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モバP「痛くなければ覚えませぬ」【前編】

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1 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:15:54.45 ID:kn5lQ3PC0
若干特殊な内容になっておりますのでご注意ください。

尚、本編はシグルイとは一切関係ありません。

2 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:17:25.91 ID:kn5lQ3PC0
目の前には書類、書類、書類の山…。

日中、アイドルの付き添いで現場に出ていたしわ寄せだ。
一日でもこれだけ溜まってしまう。

企画書、稟議書、履歴書、見積書、請求書、企画書、領収書、進捗表、履歴書、企画書…種々様々。
目を通し上司の書類トレーへ、目を通し修正して再出力、目を通して経理へ回覧…。

事務所にただ一人残り、片っ端から書類を千切っては投げ、千切っては投げ(イメージ)。
うおォン俺はまるで人間書類処理機だ、なんてな。

でもまぁノってきた。
このペースなら終電までには余裕で終わるなぁ。
と見通しが立ったので一息つこうかなと気を緩めたのだが…

3 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:18:43.82 ID:kn5lQ3PC0










「おつかれさま。働き者ね、頭が下がるわ」



P「ひぃっ!!??」ドキィッ


4 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:21:17.76 ID:kn5lQ3PC0

その絶妙なタイミングで背後から、それも耳元で声を掛けられ、完全に一人だと思い込んでいたこともあり心臓が止まるかと思うほど驚いた。


「…ずいぶんな反応ね。せっかく一人寂しく労働にいそしむあなたを労いに来たのに」

P「か、奏かぁ。驚かせないでくれよ…」ドキドキ


振り向くとそこには担当アイドルである速水奏が立っていた。
まだ、心臓の鼓動は正常には戻らない。


奏「そんなつもりはなかったのだけれど…。Pさんが集中し過ぎなのよ」

奏「あぁ、でもこんなにたくさんの書類を前にすれば、そうでなければ立ち行かないのかしらね」

奏「ともかく改めて、おつかれさまPさん。いつも私たちのためにありがとう」

P「おつかれさま奏。だけどこれは俺の仕事だから礼には及ばないよ」

奏「ストイックなところは素敵だけれど、感謝は素直に受け取っておくものよ? ふふっ」

奏「頑張ってくれているあなたのためにコーヒー買ってきたの。集中するのは結構だけれど息抜きも必要だと思わない?」


ナイロン袋に入った缶コーヒーを取り出し微笑みながら顔の横で軽く振る奏の仕草はそのままCMにも使えそうなほど絵になっていた。いやしかし缶コーヒーは奏のイメージとは少しズレるか…。
奏はなんとなく瓶だな。瓶となるとコーヒーではなく…


奏「…Pさん、メリハリって言葉知ってる?」

P「あ、すまない…。ちょうど俺も休憩しようかと思っていたところなんだ。コーヒーありがとう」

奏「さ、ソファで休憩しましょ」

5 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:22:48.59 ID:kn5lQ3PC0
ソファに腰を下ろしふと壁掛け時計に目をやるともう23時になろうかというところだった。
23時…。びっくりしたことで思いつくのが遅れたが、高校生であれば夢の中にいるのが推奨されるような時刻だ。


P「奏、こんな時間になぜ事務所に来たんだ? 今日の仕事は21時まででそのあともタクシーで直帰するように伝えていたはずだが?」


向かいではなく隣に座ってきた奏に目を合わせないまま質問する。

奏「だからあなたを労いに来たのよ」


見目麗しいアイドルが労ってくれるなど本来なら望外の喜びと言っても良いのだが、それもやはり時と場合に依る。
それに加えて奏は「要注意人物」なのだ。
ひょっとしたら自意識過剰と言われてしまうかもしれないが。
…ただの自意識過剰であったならどんなに簡単か。


P「感心しないな…。奏はまだ高校生なんだぞ? たしかに仕事で夜遅くまで拘束することはあってそれは本当に申し訳ないと思っているが、それでもだからこそ高校生として最低限の休息を取れるように配慮しているんだ」

P「しかも、こんな時間の事務所に来るなんて。俺しか残っていないような事務所にのこのこやって来るなんて、危機感があまりにも無さすぎるんじゃないか?」

奏「…あなたしかいないからきたのよ」ボソッ

P「ん? なんだ?」


かなり際どい言葉を必死に冷静に聞こえていないふりをした。


奏「…なんでもないわ」

6 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:23:58.16 ID:kn5lQ3PC0
奏「大人びてみせなくちゃいけない仕事ばかりやらせるくせに、こんなときは子供扱いするのね。矛盾してるわ」


それは実に痛いところであるが…


P「矛盾は百も承知だ。ただお前が何かひどい目に遭ったりせず安全でいられることはなによりも大事なんだ」

奏「…今日ここで何が起こったって、私はそれをひどいことだなんて思わないのに」

P「ん? なんだって?」

奏「…っ」キッ


奏の大きな瞳に睨まれると実に迫力がある。
たしかにさっきのは自分でも白々しかったと思うが。


奏「…いいわ。子供らしくわかりやすく言ってあげる」


そして完全に失策だったようだ。まずい奏の目が座っている…。


P「いや、待て奏。いい、わかった、俺が悪かった」

奏「いいえ、待たないわ」

















奏「…好きよPさん」




P「ぁ…」

7 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:25:40.53 ID:kn5lQ3PC0
決定的な言葉に思考がショートする。
強引にでも奏の言葉を遮った方がいいのか、それとも最後まで聞いてうまくごまかした方がいいのかわからない。
そもそも手遅れであるような気がするし、それに最早ごまかせるものでもないかもしれない。


奏「今日この時間にここに来たのはあなたしかいないと分かっていたから。さっき聞こえてたでしょ?」

P「れ、冷静になれ…」

奏「冷静よ? 少なくともPさんよりは」

奏「…もっと言えばあなたに手を出してもらいたくて、あなたと二人きりになれるここに来たわ」

P「っ…」

奏「本当にあなたには感謝してるの。見たこともない素敵な世界を見せてくれて」

P「それは、奏の力だ…」

奏「半分はね。でももう半分はやっぱりPさんのおかげよ。私が一番輝ける仕事を取ってきてくれたり、自分でも知らなかった一面に光を当ててくれたり…。
 たぶん他のプロデューサーでは無理だったと思うわ」

P「……」

奏「それに、あなたは下衆な視線を送って来るクラスメイトやタレントや俳優とは違う。
 あなたはちゃんと私の内面も見てくれている。それとも…ただ私のルックスがあなたの好みではないのかしら?」

P「いやっ、そんな……ことは…ない……」


あまりにも見当違いな奏の考えに咄嗟に本心が顔を出してしまった。まずいまずい完全に奏のペースだ…。


奏「ふふっ。嬉しいわ。本当に…」

8 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:26:32.27 ID:kn5lQ3PC0
奏「きっとあなた以上の男性はいないわ。だからあなたが好き。単純明快でしょ?」

奏「Pさん……あなたの答えを聞きたいわ」


吸い込まれそうなほど美しい瞳をまっすぐ向けられる。
この2つの宝石の前じゃとてもじゃないが嘘はつけそうにない…。


P「か…奏…。俺とお前はプロデューサーとア「Pさん」


俺の言葉を遮るように奏が話し始める。


奏「私は子供らしいから、子供でも納得できるように答えてね? 変なごまかしや単なる先延ばしはきっと理解できないわ」

P「ぐっ……」

奏「本心を聞かせて。本心であればそれがどちらでも私は納得するわ」

奏「あ、そうね……別に言葉でなくてもいいわよ」

P「?」

奏「ん……」


奏が俺の方へ体を向け目を瞑り、キス待ちの構えになった。
このポーズはこれまでにも何度もされてきたがいずれも俺をからかうための冗談めいたものであった。
しかし今回の奏は本気らしい。
主導権を握っているかに見える奏もその実、緊張しているようで頬は見たことがないくらいに朱が差し、唇もかすかに震えている。

9 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:28:34.22 ID:kn5lQ3PC0

……
………
…………無理だ。

どうシミュレートしても奏にキスする結末になってしまう。
だって仕方ないよ、俺だって奏大好きだもん。
嘘つけない、ごまかしダメ、先延ばしダメなんて、もう他にないよ…。
あ!「答えは沈黙」というのは…ダメだろうなぁ。
「沈黙ということはOKということね」ってなるよ絶対。
どうしたらいい!?この緊縛にも似た状況を打破できる妙手ないのかい!?



ずっと奏のキス顔を見つめていたら意思とは関係なくキスしてしまいそうだったので、
どうにか目を逸らしソファ前に置かれたローテーブルに目をやった。テーブルに置かれ
たままになっていたあるものに目が留まる。きっと誰かが食べ切ったあとに捨て忘れた
のだろう。あぁ、懐かしいなぁ。子供の頃、コレをアレしたらすげー笑えたなぁ……。
あ、やるか…? やってみるか? 奏に? 絶対奏はやったことないだろ。こんなこと
したらもう今日のことなんてぶっとんでしまうんじゃないか? 奏ももしかしたら考え
直してくれるかも。もっとも俺の首もぶっとんでしまうかもしれないが…。いや、それ
は確かに嫌だが今はもうこの思いつきを奏にやってみたくてたまらなくなっている。
…奏怒るだろうなぁ。でもコレをアレされた奏がどんな感じになるのか興味あるなぁ。
いや、あくまで交渉材料としてね?

10 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:29:39.62 ID:kn5lQ3PC0
そうして俺はテーブルの上に無造作に投げ出されていた赤色のソレ、通称みかんネットにひそかに手を伸ばした。

そして入れ口を十分に広げ振りかぶり……






ず ぽ っ !

奏「ふぇ!?」







奏の美しい顔に一気に被せてしまった。









奏「へっ!? はっ…!?」フゴフゴ

圧迫祭り絶賛開催中……っ!








あわわわわ…。

11 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:30:34.50 ID:kn5lQ3PC0
P「ごくり…」

奏「Pひゃ、ん…な、にをひ、たの…? 目が…開けられなひわ……」

奏「こへ…スツォッキング…? いえ、網たひつ…? なに…これ…どこから…? 何なの…?」


ネットの圧迫感で瞼があげられないらしく、頭を飲み込んだみかんネットをペタペタと触り、その感触から網タイツと勘違いしたようだ。
惜しい! いや、本来下半身に履くものである網タイツをこのタイミングで頭に被せられたなどという発想自体出てこないのが普通かもしれないので、そこは奏の客観的判断力と柔軟な思考の融合を称賛しても良いだろう。
さすが奏だ…。




…。

……あぁ。

………やってしまった。



ネットに圧迫された奏の顔は見るも無残。
鼻は潰れ、頬はネットに引きずられ下に垂れ、髪は散らかしたように顔にへばりついている。
このネットの下に美女の顔があると分かる人間は皆無だろう。
この圧迫顔から元の美しい顔を想像することは人間業ではない。
そもそも美女にこんな罰当たりなことをするなんて常軌を逸している。


あぁ…まじでやっちまったなぁ…。





しかし……

12 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:31:58.31 ID:kn5lQ3PC0
奏「えっ? ほんとうに…えっ、なっ、なんなの?」

P「……」ゾクゾクッ


状況がまったくわからず、あたふたとする奏のぶちゃいくな顔を見ていると胸の奥がズキズキするようなあまりよろしくない類の快感が沸いたことを認めなくてはならないだろう…。
なんだろうこの感情…。

おそらく俺しか見たことがない、しかももう二度と見ることはできないだろう奏の無様な姿。
それを凝視する。
そこで文明の利器の存在を思い出す。
慣れた手つきでスマートフォンを取り出しカメラアプリ起動。


カシャ♪


静かな事務所に無慈悲な撮影音が鳴り響いた。


奏「P、ひゃん…? 何を撮っているの…?」


カシャ♪  カシャ♪


響く電子音。


奏「だから! 何をしているの!?」


明らかに怒気を孕んだ問いかけに答えてやることにする。言葉で、ではなく…。


むんず  ずるぅ


奏「んっ!?」


ネットの先端を上へ5センチほど引っ張ると、予想通りそれにつられて奏の瞼が開いたのでスマホの画面を見せてやった。

13 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:33:10.40 ID:kn5lQ3PC0
奏「ぃゃ…なひよ…これわたひ…? なんのつもり…なの…ひょ…」フルフル


あ、ネットを引き上げたから今度は頬が引き上げられて…しかも最悪なことに鼻がブタっ鼻ぽっくなっている。
さらに昏い興奮を覚えた。
残したい、この感動。


カシャ♪


奏「や、や…めへ…やめへぇ……」


カシャ♪ カシャ♪ カシャ♪


奏「やめなさい!!!」グイッ


声を荒げて奏が被せられていたみかんネットをはぎとってしまった。
顔にネットの跡はついていないが、髪はそうもいかずせっかくビシッと決まっていた髪型は崩れ後れ毛があっちにもこっちにもある。
だからかもしれないが、怒りに凄む奏もいつもの迫力がない。


奏「なんなのよ!? なにがしたいの!?」

P「奏、俺はやはりお前の想いには答えられない」

奏「えぇ!? はぁぁ!?」



奏「えっ…………」

奏「やっぱり私じゃダメなのね……」シュン

P「いや! 違うそうじゃない。 『応えられない』ではなく『答えられない』だ。OKともNOとも答えられないということだ」

奏「なによ…それ…納得できない…」

14 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:35:24.53 ID:kn5lQ3PC0
P「俺たちの関係の始まりはプロデューサーとアイドルだ。それが大前提だ。その前提を反故にするようなことは俺にはできない。
そしてお前もアイドルでいる間は特定の誰かに表立って愛情を注ぐというようなことはしてはいけない。
だから俺に『好き』だなんて言うのもだめだ。それはそれが許される時までずっと秘めておくべきものだ」

奏「な…とく…できない…」

P「そういうルールだ。アイドルになる前に伝えたはずだな?」

P「そして…それでも尚、ルールを破ろうというのなら、俺だってルールを破る…」

奏「な、なによ…?」


スマホを3回ほどタップして画面を見せつける。

LINEのとあるグループにさっきの圧迫顔の写真をあと1タップで送信できる状態になっている。
グループのメンバーは、俺、速水奏、城ヶ崎美嘉、そして、宮本フレデリカ、塩見周子、一ノ瀬志希。俺とLiPPSの連絡用のグループだ。


P「ルールを破ろうとするような悪い子には罰を与えなくてはいけない。
 まだこの話題を続けようというのなら、このグループにさっきの写真をぶち込む…」



奏「…」



奏「………」



奏「ひぃぃぃ!!!??」ブルルッ

15 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:36:51.50 ID:kn5lQ3PC0
この罰の恐ろしさを正しく認識した奏の顔が一気に青くなった。
美嘉はともかく、フレデリカ、周子、志希にこんな写真が渡ろうものならどれだけいじられてどこまで拡散されるか…。
もし俺の恥ずかしい写真が万が一この三人に渡ったとしたら…想像するだに恐ろしい…。


奏「だ、だめっ…そんなの家から出られなくなる……っ」ガタガタ

P「こんな汚い手を使うしかない俺をいくらでも罵ってくれていい。だから俺との関係についての話はすべての筋を……奏?」

奏「だ、だめよっ…もう日本じゃ生きてきけないわ……」ガタガタ


青くなったまま身震いしている奏に俺の声は届いていないようだ…。


奏「ダメよ…Pさんっ…お願い写真を消して…っ」ガバッ


奏が俺のスマホに飛びついてくる。
やばい完全に正気を失っている…。


P「いやっ、待てっ!送らない!送らないから!!危ない!押しちゃう!!」

奏「いやぁぁぁ!だめよ!!押さないでぇ!!!」グイィ

P「押さないって!!!!だ、大丈夫!!嘘だって!!こいつらに渡すわけないって!!!」

奏「だめぇぇえ!!! やめてぇぇぇぇぇええ!!!」グイィィ

P「ほんとに!!送らないからぁっ!!! 奏ぇ!!! 俺の話を聞けぇぇぇ!!!」

奏「いやぁぁぁあぁぁ!!!」グイィィィィイイ

P「やめろぉぉぉぉ!!!!」







   ぽちっ……




P奏「「あっ」」











LINEの薄青の背景に奏のみかんネット顔が表示される。



奏「いやあああぁぁぁぁぁああ!!!!」

16 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:37:47.60 ID:kn5lQ3PC0
響き渡る奏の絶叫。近隣のビルから通報されてもおかしくない声量だ。

そしてすぐさま既読が1つ付く。


  ぽーん♪


美嘉【これ奏? どゆこと???】



奏「いやあああぁぁぁぁぁああ!!!!!」


そしてまた絶叫。


奏「はぁ、はぁ…み、美嘉?…まだ美嘉だけ…まだ美嘉なら…消さなきゃ…消さなきゃ…早く…っ」

P「か、奏…」


うわ言のように呟きながら俺のスマホを取り上げて震える手でフリックとタップを繰り返す奏だが、たしかLINEの写真は…。


奏「け、消せるのはこの端末だけぇぇぇぇええぇ!!???」

奏「いやあああぁぁぁぁぁああ!!!!!!!」


そして気付けば既読があっという間に「4」となっていた。
つまり全員に見られたことになる…。


奏「あああぁぁぁぁぁあ゛あ゛!!!!!!!!!」

17 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:38:43.99 ID:kn5lQ3PC0

 ぽーん♪ ぽーん♪ ぽーん♪



周子【これは大変なことになってますねぇフレデリカさん】


フレデリカ【大変キョーミ?深いって感じ? 一ノ瀬さんはいかがしるぶぷれ?】


志希【にゃはは~~~】












ぽーん♪




志希【みんなに知らせなきゃ(使命感)】













奏「ぎゃあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁあ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!」

18 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:40:16.36 ID:kn5lQ3PC0
これまでの人生でぶっちぎりで一番の絶叫が耳をつんざいた。
ちなみに5位までは全部ついさっき聞いたものだ。

絶叫し終わった後も微動だにせず、携帯を見つめ続けている奏から何か空気が漏れ出るような音がする…。
顔をのぞき込むとそれはなんかもう奏っぽい誰かだった。
我ながら酷い言い草であるが…。


奏「かひゅっ、かひゅ、かひゅ……」


奏「かひっ……」ビクッ



奏「」グタリ



叫び過ぎの酸欠からかショックからか現実逃避からか、奏は意識を手放してしまったようだ。
ソファに横たえて乱れた髪を撫で整えてやるが、表情は悪夢をみているように険しい。

こんなことにするつもりなんてなかったんだが…過ぎたことはもうどうしようもない。
この痛みによって奏が意識改革してくれることを切に願う。


俺と奏のスマホからはメッセージの受信を知らせる電子音が鳴り続けている。






P「ふ~~~……」


P「さて、退職届書こうか」

19 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/17(金) 23:41:06.84 ID:kn5lQ3PC0
速水奏 編 終わり

29 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:06:27.34 ID:r3M5PZL/0
始めます。
尚、各話のモバPは同一人物とは限りません。

30 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:09:04.40 ID:r3M5PZL/0
…………
……


鼻をくすぐるような良い匂いがする…

心地の良いかすかな音がしている…

それに左半身がなんだか温かい…まるで…


ん?
俺は今何をしているんだ?


