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【デレマス時代劇】木場真奈美「親子剣 屠龍」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1499613356/

2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:16:30.55 ID:WFdAiEj50
太平の世が始まって、しばらくした頃。

戦もなく、特別な不幸もなかった。

代わりに人々は、変わらない日常に仄かな圧迫感と憂鬱を感じるようになった。

特にそれが酷かったのが、武士であった。

戦乱があった頃は、腕さえあればすぐに身を立てることができた。

至極、物理的な手段に訴えて生きていくことができた。

しかし今の彼女達は秩序によって雁字搦めにされ、

自身の刀でさえ、思うように振ることができない。

その鬱屈は、ゆるやかに蓄積されていった。

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:17:39.03 ID:WFdAiEj50
こんこんと降る雪が灯篭に照らされて、

幻想的な風景を描き出していた夜。

ようやく日の勤めを終えた木場真奈美は、屋敷に戻った。

藩主の体調不良が長く、現在十月ほど。

城の警護は否応なしに長引いていた。

木場が門をくぐろうとすると、はて、家を出た時にはなかった籠がある。

拾い上げてみると、中で赤子が安らかな寝息を立てていた。

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:18:33.24 ID:WFdAiEj50
赤子の傍らには文が添えてあった。

 “あなたの子です”。

「さて、いつ産んだか…」

頭をひねりながら、木場は籠を抱えながら屋敷に入った。

彼女が、赤子を拾ったことにさしたる理由はなかった。

強いて言えば退屈していた。

馬廻の長といっても、平和な世では藩主の権勢を示すためのお飾りに過ぎない。

剣を頼みにして成り上がったのはいいが、実際のところ、

それが発揮された機会は皆無であった。

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:21:04.06 ID:WFdAiEj50
向上心は胸の中に燻っているが、これ以上は藩をひっくり返すでも

しなければ叶わぬ望みだ。

家族を養うために暇を忘れて懸命に働く、という選択も

天涯孤独かつ嫁も取らなかった木場には無縁。

仕事に甲斐はなく、家中には華がない。

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:27:30.73 ID:WFdAiEj50
彼女は驚く下女に赤子を預けた後、書室に入って筆を取った。

名前は実際、抱き上げた時に思いついていた。

むっとするくらい乳と小便くさかったので、薫と名付けた。

木場の名前を与えるつもりはない。

親をやるのは一寸気後れがするからだ。


木場は、下女に薫の面倒を見させて、

自分は時々様子を見るに留めた。

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:28:36.46 ID:WFdAiEj50
だが、ある時。

木場は、庭先で棒切れをつかんで立っている薫を見かけた。

剣士の真似事か。

ふっと微笑みながら、薫を観察した。

体が乱れている。構えも滅茶苦茶。

道場で同じことをしたら、失笑を通り越して張り倒されるだろう。


薫は、どこか一点をきっと見つめていた。

その視線だけは一丁前だった。

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:29:35.82 ID:WFdAiEj50
だが棒を振り回した時、すっ転んでしまった。

姿勢が安定しない状態で思いっきり武器を振り回せば、当然の結果である。

ひざを擦りむいた薫は、大声で泣き出した。

下女が屋敷から飛び出してきて、薫を抱え上げた。

その風景は、ふっと木場の胸中に荒涼とした風を吹き込んだ。

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:30:39.50 ID:WFdAiEj50
2人が屋敷に消えた後、木場は棒切れを拾い上げて、

突きを繰り出した。

新陰流の達人にかかれば、棒切れも空を裂く。

ぼっ、という音を立てて、あたりにつむじ風が巻き起こった。

なんだか大人気ないことをした、と木場が棒切れを投げようとすると、

足元にあるものを見つけた。

真っ二つになった白い蝶。

それは、木場が斬ったものではなかった。

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:31:44.01 ID:WFdAiEj50
その日から、木場は薫に直接剣を教え始めた。

はじめは退屈を潰すつもりだったが、途中からは本気になった。


控えめに言っても、薫は剣術の天才だった。

型の習得、気力の充実、反射神経…強いて言えば筋力がやや低かったが、

それを補ってあまりある“速さ”。

真剣勝負の場で薫の剣が走る時、おそらく相手はまだ抜いてすらいない。

仮に抜いていたとして、防ぐことも叶わぬ。

常人が一振りをする間に、彼女は三回相手を[ピーーー]ことができる。


教えることが少なくなってくると、木場は自身の傑作を

他人に披露せずにはいられなくなった。

13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:32:41.81 ID:WFdAiEj50
しかし薫は、身分上は武士ではない。

馬鹿正直に道場へ送っても、相手にしてもらえるかどうか。


そこで木場は一計を案じた。

まず、気取った一刀流の道場のそばの小路で、

薫が適当に棒切れを振る。格好は、できるだけみすぼらしく。

すると、門下生達は彼女を取り巻いて、真の剣術とは云々と、

嫌味ったらしく説教を垂れるだろう。

そこで、薫が相手を叩きのめすのだ。

戦が終わってからは気位ばかり高い一刀流の門人達は、

面目を潰されたとして

次々に勝負を持ちかけてくるだろう。

それらを片っ端から潰していけば、薫にとって良い腕試しになる。

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:33:49.55 ID:WFdAiEj50
木場の目論見は功を奏した。

その結果、薫の剣の腕は藩主の目にとまった。

成長した彼女は、

側仕えの剣士として、召抱えられることとなった。


剣の腕が立つとは言え、身分上はただの町人のはずだが…。

木場は首をかしげたが、教え子の栄達に水を差すのも無粋だと思い、

あまり深くは考えなかった。

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:35:39.80 ID:WFdAiEj50
「せんせえ…」

