3 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:11:23.05 ID:
WXuAsHkso
みほ「あ、沙織さん。もう来てたんだ」
優花里「お疲れ様です、武部殿っ!」
沙織「あ、みぽりん、ゆかりん。麻子が起きなくって…」
華「ふふ、沙織さんはいつも楽しそうですね」
沙織「…あれ、もしかして私、見世物にされてる…?」
麻子「ほら沙織、楽しいだろ。もうちょっと楽しんでていいぞ」
沙織「楽しくないから!ほらもう起きて!」
…また、いつもの戦車道が始まる
沙織が私を起こして、西住さんの指揮で私が戦車を動かして…
そんな、ちょっと眠いけど楽しい戦車道が、どこまでも続くと思っていたんだ
…だが、私の戦車道を待ち受けていたのは…
Girls und Panzer
身魂の操縦手 -冷泉 麻子-
4 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:12:10.63 ID:
WXuAsHkso
ドォォン!!
桂利奈「うわぁー!!」
ギギーッ
シュポッ
梓「すみません!ウサギチーム、三突にやられました!」
みほ「大丈夫ですか!?」
梓「はい、全員無事です!」
みほ「わかりました!」
優花里「これでこちらは残存2両、Bチームは3両ですか…少し厳しいですね」
沙織「みぽりん、どうする?」
みほ「三突を見失ってしまえば、また待ち伏せされる危険があります」
みほ「ウサギさんがやられた位置から推測して、まずは三突を叩きましょう」
みほ「おそらくこの地点…ですが、周りの木々がジャマで、上手く進めないかも…」
みほ「麻子さん、いけますか?」
麻子「まかせろ」
みほ「わかりました。では、この位置まで移動してください」
麻子「ほい」
ゴゴゴッ
沙織「麻子、よくこんなところ飛ばせるね…」
麻子「このくらいなら問題ない」
優花里「頼りにしてますよ、冷泉殿っ」
5 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:13:13.37 ID:
WXuAsHkso
ゴオオッ
みほ「!これは…」
華「え?」
みほ「右後方からアヒルさんです!」
典子「あんこうチーム発見!根性で仕留めますっ!」
杏「あいよー。がんばえー」モグモグ
沙織「ど、どうしよ?このままじゃ三突とはさみうちに…」
みほ「…わかりました、右から迂回します。ここにレオポンさんを配置しているので、すれ違いざまに打ってもらいます」
ナカジマ「あー、こちらレオポン。アヒルさんの迎撃だね、了解ー」
みほ「麻子さん!」
麻子「ほい」
ガタガタ…
沙織「ちょ、だいぶ揺れてない!?」
華「麻子さん、大丈夫ですか?」
麻子「ん、まだ大丈夫…」
6 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:14:05.08 ID:
WXuAsHkso
ガタタッ
典子「今!撃てーっ!!」
あけび「ハイッ!」
ドォォン!!