たしか…事務所でずっと書類仕事をしていて…
他のスタッフはみんな帰ってしまって…
だったらのんびりやるかと一旦休憩しようとソファに深く腰を下ろして…

なるほど、そのまま寝てしまったのか。


意識が覚醒し始めてようやく目をひらく気力が湧いてきたがまだ視界はかすんだままだ。


良い匂いのする方、心地よい音がする方、つまり温かな感触のある左方に目を凝らすとぼんやりと人の輪郭が見える。
その人影はじぃっとして動かないが周期的に手のあたりだけが動き、それに伴って心地の良い音…これは本のページをめくる音だ…がした。

31 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:10:39.48 ID:r3M5PZL/0
P「あぁ…文香か……」

文香「……」ペラッ


俺の呼びかけは読書中の鷺沢文香には届いていないようだ。
その集中力には感心するが…。


P「文香、近いぞ?」

文香「……」ペラッ


俺と文香が座るソファは4人が余裕をもって座れるほど大きいもので、しかも向かい側にももう一つ同じソファが設置されているというのに、
文香は俺の体の左側面と触れ合うほど近くに座っていた。
俺が休憩し始めた時には確かに文香はいなかったので、あとから来た文香がわざわざ俺のすぐ隣に腰かけたことになるが、一体どういうつもりなのだろう。


P「文香、近いって。おーい、文香!」

文香「……」ペラッ

P「ってこれも聞こえないのか…? すごいな」


数メートル先の人にもはっきりと聞こえるような声量で呼びかけたのに、読書に没頭している文香は気付くことができないらしい。

32 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:12:08.15 ID:r3M5PZL/0
周りの声が耳に入らないほどの集中力というのは往々にして称賛されるものだが、このレベルまで来てしまうと最早危ういと言わざるを得ない。
仕事の時刻になっても気付かなかったり、カフェテラスで読書中に居眠り運転の車が向かってきたり、電車などで痴漢に良い的にされたり…。

読書するときにはもっと周りに注意を払うか、自室などのそもそも何の危険もないような場所を選ぶようにと再三にわたって文香には伝えていたのだが、相変わらずのようだ。

しかも今日などは夜も遅く俺しか残っていない事務所にわざわざ来て、それもわざわざ俺の隣に座ってこんなに無防備を晒しているなんて、本当にどういうつもりなんだ…。

こんなの、文香のそういう性質を知っている人間にとってはいたずらを誘っていると思われても仕方ないぞ?


P「……」

文香「……」ペラッ


そういうわけで…これから俺がすることは文香が読書中どれほど周りが見えなくなっているのかをプロデューサーとして把握しておくためであるし、
また同時に文香にその危うさを身をもって学習してもらうためである。


P「……」スッ

つぃぃぃ さわ…さわ…

文香「………」ペラッ


手始めに文香の艶髪に触れてみた。
当然この程度では文香にとってはそよ風と変わらないのだろう、なんの反応もない。

33 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:14:13.25 ID:r3M5PZL/0
P「本当に綺麗な髪だ…これで特別な手入れしてないってんだから羨ましがられるのもやむなしだよなぁ…」サワサワ


早くも目的を忘れ、見た目通りの素晴らしい手触りをつい愉しんでしまう。

まさにシルクのような髪だ。
髪の暖簾に指先を突きいれてみるとなんの引っかかりもなく入り込み、手櫛をかけようとするも「するん」と
一切の抵抗なく髪先まで通ってしまったのでそもそも手櫛の必要は全くないのだろう。

しかもサラサラのくせにフワフワとした柔らかさもあって、髪先の束を手のひらで持ち上げてみると歪さのかけらもない
優しい曲線を描いた後で蛍光灯の安っぽい光をまったく別次元の輝きに変換してみせてからハラハラと元通りになった。

うむ、キューティクル・モイスチャ―ともに良し。


文香「…………」ペラッ

P「それに文香といえば…」


くいっ


P「この瞳だなぁ。ほんとうに吸い込まれそうだ…」


文香「…………」




文香「……」ペラッ

34 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:16:17.49 ID:r3M5PZL/0
前髪を上げるとどこか海の青さを連想させるような瞳があった。


P「はぁ……」ジー

文香「…………」ペラッ

P「文香の瞳はずっと見ていたくなるなぁ…。はぁ……」ジーー

文香「…………」


文香「…………」



文香「…………ぁ」ペラッ


冗談抜きで本当にずっと見ていられるのだが、それで文香の読書が終わってしまっては検証ができなくなってしまうので断腸の思いで視線を外した。
その先にあったのは文香のトレードマークといってもよいヘアバンドだった。


P「文香のヘアバンド…」

文香「…………」ペラッ


P「好き」

文香「…………///」

P「だけどたまには……あれ? ヘアバンド外したところ見た記憶が…無いな…」

P「外してみるか…? いやでも流石に気付くか…?」


P「うーん…」

文香「………」ペラッペラッ

P「あ、読むスピードが速くなってる。ということは集中も深まっているということか…。もしかしたら気付かないんじゃ…?」


   ぐいっ


ヘアバンドの縁の指を掛けて少しずつ後ろへずらしていくと、あるところで手櫛と同じように「するん」と抜けてソファに落ちた。

文香は…?


35 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:17:40.86 ID:r3M5PZL/0
文香「………………」ペラッ

P「あちゃーほんとに気付かないのかぁー。これはいよいよ危ないぞ~」


P「ん?」

P「すんすん…めっちゃ良い匂いがする…どこから…?」

文香「………?」

P「すんすん…あ、ヘアバンドがかかってた髪のところからかぁ。バンドで温められてたのが解放されたからかな」

文香「………」ペラッ

P「あぁ、すごい良い匂い…。これで安物のシャンプーって嘘だろ…」

文香「………」

P「すんすん……あぁ…」


P「……直接嗅いでも大丈夫だよな…?」

文香「………!?」ピクッ

P「ん?」

文香「………///」ペラッ


検証とは関係なくなってしまうが、良い匂いを胸いっぱいに吸い込みたいという欲求に逆らえそうにない。
でも残業代もでないのにこんな夜遅くまで働いているし、偶々転がり込んできた幸運をモノにしないのは
寧ろ神様の采配に逆らっているようできっとそれは良くないことなので、つまりはこの僥倖を噛みしめたところで
誰も俺を咎めることなどできるはずがない。

よし、OK。


文香の髪ギリギリまで鼻を近づけ…




P「すぅ~~~~~~はぁ~~~~~~~」


文香「ぁぁ………/////」

36 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:19:06.38 ID:r3M5PZL/0




P「………」






P「OH MY GODESS……」ゾクゾクゾクッ

文香「………/////」


胸を満たしてくれた期待以上の幸福感に小躍りしてしまいそうなほどだった。
こんなの、鼻をうなじに突っ込んで思いっきり嗅いだら一体どうなってしまうんだろう…?

どうなってしまうんだろう…?
どうなってしまうんだろう…?
……どうなってしダメダメダメ!流石にダメ!

もしこの検証中に文香が気付いたとしても、直接肌に触れていなければなんとでも言い訳できるけど、さすがに鼻を押し付けてたりなんかしたら完全にアウトだ。

ダメだめだめだめだめ……。
うん、もう大丈夫。

変な気はもう大丈夫、うん。



P「ふぅーーー、ふぅーーふぅー………よし!」

文香「………?」ペラペラ


P「あ、そういやヘアバンド外した文香をちゃんと見てなかったな…う~~んと……?」

文香「………/////」



P「うわぁ~~~」



P「こりゃだめだぁ~~~」


文香「ぇ………」

37 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:20:21.77 ID:r3M5PZL/0

文香「………………」ウルウル…



P「ヘアバンド取ったら前髪がサイドに流れて文香の綺麗な瞳がどこからでもはっきり見えてまうやん…」

P「こんなの街に出ようもんなら、ナンパやスカウトが殺到して1ミリだって進めんへんで…」

P「これほどの女神、悔しいが俺のプロデュース能力ではまだ扱いきれへん。
 ストーカーを増やすだけ増やして文香を危険にさらすことになるに決まっとる…」

P「すまん文香、きっとすぐにこの姿の文香にもスポットライト当てたるからな…」


文香「…………////////」



P「あ、あまりの衝撃で関西弁が出てもうたわ…。ん゛ん゛ん゛…よし、戻った」


P「それにしても文香の集中力はどうなってるんだ…。さすがに肩を強く叩けば気付くだろうが、
 痴漢がそんな触り方をするわけないし、きっと触れるか触れないかいや触れてる、というような微妙なラインを攻めてくるはずだ…」

P「かといって検証とはいえ俺がそれをやったら御用も御用…むむむ…」


P「ソフトタッチ…直接触れず…合法的な……」

文香「…………???」ソワソワ




P「あ!」


悪魔的でも圧倒的でもないけどどれかといえば犯罪的かもしれないけど丁度いい思いつきが下りてきた。

38 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:21:28.50 ID:r3M5PZL/0

P「たしか…このあたりに…」


ごそごそと壁際のキャビネットの引き出しを漁る。
少し前に事務所内で流行ったものの、そのあまりのアレさに一瞬でブームが去ってしまったといういわくつきの器具を探す…。


P「あ、あった…」ニタァァァ

文香「………?」


おっと、思わずゲスい笑みを漏らしてしまった。
しかしコレを使ったことがある人間ならば誰だってニヤつくだろう。
この器具の威力を知っている者ならば誰でも…。


緩いカーブを描いた針金を束にしただけの重量50グラムにも満たない見た目は至って簡素な器具。
ちなみに針金の先端には肌を優しく擦るための小さな丸い素材が接着されている。


P「これはヘッドスパワイヤー…」

文香「!?」ビクッ


P「ゆえにこれはマッサージである…」



文香の良い匂いがほのかに立ち上ってきている頭頂部に狙いを定める。

そしてゆっくりと丁寧に十数本のワイヤ―の先端のポッチを文香の頭皮に挿入するように押し込んだ。

39 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:22:01.42 ID:r3M5PZL/0





   し ゅ る ん ♪




文香「んひっ♥」ブルッ






40 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:23:49.35 ID:r3M5PZL/0


P「ん?」

文香「ぁ……」



P「あぁ、やっぱりこれは文香も気付いたかなぁ? 
 もし気付いたんならこの検証ももうここできっぱりと終わりにしないとなぁ…」


文香「………/////」プルプル


文香「………」


文香「……」ペラッ




P「なん……だと……!?」



   しゅこん♪ しゅるん♪ するん♪


文香「んんぅ♥ ぅひっ♥ あひっ♥」ペラッペペペラッブルルルペラッ


P「なんてこった…。ワイヤーの刺激は確かに感じているのに、読書をやめないだなんて…。
 もしかして読書中の文香の精神と肉体は完全に分離されているのか…!?」


   しゅる♪ しゅこここ♪ しゅるん♪


文香「んっ♥ ぐぅぅ♥ ふぁぁっ♥」


P「肉体を置き去りにして精神だけを本の世界に…。
 だからこんなふうに、こんなふうにしても!はぁ、はぁ……
 口がだらしなく開いて鼻の穴をヒクヒクさせているのも、下品な喘ぎ声も、単なる肉体の反射反応でしかなく、
 ゆえにそれが精神に伝達されることはない…だとォ?」

41 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:24:48.03 ID:r3M5PZL/0
  しゅぴゅん♪ しゅるるん♪ しゅこ♪しゅこ♪しゅこここ♪


文香「んぃぃ♥ もぉ♥ んぁ♥ だぇ♥」ブルブルブルッ


P「こんなの痴漢に好きにして下さいって言ってるようなもんじゃないか!?」シュコシュコン

文香「んあっ♥ んんぁっ♥」


P「これはやばいぞ! 本格的に対策を考えないと文香が! 文香が暴漢に手籠めにされてまう!」シュコココッコココ

文香「あっ♥ あっ♥ あっ♥」ヒクッヒクッ




P「………」




P「なんてな♪」


文香「ふぁ?」ブルブル



P「文香、手止まってるぞ?」


文香「ぁ!? ……」ペラッペラッ




P「ふん…まだ続ける気か…」


文香「……」ペラッペラッペラペラ

42 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:26:30.44 ID:r3M5PZL/0
P「文香の意図はよくわからないが…今日みたいに俺しかいないような事務所に来てあまつさえ俺のすぐ隣に座るなんて…、そんな不用心なことするんじゃないぞ?」

文香「……」ペラッ


P「男と触れ合うことがあまりなかった文香にはよくわからないかもしれないが、そういうのは普通好きな男を落とすためにやるもんだ」

文香「……」ペラッ


P「いくら俺でも勘違いするところだったぞ?」

文香「……勘違いじゃ 『しゅこん♪』 んひっ♥」ブルッ



P「文香みたいな可愛くて綺麗でおとなしい女の子なんてな、悪い男の手にかかったらあっという間に食べられちゃうんだぞ?」


  しゅるん♪

文香「はひっ♥」


P「わかるか? 身も心もズタボロのドロドロにされて…」


  しゃこん♪

文香「ぅぁっ♥」


P「もしかしたらドラッグなんかも使われて頭バカにされて…」


  しゅこしゅこ♪

文香「ふぁ~♥」


P「涙も鼻水も唾液もだらしなく垂れ流したアヘ顔を写真に撮られて…」


  しゃっこん♪ しゃっこん♪

文香「ふぅぅ♥ んぁぁぁん♥」


P「それを使って一生脅され続けることになるんだ…」



P「わかったか?」

文香「はっ♥ はひぃ♥」

43 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:27:50.04 ID:r3M5PZL/0
P「そうか、なら良いんだ。それはそうと……」


  しゅこん♪ しゅこん♪ しゅるるん♪

文香「あひゃぁんん♥」


P「コレ…気に入ったか?」

文香「ふっ♥ ふぁぁい♥」


P「キモチイイか?」

文香「きひぃ♥ きもひいいれすぅ♥」


P「もっとしてほしいか?」

文香「んはぁい♥ もっろひてぇぇ♥」



P「ははは…よし」


  しゅるん♪ しゅるしゅりゅしゅるるる♪ しゅこん♪

文香「ふぁっ♥ ぁぁあ♥ あっ♥ あっ♥」








P「文香って結構欲しがりなんだな……」


44 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:28:26.04 ID:r3M5PZL/0



P「この……」













P「スケベが」ボソッ










文香「!?」




文香「あっ♥ あっ♥ ふあぁん♥♥♥」ビクンッ

45 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:30:13.55 ID:r3M5PZL/0


P「あ……」


つい調子に乗ってひどいことまで言ってしまった。
俺の悪い癖だ…。

文香は何かを耐えるように体を震わせている。
傷つけてしまったのかもしれない…。


P「文香…その…ごめん」

文香「ふ、ぅぅぅ……」ブルブルブル


文香「……」プルプル



文香「ぁ…Pさん…お目覚めでしたか…」プルルッ

P「ふ、文香?」


文香「すみま…せん。 私…本を読んでいると……んはぁ♥ 周りが見えなくなってしまうので…
 もしかしたら…Pしゃんのこと…無視してしまっていたかもしれません…」

P「いや…うん…そうだね…?」


文香「ぁ…ちょっと…はぁん、はぁ♥はぁ♥ お花摘みに行って…きますね……」スック

P「お、おう…」



ふらつきながら立ち上がり事務所外のトイレへ向かう文香の後ろ姿を見送る。


ついさっきまで文香が座っていた場所を見ると何かに濡れているように見えなくもなかったが、
それは曖昧なままにしておくことにしておく方が何かと良いような気がしたので調べるようなことはあえてしなかった。



46 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/18(土) 17:31:13.55 ID:r3M5PZL/0
鷺沢文香 編 終わり

56 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:30:59.71 ID:mx+DuvUn0



「は~い、おっけーで~す」


ADの間の抜けた一言は放送に必要な撮影がすべて終了したことを意味している。


「ふ~終わった~お疲れ~」 「お疲れ様です」 
「お疲れさまー」 「どう?飲み行く?」 「おっ、いいっすねぇ~」


スタジオのセット中央に配置されたソファに腰かけた出演者たちは(撮影中もかなりリラックスしていたように見えたが
)一気にプライベートモードに切り替わり、この後の予定を立て始めていた。
現在は午後7時、飲みに行くには丁度いい時間だろう。


「ねぇ、キミも一緒にご飯食べに行かない?」 「スタッフさんたちもいるからさ」 
「んん~どうしよっかにゃー…あっ」


久々に担当アイドルが出演するテレビ番組の撮影現場に顔を出すことができ、その子が自分の仕事を卒なくこなしているのを確認できた。
そして今日のこのスタジオ内で営業をかけるべき人間は……いないようだ。
となるともうここには用はない。
そう思ってスタジオを後にしようとしたのだが。