屋敷の門の前で、薫が寂しげに振り返った。

木場と彼女の間にある感情面の蓄積は大きかったが、

実際その関係は平行線上にあった。

「頑張れ」

木場はそれ以外にかけるべき言葉が見つからなかった。

仕事の出来る女ではあるが、私的な面では不器用の部類に入る。

とはいえ剣士として授けられることは全て授けた。

それが活かされるなら、余計な感傷は無用。

「早く行け。

 遅刻の言い訳までは教えたつもりはないぞ」

薄く微笑んで、木場は手を振った。

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:36:40.00 ID:WFdAiEj50
数年後、薫の腕は城下だけでなく藩外まで知れ渡った。

よそから来た浪人や武芸者が、腕試しに彼女のもとを訪れ、

皆あえなく敗退し、生きていた者はその勇名を広めてまわった。

木場も、自分のことのように誇らしい気持ちになった。

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:38:17.95 ID:WFdAiEj50
しかし程なくして、暗雲が立ちこめた。

執政会議において藩主と家老の対立が著しく、藩は真っ二つに分かれた。

言論での応酬が交わされることなく、

同意のなされた勝負、一方的な辻切り等、

真剣での殺傷が藩内に氾濫した。


木場は静観の姿勢を保った。

どちらに肩入れしても、またどちらかに強く恨まれる。

それよりかは多少の不興を買ってでも、何もしない方が安全のように思われた。


しかし、薫はそうすることができなかった。

彼女は藩主の命を受け、家老を斬り捨てて、

血生臭い政争を物理的に終結させた。


そしてその後、藩主は薫に、直々に切腹の刑を言い渡した。

家老派の憎悪を押し付ける腹づもりであるのは、

誰にとっても明白だった。

18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:39:08.10 ID:WFdAiEj50
木場は声を上げなかった。

こういった不条理を目の当たりにしたのは、初めてではない。

また武士として生きる以上、藩の汚泥を被って死ぬのは、

たとえそれが不本意であったとしても、成すべきこととのように思われた。

木場は介錯を引き受けた。

他の者にやらせれば、その人間を恨んでしまうな気がしたからだ。

刑は粛々と実行された。


19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:39:48.95 ID:WFdAiEj50
遺体を引き取った後、

ふと木場は、薫の本当の親のことが気にかかった。

拾い子という事実を、木場は隠していない。

薫の名声のことを思えば、

厚かましくも名乗り出てくる輩が出てきても、不思議ではなかったはず。

墓前に手を合わせるくらいはしてもらわねば、と、木場は決意した。

20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:40:31.10 ID:WFdAiEj50
町民への聞き込み。

薫が産まれたであろう時期に、妊婦の面倒を見た助産婦の捜索。

普段は足を踏み入れない貧民窟にも、木場は進んでいった。

それと並行して、彼女は遅ればせながら遊郭通いを覚えた。

やはり薫のことに関して、重篤な心理的苦痛があったのだろう。

しかし、親探しに決着をつけたのがその遊郭であった。


藩主が体調を崩し始めたのと同時期に、1人の男娼が殺されたという。

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:41:10.85 ID:WFdAiEj50
ある夜、城の寝間の襖が、ゆるりと開かれた。

「ご就寝前に失礼致します」

藩主は起きて、暗がりの中で目を凝らした。

「何奴だ」

相手は、慇懃な口調で答えた。

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:41:40.65 ID:WFdAiEj50
「馬廻の木場に御座います」

23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:43:03.65 ID:WFdAiEj50
「どうした」

24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:43:48.29 ID:WFdAiEj50
「子の仇を取りにきました」

25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:44:50.04 ID:WFdAiEj50
藩主はぎょっとして助けを呼んだが、誰1人としてやってこなかった。

すでに柄が重くなるほど、木場の刀は血を吸っていた。


哀れな女は、寝間を転がりまわって逃れようとした。

しかし灯りもなく、どこへも進みようがない。

木場はすうと一呼吸して、暗闇の中で、神速の突きを二回放った。

剣は藩主の両瞳を寸分も違わず貫き、絶命させた。

26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:47:38.04 ID:WFdAiEj50
これが、かの龍崎藩で起こった藩主暗殺の顛末である。

27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:48:06.50 ID:WFdAiEj50
おしまい

29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:50:12.94 ID:WFdAiEj50
【デレマス現代劇】二宮飛鳥「ダウンヒルクライマー」

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:50:39.24 ID:WFdAiEj50
一瞬、空が遠くなった。

31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:52:33.48 ID:WFdAiEj50
新関東大震災。メディアはそう呼んだ。

でもそんな言葉では到底、到底、

ボクの絶望を表現できない。

マグニチュード8以上の地震は、東京にあった美城プロダクションの各部署を、

跡形もなく破壊し尽くした。

ビルの高さは最低でも10階以上。

一階にいた人間は瓦礫とガラスと、それから他の人間に擦り潰されて。

上の階の人間は、床に足をつけたまま落下死する。

偶然外に出ていて生き残ってしまったボクは、

吐き気をこらえながら

崩壊した建物の側で救助が来るのを待った。

夜は、避難所から持ってきた、乾いた毛布を纏って、凍えながら眠った。

32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:54:32.88 ID:WFdAiEj50
朝どうしてもお腹がぺこぺこになって

避難所に戻ると、いやらしく耳につく歌が聞こえた。

よく知らない女の子達が、けばけばしい衣装を着て踊っている。


それでも避難所のみんなは、彼女たちの下へ集まって、

歓声を上げたり、拍手をしたりしていた。

ボクは、それを遠目に見ているおばあさんに、

「あれは?」と尋ねた。

おばあさんは、「余所からきた」、と冷たい声で言った。

それから、「歌じゃ腹はふくれないよ。

心がこもってないなら、なおさらね」と付け加えた。


また他の人に尋ねると、

彼女達は関西あたりの、地下アイドルグループだという。


そこでボクは理解した。

この最悪の現実ですら、“食い物に”できる人間がいるんだって。

33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:55:40.94 ID:WFdAiEj50
東北の方へ出張していた、美城プロダクションの職員達も、

彼女達と同類だった。

彼らはボクを一目見るなり、「ライブをしよう」と持ちかけてきた。

「君の歌で被災者の方々に希望を与えるんだ」と。

ボクは無性に、母さんと父さんに会いたくなった。

でも、ネットは通じない。

そして東京へ至る全ての道は、走行が不可能なほど滅茶苦茶になっていた。

勿論、鉄道も。

じゃあ、あのアイドルグループや美城の連中はどうやって来たんだって?

