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以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/11/12(土) 01:37:51.59 ID:
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今日のバイトの上がりまであと5分。今出て行ったお客さんが最後。商品の詰まった棚の並ぶ、決して広くはない店内が、途端にもの寂しく感じられる。
普通だったら早く時間が過ぎればいいと思うのだけれど、今日は、そうじゃなかった。
今日もというべきか。
あの常連さんが来ていないのだ。
ある時期から、足が遠のいているのは、薄々察していた。
宅配での注文は増えていたから、余計にいぶかしんだ。
アイドルだったと知って、媒体を通じて彼女の声に姿に接するようになって、事情と符号した。
僕のバイトしているこの店の紅茶は、高い――紅茶に限った話ではないけれど。
とにかくこの、手のひら大の缶ひとつで、僕の2時間分の時給に相当する。
それを来る人来る人、話のついでのように幾つも買ってゆく。
定番と、お気に入りと、新作があったらとりあえずそれもという感覚で。
紅茶ひとつとっても、住む次元の違いが如実に現れるんだなと痛感した。
そう考えたら、僕みたいな学生バイトがおいそれと声をかけてよい相手じゃないのは明らかだった。
僕自身は客単価の高い店でバイトしてるだけで、大層な家柄なんかないし。
わきまえているつもりだった。
問題は――向こうから、話しかけてきたこと。