せぬと判断した凛は、鎧の厚い肩で受ける。

それでも勢いは殺しきれず、彼女は地面に引き倒された。

態勢を直した輝子は、凛の上に躍りかかって

身体を守っている花々を全て散らす。

鋭い爪が凛の肌を咲き、鮮血が表面をぬらぬらと伝った。

28 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:07:12 ID:QuQ
だが凛は表情を崩さず相手の腹を蹴り上げ、

巴投げの要領で、輝子を弾き飛ばした。

そして浮かび上がった敵の胴体を、凛は一刀両断した。

輝子は、苦悶しながら息絶えた。

超人ゆえの生命力が意識を延長し、痛みを長引かせたのだ。

凛は死体に火を放ち、焼き尽くした。

29 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:08:00 ID:QuQ

輝子が灰になるのを見届けた後、凛は彼女の居城へ向かった。

村人の依頼は輝子の抹殺、ひいては土地を取り戻すことにある。

その土地にトラップや他のモンスターがうろついているのであれば、

凛はこれを排除せねばならない。


森林からさらに5kmほどの距離、

そこにあるのは白い、墓標のような塔。

これが輝子の居城である。

その周囲には緑溢れる草原が広がり、

過去の大気汚染の痕跡など欠片も伺わせなかった。

30 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:08:24 ID:QuQ
不思議なことに罠や迎撃装置の類は一切なく、扉は静かに凛を迎え入れた。

中は非常に質素なもので、貴族の住処とは到底思えぬ様相。

装飾品や宝物もなく、それを当てにしていた凛は鼻白んだ。

代わりに地下室で、膨大な量の、土地に関する権利書を見つけた。

仮に他の貴族が侵入してきても、輝子が生きていることにして、

この権利書を見せればよいだろう。

強大な権力を持つ貴族であるが、

自分たちが作り上げた制度に対しては従順である。

31 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:09:10 ID:QuQ
書類の束を漁っているうちに、凛はやはり、と確信した。

村人は「土地を奪われた」と主張していたが、

輝子はその“先祖”とやらが現れるよりはるか前に、この土地を所有していた。

彼女は移住者に乞われて、無償で土地を貸出した。

同時に領内に入り込んだ怪物と彼らが戦える様に、

レーザー・ライフルを20丁を与えた。

だが月日が経つにつれ、移住者はその恩も、

自身が移住者であったことすらも忘却。

輝子こそを土地の簒奪者にし、ヴァンパイア・ハンターを呼んだ。

32 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:09:42 ID:QuQ
凛は権利書を抱えながら、長い階段を登った。

エレベーターは故障したのではなく、元より備わっていなかったのだ。


最上階には、透明なガラスの棺桶が整然と並んでいる。

その中には、老人達が安らかな顔で眠っていた。

村からいなくなった少女が、老いた姿なのであろう。

家族から引き離され、血を吸われ無残に死んだ。

村人はそう語っていたが、そもそも貴族達は吸血を行わない。

さらに、「子どもの仇を取ってくれ」などと言う親の姿もなかった。

それが意味するところは…。

凛は考えるのをやめた。

33 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:29:30 ID:QuQ
無言で棺桶の列を見回していると、その中に2体、

輝子と同じ背格好のものがあった。

ケースの表面に名前が刻まれている。

『我が友、輿水幸子』

『我が友、白坂小梅』

その2人は、星輝子と同じ部隊におり、

戦争が終わった後も、彼女にとってかけがえのない親友であった。

しかし、マイクロ波を浴びたことにより病魔に犯され、亡くなった。

凛が改めて部屋を見渡すと、棺桶に納まっている遺体達の人相は、

かすかに、この2人に似ていた。

34 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:29:54 ID:QuQ
友を奪われ、憎まれ、それでも尚、人間と向き合おうとした輝子は、

苦悶の表情を浮かべて死んだ。

その事実に対して、凛はなんの感慨もない。

ただ、彼女は黙って土地の権利書を、

輝子と同様に焼き尽くしてしまった。

35 :名無しさん@おーぷん 2017/07/31(月)23:30:38 ID:QuQ
おしまい



おーぷん2ちゃんねるに投稿されたスレッドの紹介です

元スレ: ヴァンパイアハンター凛
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1501226513/


[ 2017/08/03 18:55 ] モバマスSS | TB(0) | CM(1)
コメント
7862: 2017/08/04(金) 10:15
前説八割本編二割…
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