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キョン「まるで少女漫画の男の子みたいだな」佐々木「それはキミだろう?」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1633175739/

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/10/02(土) 20:55:39.42 ID:0P228qqwO
「佐々木さん、これ貸してあげるー!」

中学時代に佐々木という友人が居て、同じ塾で席を並べていたこともあり、俺が塾で使う参考書などを自宅に忘れた際などはそれを取りに家に立ち寄ることもあったのだが、頑なに玄関より先に踏み入ろうとはしなかった。

「これは……?」
「すっごく面白いから読んでみて!」

そんな佐々木が今日も今日とて玄関で靴も脱がずに置物と化しているとすかさず妹が無遠慮に何やら押しつけた。愛読の少女漫画だ。

「ありがとう。大事に読ませて貰います」
「うん! 読み終わったら感想きかせてー」

何がそんなに嬉しいのか朗らかな妹に釣られたのか佐々木も珍しくシニカルでない微笑みを浮かべていて、兄として妹によくやったと褒めざるを得ない状況が生み出されていた。

「悪いな、うちの妹が」
「悪くもないのに謝罪するのは感心しないな。むしろあんなにも可愛らしい妹さんをキミはもっと誇るべきだ。それともキョンは身内を褒めるのが恥ずかしいお年頃なのかな?」

妹が可愛らしいことは俺が誰よりも熟知しているしそれを恥だなんて思ったことはない。
では何故、わざわざ謙遜したのかと言うと。

「なるほど。知り合いに妹さんを褒めて貰って悦に浸りたかったわけか。恐れ入るよ」

やれやれと首を振りながら先程の花咲くような微笑みとは似ても似つかぬシニカルな笑みを浮かべながら、佐々木はくつくつと笑った。




[ 2021/10/03 06:55 ] その他 | TB(0) | CM(0)

キョン「やっぱり佐々木は天才だよ」佐々木「キミには負けるよ、キョン」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1628780702/

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/08/13(金) 00:05:02.00 ID:ibjZ0HLOO
「なあ、佐々木」
「なんだい、キョン」

隣の席の女子に気安く話しかけられる幸運を中学時代の俺が正しく理解していたかどうかは、進学先の北高の席順の都合により今となっては定かではないとしか言えないのだが、それでも後ろの席に鎮座する涼宮ハルヒに話しかけるよりはよっぽどハードルが低かったように記憶している。

「どうして髪を伸ばさないんだ?」

そんな俺であるが女子の髪型についてあれこれ詮索することに忌避感は覚えていなかったようで、ズケズケと図々しく年中ミディアムボブの佐々木に対してそんなことを訊ねた。

すると佐々木は困ったように眉尻を下げて。

「キョン。僕はキミとそれなりに親しいつもりだし、同じようにキミが思ってくれているからこそ、そんな風に軽々しく女の子の髪型について言及したのだということはむしろ喜ばしく思うけれど、それでも、もう少し言葉を選んで欲しかったと思わざるを得ないよ」

中学の頃の俺の語彙力など今にも増して壊滅的なことは言うまでもなく、だから言葉を選んで欲しいと言われてもそもそも選択肢すらないのだから選びようがないとしか言えん。




[ 2021/08/14 06:55 ] その他 | TB(0) | CM(0)

長門有希「離さない」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1626006703/

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/07/11(日) 21:31:43.75 ID:0j9uV3lDO
昼休みを告げる鐘が鳴り、いつもならば谷口や国木田と昼食を共にするところではあるが、その日早弁を済ませていた俺は教室から出て真っ直ぐに元文芸部室へと向かった。

どうして普段と違う行動をしたのかについて明確な理由はなく、あえて説明するならば毎日毎日男友達と弁当をつつきあっている自分を客観視した際に絶望的なみじめさを覚えたからである。

別に男同士の友情を軽視しているわけではないが、ほどほどにしておかないとこの短い高校生活を棒に振りかねないと危惧していた。

幸いなことに狭い交友関係の中でも女子の知り合いが俺には居て、中でもハードルが高い先輩である朝比奈さんや鶴屋さんの教室に向かうことは身の程知らずもいいところなので、だからこそ元文芸部員の少女を訪ねようと、そう思い至ったわけである。