みほ「きゃあ!」
麻子「ぐっ!足元が…!」
ガタタッ
華「あっ…!麻子さん!!前!前っ!!」
麻子「えっ…!」
麻子「(大木…!ダメだ!間に合わなっ…!!)」
みほ「ぜ、全員、衝撃に備えっ…!!」
7 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:14:52.94 ID:
WXuAsHkso
ギギーッ
ドカッ
沙織「きゃあ!」
優花里「うわっ!」
みほ「あ…わ、わ、うわぁあぁ!」
みほ「(あっ、お、落ちっ…!)」
華「みほさんっ!!」
ガッ
ドゴッ
ドサッ
8 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:15:29.58 ID:
WXuAsHkso
沙織「うぅ…みんな、無事…?」
麻子「う…私はだいじょ…」
優花里「あ…に、西住殿は?」
華「…え?」
沙織「まさか、外にっ…」バッ
みほ「」
沙織「う、嘘…みぽりん!!」ガタッ
優花里「西住殿ぉっ!!」ガタタッ
麻子「あ…」
優花里「西住ど…」
ドロッ
沙織「え…?」
優花里「なっ、血…え…?」
9 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:16:04.13 ID:
WXuAsHkso
優花里「あ…!」
沙織「み…みぽりん!!起きて!!みぽりんっ!!」
優花里「西住殿っ!!西住殿ぉ!!」ポロポロ
華「待ってください!!」
優花里「」ビクッ
華「…頭を打っているのであれば、むやみに動かすべきではありません」
華「額は出血しやすいだけです。まずは落ち着いてください」
沙織「は、華っ…」
華「沙織さん、全車両に訓練中止の連絡を。優花里さんは救急車を」
沙織「わ、わかった」
優花里「あ、りょ、了解、です」グスッ
10 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:16:44.00 ID:
WXuAsHkso
・・・
沙織「…以上、通信終わります」
沙織「…ふぅ…」
麻子「…はぁっ…はぁっ…」
沙織「麻子?」
麻子「…わ、私が…私のせいで…西住、さん…」ガタガタ
沙織「麻子っ!」ギュッ
麻子「あ…さ、沙織…」
沙織「大丈夫だから。麻子のせいじゃないから。ね」
麻子「あ…」
11 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:17:15.50 ID:
WXuAsHkso
ピーポーピーポー
優花里「あ、私が付き添います!」
沙織「落ち着いたら連絡してね」
優花里「はい、お任せください」
ブロロロロ…
沙織「…みぽりん…」
華「大丈夫ですよ、きっと。信じましょう」
沙織「うん…」
麻子「…」
沙織「麻子。大丈夫だから」
麻子「あ、あぁ…」
沙織「(…そっか…麻子、ご両親を事故で亡くしてるんだもんね)」
沙織「(これで大丈夫って言う方がムリかぁ…)」
12 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:17:55.15 ID:
WXuAsHkso
~~~数十分後:大洗総合病院~~~
沙織「みぽりんっ!」ガチャッ
みほ「…あ、みんな」
華「みほさん」
麻子「…に、西住さん…」
みほ「わざわざ来てくれたんだ。ありがとう」
優花里「西住殿…西住殿ぉ…」グスグス
みほ「優花里さん、私はもう大丈夫だから」
沙織「大丈夫だったの?その、頭の包帯は…」
みほ「うん、ただの脳震盪だって。ちょっと額が切れちゃってたけど…」
華「そう、ですか…」
みほ「これから精密検査だけど、何ともなければすぐ退院できるから」
沙織「もー!キューポラから乗り出すの危ないっていっつも言ってるじゃん!」
みほ「ご、ごめんね」
沙織「…でも、よかった…本当に、大丈夫そう、で…ぅぇ…」グスッ
みほ「…本当にごめんなさい、心配かけちゃって…」
13 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:19:13.74 ID:
WXuAsHkso
麻子「う…」
みほ「…麻子さん、私は大丈夫だったから」
みほ「ごめんね…」
