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◆cgcCmk1QIM 20/05/11(月)17:33:31 ID:
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○プロローグ・二月末日/松尾千鶴は夢を見る
『千鶴。おい、聞いているのか千鶴』
忘れられない夢ってありますか。
繰り返し見る夢ってありますか。
将来の希望とか幼いころの目標とかじゃなくて、夜見る夢の話です。
朝目覚めたら途端に不確かになって消えちゃう普通の夢じゃなく、見ればすぐにあの夢だと解るような。
起きた後も印象深く覚えていて、ちくちくと古い思い出を刺激するような夢が、皆さんにもありますか?
私には、そういう夢があるのです。
『千鶴、おい、聞いているのか千鶴』
幕開けはいつも、私の背中に飛んでくるそんな言葉。
そう、それはあのころの夢。
まだ私が、松尾千鶴が福岡でアイドルをしていたころの夢。
場面はいつも決まってライブバトルの前。
これから福岡担当のエリアボスとして東京の事務所のアイドルたちと対戦する、その直前。
あれは私にとって思い出深いライブバトルでしたから、繰り返しあの日を夢に見るのも、仕方がないことかも知れません。
――思い返すに、私はたぶん歴代で一番態度の悪いエリアボスだったでしょう。
『私と対決したいの? まあいいけど』
態度からしてやる気なし。
『ふぅん。楽しかったの? それなら、良かったですね。さよなら』
『はい、おめでとうございます。それの何が不満なの?』
なんて、冷たい態度で相手の勝利を茶化したりなんかして。