「ごめんね~この後予定があったの忘れてた~♪」 「あぁ~…、なるほどね。頑張ってね!」 
「ありがとーじゃね~♪」




「ぷ~ろでゅ~さ~!」


自分のことを呼ばれ振り向いた瞬間、胸部に鈍い衝撃が走った。



P「うぐっ!?」

57 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:32:21.80 ID:mx+DuvUn0

「にゃはは~! 何も言わず帰ろうとするってどういうことかにゃ~!?」グリグリ

P「す、すまん、志希。お疲れ様…」


担当アイドルである一ノ瀬志希が俺の胸に飛び込みがてら頭突きをかまし、そのまま頭をぐりぐりとしてくる。


志希「久しぶりに現場に来てくれたのにね~~~うにゃ~~~!!」グリグリ

P「ちょ…志希、やめなさい…」


衆人環視の中、ほとんどアイドルに抱き着かれているようなものであるから変な汗がジワリと滲み出るのを感じた。


志希「なんでぇ~ キミはぁ~ あたしの現場にぃ~ 来てくれないのかにゃ~!?」グリグリ

P「いや、まって志希ほんとに! 人が見てるからっ!」


気付けばスタジオ内に残る人たちの視線が俺と志希の二人に注がれていた。
ただ不思議なのはそれがゴシップ的なモノを見る視線ではなく…なんというか生温かい視線というか…。


志希「ふっふっふ~~残念だったね~。このスタジオの人たちはみんなあたしの味方だよ~。ロクに現場に来ないようなナマケモノには発言権も拒否権も無いのだぁ~♪」

P「へ? はぁっ?」

志希「だから大人しくしてるよーに!わかったかなー? ハスハス~♪」グリグリ

P「ちょ、やめっ!? 嗅ぐな! くすぐったい!」


クスクスと、いや、ニヤニヤとした笑みを浮かべながらスタッフの人たちが各々の作業を再開し始めた。
どうやらパパラッチの類の心配はいらないようであるがどうにもばつが悪い。

大きく「お疲れ様でした」と言い放ち、しがみつき続ける志希を引きずるようにしてどうにかスタジオから出ることに成功した。

58 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:34:08.15 ID:mx+DuvUn0

P「志希、おい、志希! もういいだろう、もういいだろう!?」

志希「ありり? スタジオから出ちゃったか~」

志希「ふぅ~~とりあえず充電かんりょー♪」


そう言ってようやく志希は離れてくれた。
志希の頭が擦り付けられていた胸のあたりから彼女の匂いが立ち上って来たのが分かった。
やれやれ…。


志希「改めてお疲れさまー♪」

P「あぁ、お疲れ様。撮影良かったぞ」

志希「まぁねー。それにしても一体どういう風の吹き回しかな? 最近めっきりあたしの現場には来てくれなくなってきたのに。
キミが来てるって分かってたらもっと頑張ったのにな~」

P「いや、そこは常に頑張ってくれよ…」

志希「ジョーダン、ジョーダン♪ にゃはは~」

P「たのむぞ?」

P「…それがなぁ、この局で予定してた打ち合わせが急にキャンセルになってしまって手持無沙汰でな、丁度志希の番組撮影やってるの思い出して見にきてみたんだ」

志希「んん~~? やることないから暇つぶしに見に来たってことかな~? それはさすがの志希ちゃんでも怒っちゃうぞぉ~?」


いつも通りの軽い口調だが微かにではあるが確かに怒気を孕んだ声に内心ひやっとしてしまう。
そもそも馬鹿正直に言わなくてもよかったかもしれないが…志希に変に取り繕ってもごまかせる気がまったくしないのだ。


P「本当にすまん! これからはできるだけ同行するようにするから許してくれ…」

志希「うん、許す♪ なんちゃって~にゃはは~」


志希の声のトーンが一転して元の軽快さに戻る。


志希「『ダダ』っていうのをこねてみただけだよ♪ キミも大変だもんねぇ~」

59 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:35:00.03 ID:mx+DuvUn0
自由奔放が服を着ているようなイメージを持たれている志希であるが、それは彼女の一面でしかない。
好き勝手やっているように見えて自分の仕事はきっちりこなしているし、どう振る舞えば自分の魅力を出せるかも十分に理解している。
そのギャップはギフテッドである志希特有のメリハリのつけ方なのだろう。

だが最近はその志希の能力に甘えてしまい、一人で現場に赴いてもらうことが増えてしまっていた。


志希「でも~だからこそ~こういうときくらい好きにハスハスさせてもらうからね~♪」ダキッ


言いつつ、折角引きはがした志希がまた抱き着いてきてしまった。今度は腕にであるが…。
普段の奔放さから多少のスキンシップは「キャラ」ということで大目に見てきたが最近は少々過剰に感じることも多くなってきている。


P「志希、そういうのはちょっと減らそうって言ってるよな?」

志希「いいの、いいの~♪ さっ、プロデューサーも事務所に帰るんでしょ? 
 あたしも連れてって欲しいな~♪」

P「あぁもう…。俺は飯をどこかで食べるような余裕は時間的にも金銭的にもないからな?」

志希「いいよ♪ あたしもキミと同じコンビニ飯で構わないから♪」

P「う~ん、年頃のアイドルがそれでいいのか…?」

みく「なんだか今日は食品添加物をたっぷり味わいたい気分なんだ♪」グイッ

P「はいはい、わかったよ」


撮影終わりのくせにまだ元気満々な志希に駐車場に停めた社有車まで引きずられていく羽目になるのだった。

60 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:35:59.38 ID:mx+DuvUn0
―――――
―――
――


志希「じゃああたしはあっちでオベンキョーするから。プロデューサーもお仕事頑張るよーにー♪」


実に粗末な晩御飯を一緒に済まし一服したところで志希がそう言い立ち上がった。


P「事務所に用があるって、勉強しに来たのか? 自分の部屋でやればいいのに」

志希「たまには気分を変えたくてね~。はぁい、あたしのことはいいから、キミもさっさと労働に勤しむのだ~♪」

P「はいよ。あまり遅くなる前に帰るんだぞ?」

志希「……」

P「?」

志希「はいは~い♪ さあやるにゃ~」


会議室に向かう志希の後ろ姿を見送る。
アイドルには学生が多いので会議室は業務に使われていないときに限り自習室として使っていいことになっている。
もっとも、志希のする勉強とは学生の域をはるかに超えたものであるのだろうが。
…凡人にはよくわからない。


事務所を見渡せばいつもより活気のある雰囲気を感じた。
…今日は金曜日か。
そうだよな花金くらいスパッと仕事片づけて明日知らずの飲みに繰り出したいよな。

悲しいかな俺には縁遠い話である。
それでも今日ぐらいは最終帰宅者になるのは避けたいものだ…。


P「…」

同僚P「…」


同じく最終帰宅常連の同僚Pと目が合う。


P・同僚P「「ふっ…」」ニヤッ


今日は俺の方が先に帰ってやるぞという不敵な笑みの応酬。


絶対同僚Pなんかに負けたりしない!

61 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:37:19.58 ID:mx+DuvUn0
―――――
―――
――


同僚P「おつかれちゃーーーーーん!!!!」

P「…」イラッ

同僚P「戸締りと消灯の確認よろしくねーーーーん!!!」

P「ウス…」イライラッ


汚い笑みを浮かべながら事務所のドアをくぐる同僚Pに心の中で中指を立てる。
あの野郎、勝ち誇ってたけど僅差だからね僅差。
俺だってあとはこのメールを送信すれば終わりだからね。
さっき掛かってきた電話を同僚Pがなかなか取らないから俺が仕方なく代わりに取った所為だからね。
もうほら、これで、これで、あ、添付ファイル忘れずに、これで…。


P「送信っ、と…」

P「ふぅ………見回りして帰ろ」


同僚Pには勝てなかったが午前様は避けられそうだ…。
自席から立ち上がりまずは事務室内の窓の施錠を確認して、最終帰宅時の確認シートにマークする。
資料室、給湯室も同様にチェックし、会議室を確認しようとしたのだが…。


P「電気ついてるな…」


ドア下の隙間から光が漏れ出ている。
電気の付けっ放しなどがあった場合は確認シートにその旨を書いておかなければならないから面倒だ…まったく誰だ消さずに帰った奴は…。

気怠さが増したのを感じながら会議室のドアを開くと、美少女と目が合った。
天才美少女、一ノ瀬志希。


P「はっ? え? なんでいる?」

志希「あっ! もぉ~~遅いよ~! いつもこんな時間まで働いてるなんて感心を通り越して少し引くにゃ~」


まるで俺がこうして会議室のドアを開けるのを待っていたかのような言い草だ。

両腕を上げて一伸びしてから、机の上に広げていた論文…うわなんだこれ英語びっしりで目がチカチカする…あれなんか英語ですらない…と筆記用具を鞄に仕舞い始めた。

62 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:38:50.20 ID:mx+DuvUn0
P「え? ずっと勉強してたのか?」

志希「そうだよ~。…ん? 勉強するって言ったよね?」

P「言ってたけど…こんな時間まで会社にいるなんて…」

志希「?」


状況がよくわかっていないらしい志希に軽い眩暈を覚えた。


P「あのなぁ…今日はたまたま俺が最後だったけど、もし他の奴が見回りしてたらソイツとこんな時間にこの狭い会議室で二人きりになってたんだぞ? 
 万が一があるかもとは思わないのか?」

志希「にゃはは~『たまたま』なんて白々しいんじゃにゃいかな~♪ ソレ♪」

志希が俺の左手にある確認シートを指さす。

志希「ここ最近ほとんどキミのサインだったよ? それって最後に会社を出る人が書くんだよね? 
 きっと今日もキミだと予測…するまでもないかな♪」


改めてシートを見てみると確かにここ一か月はほとんど俺の名前が並んでいた。
極たまに同僚P。


P「いや、でもなぁ…今日は同僚Pが最後の可能性も十分あったんだぞ? それこそ10分の差しかなかった」

志希「にゃはは~ザブトンイチマイ~♪ でも同僚Pさんだったとしても、あの人なら心配ナッシン。
 ああ見えて小さな犯罪も犯せないゼンニンと性向判断済みだよ~♪」

P「ったく、心理学だかなんだかわからんが、十代の小娘がアラサーのオッサンの内面を語ってたら痛い目みるぞ? 
 男が誰の目もない密室で女と二人きりになったときにどう動くかなんて当人にしかわからんわ。
 それに魔が差すってこともあるし」

志希「それでも大丈夫♪ もしものときにはこの志希ちゃん特性の暴漢撃退用のスプレーが火を噴くぜー♪ 
 あ、火は出ないよ?」


そのスプレーの中身の効果はえげつないんだろうが、果たしてその時になって冷静に使えるのか?
しかも密室だったら自分も吸い込む危険もある。
あくまでそれが必要になるような状況を未然に回避するよう努力することが一番大切だ。

63 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:40:12.82 ID:mx+DuvUn0
P「はぁ…。志希、これからは会社に残るのは俺がいるときだけにするんだぞ?」

志希「は~い♪」


自分で言いながらどこか違和感を感じる…? 
その原因は客観的になってみるとすぐにわかった。


P「魔が差すかもしれないのは俺も一緒か……あっ…」

志希「……」


本来であればわざわざ口に出すべきではないことをつい言ってしまったのは気安い志希だからか…。


志希「にゃはは~♪ プロデューサー、志希ちゃん襲うっちゃうの~?」ニヤニヤ


そして失言を聞き逃してくれるほど志希の耳は悪くないらしい。


P「い、いやっ…そんなことはしない! 不安にさせるようなことを言ってすまん! 言葉の綾というか…失言だった」

志希「な~んだ、つまんないの~♪ せっかくスプレーのテストができると思ったのに~♪」


どうやら冗談っぽく受け取ってくれたようで一安心……?


P「とにかく! 志希は天才と言っても体はただの女の子なんだから! 男に対しての危機感は常に持っているように!」

志希「体は女の子って……な~んかや~らし~♪」


あくまで茶化してくるスタイルに多少の苛立ちが募る。


P「志希、危機感。OK?」

志希「おーけーおーけー。あいむおーけー♪」


本当にわかってるのか…?
志希が顔の横でOKサインを作りながら立ち上がった。
どうやら会話の間に片づけは終わったらしい。

64 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:41:24.32 ID:mx+DuvUn0
志希「見回りまだあるんだよね? あたしも一緒に行く~♪」

志希「それと…」

P「わかってる、マンションまで送ってやるから」

志希「やったあ♪ お礼としてこのスプレー要る?」

P「結構です」

志希「あっはい」

志希「…にゃはは~! さぁ見回りレッツゴー」


とはいえもうそんなに残ってはいないのだが。



志希「ここで最後?」

P「そうだな」


そう言って見回り最後の部屋、仮眠室のドアを開いた。



がちゃり



残念ながら慣れ親しんだ仮眠室である。
吊りカーテンで仕切られた3台の簡素なベッドとサイドテーブル、そして毛布を収納した棚と洗面台があるだけの部屋。
しかし志希は初めて入ったらしく興味津々のようだ。


志希「へぇ~♪ キミもここで寝ることあるんだよね?」

P「あぁ、よく使うなぁ」

志希「どのベッド使うの?」

P「う~ん、大抵一番奥のかな」

志希「あそこかぁ~……ううぅ~うにゃ~ん♪」バッ


   ぎ し っ


志希が助走をつけて奥のベッドに飛び込むと静かな部屋にベッドの軋む音が響いた。
そして何が楽しいのかベッドの上でゴロゴロと転がっている。

…自分がスカートを穿いていることを忘れているらしく、スカートの裾はめくれ上がり肌触りのよさそうは太ももはまぶしく、
パンツは…普通に見えてしまっているぞ、おい…。


P「ちょっとおい、パンツ! 見えてる!」

志希「いいの、いいの~♪」

65 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:42:22.55 ID:mx+DuvUn0
いいことなど一つもないというのに尚もベッドを転げていたかと思うとうつ伏せの状態で止まり、志希のゆっくりとした呼吸音が聞こえてきた。
どうやら深呼吸をしているらしい。
艶のあるピンク色の生地を丸見えにしたまま…。
あぁ頭が痛くなってきた…。


志希「んんん~~~? 全然キミの匂いしないよ!? なんで~?」

P「そりゃ掃除のおばちゃんが毎日シーツ替えてくれてるに決まってるだろ。嫌だろ?オッサンの匂いがしたら。眠れるものも眠れん」

志希「あたしはキミの匂い好きなんだけどにゃあ~」

志希「あ、お菓子が置いてある! 食べていいのかにゃぁ…?」


自由すぎる…。
サイドテーブルの上に未開封の菓子箱があった。
そういえば昨日俺が出先で貰ったモノだ。無くしたと思っていたがここに置き忘れてたのか。


P「それ俺のだ。志希にやるよ」

志希「やったぁ♪ ありがとね~♪ お礼にこのス」

P「結構です」

志希「あっはい♪」


ばりっと音を立てて菓子箱が開かれる。


P「え? ここで食べるのか?」

志希「誰かさんが遅くまでお仕事してたから、なんだか小腹が空いてきちゃってね~」

P「というかこんな時間にお菓子って女の子的にどうなんだ?」

志希「ん~……カロリー計算しゅーりょー♪ 明日の朝食とレッスン量で調整可能で~す」

志希「ほら、キミも入り口に突っ立ってないで、一緒に食べよ? これから車の運転するんだから休憩しておくべきだよ♪」


一人だったら特に気にしないが志希を乗せるとなる万が一があってはいけないから確かに少し休憩しておいた方が良いだろう。
ポンポンとベッドのマットレスを叩く志希に促されるまま、彼女の隣に腰かけた。


志希「もぐもぐ…美味しい♪ あたしはやっぱりきのこ派だな~。チョコとスナックの食感が絶妙だね♪ プロデューサーは?」

P「俺は…どっちでもいいけど、どちらかと言えばたけのこの方かな」

66 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:44:26.63 ID:mx+DuvUn0
志希「えぇ~そうなんだ!? キミならきのこの良さを分かっていると信じてたのに…」

志希「じゃあ、これいらないよね?」

P「いるわ」


きのこの山の箱に手を伸ばそうとしたところで志希から待ったがかかった。


志希「はい、すとーっぷ♪ 食べたいなら…」

志希「はい、あ~ん♪」


志希がきのこを一粒つまんで俺の口元に差し出してきた…。
よくあるアレである。
が、俺はそれを無視して、自分で菓子箱から一粒つまみ出して口に運んだ。
うん、これはこれで美味いんだよなぁ。


志希「無視だとぉ~♪」

P「もう一個もらおう」


再び菓子箱に手を伸ばそうとしたのだが、志希はそれを自分の背後に隠してしまった。


志希「ダメ~♪ キミはこれ。はい、あ~ん」


そして性懲りもなくあ~んを強制してくる。


P「え、嫌だよ、普通に食べたい」

志希「アイドルからの貴重なあ~んだよ~? うりうり~♪」

志希「あ、これはもしかして恥ずかしいのかにゃ~? あ~んされるのは初めてだったかにゃ~? 
 それなら恥ずかしくてできないのも当然だにゃ~♪」


十中八九ただの煽りであるが、まぁそこまで言うのなら乗ってやろう。


P「はいはい、じゃあ良いよ?」

志希「にゃは♪ はい、あ~ん♪」

P「んあ~むぐ……。もぐもぐ」


まぁ俺もいい大人ですし? 女の子からのあーんぐらい? 経験ないわけじゃないし?


志希「へぇ…これぐらいじゃバイタル変わらないんだぁ。見直したよ♪」

67 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:45:57.85 ID:mx+DuvUn0
P「ふふん…」


どうだこれくらなんともないんだからな、と内心勝った気分でいたのだが。


志希「じゃあ、これはどうかにゃ…?」


そう言うとスナック部分を唇で咥え、チョコの部分をこちらに差し出してきた。


志希「ん~~♪」

P「ちょっ…!?」ドキッ

志希「どひたの~? たへないの~?」ニヤニヤ

P「っ……」


志希は間違いなく俺の反応を楽しんでいる…。
俺が慌てるのを見たいだけだ。
志希の思い通りにさせたくないのであればその口からあーんを受け取ればいいだけの話であるが、そんなことできるはずもない。
取ろうとしたら確実に唇同士が触れてしまうだろう。
状況的には完全に俺の負けであるのはわかるが、やめてくれと言うのも負けを認めているようで言いたくない。
ただ窮するのみであった。


志希「にゃはは~顔真っ赤~♪ 志希ちゃんご満悦~~♪」


また、ぎしっ、という音を立ててベッドに寝転んだ。
仰向けになってニヤニヤしている。俺の困る顔の映像を脳内で反芻でもしているのだろうか…?