「長門、入るぞ」
「どうぞ」

常日頃の慣習に則りノックしてから声をかけると、中から長門の声が返ってきて、それだけで一段階テンションが上がったことを自覚しつつ、俺は元文芸部室の扉を開けた。




[ 2021/07/12 16:55 ] その他 | TB(0) | CM(0)

キョン「なんのつもりだ?」ハルヒ「……行かないで」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1625664951/

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/07/07(水) 22:35:51.84 ID:rcCzl30NO
世間一般のイメージとは裏腹に、涼宮ハルヒは常時"ハレ晴レユカイ"というわけではなく、出会った当初などはいつも不機嫌そうな雰囲気を醸していて、例えるならば"ジメジメ不快"とでも表現するのが適切であった。

「蒸し暑いわね……」

季節は梅雨真っ盛り。
朝から晩まで曇天で、雨は振ったりやんだりを繰り返し、気温の上昇に伴い不快指数は止まることを知らず鰻登りであると言えよう。

「私のことも煽ぎなさいよ」
「嫌だね」

パタパタと下敷きを団扇代わりにして少しでも肌の表面温度を下げようと風を送り続ける俺に向かって、どこかの王侯貴族が如く、扇げと催促するハルヒをあしらいながら、この団扇で扇ぐという行為は得られる風とそのために消費する労力は果たして釣り合いが取れているのだろうかと考えを巡らせていると。

「だから人に煽がせる意味があるんでしょ」

などと、身も蓋もないことを抜かすハルヒにちらと視線を送ると、心底うんざりしたような表情と、汗で頬に張り付く髪の毛がなんだか風情があるような気がして、そこに一定の価値を見出した俺はその対価として下敷きで煽いでやった。やれやれ。我ながら甘いな。

「涼しいか?」
「全然」

そうかいと嘆息しつつハルヒの頬に張り付く髪の毛を無性に取ってやりたくなる衝動を堪えながら、俺はなんとなしに既視感を覚えて記憶を探り、中学時代の一幕を思い出した。




佐々木「これがシュタインズ・ゲートの選択だよ」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1616932644/

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/03/28(日) 20:57:24.15 ID:gYxSR/SRO
もしも佐々木にファンが存在するのだとしたら、その持ち前の聡明さや常識に則った言動、そして如何なる時でも発揮される沈着冷静ぶりを気に入ったのだろうということは想像に難くないが、とはいえ、女子の癖に自分のことを僕と言う佐々木が果たして常識に則った言動をしているかと問われれば、疑問が生じるのもまた事実である。

たしかに中学時代、それなりに親しくしていた俺の目から見ても佐々木は常識人のように映ったが、それはあくまでも主観的な話であり、客観的に見れば女子が男子に対して男のように振る舞い、そしてそいつに男友達と同じように接する俺の態度は甚だ奇異に映っていたに違いない。

しかしながらこちらとしては今更友人に対する態度を変えるつもりはなく、どれだけそれが周りから見て不自然な光景だろうと構いやしないのさと、お互い歯牙にも掛けずに俺と佐々木は帰り道を共にしていた。




[ 2021/03/29 06:55 ] その他 | TB(0) | CM(2)

キョン「よう」長門有希「……やっほー」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1612793692/

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/02/08(月) 23:14:52.32 ID:QpWAPgXRO
涼宮ハルヒが物憂げな表情を浮かべている時は大抵何かしらの面倒ごとを引き起こすと相場は決まっているものだが、ならば反対にやたらと上機嫌な場合はより一層の危機感を抱かざるを得なくなるなんてことは、今更忠告するまでもないことだろう。

とはいえ、そうした経験則に基づいてこちらが身構えられるという点においては、わかりやすいことはそう悪いことではないのかも知れない。

前置きが長くなってしまったが今から俺が語る話題に涼宮ハルヒは一切登場せず、まるで話のダシに使ってしまったようで僅かながらも申し訳なさを覚えるが、ダシとしてこれ以上ないくらい良い働きをしてくれた団長様に感謝しつつ、我がSOS団の無口キャラについて語らせて貰おうと思う。