麻子「そんな…私が、あんな事故を起こさなければ、こんなことには…」
麻子「…っ…!ごめん…ごめんなさい…西住さん…!」
みほ「ううん、いいの。大丈夫。」
みほ「あれは砲撃で体勢が悪くなっちゃってたし、仕方ないよ」
麻子「しかし、砲撃に気を取られて前方不注意だったのは間違いないんだ、あれは…」
沙織「もー、いいの!麻子!」
沙織「みぽりんがこう言ってるんだから、麻子もあんま気にしちゃダメだよ」
麻子「…あ、ああ…」
華「元気そうでよかった…では、そろそろお暇しましょうか」
優花里「そうですね。西住殿、しっかり休んでください」
みほ「うん。今日はホントにありがとう。また学校でね」
沙織「うん。またね」
14 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:19:48.02 ID:
WXuAsHkso
~~~後日:大洗女子学園~~~
桃「えー、それでは、これより本日の訓練を開始するが…」
桃「その前に、今日から隊長の西住が訓練に復帰することとなった」
みほ「みなさん、長く留守にしてごめんなさい」
梓「西住隊長、無事でよかった…」グス
あゆみ「河嶋先輩、大泣きしてたもんねー」
桃「うるさいっ!」
杏「まーまー、河嶋も心配だったんだもんね」
桃「…会長まで…!」
桃「ああもう!とにかく、もう二度と心配をかけるんじゃないぞ!」
みほ「ふふ、ありがとうございます」
桃「…ゴホン、今回はまず、2チームに分けて紅白戦を行い、西住の体調を確認することとする」
桃「全員、準備しろ」
みほ「それではみなさん、お願いします」
15 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:20:20.52 ID:
WXuAsHkso
=====
沙織「準備いいよ、みぽりん」
優花里「こちらも大丈夫です!」
華「…フフ、Ⅳ号を動かすのも、久しぶりですね」
麻子「こっちも大丈夫だ。いつでもいけるぞ」
みほ「了解です。他車両、用意できましたか?」
杏『あー、こちらBチーム。全車準備オッケーだよー』
みほ「わかりました」
みほ「…それでは、訓練開始します。パンツァー・フォー!」
16 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:20:59.86 ID:
WXuAsHkso
沙織「…」
みほ「…?」
華「あら…?」
優花里「…?冷泉殿?」
麻子「…」
みほ「麻子さん?」
沙織「麻子?どうし…」
麻子「はぁっ…はっ…はっ…」ガタガタ
みほ「えっ…?麻子さん?」
麻子「に、にしずみ、さ…」ガタガタ
沙織「ちょっ…!どうしちゃったの!?麻子!!」
華「すごい汗…!」
麻子「ご、ごめ…ぁ…」フラッ
ドサ…
沙織「麻子!麻子ぉ!!」
17 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:21:34.64 ID:
WXuAsHkso
~~~~大洗女子学園:保健室~~~~
麻子「…」
麻子「…ん…あれ…?」
沙織「…あ、起きた?」
みほ「麻子さん…」
麻子「ここは…保健室か?確か私は、さっきまで…」
沙織「うん…」
麻子「…っ…そうか、私は…」
麻子「…すまない、西住さん…」
みほ「ううん、私は何ともないの」
みほ「それより、麻子さんの方は…その、大丈夫?」
麻子「…ああ、今は、なんともない」
沙織「麻子…」
18 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:22:39.14 ID:
WXuAsHkso
麻子「沙織も、すまなかったな。もう大丈夫だから…」
沙織「…やっぱり、この前の事故?」
麻子「ぐ…」
麻子「…こんな時にだけ、鋭いんだな」
沙織「だって、戦車に乗ったときは何ともないのに、みぽりんが乗ってからおかしかったんだもん」
沙織「私だって気づくよ…」
麻子「…そうか。そうだな…」
みほ「あの、麻子さん。私は大丈夫だったから…」
麻子「ああ、それはわかってる。わかってるつもりなんだ」
麻子「…だが、あの場所にいると、どうしても思い出してしまうんだ」