十代の小娘に小馬鹿にされるというのは……正直イライラする…。
今日はいつになく志希に振り回されているからか、普段は微笑ましく見ていられる彼女のニヤケ顔がすごくイライラする…。
キスをせがむような行為、二人きりの仮眠室でベッドに寝そべるという行為、胸元の開いたボタン、いまにも見えそうなパンツ……。
何もわかっていない志希にすっごくイライラする。

68 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:47:28.11 ID:mx+DuvUn0





……こんなの俺じゃなかったらとっくに襲っている。



あれだけ言ったのに分かっていない。
それとも自分は襲われても撃退できると本気で思っているのだろうか。
また俺が注意しても結局は馬耳東風、そして他の男に対しても同じように振る舞う…?


志希「~~♪」ニヤニヤ


だめだ。
絶対にだめだ。
志希にはその危うさをなんとしても理解してもらわないと。

……仕方がない。
多少強引なやり方になってしまうが言葉でダメなら体で理解してもらうしかない。


P「……」ゴソッ


一度深呼吸をし、ゆっくりとした動作で革靴を脱ぐ。
ベッドに膝をつくと小さく軋む音が鳴り、それと同時に志希の見開かれた目と合った。
天才に思考する暇は与えない。
素早くしかし必要以上に触れないように志希の上半身に馬乗りになり志希の顔を見下した。


志希「ぁ……」


志希のキョトンとした顔は貴重だ。
こうしてみるとただの可憐な美少女で、急激に罪悪感が襲ってきたがそれは無視することにした。


P「…どうだ志希、逃げられるか?」


体を落とし、志希の腹に軽く体重をかけながら尋ねてみた。


志希「にゃ、は、は……ちょっと、むりっぽいかな……」

P「そうか…、撃退スプレーはどうした?」

志希「……鞄の中」

P「わかったか? 俺がその気になればお前なんて簡単に襲えるってことだ」

志希「……っ」

P「これに懲りたらあまり男を…って志希?」

69 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:49:12.42 ID:mx+DuvUn0
志希「…っ…ふ……ふふっ」

志希「……にゃ~~はははは~~♪」

P「お、おい志希…?」


突然笑い出した志希に今度は俺の方がキョトンとしてしまう。


志希「にゃは、にゃはは♪……ごめんねぇ~だってキミの行動があんまりにも予想通りだったからさ~♪」

P「え…?」

志希「キミをわざとユーワクすればあたしに怖い目をみせようとしてくると思ってたんだよね~♪ 
 馬乗りになってくるのもばっちし的中♪」

P「…」

志希「にゃはは~♪ 大丈夫だよプロデューサー♪ 危機感でしょ? 最初からわかってるって~♪」

志希「最近はキミとあんまりじゃれあえないからその補充だよ♪」

P「……」

志希「んでさぁ~、もうそろそろどいてくれない? お腹少し苦しいんだ♪」


ぶちり、という音が俺の脳内に響いたような気がした。
だめだ、冷静に冷静に……。
わざと誘惑した、すべてお見通しでした、だと…?
イライライライラ。
男をこんなにコケにして…、わかってない。
全然わかってない…。
あぁ、だめだめ冷静に……。


志希「それで、またキミの可愛い赤面顔を……ってあり?」

志希「あ、あれぇー……あたしの計算ではキミは赤面しながら急いであたしの上からどいてくれるはずなんだけど……志希ちゃん間違っちゃった…?」


もしコイツが男だったらもうとっくに手が出ていただろうが、さすがに女の子、それも飛び切りの美少女だ。
馬鹿にされたぐらいで暴力をふるうのはいくらなんでもあり得ない。
しかしコイツには一度痛い目を実際に見てもらう必要があるらしい。

さぁ、どうすればいいか…。

70 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:50:28.58 ID:mx+DuvUn0
深呼吸すると頭に上った血が幾分薄まったような気がして視界が開ける。
視界の端にはお菓子の箱、その中にはまだたくさんの小さなきのこが残っている。
志希はそれが好きだと言っていたなぁ…。


P「志希…今度は俺が食べさせてやるよ。ほら、あーん」

志希「え…な、なんで…?」


不穏な空気を感じ取ってか志希の顔から笑みが消えた。
こんな風に察しがいいところは本当に志希らしいと感心する。
が、今はそれすらも俺を苛立たせた。


P「はぁ? 好きなんだろコレ? ほらぁ」

志希「むぐっ!?」


半開きになっていた口に問答無用で菓子を突っ込むと彼女の目が驚愕の色に染まった。
志希が目をパチクリさせる様はちょっとだけ気の毒に思えたが、まだまだ足りない。


P「まだまだあるぞ? ほら口開けろ」

志希「もぐっ…!? ま、まっへ! いらないよぅ!」


菓子を押し込もうとした俺の腕が志希の両手に阻まれたのですかさずその両手を絡めとり、一瞬だけ腰を浮かせ股下に押し込んだ。
俺の股下から出ているのは志希の胸と顔だけ。
完璧なマウントの完成だ。


志希「やっ、だめっ、離してよぉ~」


志希は必死に体をよじってこの状態から逃れようとしているようだが、その抵抗は女に生まれなくて本当に良かったと心から思えるほどに非力だった。


志希「ふぎゅっ!?」


股下を潜り抜けようと足先の方へずれていくのを止めるのと同時に志希の口を開くために左手で志希の頬をつかみ無理矢理口を開かせる。
こんなアヒル顔でさえ可愛いくて…なぜかそれもまた苛つく。


P「何個入るかなぁー。にーこ、さんこ、よんこ…」

志希「ふむっ!? ふぅぅん゛ん゛っ!?」ブンブン


顔を左右に振ってイヤイヤしているが、まだ入るに決まっている。
唇と歯の隙間から見えるすでに入れたきのこ菓子を人差し指で奥に押し込むと、案の定スペースが空いた。


志希「んぐぅぅぅっ!?」

P「ごーこ、ろっ……こ、なぁ~なぁ~…こ! ん~~限界かな?」


本当はもっと入りそうだが志希が非協力的なのでこんなものだろうか。

71 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:52:41.93 ID:mx+DuvUn0
P「ほら、もぐもぐして」グイッグイッ


志希の顎を手で押して咀嚼の手伝いをしてやる。


志希「も゛…ぐ、もぐ…んぐ…う゛……」

志希「んん゛…んごく…」

志希「ぷおでゅーさぁ…んぐ…こわい…よぉ…んごく……もうやめよぉ…?」


今更何を言っているのか…。


P「志希、怖いだろう? 男を舐めてると怖い目に遭うんだぞ?」

志希「ぅ…んぐ…ぅん…」コクリ


志希が素直にうなずくのはこの荒療治の成果だろう。


P「でも俺で良かったなぁ、他の男だったら絶対に襲われてもっと怖い目に遭ってたぞ?」


頬の盛り上がりが減ってきたのでまた食べさせようと菓子箱をまさぐり一粒つまみ出すと、志希がぎょっとした表情を見せた。


志希「やっ…また…?」

P「あぁ、まただ。残ってるだろ? お残しは許しまへんで~ってか、ははっ」

志希「やだぁ…なんで…? もうわかったって言ってるのに…。なんの意味があるの…?」

P「ほらぁ、泣き言はいいから口開けろ~?」グイッ

志希「ひっ!? んごぁ…っ!?」


また志希の頬を握り強制的に開口させる。
さっき食わせた分はもう腹の中のようだ。
よしよし。


P「七個までは一気にいくぞ?」

志希「ふぅぅぅ゛ん゛!??? 」


一個、二個、三個……七個。
とりあえず、少なくともこれだけ入るのはもう分かっているからハイペースにつっこんでやった。


志希「んん゛ん゛ん゛……ふっぐぅ…う゛ぅ゛…」


こちらを見つめる志希の目はどこか虚ろに見える。
頬をリスみたいに膨らませ、しかも生気を失った表情なのにやはり可愛い。
くそっ!
苛つくイラつくイラつくイラつくっ!!


P「あと、一個いけるか…?」

志希「んんん゛~~~~!!!」ブルブル


聞き分けなくイヤイヤする志希を軽く抑え込んで八個目を押し込むと、どうやらそれが限界らしかった。

72 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:54:26.55 ID:mx+DuvUn0
箱の中には残り二個のきのこの山…。
あともう少しだというのに…。
志希にはもう入らないか…?


志希「ん゛っ…んふ~~んふ~~っ」


と、そこで口呼吸を禁じられた志希の荒い鼻息が耳に入った。
志希のしゅっとした鼻もこのときばかりは小鼻をヒクつかせながらどうにか体内に酸素を取り入れようとしている。


鼻。


鼻かぁ…。


残り二個のうち一個を志希の口元に近づける。
そうすると志希は怯えにも似た表情を見せたが、口の上を素通りさせると一瞬安堵の色が浮かんだので、その油断の隙をついてきのこのスナックの部分を志希の左側の鼻の穴に挿入した。


   ずにゅっ♪


志希「ふむっ!?」

志希「ふ…ぐ……?」


志希の時間が止まっている。
めったなことでは思考することをやめない天才も、度重なる無意味な…いや無意味じゃない、志希を教育するためだ、本当だ…度重なる特異な状況に脳の処理機能がフリーズしてしまったらしい。

しかし…これはまた……。



P「んふっ…」


P「ふふ…はははは…」


なんて顔だよ、ははは。
さすがにアイドルでも鼻に異物を突っ込んだら可愛くなくなるのな、あはははは。

73 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:56:36.02 ID:mx+DuvUn0
そうだ記念…じゃなくて教育記録として残しておこう。


   ぱしゃり♪


志希「……ふ」

志希「ふぅ゛ぅ゛ぅ゛~~~~~~~」ジタバタ


カメラのシャッター音に志希の思考が回復したようで…まぁ回復したところで体をよじることしかできないのだが。


P「片鼻じゃあ苦しいだろう? ほら、よく噛んで飲み込もう? ははっ」グイグイッ

志希「んに゛ぁ!? んむっ!んぐっ…んく…」


咀嚼することを失念していた志希を手伝ってやると、口内でグズグズになっていたらしい八個のきのこの山はほどなく嚥下された。


志希「んぷぁ…」

志希「な、なんで? なんなのこれぇ…こんなの襲われた方が…あたしキミになら……」


   ずにっ♪


志希「ふな゛ぁ!?」ビクッ


口内の圧迫感がなくなり安心した隙をついて最後の一個を右側の鼻の穴に差し込んだ。


   ぱしゃり♪


アイドルとしてという以前に女の子として致命的な様を写真に収めたこの時点で、いつの間にか志希に対する苛立ちは霧散していた。
今はもう俺の下でフルフルと小動物のように震えている志希がたまらなく愛らしく見える。


志希「なんえ゛なんえ゛なんえ゛りはいれきらいりはいれきらいいみふめひいみふめひ……」


志希が極まった鼻声で何事かを呪文のように呟く。
その目の焦点はどこにあるのか曖昧だ。
その愛らしい視線を俺に向けたくて、両穴のきのこをそのスナック部分で鼻の内壁をノックするようにグリグリしてやった。


志希「んお゛ぉ゛!?」



志希「ん゛あ゛…やめへ…ごめんなさい…もうや…へ、へ、へ…」








志希「へぷちっ」



   ぽろん……コロコロ…











世にも可愛らしいくしゃみの勢いで左側のきのこの山が鼻からすっぽ抜け、志希の胸の上に転がった。

74 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:57:45.85 ID:mx+DuvUn0
志希「ぁ……」


さっきまで志希の鼻穴におさまっていて、くしゃみによって発射されたソレには当然のようにぬめりのありそうな透明な液体が付着していた。


この可愛らしい志希の鼻水…。
嫌悪感は微塵も感じない。
意識せずともその濡れ菓子に手が伸びてしまう。


志希「ぷろ…でゅーさー…? それ…どうするの…? まさか、だよね…」

P「?」


志希が何を言っているのかわからない。
こんなのどうするかなんて決まっている。
そんな分かり切ったことをいちいち質問するなんて志希らしくないなぁ。

こんなオイシソウナものタベルに決まってるだろ?


P「ん、ぱく」

志希「あっあっあ…えへ? えへ…?」

P「もぐ、もぐ…うん、美味いな…」

志希「ひっ、ひっ、ひあっ!? うぁっ!? はっ!? え!? ひっぃぃっ!?」


志希の口から出るのは意味をなさない空気が抜けるような音。

75 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 21:59:06.44 ID:mx+DuvUn0
P「こっちももらおうかな…」グニグニ

志希「ひぐぅ!?」


右穴に残ったきのこを突っ込み直し、内壁に擦り付けてから引っこ抜いた。


   ずるぅぅ♪


P「あ、なんか付いてきた」

志希「ひっ!? ひっ、ひひひっ、だめだめだめだよっ、あひっ」


黄色だか透明だかよくわからない塊のような粘液のようなアイドルから出てくるものにしてはえげつないレベルのものを引き連れてスナックが出てきた。


P「ん、あむ…うんイケるイケる」

志希「いひっ、ひひっ♪いひひひ♪りかいりかいできなぁーいいいいい♪あひひひひ♪」


壊れたような笑い方をする志希の目には涙が溜まっている。

なんだっけ?
何をしてたんだっけ?
危機感のない志希への教育だ。
そうだそうだ。

男に馬乗りになられて好き放題にされる怖さも分かってくれたようだな。



P「志希、男のことをあんまり甘く見てると痛い目に遭うんだぞ? 分かったな?」

志希「はいはいはーーい♪ いひひひひひ志希ちゃんりょーかいだよー♪あはははははっひひひ♪」

P「事務所に遅くまで残るときは俺がいるときだけにするんだぞ?」

志希「はぁ~い!いひっ♪ キミがいるときだけ~あはっははは♪」

P「よし、じゃあ帰るか」

志希「帰る帰るーいひひっ♪」




なぜか酔漢のように足腰が立たなくなってしまった志希を彼女のマンションまで送り届けるのはなかなか骨だった。

76 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/19(日) 22:00:48.74 ID:mx+DuvUn0
一ノ瀬志希 編 終わり

87 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:27:20.40 ID:ISQHSrEc0


…………
……



何かいい香りがする…

吸い込めば吸い込むほど体に力が漲ってくるようないい香り…

視界は停止した砂嵐…
これは…目を閉じているからか…

そうか俺は事務所のソファで仮眠をとっていたんだ…
まだ目は…開きたくないなぁ…
だってソファの寝心地がこんなに良くて、この程よい硬さの枕は温かくて…それにすごくいい匂いがするし…



枕…?

枕なんてあったっけ…?


P「ぅ……?」


「ぁ…Pさん…お目覚めですか…?」


P「ぇ?」

88 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:28:17.97 ID:ISQHSrEc0
目と鼻の先からの距離からの予期せぬ問いかけに反射的に目が開く。

視界の左側は柔らかそうな膨らみに遮られているが、右目からその声の主の顔を確認することができた。


P「あ…え? 美優さん…?」


仰向けに寝ていた俺の顔を心配そうにじぃっと見つめていた女性は三船美優だった。
つまりこの後頭部の柔らかな感触は彼女の膝枕らしい。


P「あっ、す、すいません!起きますっ」


寝起きでまだ不自由な体に鞭打ち、急いで起き上がろうとしたのだが…。


美優「あっ、いいんです。Pさんもお疲れでしょうからもう少しこのままで…」


美優さんの手が優しく俺の額と瞼に添えられて、起き上がろうとした初動を制されてしまう。
美優さんの手はひんやりと冷たく…本人は冷え性を辛がっていたが…俺にはとても心地よく、彼女の言葉に抵抗する気を削ぐのに十分な威力だった。


P「ぅ…すみません…みっともないところをお見せして…」

美優「そんなふうに思うわけ、ありません…。
私がアイドルとしてやっていけているのはPさんがこんな夜遅くまで頑張ってお仕事してくれているからなんですから…」

P「…ありがとうございます美優さん。ではもう少しだけいいですか…?」

美優「はい…いくらでも…」


了解が得られ安心して膝枕に体重をかけると首筋に感じる美優さんの体温は生々しく、今日の彼女の装いは彼女にしては短めのスカートであったことを思い出してしまった。
どきり、という胸の高鳴りを努めて無視する…。

89 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:29:35.41 ID:ISQHSrEc0
P「あ…今何時ですか? それにどうして美優さんは事務所に…?」

美優「今は…24時になったところですね…。さっきまでこの近くで留美さんたちとお酒を飲んでまして…。
帰りに会社の前を通ったらまだ電気がついていたので、もしかしてまだPさんがいらっしゃるんじゃないかと寄っちゃいました」


普段より柔和な表情で微笑む彼女の頬は、よく見るとほのかに朱が差していることがわかった。
24時か…そういえば事務所の電気はこの一画しか点いておらず、周囲も静まり返っている。


美優「もしかしてこれからまだお仕事されるんですか…?」

P「いえ、今日はもう仕事は残っていません。少し疲れが溜まっていたので帰る前に30分だけ仮眠するつもりだったんですが…。
思ったよりも長く寝てしまっていたようです」

美優「……」ジーー

美優「たしかに…目の下にクマが見えます…」ジー

P「み、美優さん…っ、ちょっと…近いです…」


鼻と鼻の頭がくっつきそうなぐらい近づいて、俺の顔をまじまじと見つめる美優さんに心拍数が一段上がったのが分かった。
しかも頭を美優さんで取り囲まれるようなこの体勢に加え、お酒で体温も上がっているらしく、濃密な彼女の香りが鼻腔を満たし、思考が濁りそうになる。
緊急回避とばかりに視線を美優さんからずらすと、ソファ前に置かれたローテーブルの上に、見慣れない小さな電気製品らしきものが稼働しているのに気が付いた。


P「あ、コレ…もしかしてアロマディフューザーってやつですか?」

美優「はい…。少しでもPさんの疲れが取れればと、使わせていただきました…」


美優さんは趣味でアロマを嗜んでいるというのは聞いていたが、実際に見ることは初めてだった。
可愛らしい形をしたディフーザーはうっすらとした照明を点けながら、その上部からミストを排出している。
意識して深呼吸してみると、胸奥をつつく美優さんの匂い以外に南国を想起させるような甘い香りがあることに気付くことができた。

…なんだか元気が湧いてくるような香りはこれだったのかな…?

