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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/12/23(水) 21:14:06.45 ID:
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高校1年の冬に起こった出来事は丸1年経った今でも色褪せることなく、俺の中で思い出となり鮮やかに思い返すことができる。
麦端まつりの花形としてこの小さな麦端町で舞っていたことは、もう過ぎ去った過去のことでしかないのに、同じ時期に交際関係にあった石動乃絵の声や、仕草や、あどけない表情はそう簡単に忘れられそうになかった。
最終的にというか、最初から俺は湯浅比呂美のことが好きで、にも関わらず乃絵を巻き込んだというか、巻き込まれたことについては申し訳なく思っているけれど、乃絵の存在が俺と周りの人間関係を大きく動かす結果に繋がっていることは紛れもない事実だった。
石動乃絵。
かなりの変わり者で不思議な少女。
人付き合いが下手くそで、可愛がっていた鶏が縁で、俺は彼女と親しくなった。
なし崩し的に交際関係に発展し、破局し、お互いに傷ついて、今は距離を置いている。
たまに校内で見かけると目で追ってしまう。
また根も葉もない噂を立てられていないか。
また木に登って下りれなくなっていないか。
そんな俺の心配は杞憂であり、乃絵はあれから友達を作って楽しくやっているようだ。
そのことに安堵すると同時に一抹の寂しさを覚える自分の過保護さの理由を考えてみる。
考えるまでもない。
俺は石動乃絵のことが、好きだった。
あの時あの瞬間、乃絵のことが好きだった。
「また女の子のこと考えてる」
そのことは比呂美にはお見通しらしく、すぐに勘づいて、こうして半目で睨まれる。