きっと空から飛んで来たんだろう。

蝙蝠みたいな翼で、どこかのヘリポートに。

34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:56:47.69 ID:WFdAiEj50
地震が起こってから9日。

雨が降ってきた。

ボクは抱えきれないくらいのブルーシートを引き摺って、

避難所の外に飛び出した。

なんでこんなことをするんだろう。

「みんなが溺れる…」

ボクはズタボロになったシートを、瓦礫の上にかぶせた。

強い風が吹いて飛ばされるたび、追いかけて、

素っ転んで、鼻血を出して、それを捕まえて元の位置に戻した。

雨水は生傷だらけになった身体に染み込んで、心まで冷やした。

35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:57:29.01 ID:WFdAiEj50
「あははっ」

ボクはなんで、こんなにも愚かなんだろう。

人の生なんて儚いものだ、なんて、

あの頃は散々言っていたじゃないか。

感情なんて所詮、化学物質の分泌なんだって、

志希と笑いあったじゃないか。

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:58:17.49 ID:WFdAiEj50
10日目。

ボクはふと、地震が起こった日に、

本門寺公園の方でLiPPSがライブを行っていたことを思い出した。

彼女達は無事なのだろうか。

後ろ髪を引かれる思いだったけれど、

ボクは大田区まで、一時間かけて歩いた。

そういえば本門寺公園にはキャンプ場があるから、

他のアイドルもそこへ避難しているかも……。

37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:58:58.64 ID:WFdAiEj50
そんなボクの希望は粉々に打ち砕かれた。

本門寺公園は、御堂を含めて全焼していた。

木々も黒く煤けていて、対照的にキャンプ場の芝生は青々としていた。

人の姿はなかった。

そこで引き返せばよかったのに、ボクは公園内を、ゆっくり徘徊した。

そして池の近くまで差し掛かった時、強烈な悪臭に目と鼻を塞いだ。

しばらくして咳き込みながら目を開けると、おびただしい数の死体の中に、

大きな金魚が数人浮かんでいた。

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 00:59:33.64 ID:WFdAiEj50
色彩豊かな衣装がたなびいて、身体は腐敗して膨れ上がっている。

ボクは嘔吐した。

それでも目は、LiPPSのみんなに釘付けになっていた。

彼女達をなんとか陸へ引き上げようと水面に近づくと、

身体が後ろに引っ張られた。

「その池の水を飲んじゃダメだ」

男の人が、憔悴しきった顔でボクに言った。

話を聞くと、水不足に苦しんだ人々が、池の水を飲んだ結果感染症にかかり、

すでに何名も亡くなったという。

水が飲みたかったんじゃなくて、彼女達をなんとかしたいんだ。

そう言いかけた時、彼女達が身をよじって、水面が大きくうねった。

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:00:04.84 ID:WFdAiEj50
生きていたのか!

急いで池に歩み寄ろうとしたけれど、また男の人に止められた。

死体が動いたのではなくて、ただの余震だと。

40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:01:19.53 ID:WFdAiEj50
12日目。ボクはまた瓦礫の前で立っていた。

やってきたのは救助隊ではなかった。

なんだか、よくわからないロゴが書かれた、大きなショベルカーの群れ。

ボクは車両に石を投げて、「何しにきたんだ!」と叫んだ。

現場監督だか、なんだか、無愛想なおじさんがやってきて、

「瓦礫の整理に」と、まったく申し訳なさそうに答えた。

それを聞いてボクは、ぺたり、とその場に座り込んだ。

41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:02:38.24 ID:WFdAiEj50
身体を地面に押し付けたのは、現実という名の怪物だった。

みんな死んだんだ。

プロデューサーも、蘭子も、幸子も、LiPPSのみんなも、

あのクソッタレ常務も、みんな。

涙は出なかった。

ボクの脳の中にある情動器官は、まだ何も分かっていないのだ。

1分と少しの間東京の街が揺れただけで、

何もかもが壊れてしまうなんて。

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:03:26.02 ID:WFdAiEj50
それでもボクは、瓦礫をかき回そうとするショベルカーに向かって叫んだ。

「ここには、輿水幸子がいるんだぞ!

神崎蘭子も、あのLiPPSのアイドル達だって!!」

生きているとか、死んでいるとかじゃない。

彼女達は、鋼鉄の爪で引き裂かれていいような、そんな存在じゃないんだ。

43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:03:54.50 ID:WFdAiEj50
「知らないよ」

現場監督の男は、そう冷然と言い放って、作業開始を支持した。

ボク1人では止められなかった。

心底、自分がただの14歳のガキなんだって思い知らされた。

44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:04:50.43 ID:WFdAiEj50
ボクは避難所に戻って、みんなの力を借りようとした。

でも、「知らない」という声ばかり。

TVにいっぱい出ても、CDを何万枚も売り上げても、

武道館でライブを行なっても。


みんなを覚えていたのは、あの皮肉屋のおばあちゃんだけだった。

「私みたいな婆さんでなくたって、人はみんな忘れっぽいのさ。

 ほんの少し前に東北や九州が地震に襲われたことも、

 かけがえのない人がいたことさえも…」

45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:05:25.60 ID:WFdAiEj50
そう言われてボクは頭が真っ白になった。

みんなの顔が、どんどん薄れていってる。

顔だけじゃない。

身長はどれくらいだった?

どんな声だった? 趣味は? 

ボクは彼女達とどんなことを話した?