麻子「あの時、戦車で聞いた西住さんの悲鳴。何かが戦車にぶつかる、嫌な感覚」
麻子「それがずっと、頭から離れないんだ」
みほ「麻子さん…」
麻子「…西住さん…すまない」
麻子「…私はもう…戦車には、乗れない…」
19 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:23:26.58 ID:
WXuAsHkso
沙織「…ま、麻子っ…」
麻子「沙織。すまない。私はもう…」
沙織「な、何言ってるのさ!これまで5人でやってきたじゃん!」
みほ「沙織さん…」
沙織「そんなの、ちょっと寝てれば忘れるって!ほら、1日くらい寝たいだけ寝てていいからさ!」
麻子「沙織…」
沙織「だって、私…」ポロポロ
沙織「うっ…うぇぇ…!」ポロポロ
みほ「…麻子さん…」
麻子「…」
みほ「…わかりました」
沙織「え…?」
20 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/03(金) 23:24:09.93 ID:
WXuAsHkso
みほ「麻子さん、Ⅳ号のマニュアルは?」
麻子「操縦席のポケットに…」
みほ「…」
沙織「ちょ、ちょっと、何言ってるの、みぽりん…?」
みほ「これ以上、麻子さんを無理に戦車に乗せるわけにはいきません」
みほ「操縦手は、別の人を探します」
沙織「…っ!みぽりんっ!!」
ガタタッ
みほ「…ごめんなさい…」
みほ「ごめん、なさい…」ポロポロ
沙織「あ…」
沙織「(…そっか。みぽりんも前は、戦車がイヤになって黒森峰から…)」
沙織「(…同じなんだ、みぽりんも、麻子も…)」
麻子「西住さん…ありがとう…」
みほ「…行きましょう、沙織さん」グスッ
沙織「あ、み、みぽりん…」
みほ「…さよなら、麻子さん…」
麻子「…あぁ」
麻子「さよならだ、西住さん…」
~~~~~~
34 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:21:17.89 ID:
4BC16uRlo
杏「…そっか、冷泉ちゃんが…」
みほ「…」
桃「今週末には、聖グロリアーナとの練習試合が計画されていますが…」
杏「断るのも悪いし、冷泉ちゃん抜きでなんとかするしかないね~」
みほ「…Ⅳ号の操縦手は、別の人を当たってみます」
柚子「…西住さん、大丈夫?」
みほ「私は、大丈夫です」
桃「し、しかし…」
杏「わかった。こっちでも探してみるね」
みほ「はい、ありがとうございます」
杏「んじゃ、週末はよろしく~」
みほ「はい、失礼します…」
バタン
35 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:21:54.37 ID:
4BC16uRlo
桃「に、西住…」
杏「かぁしま、やめときなよ」
桃「ですが…」
杏「西住ちゃんは優しいからね」
杏「戦車に乗って、冷泉ちゃんがこれ以上傷つくのが耐えられないんでしょ」
柚子「西住さん、辛そうでしたね…」
杏「まぁ、私たちもはやることやろっか。いろいろ手続きやら済ませないとね」
柚子「でも、それじゃ冷泉さんは…」
杏「…正直、大丈夫だと思うけどなー」
桃「え?」
杏「西住ちゃんは優しすぎる。これ以上冷泉ちゃんにお節介するのはイヤだろーけど」
杏「…いるでしょ。西住ちゃんよりもっと冷泉ちゃんの近くにいて、もっとお節介な子がさ」
柚子「あ…」
杏「ま、あの子がなんとかしてくれるっしょ」
36 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:23:01.73 ID:
4BC16uRlo
~~~戦車倉庫~~~
ガララッ
麻子「…」
麻子「…沙織、いるか?」
沙織「あ、麻子。来てくれたんだね」
麻子「ああ、親友の呼び出しだからな」
沙織「うん、ありがとう」
麻子「…それで、何の用だ?」
沙織「えへへ、じゃん!見てこれ!」
麻子「…そのヘルメットがどうかしたのか?」
沙織「自動車部から借りてきたの。これで、落っこちても大丈夫だよね?」
沙織「私がキューポラに立つから、麻子は…」
麻子「…何かと思えば、やっぱりその話か」
37 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:23:41.93 ID:
4BC16uRlo
麻子「言ったろ。私はもう戦車には…」
沙織「いいから、いいから」
麻子「…っ」
バシッ
沙織「あっ…」
麻子「…っ…!やめてくれって、言ってるだろ…!」
麻子「私はもうダメなんだ!もう動かせないんだ!」
沙織「…麻子」
沙織「…麻子、言ったよね」
麻子「え?」
沙織「戦車に乗ると、みぽりんの悲鳴が、事故のことが頭から離れないって」
沙織「…みぽりんが戦車道で知ってほしかったのって、そんなことなの?」
麻子「…」
38 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:24:26.95 ID:
4BC16uRlo
沙織「みぽりんが知ってほしかった戦車道って、そうじゃないの」
麻子「…」
沙織「麻子が優秀だとか、優秀じゃないとか、そんなことじゃないの」
麻子「…」
沙織「私、親友と一緒に戦車道がやりたいの。麻子」
麻子「…私は…」
沙織「…」
麻子「…私だって、本当は…やめたくないんだ…」ポロポロ
沙織「麻子。分かるよ。分かってるから」
麻子「っ…!う…!」ポロポロ
ガララッ
沙織「え…?」
みほ「…沙織さん、麻子さん…」
沙織「みぽりん…」
華「水臭いですよ、沙織さん」
優花里「Ⅳ号戦車は5人で動かすものじゃないですか」
沙織「華、ゆかりんも…」
39 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:25:00.92 ID:
4BC16uRlo
みほ「…ごめんね、麻子さん」
みほ「あの時は、麻子さんの気持ちを分かったようなことを言って…」
みほ「本当は、麻子さんの気持ちを分かってなくて、諦めちゃって…」
麻子「そんな、西住さんは…」
みほ「…麻子さん。私、やっぱり麻子さんと一緒に戦車道を続けたい」
沙織「…麻子、ゆっくりでいいよ」
麻子「沙織…」
沙織「私たち、カウンセラーの先生じゃないから、こんなことわかんないし…」
沙織「でも、本当にゆっくり、麻子のペースでいいから、ちょっとずつ戦車に触ってみようよ」
沙織「最初は、操縦席に座って、それから、エンジンをかけて、操縦桿を握って…」
沙織「ちょっとでもイヤになったら、すぐにやめていいから」
麻子「…」
沙織「麻子。私…私たち、いつまでも付き合うから」
華「麻子さん」
優花里「冷泉殿っ!」
麻子「…っ…!」ポロポロ
麻子「沙織…みんな……」
40 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:25:43.96 ID:
4BC16uRlo
~~~後日:大洗学園艦~~~
ダージリン「…ごきげんよう、杏さん」
杏「ごきげんよう、ダージリン様。また練習試合受けてくれて、ありがとね」
ダージリン「私の方こそ、感謝していますわ」
杏「んー?」
ダージリン「全国大会で優勝してからの大洗とは、1度戦ってみたいと思っていましたの」
杏「あー、そりゃ光栄だけどさー…」
ダージリン「何か?」
杏「今日はちょっと、期待通りの動きはできないかもねー」
ダージリン「みほさんのこと?」
杏「ありゃ、知ってたか」
杏「連絡はしてるけど、みんなまだ来てないんだ」
杏「そんでさ、Ⅳ号は準備でき次第動かしてもいいかな?」
ダージリン「私は構いませんわ」
杏「んー。あんがとね」
ダージリン「では、確認します。ルールは8対8の殲滅戦。場所は前回と同じ市街地付近…よろしくて?」
杏「ん、間違いないよ」
ダージリン「では、お互い良い試合にしましょう」
41 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:26:27.39 ID:
4BC16uRlo
杏「はいはーい。注目ー。とりあえず、Ⅳ号はあとから動かして良いってさ」
カエサル「しかし、その間の隊長は誰が?」
杏「あ、そっか。んー…」
杏「まーせっかくだし、次期隊長候補の澤ちゃん、やってみる?」
梓「えぇ!?わ、私ですか!?」
みどり子「そうね。せっかくの練習試合だし、後進のことを考えるべきだわ」
典子「なるほど!スポーツも戦車も、後輩の育成は必要ですよね!」