90 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:30:23.67 ID:ISQHSrEc0
P「これはなんていうアロマですか?」

美優「え? え、えぇと…なんだったかしら……」

P「?」


歯切れ悪く顔を逸らした美優さんの視線の先には小さな小瓶。
これはアロマの容器か…。
テーブルの端に置かれていたが手を伸ばせばこの体勢でもなんとか届いた。


美優「ぁっ……」


小瓶に貼られたラベルの文字。
これがアロマの内容物だろう。


P「イランイラン…っていうんですか?」

美優「そ、そうでしたイランイランでした…」

P「へぇ、初めて聞きました。まぁそもそもアロマのことはほとんど知らないんですけどね」

P「で、どういう効果があるんですか?」


単なる興味本位からの簡単な質問。
アロマを趣味にする人にとってはその効能など把握していて当然だろう。
それでも美優さんはやはりどこか都合の悪いことを聞かれているかのように表情が曇っている。


美優「ぇ…ぇぇと…ストレス…の軽減…? それと…安眠? ……です」

P「あぁ~なるほど。だから寝すぎちゃったのかなぁ…、アロマってすごいですね」

美優「そ、そうなんですよ。アロマって正しい使い方をすればちゃんと生活を彩ってくれるんです。
もしよろしければPさんにもお教えしますよ…?」

P「えぇ、是非ともお願いしま」


   ぴぴぴぴぴぴ♪


P・美優「「 !? 」」

91 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:31:23.18 ID:ISQHSrEc0
ゆったりとした雰囲気が突然の電子音で遮られる。
これは携帯のアラーム音だ。
眠りこけないように仮眠を取る前にあらかじめ設定しておいたのだったか…。


P「すいません、目覚ましのアラームです」

美優「あぁ、そうでしたか…。少し驚いちゃいました…」


起き上がろうかと思ったが、頭に添えてくれている美優さんの手が心地よくて…まだ離れたくなくて…、
失礼ながら寝たままの姿勢で携帯をスラックスのポケットから取り出し、アラームを解除した。


P「解除…っと」ピッ


そして携帯を手に取っているその流れで何の気なしにとあるワードを入力しタップした。



【検索】イランイラン



検索して出てきた候補の一番上のページをとりあえず開く。


P「ぇ…?」


気になる記述があったので、他の2、3の候補も流し読む。


P「……………」

美優「Pさん…?」

P「へぇ…イランイラン…イランイランですか……」

美優「え…? あ…っ!?」


俺が何をしていたのかようやく気付いたらしく美優さんの体が小さく一度震えた。
頭に触れていた手は強張り、やっと起き上がる意欲がわいてきた。

92 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:32:44.80 ID:ISQHSrEc0



   ぎしっ


上体を起こし美優さんの隣に座る。


P「イランイランの効能…ストレス軽減と安眠でしたか…。他には…?」


自分でも意地悪な質問をしていると思う。


美優「え…えぇと…ごめんなさい忘れちゃ…」

P「いえ、知ってますよね? というかどこ見てるんですか?こっち向いてくださいよ?」


ついさっき心拍数の上昇を抑えようと美優さんと目を合わせるのと避けた自分が言うのも説得力に欠けるなぁとは思うが、
そこを指摘できるほどの余裕は彼女には無いらしい。

美優さんの頬に手を添えこちらを向かせると、その目は誰かに助けを求めるように泳ぎ、唇もあうあうと震えていた。

嘘のつけない彼女の逃げ場をさらに狭めてやる言い方をしてやる。


P「美優さん、知らないならそれでいいんですけど…知ってるのに言わないとか、嘘を言ったりはしないでほしいなぁ…?」

美優「っ……」


彼女の怯えるような目、それでいて上気した頬に言いようのないドロリとした熱が腹の底にたまるような感覚がある。


美優「イランイランの効能は……ストレス軽減と…安眠……それと…」

P「それと?」

美優「ぅ………こ、こうようかん…。高揚感です…っ」


当たり障りのない言い方を思いついたつもりのようで、そうはっきりと言い放った。
もし仮に本当にそれでお茶を濁せると考えているとしたら……途端に美優さんがとても可愛らしく見えてきた。
と、それと同時に悪戯心に火が付いた。


P「高揚感?よくわかりませんねぇ。どういう高揚感なんですか?もうちょっとわかりやすくお願いできますか?」

美優「ぅっ………」


顔は真っ赤、目にうっすらと涙を溜めて、恨めしそうな視線を送って来る美優さんは本当に愛らしい。

あぁ…いつもの大人な美優さんはどこにいったのだろう。

93 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:33:38.87 ID:ISQHSrEc0
P「ふ……」フリフリ

美優「うぅぅ~~~」


トドメに検索画面が表示されている携帯を見せつけながら懺悔を促す。
『ほら、ネタは上がってるんだよぉ』という奴だ。


美優「う……」

美優「さいいん……」

P「さいいん…?」

美優「催淫っ、効果がっ、あります……っ」


湯気が出るのではと心配になるくらいに赤い顔をして、なにか吹っ切れたような美優さんが声を裏返しながらそう言った。



ここまでは罪の告白。
ここからは罰の時間。
罰がなければきっと罪を繰り返す。
だから罰は必要。



P「さいいん…ってどういう字を書くんですか?」

美優「~~~っっ、Pさぁん……もう許してくださいぃぃ……」

P「え?だめですよ? ほら教えてくださいよ。俺にアロマのこと教えてくれるんでしたよね? 美優さんが俺に対して使ったアロマのこと教えてくださいよぉ」

美優「ううう~~ひどいぃぃ~~」


美優さんはついに羞恥に耐えられなくなりうつむきながら震え始めてしまった。
普通であれば罪悪感を感じてしまう光景かもしれないが、儚いながらもなぜか意地悪したくなる雰囲気を纏う三船美優のそれには胸の高鳴りを禁じ得ない。


美優「みっ、淫らを…催す…と書きます……」

絞り出すような呟き。

94 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:34:51.71 ID:ISQHSrEc0
P「ん~~難しいなぁ。それってどういう意味なんですか?」


そしてそれに対しての無慈悲の上乗せ。


P「わかりやすく教えてください? さいいん?されるとどういう気分になるのか」

美優「ぅぅ……わかってるくせに…いじわるです……」

P「ほら、教えてください」

美優「ぇ…えっちな…気分になります…」

P「……イランイランの効果は男女に共通なんですか?」

美優「は、はい…どちらにとっても…その…気分が高まります…」

P「で、もし男と女が一対一でいて両方がエッチな気分になったら、その後どうなるんですか?」

美優「……ぁ…ぁぅ…ぁぁぅ……」


目が回るというのはこういう状態のことをいうと辞書に載せたいくらいの良い表情を美優さんは見せてくれた。

『罰』はこれくらいにしてあげようか。



P「……」



P「あはははっ……」


美優「ぁぅ……ぇ……?」

95 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:35:51.07 ID:ISQHSrEc0
P「ははっ、まぁおそらくは酔っぱらった川島さんあたりが、こうすれば俺をからかえるとか言って美優さんをそそのかしたんですよね? 分かっていますよ?」

美優「ぇ…ぃゃ…ちが…」

P「ん?」

美優「い、いえっ……そ、そうです……カワシマサンゴメンナサイ…」ボソッ

P「でも…いくらお酒が入って羽目を外してしまったとしても、こんなのはいくらなんでも軽率じゃないですか? 美優さん?」

美優「ぅ……おっしゃる通りです…」シュン


まるでイタズラがばれて叱られている子供のようだ。


P「他に誰もいないような場所でこんなことして…、俺じゃなかったら勘違いして襲ってますよ?」

美優「ぅぅぅ………」シューーン


二十歳を超えた大人にもなれば人の言いうことを真摯に受け止められないかたくなな人間も多くなってくるが、得てしてそういう人間の成長は期待できない。
喜ばしいことに美優さんはどうやらそちら側の人間ではないらしい。
となれば俺が伝えることはちゃんと美優さんに響くわけで…。


P「まったく…もし、美優さんが襲われた場合どんな悲惨なことになるか教えてあげましょうか?」

美優「え…?」


美優さんにはもっと警戒心を持ってもらうために男の怖さを教えてあげるべきだと俺は思う。

96 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:36:59.48 ID:ISQHSrEc0
P「まず男は襲うとなったら美優さんを押し倒すでしょうね。そう…こんな風にっ」グイッ

美優「あっ」ドサッ


美優さんには完全に不意打ちだったようで、肩を軽く押しただけでソファに押し倒すことができた。
ソファの柔らかいひじ掛けを枕にして仰向けとなった美優さんの顔のすぐ横に手を着き覆いかぶさるようにして彼女の顔をのぞき込む。
が、必要以上に彼女に触れてしまわないように細心の注意を払っている。


美優「えっ!? P…さん……?」

P「びっくりして対応できなかったでしょう? そういうものです。でもこうなるともう逃げるのはむずかしいですよ? 
普通は美優さんのお腹に馬乗りになって身動きは完全に封じ込められちゃいますからね。今はそんなことはしませんが」

美優「は、はい…そうですか……」

P「で、こうなるとまず美優さんはどこを触られると思いますか?」

美優「えっ? ど、どこを…?」

美優「……む、胸ですか…?」

P「なるほど。そういう奴もいると思います。が、大多数はまず美優さんの唇を狙うと思います」

美優「そ、それって…」

P「はい、キスされちゃいます」

美優「きっ…ぅぅ………」


戻りかけていた顔色がまた色づき始める。


P「だんだんと燃え上っていくような恋人同士のキスなんかじゃなく、美優さんの唇と口内を一方的に貪るような暴力的なキスです」

美優「そ、そんな……」

P「上唇も下唇も前歯も奥歯も歯茎も舌もベロベロ舐められて唾液でべちゃべちゃにされちゃいます。
唇がしびれて感覚が無くなってくるくらいの長い時間キスし続けられるでしょうね」

美優「あ、あぁぁ…うそ……」

97 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:38:38.36 ID:ISQHSrEc0
P「頭もぼうっとしてきて、いったいいつまで続けるんだろうだなんてことしか考えられなくなる頃…おや、キスがやみました」

美優「んっ、はぁ…やっと……」

P「涙で歪んで見えるその男の顔は、それでもまだすぐにキスできるくらい近くにあって…
あれ?よく見ると口をもごもごとしてますね。何してると思いますか?」

美優「ぇ…わ、わかりません…」

P「……と、ぼんやりしていたらまたキスされてしまいます。でもそれまでのキスとは少し違う。
口内を貪ってくるような激しさがない。なんでだろう?と思っていたその瞬間!」

美優「……」ゴクリ


P「どろり……口に生温かい液体が注ぎ込まれる感覚に鳥肌が立ちます」

美優「まさか……」

P「はい、流れ込んできたのは男の唾液です。さっきもごもごしてたのは口の中の唾液を集めていたんですね」

美優「あ、あぁ………」

P「考えるより早く体が勝手に吐き出そうと顔を横に向けようとします。
ですがそれをソイツが許すわけもなく、頬をがっしりとつかまれて全く首は動かせません」

美優「え、えぇっ…どうすればいいんですか…?」

P「残念ながらどうにもなりません。男は美優さんが唾液を飲み込むまで頬を離しませんし、
たとえ上を向いたまま口の端から吐き出したとしても、今度はさらに多くを流し込まれるだけです」

美優「そんなぁ……」

P「それにあんまりまごついていると男は拳を握って…暴力をふるうぞと脅してくるかも」

美優「ひっ!…い、いや……っ」


P「…恐怖に支配されて仕方がなく飲み込みます。喉を落ちていく気持ちの悪い粘液。
普段飲み食いしているときは全く気にならないのにこういうときだけ妙に鮮明に感じてしまいます」

美優「うっ……」ピクン

P「一度飲んでしまえば二度三度と流し込まれ飲み込まされ、男にされるがまま。
そのころにはもう抵抗するのは無理だと諦めているんじゃないですか?」

美優「あぅ…そうかも…しれません……」

98 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:39:57.77 ID:ISQHSrEc0
P「ぼんやりとして動きの鈍くなった美優さんを見て、男は次のステージに進みます。次は胸です」

美優「っ……」


そう言いながら俺はソファから下り、仰向けになったままの美優さんの横の床に膝をついた。


P「ソイツはとにかく胸を触りたいという衝動からまずは服の上から揉んでくるでしょう。ぐにぐにと乱暴にまさぐられます」

美優「やっ……」

P「でもそれはすぐ終わります。だって服の上からより直に触った方が気持ちいいですから。
強引に服を脱がされ、下着もはぎ取られ…美優さんの生の胸にまじまじと視線が注がれます。
隠そうとする両手は簡単に絡めとられてネクタイで後ろ手に縛られてしまいました」

美優「ゃぁ…見ないでぇ…恥ずかしい…っ」


P「ひとしきり視姦した後は当然触るんですが、今度は服の上からの時とは違いゆっくりと、優しく。
それどころか触れているのか微妙なほどのソフトタッチです」


言いつつ手のひらを美優さんの胸に近づけた。


美優「んっ………♥」

P「膨らみの外側からゆっくり…じっくり…羽が撫でるように…ソフトに…円を描きながら中心に近づいていく指先の感触」

美優「ふぁ…んっ…ジンジンしま…すぅ…♥」

P「安心してください、俺は触れてませんよ?」

美優「ぅそ……? たしかに感じるの、にぃっ……♥」ピクン


美優さんの体が本当に何かを感じたかのように小さく震えた。
俺の指先の体温をじんわりと胸で感じ取っているのだろうか?
いやそんな馬鹿な。ただの思い込みだろう。


P「気付けばもう指先が描く円は小さくなり、突起の周りの肌の色が濃くなるエリアに差し掛かろうとしています」

美優「ぁっ…ゃぁん…」

99 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:41:04.67 ID:ISQHSrEc0
P「このエリアの大きさはどれくらいかな…?一円玉くらい?五百円玉くらい?それとも牛乳瓶の底くらい…?」

美優「そんなに…大きくありま…せんっ」

P「……」

美優「じゅ…十円玉くらいです……」カァァ


別に答えなくてもいいのに律儀だ。


P「その十円玉ほどの領域を指先でカリカリ…カリカリ…一番真ん中の突起にはまだ触れずカリカリ…カリカリ…」

美優「ふっ…くっ…こんなに、焦らすなんて……」

P「十円玉がピカピカになるんじゃないかというくらい撫でまわした後にようやく突起への刺激に入るわけですが…
どう触られるでしょうか? これまでと同じように優しく?それとも強く?」

美優「おねがいします…優しく…してぇ…」

P「これまでの焦らすような触り方でテンションが限界にまで高まってとても敏感になったそこは…
残念ですが…指先で『きゅっ!!!』っと潰されちゃいました。こんな風に」


美優さんの目の前で、人差し指と親指で目に見えない肉豆を潰して見せる。


美優「ひぃぃあああんん!!!??」ビクン


指の間が狭くなるのに同調して美優さんが嬌声を上げた。
もちろんさっきから彼女の体には一切触れていないのだが…美優さんの感受性はかなり高いようだ。


P「美優さん? そんな風な色っぽいうめき声を出してたらソイツの手は余計強くなっちゃいますよ?」

美優「そ、んなぁ…だめです…むぐっ……」


これ以上声を漏らさないように美優さんが両手で口を覆ったが、それはダメですよ美優さん。何故ならば…。


P「今の美優さんは両手を後ろで縛られていることになっているんですよ? なので今は…手は頭の後ろで組んでおきましょうか」


彼女の手を取って頭の後ろにもっていくと、俺の言いつけ通りに頭の後ろで組んでくれた。
そうすると、呼吸が荒くなっていることもあり、まるで腹筋運動の最中のようにも見える。

100 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:42:49.32 ID:ISQHSrEc0
美優「ぁぁ…声…でちゃう……」

P「頑張って耐えてくださいね? 声を出したら男を興奮させるだけですからね?」

美優「は、はい…耐えてみせます…っ」

P「……」クニクニ

美優「ぅぁん…っ♥」

P「くすっ…」

美優「ぁ……」カァァ


P「……とまぁ、指で摘ままれて美優さんの意思とは関係なく硬度を増した突起ですが、きっとそれは見るからに美味しそうでしょう。
というわけで胸の感触を指で愉しんだ後は口でも味わいたくなるものです」

美優「ぁ…だめ……」フルフル

P「唾液で濡れた舌を胸全体に擦り付けます。柔らかい膨らみを舌で押し込んで変形させてみたり、
色違いの十円玉を舌先でなぞったり、舌の腹で突起のコリコリを愉しんだり…もう胸はべちゃべちゃです」

美優「はぁ、はぁっ…んぁ…」


P「もしかしたら歯形が付いちゃうくらい強く噛まれたりもするかも…だってこれは恋人同士の行為じゃなくて、美優さんは乱暴な男に襲われているんですから…」

P「かぷっ…って…」

美優「…痛っ……」ビクン


P「襲われていることへの恐怖と、肌を晒している恥ずかしさと、柔肌に歯が食い込む痛みと…
なのに確かに感じる甘い快感と……美優さん…あなた本当は襲われるのを愉しんでませんか?」

美優「襲われてるのに…そ、そんなわけ…ないで…す……っ」

P「そうですか…ならいいんです…」

101 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:44:04.52 ID:ISQHSrEc0
P「キスをした。胸も味わった。となるともうアソコに行くんじゃないかと思います。美優さんアソコってどこか分かりますか?」