覚えていること、思い出すことを、

ボク自身の脳味噌が拒んでいる。

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:05:52.58 ID:WFdAiEj50
心が、壊れてしまうから。

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:07:12.18 ID:WFdAiEj50
だけどボクは、いてもたってもいられなくなって、

セピア色がかった記憶をまさぐって、歌を口ずさんだ。

何人かが顔を上げた。

忘れたくない。

忘れないでくれ。

ボクは声を張り上げて歌った。

途轍もなく、下手くそな歌を。

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:07:40.33 ID:WFdAiEj50
かっこ悪い。惨めだ。

胸がじくじくと痛む。

でも歌うのはやめなかった。

この下り坂を転げ落ちたら、彼女達だけじゃなくて、

ボクの魂ごと離れていってしまう気がしたから。

声が枯れて、立っていられないほど疲れ切ったボクは、そのままぶっ倒れた。

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:09:18.16 ID:WFdAiEj50
2週間目。

ようやく母さんと父さんと連絡が取れるようになった。

いざ話そうとすると、ボクは何を言えばいいのかわからなかった。

伝えたいことがたくさんあって、ありすぎて、頭が痛い。

結局、「うん」、「大丈夫」を繰り返しているだけだった。

だけど、「迎えに行くから静岡に戻っておいで」という母さんの言葉に、

電話越しだけれどボクは首を横に振った。

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:10:07.63 ID:WFdAiEj50
ここにいたかった。どんな苦痛がともなうとしても。

みんながここに、確かにいたんだ。

その真実の美しさを、ボクは忘れたくなかったから。

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:10:56.28 ID:WFdAiEj50
一ヶ月目。

ボクは避難所の中を駆けた。

瓦礫の下から、みんなが戻ってきた。

遺体は、驚くくらい綺麗だった。

けれど表情は苦しげだった。

死因は窒息、飢え、衰弱。

圧死していた方が楽だったと、美城の職員の男が言った。

ボクは土で汚れた、蘭子の顔を撫でた。

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:11:34.38 ID:WFdAiEj50
彼女の瞳から、すうっと血の涙が流れた。

はっと顔を上げると、みんなの頰に、真っ赤な雫が伝っていた。


53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:12:03.51 ID:WFdAiEj50

おかえり。


54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:12:57.33 ID:WFdAiEj50
地震が起こってからはじめて、ボクは泣いた。

声を上げて、泣き続けた。

55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:13:28.81 ID:WFdAiEj50
おしまい

56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:14:48.43 ID:WFdAiEj50
【デレマス現代劇】東郷あい「藍よりも深い青」

57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:15:31.92 ID:WFdAiEj50
東郷あいは、ヒトの愛を知らない。

23歳の誕生日を迎えた時でさえも。

58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:16:41.16 ID:WFdAiEj50
仕事で家を空けがちな男と、

浮気性のある怠惰な女。

何かの手違いで結婚したとしか思えない二人が、あいの両親だった。

虐待こそされなかったが面倒もろくに見てもらえなかったので、

あいは何でも自分で出来るようになった。

そうすると同級生達は彼女を頼るようになった。あいは快く応えた。

だが、誰もあいを助けることはできなかった。

彼女が困るような事態を、他の子どもが何とかできるはずがない。

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:17:51.48 ID:WFdAiEj50
進学をしてもそれは変わらなかった。
あいは凄絶な孤独を全く表にださず、周囲の期待に応え続けた。

そして大学生活が終わりにさしかかって、

そろそろ自殺でもしてみようか、

と海に身を沈めようとしていた頃、アイドルとしてスカウトされた。

後に明らかになったことだが、

プロデューサーはあいに匹敵するほどに優秀な人間だった。

しかし彼女とは違って、エゴがスーツを着て歩いているような人間だった。


「どうせ死ぬなら、あんたの人生を俺によこせ」

海からあいを引き上げて、彼はそう言った。

「プロポーズかい?」

「あんたがアイドルになることを

提案(プロポーズ)する。

まあ、人生が台無しになるのは一緒だ」

言葉を交わして、あいは相手が自分と同種類の人間であることを理解した。

60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:18:26.65 ID:WFdAiEj50
怜悧さと温かみを兼ね備えた容貌。

豊満ではないが、中性的な表情ゆえに、

背徳的な魅力を醸し出す体型。

父性と母性が融けあったような、穏やかでありつつも頼もしい性格。

それで、何でも「出来て当然だ」というようにこなしてしまう。

東郷あいはあっという間に、

トップアイドルの座に躍り出た。

61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:19:20.47 ID:WFdAiEj50
「初めて見た時から躍りが得意に見えたんだ」

美城アイドルの総選挙の後、プロデューサーはそう言った。

それに対して、あいはこう返した。

「道化の君には負けるよ」

しばらく二人で笑いあった。

愚かな人間達を楽しませるために、自身達の人生を磨り潰している。

金はいくら増えても慰めにならない。

あいとプロデューサーは、互いが唯一の理解者だった。

62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:20:37.78 ID:WFdAiEj50
けれども、そこに男女としての愛はなかった。

それよりも深い、信頼と友情の念が滔々と湧き出ていた。

あいの23歳の誕生日は、二人で祝った。

場所は閑静で、さらに口が堅いことで有名な料亭。


「まるで恋人同士みたいだね」

「ぞっとする」

「傷つくなあ」

「嘘つけ」

そんなことを言いながら、彼女達は料理と酒を楽しんだ。

63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:21:30.89 ID:WFdAiEj50
二人が愛し合うことができないのは、

結局のところ自らの内にある、最も嫌悪する部分を相手も持っているためだった。

自己嫌悪。同族嫌悪。

それゆえに自分を信じるのと等価に、相手を信じられる。

世界に絶望してもなお、世界にすがり、尽くす。

そのために何をすればよいのかを熟知している。

よって、どちらかが下手を打って両者が地獄に堕ちることがあっても、後悔はしない。

そういう仲だった。

64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:22:55.22 ID:WFdAiEj50
だが世間の目は厳しく、想像力は貧相かつ猥雑だった。