梓「わ、私が…」
杏「やってくれるー?」
梓「…は、はい!みなさん、よろしくお願いします!」
あや「…西住先輩たち、どうしてるんだろう…」
左衛門座「しかし、今いない人のことを言っても仕方がない。この戦力でどうにかするしかあるまい」
エルヴィン「そうだな…」
42 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:27:52.99 ID:
4BC16uRlo
~~~同時刻:大洗某所~~~
ゴゴゴ…
キキッ
麻子「…ふぅーっ…」
沙織「…麻子、大丈夫?」
麻子「…ああ、もう大丈夫だ」
華「試合開始まで、あと5分ですね…」
優花里「今、会長殿から連絡がありましたが、あとから参加でも構わないそうですよ」
みほ「ありがとう、優花里さん」
麻子「…西住さん、ちょっといいか?」
みほ「なに?」
麻子「…その…本当にすまなかった」
みほ「そんな…私がドジだから…」
麻子「いや、そのことじゃない。あの事故は仕方がない…とは言わないが、その後だ」
43 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:28:29.55 ID:
4BC16uRlo
麻子「…長い間、迷惑をかけてしまったからな」
みほ「ううん、いいの。麻子さんが戦車を嫌いにならなくて、本当によかったと思ってるから」
麻子「沙織も、秋山さんも、五十鈴さんも、本当にありがとう」
沙織「ふふ、麻子にそんなまっすぐお礼を言われるの、何かくすぐったいな…」
華「いいんですよ、麻子さん」
優花里「私たち、友達じゃないですか」
麻子「ああ…」
沙織「…麻子、ずいぶん素直になったね」
麻子「そうか?」
沙織「フフ、普段からそれくらいだと良いんだけど」
麻子「沙織も、すまなかったな。面倒をかけて…」
沙織「麻子。もういいから。ね」
麻子「…あぁ」
みほ「…時間です、行きましょう」
沙織「もうちょっと遅刻気味だけどね…」
麻子「ちょっと飛ばすぞ、捕まってろ」
44 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:29:08.32 ID:
4BC16uRlo
~~~大洗vs聖グロリアーナ:練習試合会場~~~
ドォーン!
みどり子「ごめんなさい!カモチームやられました!健闘を祈ります!」
梓「わ、わかりました!」
あゆみ「梓、状況は?」
梓「車両の数だと、現時点で4対6…それに、アヒルさんチームが追われてる」
あや「た、助けに行こうよ!」
梓「で、でも、ダージリンさんの戦車がさっきから見当たらないから、うかつに動いたら私たちまで…」
ドオォーン!
梓「あっ…!」
典子「すみません!アヒルチーム戦闘不能です!」
梓「あ…」
桂利奈「ど、どうする!?またやられちゃったよぉ!」
梓「(これで3対6…あんこうも入れれば4対6だけど、今残ってるのはカメさん、カバさんだけ…)」
梓「…やっぱり、無理だったのかな。私なんかに、西住隊長の代わりなんて…」
45 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:30:06.38 ID:
4BC16uRlo
紗希「…」
桂利奈「…紗希?どうしたの?」
紗希「…Ⅳ号」
桂利奈「え?」
ゴゴゴゴ…!
梓「あ…!」
あゆみ「隊長っ!!」
みほ「…遅れてすみません、みなさん」
桃「お、遅いぞ西住!」
柚子「桃ちゃん、泣かないの」
桃「な、泣いてなぁい!」グスッ
46 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:31:04.31 ID:
4BC16uRlo
みほ「状況は?」
梓「ここでアヒルさんチームがやられちゃいました…それから、こっちに2両、ここに1両…」
みほ「わかりました、ありがとうございます」
梓「あ、あの…」
みほ「え?」
梓「ごめんなさい、隊長…私、隊長らしいこと、何にもできなくて…」
みほ「ううん、大丈夫。私こそ、遅れてごめんなさい」
梓「すみません…お願いします!」
みほ「…麻子さん、とりあえずこの地点まで行けますか?そこでもう一度あたりを確認します」
麻子「わかった」
ゴゴゴ…!