美優「アソコって…き、聞かないでください…っ」


答えるのを拒否すること自体が知っていることの証明なのに…。
その通り、彼女の視線は自分のアソコに注がれていた。


P「そうですね…ココ、ですね」スッ

美優「あっ! P、Pさん…ソコは…だめぇ……」


美優さんの言葉には耳を貸さず、彼女の下腹部を1センチの距離をあけて手で覆った。


美優「くっ…ぁぁ……んっ♥」

P「スカートもパンツもすぐにはぎ取ってしまって、一気に突き立てるというルートが普通かもしれませんが…時に美優さん、経験はありますか?」

美優「ふぇ…? け、けいけん…? えっ、経験ですか…っ?」

P「あ、答えたくなければ答えなくてもいいです。…美優さんの担当プロデューサーとしては把握しておきたいですが…」

美優「………ぅ」

美優「……………ま、まだ…です……やだっ恥ずかしい……」カァァァ



P「なんてことだ………………」





P「はっ!? いぇ、何も恥ずかしがることなどありません!! アイドルとしてこれ以上の武器はありませんからね!! 
 それにその…俺は美優さんがまだ、ということを知ることができただけでなんていうか、最高に幸せな気分です! 
 神様に感謝したいぐらいですよ!!」

美優「え、えっ…そ、そうですか…それは良かった、です…?」


P「でも、そうなると一気にいくのはちょっと躊躇われるかな…う~ん、でも襲っているならそんな気は使わないか…? う~~む」

102 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:45:26.56 ID:ISQHSrEc0
美優「…Pさん? 何を悩まれているんですか…?」

P「えぇとですね…もし初めてならかなり痛いと思うんですけど、それだとできるだけ準備をしておいてなるべく痛みが少ないようにした方が美優さんにとってだけでなく男にとってもいいのかなと。
 あまりの痛みに泣きまくられると流石に萎えちゃうかもしれませんからね。
 う~んでも、襲うような男だったら気にしないか…?いやでも……」


状況が定まらず思考が空転する。
どちらでも良いといえば良いのであるが…。


美優「あの…もしPさんなら…どうしますか…?」

P「えっ? 俺ですか…? って、俺が襲うっていう前提がまず無いですが…」

美優「そっ、その前提は…一旦置いておいて…」

P「そういうことであれば、なるべく美優さんの痛みを減らすようにするに決まってますね」

美優「ぁ……♥」


美優「じゃ、じゃあ今回はその…なるべく痛くない方のケースでいいんじゃないでしょううか…?」

P「むむむ…。美優さんがそうおっしゃるなら、そうしましょうか…」

美優「はい…お願いしますね…Pさんならどうするか、教えてください…♥」


P「ん、では…。スカートとパンツを脱がされて、もう完全に一糸まとわぬ姿になってしまった美優さんですが、ついに股に手を触れられてしまいます。
 しかし、思ったほどの湿りは感じない。そこで美優さんがまだ経験がないということを聞き出して納得し、それならばと気持ちよくなれるように手伝ってやろうと男が言います」

美優「Pさん…優しい……」


P「…美優さん、勘違いしてはいけませんよ? 美優さんを気持ちよくしてやろう、なんていうのは優しさでもなんでもないですからね? 
 これは単にもう絶対に美優さんを手籠めにできるという確信からの余興であり、あなたをより乱れさせるための布石なんですから」

美優「は、はい…分かりました…」

103 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:46:40.99 ID:ISQHSrEc0
P「そこで襲い始めてから頭に上りっぱなしだった血がいくらか冷め、ぐったりとした美優さんを改めてねっとりと視姦します。
 美優さんの美しい体…まだ味わっていない個所がたくさんあるじゃないか…」

P「髪、おでこ、鼻、頬、顎、耳、首、うなじ、鎖骨、肩、腕、手、腋、腹、太もも、膝、脛、脚指、足裏、ふくらはぎ、背中、尻…」

美優「………」ゴクリ


P「そのすべてにキスをして、舌を這わせ、噛みつき、美優さんの美しい体を汚していきます」

美優「ぁ……♥」


P「男に触れられるたびに嫌悪感がこみ上げてくるでしょうね。
 体中に塗りたくられた男の唾液はしばらくすると乾いてくれますが、そうなると臭いを放ち始めます。美優さんも自分の体から発しているとは信じたくないほどの悪臭です」

美優「P、さん……」ピクピク


P「男自身もその唾液の臭いに気付き…下ごしらえはもうここまでにしよう…。
 さあ、湿りはどうだろうか…?」

美優「はぁ、はぁ、んっ……」


P「嫌悪感と不快感しかなくても、あれだけ執拗にやらしく刺激されればこうなるのも無理はありません。
 だから仕方ないんですよ、美優さん? 襲われているのに、ここをこんなにグズグズにしてしまっても…」

美優「ぃゃぁ……これぇ…ほんとに…♥」

104 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:48:36.53 ID:ISQHSrEc0
P「もうこれ以上湿らせる必要はない。
 そこで男は服を脱ぎ捨て、その象徴が美優さんの目の前に…それを美優さんの大事なトコロの入り口に当てがって…」

美優「ぁ、ぁぁ……」


P「美優さん? このまま入れちゃっていいんですか? 何か忘れていませんか?」

美優「ぇ…?」


美優「…ぁっ、ひ、にん…しないと…」

P「そうですねぇ。でも、聞いてくれると思いますか?」

美優「ぅ……で、でも…できちゃう……」

P「大丈夫、中には出しませんから。これで出来たなんて話は一度だって聞いたことがありません。
 美優さんは聞いたたことあります?無いですよね? 外で出せば良いだけなんです。
 だから、このままでも大丈夫ですよ?」

美優「そ、そうなんですか…? Pさんがそうおっしゃるなら……」


P「……」


P「……ぐじゅ、という音を立てて男のモノが美優さんの肉を掻き分けてめり込んでいきます。
 たっぷりと濡れいていたので抵抗はほどんどありません」

美優「ぅぁぁ…Pさんっ……♥」


P「それでも、少し入ったところに何か引っかかるところがありました。
 どうやらそれが初めての証拠らしい……男の腰に力が入りました」

美優「はぁ、はぁ……」



P「ぶちぶちぶち……」

美優「んぁぁぁっ!?」ビクンッ

105 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:50:02.46 ID:ISQHSrEc0
P「その痛みがどれほどのものかなんて分かりません。個人差が激しいものでありますし。
 激痛を感じる人もいれば、大して痛みを感じない人もいるでしょう。
 もしかしたら軽い痛みの後すぐに気持ちよくなれるような人もいるかもしれませんね」

美優「ぁぁ…Pさん、のが……Pさん、Pさん、Pさん……♥」ブルブル


P「初めての刺激に震える美優さんに遠慮するような男ではありません。
 男自身を更に美優さんの中へ中へと押し込んでいきます。
 美優さんの奥でごつんという壁に当たるのを男が感じ取り…そこからはひたすら前後運動が始まります」


P「まだ痛みに耐えている美優さんなどお構いなしに、自分の快楽のためだけに腰を動かし続けます。
 ぱんぱんぱんぱん、と間抜けな音が美優さんと男の接合点から響きます。
 …美優さん、知ってますか? 本当に『ぱんぱん』って音がするんですよ? 
 いえ、たっぷり濡れていたらもっと酷い音だってしちゃいます」

美優「ゃぁ…そんな…っ、やらしぃ……♥」


P「尚も腰を振り続けます。腰をがっしりと掴んで奥に叩きつけるようにしたり、
 ふるふると震える胸を揉みしだきながらしたり、美優さんに覆いかぶさって抱きしめてキスしながらしたり…
 美優さんは痛みなのか快感なのか自分でもわからない大きな刺激に頭の中をぐちゃぐちゃにされて、抵抗らしい抵抗はもう…
 いえ抵抗するという考え自体もう浮かんできません」

美優「ぁぁだめ…Pさん…Pさぁ…んっ♥」

106 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:51:22.73 ID:ISQHSrEc0
P「おや、男の腰の動きが止まりました。そして入ったまま棒を軸に美優さんの体を回転させ、うつ伏せにされてしまいます。
 でも腰は雌豹のようなカーブを描いて膝立ちの男の腰と繋がっています。
 いわゆるバックですね。…この体勢は、効きますよ?」

美優「んっ……」ゴクリ


P「向き合っていた時には擦れなかったところが擦れ、さらに深いところまで抉られて、しかもその勢いはこれまでよりもずっと強い。
 それも当然、さっきまでは動いていたのは男の腰だけでしたが、この体勢は男だけでなく美優さんの腰も前後に動かせるんですから。
 ほとんど二倍の勢いで腰と腰、それと、棒と壁がぶつかり合うことになるわけです」

美優「ぅ…そ……」


P「美優さんの大事なトコロの奥の一番大切なお部屋を男の一番汚い部分で乱暴に『どんどん』ってノックされちゃうんですよ? 
 …想像できます?」

美優「ふぁぁ……そ、んな…壊れちゃう……♥」


P「どずん、と。さっきまでとは全くレベルの違う衝撃が美優さんを貫きます。
 それは下腹部だけじゃなく、背骨と脳髄も一緒に貫かれたと錯覚するほど。初めての美優さんは一発でノックアウトでしょうね。
 体の自由はなくなり嵐が過ぎるのをじっと待つようにただ震えていることしかできません。
 それなのに男は美優さんの腰を掴んで自分の腰の動きとは正反対のタイミングで前後に動かして、与え得る最大の刺激を美優さんに与えてきます」


P「ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん…」

美優「ひっ…ぐぅぅぁああん♥」

107 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:52:49.30 ID:ISQHSrEc0
P「ふと、美優さんの顔を見てみれば…嗚呼、止め処なくあふれてくる涙と鼻水と唾液で汚れ表情筋も引き攣って、
 いつもの穏やかで綺麗な顔の面影はどこにもありませんでした。
 これを見てしまうと最早男にとって美優さんは不可侵だったアイドルでもなんでもなく、ただの『入れれば気持ちのいい肉のオモチャ』のように思えてきて…
 俺は必死に腰を振ってやってるのにお前はアンアン呻くだけかよ、と身勝手な思考をするかもしれません」スッ

美優「そっ、んな…ひど、いぃぃいいん……っ♥」


P「そういえば、肉がほぐれてきたからか締りも最初のキツさと比べると物足りなくなく感じる。
 『やっぱりそうだ、手を抜きやがって…、ほら、しっかり締めろ!』」

美優「そんな…どうやって……むり…ですぅ……」


P「…業を煮やした男が、手を振り上げ勢い良く振り下げた次の瞬間、大きな乾いた音が響きました」



P「ばちん!」

美優「ひぐっ!?」ビクン



P「…と、いう音は美優さんのお尻が叩かれた音です。手のあとがくっきりと残るくらい強く叩かれた痛みが、
 ぼやけていた美優さんの意識を一気に覚醒させ、それと同時に意思とは無関係にアソコが縮み上がるようにして男のモノをぎゅっと締め付けます」


P「ぎゅっとしたところにズボズボとされると鮮烈な刺激が美優さんの脳を溶かして…でもそれだとアソコの力が抜けてきて…また、ばちん!」

美優「ふっ、ぐぅうぅう……♥」ピクピク


P「抜き差ししては叩いて、叩いては抉って、押し付けながら叩いて…
 お尻の痛みさえもただのジンジンという感覚としか感じなくなるころには、美優さんの頭は完全に壊れて動物のような呻き声をあげているんじゃないですかね」

美優「も…やめ…てぇ……」ピクピク

108 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:54:08.17 ID:ISQHSrEc0
P「バックも十分愉しんだし、そろそろか……と、男がまた美優さんを動かし、初めと同じ向き合う体勢になりました。
 美優さんのドロドロになった顔を見ながら男が下卑た笑みを浮かべ、腰を突き入れます。…ぐじゅっ!」

美優「あぁぁぁん゛♥」


P「『気持ちいいのか?美優?』男が訊ねてきます」

美優「……んっ」


P「『気持ちいいのかって訊いてんだろうが!』」

美優「ひっ…!? や、やめて……そんなこと、訊かないでください……」


P「『おら、気持ちいいって言え!ほら!言え!言え!』」


P「男は言葉に合わせて激しく腰を動かしてきます。これはおそらく美優さんが言うまで続きます。
 だから言えばこの激しい腰遣いもひょっとしたら収まるかも…」

美優「くっ…ぁ…………」

美優「ぅ…き、もち…いいです……」


P「『あぁん!? 何言ってっか聞こえねぇぞ!?』より一層激しくぶつかる腰…」

美優「きっ、きもちいいですっ! きもちいい、キモチイイ!」


P「男が満足げにニヤつきながら腰の動きを緩めました。……どうですか? 言葉にしてみたら何か変わりませんか?」

美優「…ぅそ……ぃや…これほんとに……っ」


P「男の腰の動きがまた早まっていきます。ぱちゅんぱちゅんぱちゅん…」

美優「ゃ…んはぁ♥ きもち…いいっ♥」


P「『どこが気持ちいいんだ!?おら、言ってみろ!』」

美優「んっ、あ、アソコがっ…気持ちいいですっ…♥」


P「『何が気持ちいいんだ!?』」

美優「P、さんのぉ…お、おひ…んひ…んぁっ♥」



P「……」

109 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:55:43.83 ID:ISQHSrEc0
P「……美優さん、その男をよく見てください。ほら、よく見て…。ソイツ何か持っていませんか…?」


バックのくだりあたりからずっと取り出して美優さんに向けていた携帯を振って見せてみる。


美優「へ? ぇ? 何…それ…? 何してるんで……っ!?」


トロけて朱の差していた頬が一瞬で青くなる。


美優「ぅそ…さっきの撮られて……?」


P「美優さん…残念ながらこれでもう一生この男に脅され続けることになりましたよ?」

美優「ぃゃ…ぅそ…ぅそ…」ガタガタ


P「美優さんの裸、繋がっているところ、襲われて気持ちよがるヘンタイだって宣言しているところも、
 男のがキモチイイって白状しちゃったところも全部全部撮られちゃいました。
 このデータをチラつかされると、朝だろうが夜だろうが家だろうが外だろうが男に命令されればどこでも股を開かなくてはならなくなりましたよ?
 もうこうなると普通の幸せなんて絶対手に入りません。その後の人生はずっとその男に骨までしゃぶりつくされるだけのものです…」

美優「ゅ、ゆるして…ゆるしてください…ゆるしてください…っ」



P「こんなに良いオモチャ、手放すと思いますか?」

美優「おねがい…ゆるしてぇ……」




P「……だめでしょうね」

美優「ぅ…ふぐっ……ぅぅぅ~~~」

110 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:56:57.35 ID:ISQHSrEc0
P「最低な男にとっては美優さんの涙だって興奮材料でしかありません。より苛烈に美優さんの中を抉ってきます」

美優「ぃゃぁ…もうゆるして…んはぁっ♥ ゆるしてぇ…♥」


P「激しくぶつかり合う腰と腰…男の息遣いも激しいものになってきました。
 腰の動きはどこかぎこちなく、それでも力いっぱいに我武者羅に打ち付けてきます。
 男も呻き声を上げ始めました…男の絶頂が近いようです」

美優「んはぁっ…早く、抜いて……っ」


P「耳を貸さずより一層激しさを増す動き…。美優さん、抵抗できますか?」

美優「くっ…ら、らめぇ…力はいらな…ぃ…」


P「男は力の限り腰を動かし、肩で息をし、目は血走って……美優さんの腰をがっちりと掴んで奥の奥まで突き入れました。
 敏感であれば一瞬膨張するのを感じ取れるかもしれません。そして……」

美優「ぅそ…外で…出すって言ったの…にぃ…っ!?」





P「……出ました」

美優「ぃやぁああああ~~~~♥♥♥」ビクビクッ



P「奥で弾ける感覚が美優さんのお腹を汚していきます。美優さんの中にジクジクと広がっていく男の体温…。
 たっぷりと出し引き抜いた後、濁った液があふれ出してきたところを記念とばかりにまた動画に収められました」



美優「ゃ…もう…撮らないで……♥」ピクピク


111 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:58:23.48 ID:ISQHSrEc0



P「と」



P「いう感じですね。男を勘違いさせるようなことをしちゃうとこんなことになりかねないんです。
 分かりましたか、美優さん?」



脳内でこれまでのおさらいをしているのだと思うが、ソファに仰向けになったまま、目を閉じて手を胸の前で組みフルフルと体を震わせている美優さんは、やはりとてもいじらしく可愛らしい。


美優「は、ぁい…♥ よくわかりました、Pさん…♥ たいへんなことになるんれすねぇ…♥」


P「では、ちょっと長くなってしまいましたが帰りましょうか? 立てますか?」

美優「ぁ…まっへ、いまPしゃんに、さわられたら……!」


寝そべる美優さんを起こしてあげようと手を取ってあげたのだが…。


美優「ふぁ、あっ、あっ、あっ……んあっ♥♥♥」ビクン

P「? 美優さん、もしかして風邪ですか? 今日は暖かくして寝てくださいね?」


P「ほら、車まで肩、お貸しますよ」

美優「うぁ、あぅ、あっ、だめっ…たれちゃう…たれちゃうぅ……っ♥♥♥」




プルプルと震え続ける美優さんを半ば背負うような形で事務所を後にした。


112 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/20(月) 21:59:22.38 ID:ISQHSrEc0
三船美優 編 終わり

124 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 21:58:25.57 ID:YYpuyXGO0



きぃ


と遠慮がちな音を立てて事務所のドアが開かれた。


「P…いる…?」


猫一匹がちょうど通れそうなドアの隙間から問い掛けとともにひょっこりと顔を出したのは佐城雪美だった。


P「お、雪美か。お疲れ様。仕事の報告か?」


雪美「うん…」


トコトコと一直線に俺のデスクに駆け寄る雪美を見て、いつものように椅子を引いて俺と机の間にもう一人分のスペースを作った。


雪美「ん…」


雪美も慣れたもので、俺の膝の上に横に座り背中に腕を回して抱き着くまでの動きに無駄がない。


P「それで、仕事は上手くいったか?」

雪美「うん…だいじょうぶ…」

125 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:02:19.74 ID:YYpuyXGO0
P「よしよし、それは何よりだ。えぇと…今日の雪美の同伴者は誰だったっけか…」


雪美に限らず年少のアイドルについては一人で現場に行かせるということは勿論なく、
マネージャーも兼任している俺かもしくは共演する大人のアイドルが同伴しているのだが、それは誰だったか…。
その人からも雪美の様子を聞いておかないとな…。


P「あっ」


今思い出した。
もし仮に覚えていたのならば雪美を膝に乗せるようなことはしなかっただろう。

体中の汗腺が一気に開いていくのを感じる。


P「ゆ、雪美?すまんが膝から下りてくれないか…?」

雪美「まだ…だめ…。まだPに…撫でてもらってない…」

P「あああ、後で。後で撫でてやるからな? だから今は下りて? な?」

雪美「……」ギュッ


俺の切なるお願いは雪美に受け流されてしまったようで、俺の背中に回した彼女の腕の力がむしろ強くなってしまった。
こんなにも俺に懐いてくれているいたいけな少女を強引に引きはがすことなど無理だ…。
だが、こうしてこのままホンワカしていると…幼い少女とホンワカしているところをアノ人に見られると、その直後に全くホンワカできない状況に陥ってしまうのは確実。


P「雪美ぃ、頼むよ…。でないと…」





「でないと、どうなるのかな? Pくん?」



P「ひぃっ!?」

126 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:04:02.20 ID:YYpuyXGO0


手遅れだった…。

一体いつの間に忍び寄っていたのか?
すぐ背後から投げかけられたその声は、字面としては軽やかなのだろうがその実、問答無用の重い響きがあった。

視界に細腕が映ったと思った瞬間その腕が視界を塞ぎ…。



   ぎし……っ!!!