友人同士の“気さく”な宴は、男女の逢瀬として露見した。

あらゆる事象を性愛によって断じる軽薄な人間達は、2人を糾弾した。

65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:24:00.32 ID:WFdAiEj50
事務所内の人間は同情的だったが無理解だった。

「人が失敗をすると急に生き生きする人間は、どこにでもいるものさ。

料亭の中にもそういう奴がいたんだ」

あいと同じく、アイドルである木場真奈美はそう言った。


あいは肩をすくめながら返した。

「私は失敗をしたとは思っていないよ。

それと、私達が会っていた場所は公表されていない」

固まる真奈美の背中を撫でた後、あいは彼女との関係を絶った。

66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:24:28.92 ID:WFdAiEj50
東京のとあるバー。

時刻は深夜を回って、客入りも少なかった。

それに輪をかけて寂寞とした音楽が流れていた。

その奏者は東郷あいと、プロデューサーの男。

チャーリー・パーカーの『Confirmation』。

サックスがあい、ピアノがプロデューサーである。

あいとはちがって、元々プロデューサーの方には楽器やジャズに対する関心はなかったが、

「あい程度に出来るんだから自分にも出来る」と言って、

演奏を始めたのがつい最近のことである。

67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:25:10.12 ID:WFdAiEj50
音色はやや硬質であったが、彼の奏でる旋律は決して稚拙ではなかった。

あいのアルトサックス、ヤマハ82ZULは長年の使用によって管体の表面が酸化している。

その素朴な音と“硬い”ピアノがうまく調和して、

晩秋の樹林のような雰囲気を醸し出していた。

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:25:54.84 ID:WFdAiEj50
その後2人で入ったビジネスホテルの一室。

あいはサックスを分解して、演奏後の手入れを行なっていた。

音孔を塞ぐ革張りのタンポの水分を、丁寧に拭き取る。

こうしないと劣化して空気漏れや錆の原因となる。

必要以上に時間をかけて、あいはサックスの管体を磨く。

あいはふと、楽器に対するような愛着を

なぜ他人に持つことができないのだろうと考えた。

69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:27:03.42 ID:WFdAiEj50
別のベッドでくつろいでいる男に尋ねると、

「人は裏切るから」と、特に感慨もなく答えた。

あいは、ふっと微笑んで、

「木場さんは君のことを愛していたみたいだよ」と言った。

対してプロデューサーの方は、

「いや、あいを見つめている視線の方が熱かった。

 俺はあいが蒸発しないかって、いつも冷や冷やしていたんだ」

「わくわくじゃなくてかい?」

「ははは」

「ふふっ…」

過去の人間を笑い話にして、2人は笑いあった。

密会が露見してから両者の関係は、少し露骨になった。

人目をはばからずに外出するようになり、バーでの演奏のような、

“勤務外の奉仕活動”も頻度が増えた。

二人は一切の弁明をしなかった。

「フロイトの出来損ないが多すぎる」と肩をすくめたくらいだった。

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:28:04.56 ID:WFdAiEj50
あいの仕事は激減した。

売女、あばずれ、金返せ。

そのような手紙が事務所に殺到した。

手紙一通一通、罵詈雑言一字一句に目を通して、あいは苦笑した。

「アイドルは元々、公衆に向かって股を開く女なのにね」

その言葉を聞いた他のアイドル達はぎくりとした。

彼女達の後ろめたさは、あいへの疎外という形で返ってきた。

71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:28:38.36 ID:WFdAiEj50
プロデューサーはプロデュース業がめっきり来なくなって、

代わりに細々とした事務職に打ち込んでいた。

なまじ優秀な男であるから、経営者側も切るに切れない。

アイドル達は彼に近づかなかった。

プロデューサーであるにも関わらず、あい以上の痛烈な皮肉を吐くからだ。

「観客の目線が気持ち悪かった」というアイドルに対して、

「そいつの金で細々と生き長らえているご気分は?」などと尋ねる。

皮肉であるのと同時に、それはぞっとするほどの正論であるから、何も言い返せない。

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:29:34.67 ID:WFdAiEj50
直接“美城から出ていけ”と言われることはなかったが、

ある日、2人はいい加減うんざりして、定例会議の最中に辞表を提出した。

違約金が、損害の埋め合わせがと誰かが喚いたが、

札束の詰まったアタッシュケースがテーブルに積まれると、皆閉口した。

それを尻目に、あいとプロデューサーは会議室を後にした。

さらに、同日のうちに東京からも飛び出した。

73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:31:00.51 ID:WFdAiEj50
「勿体無いことしたかな」

北へ北へと続く電車の中で、あいは呟いた。

それを聞いた元プロデューサーは、書類を数枚取り出した。

東郷あいの楽曲や映像の権利書。

所有者の欄には、2人の名前が記されていた。

上層部と同僚のサボタージュにつけこんで、秘密裏に手続きがなされていたらしい。

「ちょっとまずいんじゃないのかい?」

あいがそう指摘すると、さらに男はレコーダーとスマートフォンを取り出した。

そこには、定例会議で金を無心してきた役員の肉声があり、

さらに会議室の様子がリアルタイムで中継されていた。

ごちゃごちゃ言っていたが、

要するに2人からどれだけ金を搾り取るかの算段であった。

格好の脅迫材料である。

74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:31:51.41 ID:WFdAiEj50
2人は津軽の驫木駅 で下りて、少し歩いた。

“人影絶えた野の道を 私とともに歩んでる

あなたもきっと寂しかろう

虫の囁く草原を ともに道行く人だけど

絶えて物言うこともなく”

そう歌いながら、あいは涙を流した。

「大丈夫か」

男が尋ねると、あいは、

「大丈夫。

 ただ悲しいだけだから」

そう答えた。


75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:32:41.56 ID:WFdAiEj50
旅館に入ると、部屋には1つの布団だけがあった。

