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◆cgcCmk1QIM 20/01/04(土)10:35:58 ID:
wsm
すすり泣く声を聞いたような気がして私……白菊ほたるが目を覚ますと、そこは霧の中でした。
自分の足元もよく見通せないような濃い霧の中で古びた旅行鞄を抱えて、これまた古いベンチに腰掛けているのです。
まるで頭の中にも霧がかかっているみたいに、頭がぼんやりしていました。
ここは、どこだったでしょう。
私はここで、何をしていたのだったでしょう。
ちょっと首をすくめるようにして辺りを伺うと、かろうじてベンチのすぐ傍に時刻表を張り付けた標識柱が立っていることが解りました。
ベンチの前にぼんやり見える黒い帯は、多分道路ではないでしょうか。
くすん、くすんとすすり泣く声は、続いています。
ぼんやり視線を向けると、泣いているのは同じベンチ、私の隣に座った女の子。
うつむいて、丸まって、ふるえています。
顔は伏せていて、濃い霧に阻まれて……その子が誰だかは解りません。
だけど、その背中には見覚えがありました。
たくさん見てきた背中でした。
それは、夢を砕かれて泣く女の子の背中でした。