杏「…ね。大丈夫って言ったでしょ?」
柚子「え?」
杏「さぁて、生まれ変わった冷泉ちゃんを見せてもらおっかな」
47 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:31:51.78 ID:
4BC16uRlo
~~~あんこうチーム待機地点~~~~
ゴゴ…
麻子「…ここでいいか?」
みほ「はい、ありがとうございます」パラッ
みほ「ここでアヒルさんがやられたとすると、ダージリンさんはおそらく…」ブツブツ
麻子「…ん…?」
沙織「…麻子?」
麻子「…」
沙織「麻子?どうしたの?」
麻子「…」
沙織「麻子、もしかして寝てない?」
麻子「…」
沙織「ちょっと、麻子?どうし…」
麻子「…西住さん」
みほ「え?」
麻子「捕まってろ」
グッ
ブォォン!
沙織「きゃあ!」
ドォォン!!
沙織「えっ!?何?何!?」
48 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:32:41.19 ID:
4BC16uRlo
アッサム「…あら、躱されるとは思いませんでしたわ」
優花里「な、今、どこから打たれたんですか!?」
麻子「左後方の路地から砲塔出してる。とりあえず距離取るぞ、隊長」
みほ「えぁ?は、はい!」
ゴゴゴゴッ
麻子「…!」
ギギーッ!!
優花里「うわぁっ!!」
ドォン!!
華「今度は前…!」
沙織「ウッソ!今、急停車しなかったら当たってたの?」
みほ「麻子さん、なんで今…!」
麻子「…さぁな」
みほ「え?」
49 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:33:28.24 ID:
4BC16uRlo
ダージリン「…聞いたことがありますわ」
オレンジペコ「え?」
ダージリン「操縦手さん。あなた、戦車の操縦の最中に、手足の感覚がなくなったことは?」
操縦手「ええっ…?なんの話ですか?」
ダージリン「一流の操縦手は、戦車をあたかも自分の手足のように操ると言われているわ」
ダージリン「そして、自らの体の感覚がなくなり、自分の意識のまま、戦車を動かすことができると」
ダージリン「それこそ、自らの手足がそのまま戦車とつながっているように」
オレンジペコ「今のあんこうチームが、そのような状態だと?」
ダージリン「操縦手の感覚が極限まで研ぎ澄まされ、視覚だけではなく、あらゆる感覚からあたりを把握できると聞くわ」
ダージリン「砲弾や履帯の音、鉄や油の匂い、周りの戦車が動いたときの振動…」
ダージリン「それらのすべての情報を認識し、まるで自らの戦車を俯瞰で見下ろすような状態になると」
オレンジペコ「え…?まさか、先ほどのⅣ号の動きは?」
ダージリン「アッサムとその後の砲撃が回避されたのは、偶然でもオカルトでもないわ」
ダージリン「おそらく、履帯の音と地鳴りから戦車の位置を把握したのでしょう」
オレンジペコ「そんな、そんなことが…?」
ダージリン「…さぁ、どうかしらね」
ダージリン「ともかく、逃げられてしまったことは事実よ。次の手を打ちましょう」
オレンジペコ「…Ⅳ号、さらに市街地奥に入っていきます。どうしますか?」
ダージリン「追いましょう。2号車、3号車は西側、4号車は東側から回り込んで頂戴。私は正面から行きますわ」
50 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:34:27.68 ID:
4BC16uRlo
麻子「……」
麻子「(感じる。いや、何も感じないというべきか)」
麻子「(自分の体が、Ⅳ号戦車の中に溶けていく)」
麻子「(…そうだ。この戦車は、私の脚だ。私の体そのものだ)」
麻子「(自分の体を動かすことに、何を恐れる必要がある)」
麻子「…!」
ブオッ
みほ「! 麻子さん!後ろ!」
ゴォォッ
ローズヒップ「今度は逃がしませんことよー!」
麻子「またか…」
ゴォッ
51 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:35:05.97 ID:
4BC16uRlo
沙織「ちょ、麻子!この速度であれ曲がれるの!?」
麻子「問題ない。そこの電柱にシュルツェンをひっかけて旋回する」
優花里「えぇ!?」
麻子「西住さん、一度引っ込んでてくれ」
みほ「は、はい!」
ガッ
ギギギギギッ!!