「してみようか」

あいは言ってみてから、しまったなと思った。

だが男は、無言でスーツを脱ぎ始めた。

それを追うように、あいも衣類を身体から引き剥がしにかかった。

彼女は最後に残った、ZENITHの腕時計を鬱陶しそうに外した。

男も全裸になった。

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:33:30.41 ID:WFdAiEj50
そうして2人とも、絶望的な気分になった。

あいの身体は、アイドルだった頃となんら変わらないプロポーションを保っていて、

露わになった肌にはシミひとつなく、艶やかだった。

男の裸体にも、余計な贅肉は付いておらず、

ギリシアの彫刻のように引き締まっていた。

けれども、2人にとって現在行おうとしていることは、

積み重ねてきた信頼と、友情に対する裏切りであった。

期待も、性的興奮も、全く湧いてこなかった。

「キスは?」

「したいか?」

「いや、全く」

77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:33:59.26 ID:WFdAiEj50
電気を消して、2人は交わった。

何かが良い方向に変わると思った。

結果は、何も変わらなかった。

ただただ深い悔悟の念が、両者の胸の内に込み上げてきた。

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:34:35.56 ID:WFdAiEj50
行為が終わったあと、押しつぶされるような沈黙が訪れた。



それに耐えかねて、男は部屋に備え付けてあった、PS2を起動した。

『FINAL FANTASY X』のソフトが入っていて、ゲームが始まるとすぐ、

物悲しげなメロディーが流れた。

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:35:01.06 ID:WFdAiEj50
しばらくその音色に耳を傾けた後、あいは男に尋ねた。

「私達の友情も、幻想だったのかな…」

男はモニターから目を離さずに答えた。

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:35:27.96 ID:WFdAiEj50
「俺が幻に見えるのか」

あいは、彼の背中にキスをした。

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 01:36:02.43 ID:WFdAiEj50
おしまい

85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:16:15.59 ID:WFdAiEj50
【デレマス現代劇】木村夏樹「Like,Enemy,Hands」

86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:17:16.95 ID:WFdAiEj50
意外なことに思われるかもしれないが、

幼い頃の木村夏樹は内向的で、

 あまり自分の意見を口に出さない子どもだった。

 けれども言いたいことは人並み以上にあって、

 いつも胸の内に不快なとっかかりが居座っていた。

87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:18:10.26 ID:WFdAiEj50

 夏樹が6歳になった頃。

 家族でキャンプに向かう車中。

 皆あまり口数の多い方ではなくて、それでは寂しいから、

 父親は音楽をかけた。

 レンタルショップで適当に借りて来た、洋楽のオムニバスCD。

 陽気であるけれども、軽薄で意味不明な言葉の連なり。

 夏樹はもじもじ、足をすり合わせた。

 退屈。

 しかし、ある曲がかかった時、彼女の心臓は飛び跳ねた。

88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:20:22.62 ID:WFdAiEj50
 The Clashの『White Riot』。

 英語、若干のコックニー訛りで、しかも喚くような声。

 幼い夏樹に聞き取れる訳がない。

 だが、今までの歌とは違う。

 何かを伝えたい、というようなささやかなものではなく、

 “俺の言葉を叩きつけてやる”という、暴力的なまでのエゴ。

 夏樹の心はギリリ、ギリリと締め上げられた。

 曲が終わったあとも、彼女の脳内でジョー・ストラマーの叫びが

 繰り返し、繰り返し響いた。頭痛を覚えるほどに。

 夏樹はシートの上で、こてんと横に倒れた。


89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:21:37.83 ID:WFdAiEj50
びっくりした家族が彼女を病院に担ぎこんだから、

結局、キャンプ計画は流れてしまった。


90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:23:19.86 ID:WFdAiEj50
その日から夏樹の性格は一変した。

端的に言えば、かなり我儘になった。

とはいっても同世代の子どもに比べれば、

子どもとしての分を弁えたものであった。


親ができないことは望まなかった。

ただし、できるだろうと夏樹が考えたものについては、

脛にかじりついてでもねだった。

The Clashのアルバムを借りてくることだったり、

自分用のラジカセを買ってもらうことであったり…。

夏樹が欲しがったものの中で1番の大物は、

フェンダー社製『“ストラマ”キャスター』、テレキャスター。

憧れのジョーが、塗装がボロボロに剥がれるまで愛用したエレキギターだ。


91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:24:27.68 ID:WFdAiEj50
当時の定価で8万円ほど。

実勢価格になると、6万円前後まで下がる。

さらに中古をオークションなりリサイクルショップなりで探せば、

3万円以内でうまく収まるだろう。

夏樹はこっそり父親のPCを使って調べた。

さらに家事を熱心に手伝い、小遣いもこつこつ貯め、

大好きだったおやつの購入を親に辞めさせ、

誕生日プレゼントも三回固辞して機を伺っていた。

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:24:57.59 ID:WFdAiEj50
夏樹が9歳になった頃、彼女はようやくギターを手に入れた。

子ども用ではなく、大きくなっても使えるように成人用を

購入してもらった。


しかし、何かが奇妙だった。

若干ボディが大きい。

弦を軽く撫でてみると、丸く太い音が出る。

テレキャスターには無いはずのトレモロがくっついている。

ボリューム/トーンのつまみがちがう。

しばらくぺたぺたさわってみて、夏樹は気づいた。

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:25:23.33 ID:WFdAiEj50
『ジャズマスター』じゃん。


ボロくてもテレキャスターならいいか、とおもったけど、

ジャズマスターだよ!!