それが誰か、などと今更説明は要るまい。

静かなる元文芸部員、長門有希の秘話だ。




[ 2021/02/09 11:55 ] その他 | TB(0) | CM(0)

佐々木「クリスマスだね」キョン「そうだな」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1608815333/

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/12/24(木) 22:08:53.43 ID:MFd4PAJFO
「そろそろクリスマスだな」
「おや? 君がクリスマスの話題を出すとは思わなかった。どういう風の吹き回しだい?」

どういう風の吹き回しも何も、近頃めっきり冷え込んだ原因であるシベリア寒気団に俺のほうが文句を言いたいくらいだ。

「サンタクロースをいつまで信じていたかなんてそんな他愛もない世間話にもならないくらいのどうでもいい話がしたくてたまらないという顔をしているように見えるよ」

どんな顔だそれは。やれやれと口にするのも億劫である。俺は顔面を外気に晒さないようマフラーをずり上げて、ひとこと尋ねた。

「そう言うお前はいつまで信じてたんだ?」
「無論、今でも信じているとも」

正気か? いや、さすがに冗談だろう。

「世界中の子供たちにプレゼントを配ってまわるご老人が本当に存在するかについてはともかく、それを居ないと声高に主張する必要性を僕は感じない。実在しないとは限らないし、実在したほうが都合が良いからね」

それは果たして誰の都合だろうか。
少なくとも、俺にとっては困る問題だ。
もしもクリスマスの日にだけ働く赤服じいさんが実在するなら、俺だけがその恩恵に預かれていないことになってしまうではないか。




[ 2020/12/25 11:55 ] その他 | TB(0) | CM(0)

キョン「9マイルは遠すぎる」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1607236690/

1 : ◆copBIXhjP6 2020/12/06(日) 15:38:11.38 ID:/JAVxUrS0
それはどんよりとした雲が立ち込め、降りしきる雨が今にも雪になりそうな寒い冬の日。
定期テストが午前中に終わり、谷口と虚しく慰め合いながら迎えた放課後。
普段のように旧校舎の片隅へ特に目的もなくやって来た俺が、普段のように古泉の玉将に詰めろを掛けた瞬間だった。

ハルヒ「キョン、ちょっと電器屋行ってきて」

キョン「.........は?」

虚を突かれて将棋盤から顔を上げると、そこに広がっていたのは普段通りの部室。
長門は定位置のパイプ椅子に座って人間を撲殺できそうな分厚いハードカバーに目を落としているし、
お茶くみを終えたメイド服の天使は微笑みを浮かべながら何か編み物をしている。朝比奈さん、今日も変わらず素敵です。
悪びれもせず人に指図するこの女――――涼宮ハルヒについても、いつもと変わった様子はなかった。

ハルヒ「だから電器屋に行ってこいって言ってるのよ」

キョン「いや、唐突すぎて訳がわからないぞ。どこへ?どうして?」

ハルヒ「映画でCM打ってもらったところからこの前ストーブを貰ってきたでしょ?えーっと......」

キョン「大森電器のことか?」

ハルヒ「そうそう。そのストーブの調子が最近悪いのよねぇ」ガンガン

誰かさんがその熱源を独り占めするせいで俺たち廊下側はその恩恵に全くあずかれていないわけだが、それは一旦置いておこう。
曲がりなりにも貰い物であるストーブをハルヒが叩きつけるが、確かに動作していないようだ。

ハルヒ「だから、そのなんちゃら電器で直してもらってきなさい」

キョン「なんで俺が?!お前しか使ってないんだからお前が行けばいいだろ」

キョン「第一この雨の中そんなもん持ったら傘がさせねーだろうが」

ハルヒ「却下。雑用としての責務はちゃんと果たしなさいよ」

キョン「あそこじゃないとダメなのか?そんなに遠出しなくても、修理してくれる店くらい近場にもあるぜ」

ハルヒ「だーめ。スポンサーとは良好な関係を築いておかなくちゃね」

キョン「はぁ」




キョン「少し席を外すぞ」涼宮ハルヒ「あんたは私を楽しませてくれないの?」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1606124940/