P「ぐぁっ!!?」


俺の顔面に絡みついた腕がウインチにつながったワイヤーロープのように頭蓋骨を締め上げ始める。
自分で意識するよりも咲に絡みついた腕に降伏のタップを繰り返していた。


P「さ!早苗さん!! まっ、てぇ!ぐぅぅぅぅ!!!」


タップ!
タップ!
タップ!してる!!
タップ!してるのに!!
片桐早苗のヘッドロックは一向に解かれる雰囲気はない!
骨が軋むような音が脳内に響いているのは錯覚だろうか?


早苗「こんなにぃ、ちっちゃな子をぉ、膝にのっけてぇ、何のつもりかなぁ~♪」


  ぎしっ、ぎちっ、ぎちっ、みしっ


フレーズに合わせて腕の力に緩急がつけられる。
その度に俺の口からは言葉にならない呻き声が情けなく漏れ出た。


早苗「女の子とそんなに触れ合いたいならぁ~、お姉さんが抱きしめてあげちゃう♪」ギュゥゥゥ

P「ぎぃいいいいっ!!!!?」


ウインチのモーターの回転数が更に上がる。
ふん♪ふん♪という早苗さんの掛け声とともに腕が絡みついている方とは逆側の頬辺りに若干の柔らかさを感じ…ない…感じない!
痛いだけだ!!

目を覆われて真っ暗なはずの視界に火花が走っている。
気付けばタップする手さえも動かせなくなっていた。


早苗「ん~? もうギブアップ~? 情けないなぁ~♪」

127 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:07:07.62 ID:YYpuyXGO0
激痛が何故か消えた。
何故だ?
あ、放してくれたのか。

そういうことか。
そうだよな、当たり前だ。


P「うっ…、ぐ……っぅ…」


まだギシギシ鳴っている頭を振り目を開くと、心配そうにのぞき込む雪美の顔があった。


雪美「P…かわいそう…まだ痛い…?」

P「ぅ…いや、もう大丈夫だ。心配いらないよ」


まだ残る痛みを努めて無視して平静を装うが、どれだけ繕えているかははなはだ疑問だ。


雪美「…いたいのいたいの、あっ…」グイッ

早苗「ほぉ~ら、雪美ちゃんもいつまで乗ってるの。そういうのダメっていつも言ってるでしょ?」

早苗さんが雪美を抱きかかえ俺の膝から下した。

早苗「Pくんもこんなちっちゃな子を膝に乗っけてニヤニヤしてんじゃないわよ! いい加減にしないとタイホするわよ~」

P「はい…。申し訳…ありません…」


雪美はこう見えてかなり強情なところがあるから膝に乗せないとロクに話してくれないし、そもそもこんな小さな子に抱き着かれたところで何か邪な気持ちを持つわけない。
だがその辺りのことをいくら早苗さんに訴えたところで理解してもらえるとは思えないし、ひょっとしたら言い訳するなと更なる折檻が待ち構えているかもしれないので敢えては言わない。
だが…。


P「あの、早苗さん…。最近その…俺へのシメ方がキツくなってるような気がするんですが…?」


彼女からの折檻の痛みが日に日に増していっているのはおそらく気のせいではない。
以前は痛いながらもまだ早苗さんの豊満な胸の感触にドキドキする程度の余裕はあったのだが、最近は痛みの方が絶望的なまでに圧倒的だった。


早苗「え~? そんなことないわよ~? 仮にそうだとしても、そもそもPくんがちゃんとしてればあたしもそんなことやったりしないんだから♪」

P「うっ……だとしても、さっきのは流石に痛すぎます! 頭を潰されるかと思いましたよ…」

早苗「あはは、な~に言ってんのよ♪ あんなので頭が潰れるわけないでしょ。頭蓋骨って結構丈夫なんだから♪ 
 それに、あたしは限界はちゃんとわかってるから。怪我させたことなんてこれまでもないでしょ?」

P「それは…そう、ですが…」


とはいえ頭蓋骨が粉砕する直前まで痛めつけられても困るが…。


早苗「んも~細かい男はモテないぞ? ほらほら、こんなことより仕事の報告! この後、久しぶりに女子会すんのよ♪ 
 さっさと報告終わらせて行かなくちゃ」

P「あぁ、もう…お願いしますよ…ほんとに…」

早苗「はいは~い♪」


P「…はい、では報告をお願いします」

128 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:08:12.33 ID:YYpuyXGO0

――――
―――
――



誰もいなくなった事務所で書類作りを続ける。
あの後、早苗さんに深酒しないよう注意してから見送り、雪美を駅まで送ってからはずっとPCに向かっている。
そして同僚も一人帰り二人帰り…自分しかいない事務所というのは昼間の騒がしさが嘘のように静まり返り、だからこそ書類仕事に関してはこの時間からが本番だ。

誰にも邪魔されずに企画案を入念に練ることがでk…


  がちゃ! ばたーーん!!!


P「!!??」ドキッ


突然ドアが激しく開かれる音が響き俺の心臓を縮み上がらせた。
なんだ!? 
強盗か!?
こんな事務所にたいした現金なんて置いてないぞ……!?


P「……」ゴクリ


デスク上に積み上げられた書類の陰から侵入者に気付かれないようにドアを見やると、姿を現したのは強盗にしては小柄で……というかあれは……。








早苗「あははははーーーー!!! Pーーーくーーーん!!! やってるーーー?!!」





夜の事務所の雰囲気にまったくそぐわない大声を出しながら入室してきたのは、一目見て酒に酔っていると分かる顔色の早苗さんだった。

129 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:09:28.05 ID:YYpuyXGO0
早苗「お! いた~♪ んん~? そんなとこで何してんの~??」

P「い、いえ…ペンを落としたので拾っていただけです…」


強盗から隠れようと机の脇に膝をついていたのだが、誤魔化して立ち上がる。
ビックリして損した…。
というか、こんな時間の強盗なら静かに入ってくるか。ははは…。


P「飲み会はもう終わりですか? 早苗さんは明日オフなのできっと朝までコースだろうと思っていたんですが…」

早苗「もう~聞いてよ~。瑞樹ちゃんたちとそのつもりで飲んでたんだけど、急に医者との合コンに呼ばれたとか言って他のみんな引き連れて行っちゃったのよ~。
 薄情だと思わない?」


アイドルが合コンて…。
いや、『瑞樹さんたち』といえばアノあたりの層の人たちか…。
となるとアイドルとはいえ彼女らの男女関係に外野が口を挟むのは野暮だろう。


P「そ、そうですか…。早苗さんは行かなくてよかったんですか?」

早苗「あたしが行くと人数合わなくなっちゃうらしくてね~」

早苗「それに…『アンタは必要ないだろ』って……」チラッ

P「?」


P「いやまぁ、大人の方たちのソウイウコトについては会社としては干渉しない方針ですが、合コンに参加しないでいただけるならそれに越したことはありませんので…。
 それにしても事務所には何をしに来たんですか?」


早苗「……」



早苗「はぁ……」

P「?」

130 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:10:32.09 ID:YYpuyXGO0


早苗「Pくん、ウチまで送ってってくんない?」


あぁ…そういう…。


P「え? 終電はまだ先ですよね?」


もし早苗さんの家が俺の家と同じ方面にあるのなら終電の有無に関わらずまったく構わないのだが、生憎と正反対の位置関係にある。
以前、終電を逃してしまった彼女を送っていった時には結構な時間がかかったのを思い出した。
だから電車があるうちは自力で帰ってもらいたいのだが…。


早苗「いや~あのね? お酒に酔って足元がフラフラしちゃってね~? これじゃ帰れないわ。だから、おねが~い♪」


さっきまで確かだった足取りをわざとらしくフラつかせながらそう言う彼女に、少なからず苛立ちを感じてしまう。
そのお酒だって自分が好きで飲んでいたのだろうに…。
だが、ここで無下に断ると後がこわい。
仕事前にへそを曲げられるのも嫌だし、早苗さんならば直接的な暴力に訴えてくる可能性もある。
つまり彼女にお願いされた時点で、はじめっから俺に拒否権はありはしないのだ。
はぁ…。


P「はい、わかりましたよ…。ただし、あと30分は待ってください。キリのいいところまでやっておきたいので」

早苗「やたっ♪ ありがとPくん♪ じゃ、あっちで待ってるからね~~♪」


ソファのある方へ向かう彼女の後ろ姿を見送ると、またため息を漏らしてしまった。

131 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:11:33.72 ID:YYpuyXGO0

――――
―――
――



急ピッチで書類を作成する。
早苗さんのことだ、30分といったら20分くらいで痺れを切らしてくるに決まっている。
そうなった彼女に付き合っていると余計時間がかかることは明らかなので、さっさと終わらせてしまおう。


P「……」カタカタカタカタカカタ

P「……」カタカタカタカタカカタ

P「……」カタカタ…スン…


微かなアルコールの香りが鼻をくすぐる。

ほら来た…。


早苗「どう~? もう終わる? お姉さん待ってるの飽きちゃった~♪」

P「……はい。ちょうど終わったところです…」


背後から声をかけてきた早苗さんに振り返りもせずそう答え、PCのシャットダウンボタンをクリックした。


P「ふぅ……」ノビーー

早苗「お疲れ様♪ 頑張ったキミにはお姉さんがハグのご褒美をあげよう♪」


気付けばすぐ後ろにまで近づいていた早苗さんの言葉に、早苗さんが言ったのでなければ純粋に嬉しかっただろう言葉に、数時間前の痛烈な記憶が思い起こされた。


P「!? ちょっと、まっ!??」


デジャヴ。
彼女の腕に視界を奪われその数瞬後に…。



   みしみしみしっ……!!!

P「ぎっ!?」

132 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:12:45.84 ID:YYpuyXGO0
振りほどく間もなくヘッドロックが開始されてしまった。
いつもに比べればまだそれほどでもない締め付けであるが、最早顔面にしっかりと食い込み、逃げるというよりかは許してもらうという選択肢の方が現実的である。


P「…っ!!!??」


まだ締める力がそれほどでもないのは確かだが…何故か、早苗さんの体に押し付けられている右側のこめかみが異常なほど鋭く痛み始めた。


P「いっぃぃいいいいいったぁあああ…っ!!!??」


非常事態を伝えようと出した声は自分が出すつもりだったものよりもずっと大きかった。
それにしても何なんだこの痛みは!?


早苗「なによ、大げさに痛がっちゃって。まだちっとも力入れてないわよ?」

P「な!! なにか! こめかみがぁっ!!」

早苗「…私に抱きしめられるのがそんなに嫌なの? なんでよ…」

P「お!ぐぅぅううう!? おねがいしま!! やめっ!!」

早苗「なによなによ! ……えいっ!!」


   ぎぎゅぅぅぅぅ!!!


P「~~~~~~~っっ!!!!!!」


あ、わかった。
コレ、ブローチだ。
今日女子会だからって普段よりおめかしした早苗さんの胸元についてたブローチだ。
その固い突起部分がおれのこめかみを押しているんだ。
さっき強まった締め付けで角がさらに俺の頭に食い込んで食い込んで食い込んでえええええええい
たいいたいだああああああいいいいいかどととおおおおほねねねえええがあああああこすれてええ
えええええええああああああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛やめろおおおお゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」ジタバタッ


早苗「ひゃっ!?」

133 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:13:47.56 ID:YYpuyXGO0
無我夢中で顔面にへばりつく腕を振り払う。
何か叫び声のようなモノをあげていたかもしれないが必死すぎて何が何だかわからない。
目をパチクリさせている早苗さんと目が合った。


P「はぁ~はぁ~……くっ……!?」ズキッ


そうだ、こめかみ!
何か刺さってないか!?
もし何か頭に刺さっていたとしたらそもそもこんな思考自体浮かばないのだろうが、確かめるのが少しこわい…。
それほどまでにさっきの痛みは激しかった。


   ぬるっ


P「痛ぅ……っ」ズキズキッ


まだ痛む右のこめかみに恐る恐る触れてみると、流石に何かが刺さっているということはなかったが、ぬるりとした感触があった。


P「血……?」


指先が赤くなっている。
しかしそれは出血というほどのものではなく、どちらかというと滲み出るという方が近い。
別の指で二度三度触ってみると付着する血の量はみるみる少なくなった。
とりあえず一安心だろう…。


早苗「あっ…ブローチ……」


今頃気付いたらしい。
ため息が出そうになる。
怒りを通り越して呆れてきた…。
もう早く帰りたい。
ああ帰ろう。
帰って酒でもあおって忘れてしまおう。


早苗「ごっ………ごめんねぇ~おねぇさん、ブローチしてるの忘れてた~…。あはは…」

P「はぁ…」

早苗「ぁ…。まだ…痛む…?」

P「……もう、いいです……。早く帰りましょう」


まだ何か言いたそうな彼女を置いて鞄手に取り、事務所のドアに向かっていく。

134 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:15:00.35 ID:YYpuyXGO0
早苗「ちょ、ちょっと待ちなさいよ…」グイ


ドア近くの簡易的な応接スぺ―スの前で彼女に腕を掴まれ強引に彼女の方を向かせられた。


早苗「これは…皮一枚がめくれただけね…ほっ…」

早苗「ごめんごめん~♪ あんまり痛がるからちょっと驚いちゃったじゃないの♪」


やめろ…。


早苗「こんなの全然大したことないじゃない♪ 血だってもう止まってるし」


やめてくれ…。


早苗「お詫びにおねぇさん直々に絆創膏貼ってあげよっか?」


せっかく一回りして忘れていた怒りが、彼女の自己中心的な能天気さに沸々と蘇ってきてしまう。


P「…要りません。さ、帰りましょう」


このつっけんどんな態度は自分でも大人げないとは思うが、今の俺にはこれが精一杯だ。


早苗「ま、待ちなさいって! あたしも謝ってるでしょ!?」

P「だからもういいですって。早く帰らせてください」


ったく、何がしたいんだこの人は…?
もういいって言ってるのに、蒸し返してどうすんだよ!?

構わずドアノブに手を掛けようとしたのだが…。


早苗「ふ、ふんだ…。ちょっと血……血が出たくらいでそんなに怒っちゃって…」


ほんとうにやめてくれ…。


早苗「それにあんなに大声だしちゃって…。な、情けないんだから……」


ああ…やめてくれやめてくれそれ以上言わないでくれ…。
それ以上言うなら俺だって流石に……。





早苗「これくらいでヘソ曲げちゃって…。う…器がちっちゃいんじゃないのっ?」

135 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:16:11.08 ID:YYpuyXGO0


  ぶちっ

という音が聞こえた。
それは比喩的な意味ではないし、かといって脳の血管が切れた音なんかじゃない。
その音は顎の筋肉から響いた。
歯を食いしばり緊張した顎の筋肉のひしめく音だったのだと思う。

ともあれ、その音をきっかけにしてか言い訳にしてか、俺はキレた。



早苗「ぇ? ちょ?」


くるりと振り返り、たじろいだ彼女の肩を押す。
もう一度押す、彼女は後退する。
そして…。


早苗「あっ!?」


  どさっ!