94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:27:59.11 ID:WFdAiEj50
両親に抗議しようと試みたが、悪気はなかったのだと思い止まって、

しょうがないから彼女は

おんぼろのジャズマスターでギターを始めた。


強くピッキングすると、細いゲージの弦がブリッジのコマから外れる。

セレクターの据わりが悪い。

トレモロのせいで弦のテンションが弱くなる。

幼い夏樹には複雑すぎるトーンコントロール回路。

ノン・レフティ(右利き仕様)。

なんど癇癪を起こしてギターを放り投げようとしたか、彼女自身にも知れない。

とはいえ、せっかく両親が買ってくれたものだから乱暴には出来ず、

辛抱して練習を続けた。

95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:29:32.91 ID:WFdAiEj50
こまめに修理を重ねながら、ジャズマスターとの付き合いが5年程になった頃。

両親は娘が予想以上に演奏にのめり込んでいることと、

彼女が弾いているのがテレキャスターではないことに気づき、

ギターの買い替えを提案した。

しかし夏樹にとってのジャズマスターは、既にかけがえのない存在になっていた。

面倒なところも、ボロくて一寸カッコ悪いところも、

どのトーンの中にも、どこかにくぐもった歪みがあるところも。

ジャズマスターは半身どころか夏樹そのものだった。

もうこのギター以外では、自分の口でさえも、何も表現できないような気さえした。


96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:30:42.56 ID:WFdAiEj50
高校に上がると、夏樹は軽音楽部に入った。

その頃の彼女は驚異的な技術を身につけていたから、

多少の嫉妬はありつつも、部活の中心人物になった。

しかし、夏樹は思い通りの演奏をすることはできなかった。

楽器という点では同好の士といえど、見ている方向は全く違う。

皆はきゃあきゃあ言いながら、

ポップスやアニメソングの拙いアレンジに甘んじていた。


夏樹はそれに逆らえなかった。

学校は社会の杜撰なパロディで、オブラートに包まず彼女に圧力をかけてきた。


くだらねえ。つまんねえ。

夏樹は、人前では笑顔を振りまきつつも、

家に帰ると毒づいた。

97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:31:35.32 ID:WFdAiEj50
そんなある日彼女はモニター越しに、ある女に出会った。

松永涼。

ロックなアイドルというテロップがあって、それに夏樹は鼻白んだ。


その涼が、ユニットメンバーとともに

きゃぴきゃぴしたアイドルソングを歌った後、

おもむろにエレキギター、しかもテレキャスターを取り出して

劈くようなサウンドを響かせた。

夏樹は余興かと思ったが、そのあとスタッフに取り押さえられていた。

メンバーは「またか…」という顔で肩をすくめていた。

98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:32:26.44 ID:WFdAiEj50
衝撃を受けた。

連れ出される直前、涼は叫んだ。

「本当のアタシをぶち撒けさせろ!!」

夏樹はリモコンをモニターにぶつけた。

信じられねえ!

ありえねえ!!

彼女は相棒のギターを抱えながら、

父親のバイクを奪って東京まで飛ばした。

そして美城プロダクションのドアを蹴破るように開けた。

夏樹が18の頃である。



99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:33:14.23 ID:WFdAiEj50
夏樹は涼と同じ“ロックな”アイドルとしてデビューした。

しかし、二番煎じだと揶揄されることはなかった。

率直に言えば、夏樹の演奏技術は涼を凌駕していた。

涼は元々とあるバンドのボーカルをしていて、

ギターを本格的に始めたのはごく最近のことであった。


それでも夏樹は、涼に失望することはなかった。

わざわざアイドルになって、ロックを貫こうとしていることにも、

疑問を持たなかった。

夏樹には、敵が必要だったのだ。

憎み叩き潰すのではなく、お互いの魂を懸けて、

どこまでも遠くまで突っ走れるような。

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:34:03.08 ID:WFdAiEj50
それを再確認できたのが、2人が初めて声を交わした時だった。

「ボーカル志望だって聞いたが、どうしてギターを?」

自己紹介するでもなく、夏樹はそう尋ねた。

涼は別段気分を害した風でもなく、答えた。

「アイドルとしての“松永涼”をぶった切って、アタシを見せるには、

 なにかしらのスイッチが必要だったんだよ。

 声だけじゃない、何かが。

 ……まったく、ジャニス・ジョプリンみたいにはいかないねえ」

コイツは自分と同類だ。夏樹は確信した。

本当はただ叫びたいんだ。

でも、それが出来ないから、何かにすがるんだ。

「アンタは敵だ」

「そっか」

夏樹の挑戦に対して、涼はくっきりと笑みを浮かべた。

彼女も永らく、待っていたのだ。

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:34:59.55 ID:WFdAiEj50
それから2人はことあるごとにぶつかった。

企画側が対立を煽ったこともあったが、基本的には一方が、

もう一方の活動に鼻先をつっこんでかき回す。

それはライブへ乱入する・されることが

あらかじめスケジュールに組み込まれるほど常態化していて、かつ熾烈だった。

互いのファンがそれを楽しんでいるところもあって、

事務所は小言を言うものの、

衝突を積極的に回避しようとはしなかった。

涼の演奏技術はめきめきと上達していった。

夏樹の歌唱力も、相手に迫るほどに研鑽されていった。

2人は親睦を深めるようなことは一切しなかった。

互いの魂を擦り合わせるほどに、

自身が研ぎ澄まされているのを感じていてから。

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:36:21.75 ID:WFdAiEj50
けれども1つの舞台に立つ両者は怒っていたり、

鬼気迫るような表情をしているわけではない。

ただ、その時間が楽しくて、

楽しくてしょうがないという顔をしている。

だからこそ、彼女達を止めることができない。

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:39:11.23 ID:WFdAiEj50
運命という残酷な力学のほかには、誰1人として。

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:40:18.78 ID:WFdAiEj50
夏樹は御茶ノ水駅を出て、行きつけのスタジオまで急いだ。

最近の仕事先は無駄に気が利いていて、

ギターでも何でも向こうが用意してしまう。

ロック=ストラトキャスターって、どうにかならないもんか。

しかもレフティ。

夏樹は歩きながら、肩をすくめた。

同じエレキギターといえど、

ジャズマスターも弾かなくなれば腕が錆び付く。


今日は目一杯可愛がってやらないと…そう思いながら夏樹は、

片手に抱えたギターケースを、もう一方の手で撫でた。

105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:41:07.01 ID:WFdAiEj50
その時、歩道に一台の自動車が突っ込んだ。