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/23(月) 18:49:00.81 ID:A+4cVPJUO
「お前はいつも憂鬱そうだな」
「ほっといてよ」

あれはまだ俺が涼宮ハルヒと知り合って間もなかった頃の話だ。
振り返るとそこにいたどえらい美人はいつもしかめ面で現状を憂いているように見え、それが俺には勿体ないと思えてならなかった。

「少しは笑ってみたらどうだ? せっかくの整った顔立ちが台無しだぜ」
「ふん。意味もなくケラケラ笑うほど私は暇じゃないし頭からっぽでもないのよ」

恐らくこの時、ハルヒはどうすればこの退屈な世の中を変えられるかを暗中模索していたのだろう。それにしても愛想のない女だ。

「いいか、涼宮。頭からっぽの方が夢や希望を詰め込めるという利点があってだな……」
「じゃあ、頭からっぽのあんたの頭蓋骨の中にはどんな夢や希望が詰まってるわけ?」
「それは……」
「ふん。どうせ、いやらしいことでいっぱいに決まってるわ。わざわざ外科手術するまでもなく丸わかりよ。手の施しようもないわ」

人間とは理性ある獣である。
高度な知性によって律している本能の中には当然、三大欲求のひとつである『性欲』も含まれており、つまり脳内の3分の1がピンク色だとしても何らおかしな話ではないわけで。

「うるさいわね。ロボトミー手術でそのピンク色の部分を切除すればいいじゃないの」
「恐ろしいことを言うなよ」
「晴れて改造人間になれたら少しは見直してあげるわ。だってその方が断然、今の平凡なあんたよりも夢や希望があるもの」

このように涼宮ハルヒとの会話は果てしなく不毛であり、到底建設的なものとは言えなかったが、それでもわりと俺は楽しんでいた。




佐々木「君は優しいね」キョン「炭治郎には敵わないさ」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1604228213/

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/01(日) 19:56:53.71 ID:eKWbNwFOO
「やぁ、キョン」

過ごしやすい秋の休日は惰眠を貪るのに最適な環境であるが、そんな日に限って来客が訪れるのがこの世の常であり、その日、寝ぼけ眼を擦りながら呼鈴に応じて玄関の扉を開けた俺は、清々しい秋晴れを背景に佇む友の姿に違和感を覚えた。

「なんだ、佐々木か」
「なんだとは随分なご挨拶だね」
「気持ちよく寝ているところを起こされたら誰だって文句のひとつくらい口にするさ」
「やれやれ。どうせそんなことだろうとは思っていたが、顔ぐらい洗ってから出迎えて欲しかったものだよ。あと、その寝癖もね」

いつものように男みたいな口調で俺に接する佐々木であったが、その装いは近頃めっきり涼しくなってきた気候に合わせて、柔らかなアイボリーの色合いの少し丈の長いワンピースの上に、茶色いカシミヤのカーディガンを羽織っていて、なんだか大人びて見えた。

「とりあえず、上がれよ」
「おっと。その前に、今日の僕を見て何か思うところはないかい? よく観察したまえ」

立ち話もなんだから家に上がるように促すと待ったがかかった。たしかに違和感はあった。
大人びた私服は常日頃の落ち着いた佐々木のイメージとマッチしている。では、なんだ。

「うーむ……さっぱりわからん」
「まったく、君は本当に女泣かせだね」

そう言う佐々木であったがさほど傷ついた様子が見受けられなかったので別に聞き流しても良かったのだが、一応、こう返しておく。

「前髪上げて丸見えのおでこが、見ていてとても寒そうだ。風邪を引いちまうぜ?」

すると佐々木は上げた前髪の髪留めを弄りつつ、くつくつと喉の奥を鳴らして嬉しそうに笑った。やれやれ。嬉しそうでなによりだ。




[ 2020/11/01 20:55 ] その他 | TB(0) | CM(0)
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