みほ「きゃあ!」
ローズヒップ「えぁ!?あっ、ちょっ!げ、減速!減速ーっ!!」
ギィーッ! ドォォン!!
シュポッ
ローズヒップ「あぁー!申し訳ありません!ダージリン様ぁー!」
52 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:35:57.65 ID:
4BC16uRlo
優花里「相変わらず、元気な方ですね…」
華「これで残り5両…これならなんとか…」
みほ「…っ!停車してください!」
ギギッ
麻子「…囲まれてる、か?」
ゴゴゴ…!
みほ「あれは…」
沙織「左に2両、右に1両、後方にも1両…正面は…」
ゴゴゴ…
ダージリン「…ごきげんよう、みほさん」
みほ「ダージリンさん…!」
華「完全に囲まれていますね…」
優花里「5対1…!」
麻子「どうする、西住さん」
ダージリン「…あなたが操縦手さん?」
麻子「…ああ」
ダージリン「…フフ、良いお友達を持ったのね、みほさん」
みほ「え?」
ダージリン「何でもありませんわ。始めましょう」
53 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:36:50.48 ID:
4BC16uRlo
ダージリン「…ふぅ…」
オレンジペコ「ダージリン様?」
ダージリン「…紅茶、もう一度贈らなければならないかもしれないわね」
オレンジペコ「え?」
ダージリン「悔しいけれど…今日のⅣ号には、何回撃っても当たる気がしませんもの」
みほ「……作戦は、今お伝えした通りです。左側面から隙間を抜けて突破します」
みほ「その後、カバさんチームの前まで敵を誘導するので、そこで交戦しましょう」
優花里「あ、あの隙間を通すんですか!?」
華「ギリギリでⅣ号は通れそうですが…」
沙織「ずいぶん難しいこと言ってない?麻子、大丈夫?」
54 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:37:24.46 ID:
4BC16uRlo
みほ「難しいのはわかってる、けど…麻子さん、やれますか?」
麻子「(信用、してくれるんだな。あんなことがあっても…)」
麻子「…問題ない。一度右にフェイントを入れて、すぐに左から抜ける。捕まってろ」
グッ
麻子「ふぅーっ…」
ゴゴゴッ
麻子「…行くぞ、Ⅳ号」
みほ「ではこれより、包囲網を突破します!」
みほ「―パンツァー・フォー!」
- 完 -
55 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:38:10.54 ID:
4BC16uRlo
以上です。ありがとうございました
冷泉殿がトラウマを克服して覚醒する、って話にするのは決まってたんですが、
その辺の過程が死ぬほど難しかったので、だいぶ駆け足になってしまいました
本編サンダース戦でナオミ姉さんの砲撃に対し、西住殿の「停車!」の号令で回避していますが、
アレは西住流の第六感なんですかね…
前回と同様に、もう1レスだけ投下してHTML依頼を出してきます
今回は次のタイトルだけ予告しておきますね
それでは、ありがとうございました
56 :
◆o8JgrxS0gg 2017/03/05(日) 21:38:52.65 ID:
4BC16uRlo
【 次 回 】
Girls und Panzer
不惜身命の装填手 -秋山 優花里-
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/05(日) 22:40:26.88 ID:yfl2ic3mO
乙でした。
SS速報VIPに投稿されたスレッドの紹介です
元スレ:
【ガルパン】身魂の操縦手 -冷泉 麻子-
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1488550209/
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