速度はあまり出ていなかったが、予想外のことであったので夏樹は動けず、

とっさにギターを両手で庇った。

身体が軽く、後ろへ撥ね飛ばされた。

夏樹はすぐに立ち上がって、自身の相棒の安否を確認しようとした。

しかし、ケースがうまく開けられない。

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:41:45.92 ID:WFdAiEj50
指先がぬるぬると赤黒く濡れていて、

しかも長さが足りなかった。

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:42:57.81 ID:WFdAiEj50
切断された指先は回収されたが、歪に変形していて縫合できなかった。

夏樹の目の前は真っ暗になった。

右手は2本の指でピックが握れさえすればいい。

だが、左手は押弦のために全ての指を使う。

ギタリストとしても、アイドルとしても、もう…。

両手を除けば怪我はなかった夏樹だが、精神的な苦痛が甚だしく、

自室に篭るようになった。

彼女のプロデューサーや他のアイドル、友人らが心配して尋ねてきたが、

誰1人として彼女の部屋に入れなかった。

入れたとして、どのような言葉をかけてやればよいのかも、

誰にも分からなかった。

108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:43:32.88 ID:WFdAiEj50
夏樹はバスタブに溢れんばかりのお湯を張った。

そして浴びるように酒を飲んだ。

くそっ、27歳だったらなあ。

そんなことを考えながら、夏樹はふらつく足で立ち上がって、

湯面を見つめた。

こんな“つら”しながら、ひとりぼっちで死ぬのか。

彼女は自嘲気味に笑った。

この気持ちを、たとえば渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で

ギターをかき鳴らしながら叫べたら、夏樹は自殺など考えなかっただろう。



109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:45:07.66 ID:WFdAiEj50
鈍った頭で意を決して、バスタブにそろりと足を浸けたとき、

玄関から物音がした。

鋲打ちのブーツ。身長は160cm、体重は47kg…。

類稀なる音感と直感で、夏樹はその主の察知した。

ポストに、何かが乱雑に投函される。

夏樹はひどい目眩を覚えながらも、這うように浴室を出た。

足音は遠ざかっていく。

扉にめりこんでいたのはBlack Sabbathの、『Black Sabbath』だった。

しかも1970年の初回レコード。

夏樹は感動よりも怒りを覚えて外に出たが、すでに誰もいなかった。

110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:49:06.45 ID:WFdAiEj50
彼女は死のうとしていたことなど忘れて、自室に戻った。

ムカムカしながら、年季の入ったレコードプレイヤーに円盤を据える。

スタイラスを溝に噛ませ、再生開始。


ひび割れたような音色が部屋に響く。

これはレコードが老朽化しているためであったが、

それが『黒い安息日』の演奏にマッチして、

より恐ろしげなサウンドとして仕上がっていた。

トニーのギターはやっぱりすげえ…。

夏樹はぽーっとしながら、耳を傾けた。

弦のテンションを下げた、重く潰れたような音。

のちのヘヴィ・メタルに多大な影響を与えた、偉大なギタリストの1人。

バーミンガムの出身で、「ボーカル以外全員募集」というオジーの貼り紙を見て

サバスの前身となるアースに参加した。

ギタリストとして本格的に活動する前は工場で…。

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:49:33.16 ID:WFdAiEj50
その時、夏樹の脳内に電流が走った。

「“やるしかないのに、そんな簡単なことのわからない人間が多すぎる”…」

そう呟きながら、夏樹は再び外の世界へ飛び出した。

事故から守り抜いた相棒と共に。


112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:51:16.92 ID:WFdAiEj50
一ヶ月後、夏樹は舞台に立っていた。

指の長さは綺麗に揃っている。

愛和義肢製作所謹製の指先。

演奏用に特別な素材が用いられていて、適度な硬さがある。

今日は、復帰後初のライブである。

進行は全て夏樹に一任されている。

第一曲目は、夏樹が初めて作詞作曲したパンク・ロック。

アップテンポであるが、単純なスリーコードによる構成。

事故前でのライブでも、何度も披露した思い出深い作品である。

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:52:01.85 ID:WFdAiEj50
しかし、夏樹の指は思うように動かなかった。

そもそも自分の指先でなく、弦を抑える感触もぶれている。

以前のような演奏が出来るはずがない。


一小節が丸ごと飛んだ。間抜けな音が出た。

観客席から、疲れ切ったようなため息が出た。

夏樹は歯軋りした。身体が大きく震えた。


演奏が拙いことが悔しかった。

さらにそれよりも、自分がもう二度と、

松永涼と戦うことが出来ないのが辛かった。

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:52:36.18 ID:WFdAiEj50
本当に、ダッセえ。

引き際を誤って醜態を晒すミュージシャンを、夏樹は軽蔑する。


今からでも遅くない…。

沈痛な面持ちで、彼女は演奏を止めた。

引退、そんな言葉が喉から出かかった。

115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:53:02.12 ID:WFdAiEj50
だが音楽は止まっていなかった。

116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:53:35.64 ID:WFdAiEj50
この舞台に、夏樹1人では広すぎる舞台に、

もう2人目のギタリストがいるからだ。

117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:54:20.72 ID:WFdAiEj50
「てめえ」

夏樹は相手に声をぶつけた。

涙がギターネックに降り注いだ。

「曲パクってんじゃねーよ……!」

118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:54:48.12 ID:WFdAiEj50
松永涼は不敵な笑みを浮かべた。

「でも、こっちの方が上手いだろ?」


119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:55:55.15 ID:WFdAiEj50
夏樹は涙を拭った。震えは、既に止まっていた。

「てめえの下手くそなギターのせいで、いつもの調子が出なかったんだよ!!」


二重の旋律が、夏の青空に吸い込まれていった。

120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/10(月) 22:56:21.44 ID:WFdAiEj50
おしまい



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