応接スペースのソファが背後にあると気付かずに後ろに下がろうとした彼女は座面に倒れこんだ。
そこですかさず上半身に馬乗りになってやった。


早苗「えっ!? ちょっと!?」ジタバタ


臨戦態勢の彼女ならばこんな不覚を取ることはなかっただろう。
しかし飲酒による判断力と身体能力の低下に加え、俺がこんな手段に出るということは全く想定していなかったのだと思う。
もしかしたら罪悪感に思考リソースが割かれていたのかも。

ともかく完全に虚を突くことができた結果がこれである。


早苗「うそっ!? なんで…っ!?」ジタバタ


だとしても、倒れこんだ先が道場の畳ならば素人の俺から逃れることなど容易だったろう。
だが倒れこんだのは合皮のソファ。
彼女の必死の動きはウレタンの弾力に吸収され、合皮素材の滑りの悪さは彼女の衣服に絡みつき筋力を効率的に疲弊させる。
しかも彼女の腹に体重をかけると座面ごと沈み込み、その拘束をより強固なものにすることができた。

136 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:17:50.77 ID:YYpuyXGO0
早苗「はぁ、はぁ、ふっ!…はぁ、はぁ!」ジタバタ


ブリッジして俺を跳ね除けようとするテクニックもここでは無意味だった。
場所が悪すぎるしウエイトの違いもある。
それにアルコールの所為もあるのだろうが目に見えて息切れしてきた。


早苗「やっ!? はなっ、して!」


抜けられないとなればまだ自由になる両腕で何か良からぬことを企てるだろう。
そう予想した俺は、あらかじめ彼女の両腕も体の下に収めることにした。
焦らず丁寧に一本ずつ。
手首を掴んでみれば、いつものあの乱暴はどこから来るのか不思議に思えるくらい細くて、力だってやっぱり男の俺からすれば大したことなくて、技が使えなければ所詮こんなものかと拍子抜けしてしまう。


早苗「くっ………なによ?」


抜け出すのは不可能と判断したらしい早苗さんは動くのをやめて俺を睨みつけた。


P「……」


なんだろう…。
俺だって何か考えがあってやったわけではない。
カッとなってやってしまっただけだ。
……たしかにこれからどうすればいいのだろう。
これではただ押し倒しただけだ。
だが…。


早苗「な、なんなのよ…っ!?」


語気荒く威嚇するような彼女であるが、よく見ると唇はかすかに震えているし、瞳にはいつもの余裕がない。
つまりこれは虚勢を張っているだけなんていうことは誰にだって分かる。
これは、一矢報いたといってもいいのではないだろうか…?
男としてはなんとも情けないが、彼女が武闘派の元婦警であることを考慮すれば上々といってもいいだろう。
そう思い至った頃には、こめかみの痛みが気にならなくなる程度に溜飲も下がっていた。
多少の冷静さを取り戻してみればなぜあんなにも頭に血が上ってしまったのか不思議で、自嘲の失笑さえこぼしてしまいそうだ。


P「フッ……」

早苗「なっ!?」


あらら、こぼしてしまった…。

それに呼応するように何故か早苗さんの顔が赤くなっていく。
ひょっとしたら、無様に組み敷かれた自分のことを笑われたと勘違いしているかもしれない。

まぁいい。
もうどいてあげよう。


と、思ったのだが…。

137 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:18:39.16 ID:YYpuyXGO0
早苗「な、にニヤついてるのよ…? まさか、これで勝ったつもりじゃないでしょうね…っ?」

P「は? 何を…?」


この期に及んで勝ちとか負けとか、何を言い出すんだこの人は?
いつ俺とあんたが勝負を始めたというんだろうか?


早苗「なんとか言いなさいよ!?」


本当に意味が分からない。
もしかしてこれが体育会系というやつなのだろうか?
それとも脳筋?

なんだろう、なんかこう……



P「……」


早苗「だっ、だから! 黙ってるんじゃないわよ!?」


なんかこの人を見てると本当に……


早苗「ほら! 来なさいよ!? まだ勝負はついてないんだから!」






イライラする……



138 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:19:28.53 ID:YYpuyXGO0


たぶんこれはずっと前から感じていたこと。
でも自分の担当アイドルに対して抱いちゃいけない黒い感情。
だからずっと気付かないふりをしてた感情。


ムカつく…。


減らず口がムカつく。
根性論なところがムカつく。
気に食わないことがあるとへそを曲げるところがムカつく。
譲歩しないところがムカつく。
無茶言ってくるところがムカつく。
平気で暴力ふるってくるところがムカつく。


まだどうでもいいことを喚いている。
こっちは必死でこの嫌な感情を押し殺そうとしているのに、ずっとギャーギャー喚いている。
ムカつく。
一体何がしたいの?
ほんとにやめてほしい。
もうやめて。
その口閉じて。
たのむよ。
たのむ…。

…。

でないと。
でないと…。
俺本当に…。

やめて。

やめて。

やめて、やめて、やめて、やめて。




やめて…









早苗「ほら!殴ってみなさいよ!?」


P「……」イラッ

139 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:20:01.28 ID:YYpuyXGO0







   ぱぁあん!!









「あっ!」
「えっ?」





140 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:21:55.55 ID:YYpuyXGO0
口からひょっこり出たような短い言葉は、どっちがどっちの口から出たのか分からない。
ただ確実なのは、ぶったのは俺でぶたれたのは早苗ということだ。

頬を打ち振りぬいたまま硬直した右手を見つめていた視線を正面に戻すと、早苗は左頬をぶたれ顔の向きが変わったまま硬直していた。
その顔もゆっくりと正面にもどり魂の抜けたような彼女と目を合わせた。
早苗の顔には驚愕が貼りついていたが、たぶん俺もそうだろう。


早苗「な……」


いくら煽られたとはいえ、女性に手を上げるなどという禁忌を犯してしまった自己嫌悪が沸き起こる
一秒前―――――もし仮にそこで早苗が言った言葉が、殴ってみろと煽った張本人の早苗の言葉が、
『やればできるじゃないの』だとか『痛い』だとかいう言葉であったならば、俺は本当に自己嫌悪に
苛まれ今日のことをすべて平謝りし明日からもこれまでと同じように彼女の尻に敷かれながら、
それも已む無しとそれなりに上手くやれていたのではと思うが、まあそうではなかった。



ぽかんとした早苗の表情がみるみるうちに憤怒の色を帯びていき…。


早苗「なんてことするのよ!!!!」

早苗「女に手を上げるなんてどういうつもりなの!!!!!」


烈火の勢いで数秒前の自分の言葉と矛盾することを平気で言い放った。

141 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:22:51.01 ID:YYpuyXGO0
事情はどうあれ、コンテクストはどうあれ、社会通念上は女に手を上げた俺に激怒するというこの女の反応は普通なのだろう。

しかし常識がどうとかで全ての道理が通るならこの世に犯罪など存在しない。
犯罪の背景にだってきっとやむにやまれぬ事情だってあるのだ。



……あるんだって痛感した。


やっちまった俺だって悪いよ?
でもこの女だって無茶苦茶じゃねぇか!


ここに至っての早苗の矛盾は俺の罪悪感を綺麗さっぱり吹き飛ばし…。






   ぱしーん!!


早苗「あぅっ!?」






俺の胸の内の色を真っ黒く染めてしまった。

142 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:24:01.13 ID:YYpuyXGO0
P「はぁ、はぁ、はぁ……」


一度ならず二度までも女性をぶってしまった。
もう『つい』だなんていう言葉は使えない。
ほんの一瞬のことだったのに超えてはいけない『境界』を遥かに超えてしまったような感覚がある。

引き返せない…。

いや…この女に対してはもう引き返したくもない。
こんな女には付き合っていられない。
もうどうにでもなってしまえ…。



早苗「だっ、から…なにす」


  ぱしん!

早苗「くっ!?」


P「はぁ……はぁ……」

早苗「いいかげんに…っ」


  ぺしん!

早苗「んぁっ!?」




  ぱちん! ぱちん! ぺしん
  ぱしっ ぱちんっ! ぱしん!

早苗「んっ!? はぁ!? ちょ!? やっ!?」




P「ふぅ……ふぅ……」

143 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:25:11.52 ID:YYpuyXGO0


   ぱんっ! ぱしん ぱちん!
   ぺし! ぴしっ! ぺちん!

早苗「ぁっ、ぃっ、ぅあっ、いやっ、まっ、まっ……」


P「……」




   ぱしんっ! ぱちん ぱしっ!

早苗「…、……、……」プルプル


P「……」




大人しくなるまで、左右代わりばんこにビンタを続けてやった。

初めの2回のビンタ以外はほとんど手首のスナップだけのヌルイものである。
響く音はどれもノロい。言うなれば不発のビンタと言ってもいい。
ゆえに、すでに20発ほどをお見舞いしているが早苗の頬にはうっすらと赤くなっている程度の変化しかない。



P「なぁ…あんた…ふざけてるのか…?」

早苗「な、なにがy」


   ぱしん!

早苗「あぅっ」


P「何がって、わからないのかよ?」


   ぱちん!

早苗「ぃやっ」


P「俺はもういいって言ってんのに、グダグダ抜かしやがって」


   ぱしん

早苗「う…っ」

144 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:26:39.29 ID:YYpuyXGO0

P「挙句の果てにマウント取られても負けてないとか言うわ…」


   ぱちん!

早苗「んくっ」


P「殴れって言ってほんとに殴られたら逆切れするわ…」


   ぺちん

早苗「んぁ!」


P「意味わかんねーんだ、よっ!」


   ぴしゃっ!

早苗「んきゅっ」


P「おら! 負けてねーならほら! 抵抗して見せろ!? あぁ!?」


   ぱん! ぱん! ぱしん ぱちん!

早苗「ふぁっ、ゃっ、やめっ、ぁあ…っ!」




早苗「ちょ、ちょっと…待って…落ち着いて…」


はぁ~!?
落ち着いて、だぁ~!?
な~に上からモノ言ってんだこのアマ!?


P「待つかよ! おら! くらえ!」


   ぱちん ぱちんっ!

早苗「ぃっ!? あっ!?」


P「てめーは! 俺がやめてって言って! やめたことあんのかよ!?」


   ぱん! ぴちっ

早苗「ぁっ……」

145 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:28:07.49 ID:YYpuyXGO0

P「なにが、けがはさせない、だよ!?」


   ぱちん!

早苗「ぅ…っ」


P「頭から血でたんですけど!?」


   ぱちっ!

早苗「まっ!?」



P「はぁ、はぁ、はぁ………すぅ~~~~~はぁ~~~~~~」


一度大きく深呼吸して、早苗の顔を観察する。


早苗「ぅ…く……」ビクビク


いくら緩いビンタといえども、もう何度ぶったかわからない早苗の頬はついに腫れてきてしまった。とはいえ、明日のオフ一日ですっきり治ってしまう程度だろう。

痛みはそれほどでもないくせにうっすらと涙を溜め始めているのは、精神的なダメージを食らっているということだろう。
ふん、いい気味だ…。
見てみろよ、目にいつもの力強さがねぇぞ。
ははは……手段はちょっとアレだったがあの早苗の心を折ってやった…。
その事実に腹の下の方からどす黒い熱が体中に広がっていく。

あぁ…最悪だ…。
なんでこんなに……。

最悪だ……。
とにかく最悪だ……。



P「さいあくだ……」

早苗「……?」ビクッ


最悪だ。
だが、まだ止められない。
本当に最悪だ…。
俺は……。


P「すぅ~~はぁ~~」



第二ラウンドだ。

146 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:31:09.73 ID:YYpuyXGO0
P「おい!」


  ぱん!

早苗「ひっ!?」


P「おい!こら!」


  ぱち! ぱちん!

早苗「いやぁっ、もういやぁ!」


P「いやじゃ、ねぇよ! おら! 聞いてるのか!?」


  ぱしっ! ぴちっ ぱすっ!

早苗「ぅ! はくっ!? き、聞いてる!」


P「んだよ、聞こえてるんだったらさっさと言えや!」


  ぱちんっ!

早苗「んあぅ!」


P「いっつもよ~、死ぬほどヘッドロックかましやがってよ~、なんなんだよ!?」

早苗「ぇえっ? は、なに? なにが」


  ぱぁん!

早苗「ぅっ!?」


P「わかんねぇのかよ!? 年少組の頭撫でただけでセクハラとか言って、暴力ふるいやがって! どういう物の見方したらそうなんだよ!?」


  ぴしゃん!

早苗「んぁっ!」


P「ことあるごとに暴力…。そんなに人に暴力ふるうのが好きか!? そんなに俺が痛がるのが面白いか!?」

早苗「ぇ…っ? ぃや!? ちがっ!」

P「あぁん!? 何が違うんだよ!? 俺がさっき頭抉られてるときもニヤつきながらやってたんだろうが!?」


  ぱちっ!

早苗「ぅぁっ……でっ、でも違うの……っ」


P「…ほんとに意味わかんねぇ…」



と、そこでようやく唐突にこの女の俺への暴力の理由の答えが分かった。

147 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:32:46.44 ID:YYpuyXGO0


…実を言うともうずっと前から気付いていたような気もする。
ただ俺がそれを認めたくなかっただけだ…。

しかしそう考えられればこの人の行動にも筋が通る…。


どうにかこうにかやっていけばいつかは認めてもらえるだろうって…そんな考えは甘かったんだな…。
そうやって先延ばしし続けた結果がこれじゃ…。
ははは、また最悪だよ…。





P「……そうか…嫌いなのか…そうか…ははは…そういうことだったのか……」

早苗「ぇ…な、なに…?」










P「……俺のことが嫌いなのか…」

早苗「…………ぇ?」







P「あぁ…そうだよな……俺みたいな使えないプロデューサーは嫌だから…だから早く辞めさせるために…ははは…そうか…ははは……」

早苗「え…嘘でしょ? じょ、冗談よね…?」


148 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:33:58.98 ID:YYpuyXGO0


図星を突かれてびっくりしました?
酷い顔してますよ…ははは、ケッサクだ……。
でもほんとは当てちゃ駄目だったんですよね…?
そこは…ごめんなさい…。
しかも俺はとんでもないピエロだったわけだ…。


P「ははは…ごめんなさい…早苗さん…あなたの意図に気付けなくて…ずるずると担当にしがみついて……」

早苗「や、やめて…冗談でもそんなこと言わないで……」


いつかは認めてもらうんだと必死にやってきたのはすべて無駄だったわけだ。
無駄どころかなかなか辞めない俺に業を煮やして折檻を強めていく始末。
ははは…おれの仕事ってなんだったんだろう……。

ついさっきまでの怒りが嘘のように消え、途轍もない脱力感が襲ってきた。
そうだよな…。
あんだけ痛めつけられてなんで気付けなかったんだろう…。
きっと面と向かって「あんた嫌い」だなんて言ったら角が立つから、ああやって担当変えてほしいっていうサインを必死に出してくれてたのに…。


早苗「うそ…そんな…嫌ぁ……あたしのやってきたことって…そんなふうに…?」ブルブル

P「ごめんなさい…ごめんなさい…もう明日からは大丈夫ですから…俺、もう消えますから……」


早苗「いや…嫌、嫌イヤっ!」


早苗「Pくん! お、お願いよ! あたしの話を聞いて!」


すべてがクリアになった今、何の話をしようというのだろうか?


早苗「あたしが…Pくんを嫌いだなんて…そんなの絶対ないよ!」

P「……いえ…もういいんですって……」



早苗「…きなの……」

P「…?」





早苗「……すきなの!!!」

P「…え?」




目に限界まで溜まった涙をついに零しながら彼女が発したのは思いもよらない言葉だった。

149 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:35:27.52 ID:YYpuyXGO0
早苗「あたしは…Pくんが好きなの! いつもPくんにちょっかい出してたのは意識してもらいたかったからなの…っ! 
 でもあたしガサツで短気で…いっつも空回りして……」

早苗「これまでたくさん痛いことしちゃったけど……ごめん…ごめんねぇ…っ」

早苗「Pくんにこれまでしてきたこと…もう許してもらえないかもしれないけど……。
 でも…でもお願いよぉ…私がキミのこと嫌いだなんて…そんな風にだけは思わないでぇ……ぅぅぅぅ……」



い…意味がわからない…。
この人は何を言っているんだ…。

は?

真逆…?

意味がわからない…。





P「は……な、んで…意味が分からない……」

早苗「不器用なのに頑張ってくれるPくんが好き! こんなあたしにも優しいPくんが好き!」

P「え…?」


早苗「あたしの無茶に付き合ってくれるPくんが好き! わがままを聞いてくれるPくんが好き!」


早苗「飲みすぎないように注意してくれるPくんが好き! いつも見守ってくれているPくんが好き!」


早苗「お願い…信じてぇ……Pくんが好きなのぉ……」


早苗「Pくんのことが…嫌いだなんて思われるのは耐えられないよぉ……ぐすっ、うぅ…っ」




早苗の慟哭のような告白に頭が真っ白になる。
目がかすむ…息が苦しい…喉が粘つく…。

150 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:37:20.97 ID:YYpuyXGO0



P「じ、自分に都合の良いことばっかりですね…。思い通りになる男ならだれでもいいんじゃないですか…?」


俺がひねり出した言葉は存外酷い。


早苗「ぁ……そ、そうよね…。でも、もういいの。もうわがまま言わない…無茶しない…暴力もふるわない…。
 そ、それにね? あたしみたいのと付き合ってだなんて…い、言わない…よ? め、めんどくさいこと、なんて…ないよ?」


早苗「でも…お願い…。あ、あたしを…Pくんの傍に置いて…? 傍にいさせてくれるだけでいいの……。
 あたしから…は、離れていかないで…。他のヤツらみたいに…み、み、見捨てないで…?」

P「ふ、ふざけるなよ……っ!そんなの…そんなの…っ!! それに…っ!」


ジンジンとうずいている両手と彼女の腫れた両頬を交互に見る。

もう、とっくに超えちゃいけないラインを越えてしまっている。



早苗「た、叩いたことは気にしなくていいよ…? あたし、これまでもっと酷いことしてきたもんね? 
 な…なんならもっと叩いていいよ?」



早苗「気の済むまで…いいよ…?」クイッ




唇はだけじゃなく肩まで震わせているくせに、ぶちやすいように顎を差し出しやがって…。
こんなの見え透いた強がりだ……。

こんなの…。




P「……」スッ

早苗「んっ……」ブルブル



彼女の頬に触れると…腫れた頬は明らかに熱を持っていて、これからもっと腫れてくることが簡単に予想できた。

151 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:39:18.82 ID:YYpuyXGO0





あぁ…俺はなんてことを……。


俺がもっとこの人のことをちゃんと見ていればこんなことには……。






早苗の上から下りそのまま床に膝と手を着く。
とてもじゃないがしばらく立てそうにない。





P「ごめんなさい…ごめんなさい…俺はなんて酷いことを…ごめんなさい…」




視界はぐちゃぐちゃ。
頭の中もぐちゃぐちゃ。




その頭が優しい何かに包まれる。



早苗「ん~ん…。Pくんは何も悪くないよ…? 素直になれなかった馬鹿なあたしが悪いの…おねぇさんなのにほんとバカだよね……」




彼女の腕と胸がこんなに温かかったことを俺はこのとき初めて気付いた。

152 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:40:09.01 ID:YYpuyXGO0
片桐早苗 編 終わり

155 : ◆ao.kz0hS/Q 2016/06/21(火) 22:55:35.37 ID:YYpuyXGO0
これからはその後のお話しに入ろうと思うのですが、誰からにしましょうか?
尚、完全にR18指定になる見込みです。


安価↓1


157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/06/21(火) 22:57:40.19 ID:leqtqPL5o
早苗

モバP「痛くなければ覚えませぬ」【後編】



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元スレ: モバP「痛くなければ覚えませぬ」
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