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【艦これ】大井と一夜を過ごすだけの話

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1 : ◆yufVJNsZ3s 2020/08/15(土) 10:52:14.03 ID:NLZLtzJb0

 現在時刻は二三時ちょうど。とっぷりとした夜の闇を一瞬だけ光が照らす。弾けた光の花は、ぱらぱらと音を立て、海へと消えていった。

 スーパーで買ってきたちゃちな代物だ。大袋に入った、2000円程度の。それが十ほどと数だけはたんまりとある。一晩遊んでもなくなりゃしないのに、駆逐や軽巡のガキどもは、我先にと両手で握ってダンスを踊っている。
 楽しそうに笑いながら手を取り合って、次へ、また次へと蝋燭の火へ。
 別に珍しいものでもないだろうに。これが、五尺玉が打ちあがるとでも言うのなら俺だってこぞって参加するが、今更手持ち式の花火ではしゃぐ年齢でもない。

 だが、それでも。たとえ安い、チンケな花火だとて、それで喜んでもらえるならば用意した甲斐があったというものか。
 一度戯れに初めてみたのが大層ウケがよかったものだから、それくらいでご機嫌がとれるのならと、気づけば毎年の恒例行事になってしまっている。特に駆逐のガキどもにとっては、こうやって夜遅くまで遊ぶことそのものが特別な意味合いを持つらしい。なんとも幸せなことだ。






[ 2020/08/15 13:25 ] 艦これSS | TB(0) | CM(2)

【艦これ】漣と故郷に行くだけの話

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1 : ◆yufVJNsZ3s 2020/08/12(水) 23:33:22.85 ID:NLnJB+H60
 駅を降りてレンタカーを借りた。三十分ほど走らせれば街並みは次第に郊外の風景へと変わり、やがて古い軒が目立つとともに田畑が混じる。細い畦が目立つ中を一本貫く国道は、ガードレールもところどころにしかない片道一車線。それは連峰の鮮やかな緑へと向かっている。
 水田の稲が青々と視界の端に過る。そう言えば街中でコイン精米機をいくつも見たな、と俺は今更ながらに思った。

「お米が名産、っていうには新潟とか北海道に差をつけられちゃった感じはしますけど、昔はもっと、いまよりも盛んだったみたいです。ただ、街のほうに品種改良センターがあるのと、農業機械のメーカーの工場も少し遠くにあって」

 漣は水田の、青々と伸びる盛稲を見ながら言う。

「今から入るのは赤根山っていうんですけど、この辺り一帯は味ヶ淵連峰って大きなくくりの中にあって、こう……山がそのまま海になる、って言ったらわかりますかね? 平野部が少ないんです。
 山があって、木があって、崖があって、んで、海がずどーん! って」






[ 2020/08/14 16:55 ] 艦これSS | TB(0) | CM(0)

【艦これ】19とアイスを食べるだけの話

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1 : ◆yufVJNsZ3s 2020/08/11(火) 23:21:36.02 ID:AVuudPRF0
 雨降りは嫌だ。湿度が高いのも嫌だ。肌にまとわりつくような暑さは輪をかけて嫌だ。
 六月、七月と不快指数は極大で、梅雨明けが報じられたちょうど八月一日、俺は執務室の机に突っ伏して呻いていた。

 じりじりと肌を焼く陽の光が嫌だ。

 ああ、人間はなんて我儘な生き物なのだろう。あれだけ雨よ降るな、さっさと晴れろと請うていたのに、いざ日差しが降り注げばそれさえもまた嫌になる。
 遮光をすれば籠った空気で気分が悪くなるし、調子の悪いクーラーは三十分ごとに理由もわからず作動を止める。なんともまぁうまくいかないことか。修理の依頼はしたものの、この時期はやはり電気屋も繁忙期、即座に対応とはならない。そもそも泊地の備品であるがゆえに、申請してから承認が降りるまでがまたとにかく長い。






[ 2020/08/12 09:55 ] 艦これSS | TB(0) | CM(0)

【デレマス】夢見りあむの、尊さについて。

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1 : ◆yufVJNsZ3s 2020/02/10(月) 00:36:57.22 ID:CDwt0mRk0

 隅にひびの入ったテレビでは、「アナと雪の女王」の再放送が映し出されている。見たことはなかったけれど、主題歌くらいは聞いたことがあった。「アナ雪2」の公開を間近に控え、最近、街頭でもよく耳にする。
 ぼくはなにをするでもなしに、ただただ再放送を眺めていた。見ていたんじゃない。ただぼんやりと、何世代も前の薄型テレビの画面に目をやっていた。
 ソファは経年劣化でスプリングが弱っている。座っていると、そのうちずるずる落ちていってしまって、殆ど座面がぼくの背もたれみたいになる。あまりにもすることがないぼくは、けれど、位置の修正すら億劫で、そのまま息をつく。

「ねぇー、Pサマー」

「なんだ?」

 ぼくのマネジメントをしてくれているそのひとは、部屋の中だと言うのに薄汚れたコートを羽織ってデスクへ向かっていた。かたわらにはアイコス。画面を睨みつけているけれど、手は動いていない。

「ありのままの自分になったら、なんにも怖くないもんなの?」

「……」






R-18【艦これ】大井「愛の天秤」 

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2 : ◆yufVJNsZ3s 2018/11/10(土) 01:11:09.53 ID:WBgct1LS0

 確かに、キスをせがんだのは私からだった。

 しかし、舌を絡めてきたのは彼からだ。

 だから。私はそう繋ぐ。「だから」私は負けていない。

 惚れたほうの負け、だなんて使い古された文句には生来懐疑的だった。恋愛というのはそんな対立構造や支配関係とは無縁のものだとずっと思っていたからだ。そして今、私は宗旨替えをしようとしている。
 否、余儀なくされている、と言ったほうが正しいのだろう。

 天秤の均衡を望むのは、単に負けるのが悔しいからではない。百注いだ愛に、一しか返ってこない「かもしれない」ことへの恐怖がそうさせるのだ。私はその理解を、口の中で混ざり合った唾液とともに嚥下する。

 ファーストキスは、少しだけ、コーンスープの味がした。





[ 2019/07/24 17:55 ] 艦これSS | TB(0) | CM(1)

【艦これ】大井「今晩寝かせるつもりはないわ」

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1 : ◆yufVJNsZ3s 2018/10/19(金) 01:11:54.97 ID:0J++fsfw0

 何事にも得手不得手というものは存在する。

 運動が得意な人間がいる一方で、勉強が得意な人間がいるように、個々のちからは千差万別。そしてそれは、決して単純に数値で測れる要素にのみ顕現するわけではない。
 たとえば私は感情を表情に出すことが不得意だ。そうである、らしい。そんな意識はなかったのだけれど、先日あの男に――訂正。「提督」に――言われて、私は一旦自らの歩みを止めた。

 秘書艦の仕事に愛嬌は不要だ。そして、これまで提督や他の艦娘たちとの間で、コミュニケーションに困ったことはない。姉妹仲よく滅多に喧嘩せず、海軍学校での後輩関係にある鹿島や香取は慕ってくれているし、至って順風満帆である。
 提督だって別段苦言を呈したわけではないのだ。あくまで雑談。日常のちょっとした一コマ。あんまり笑わないよな、とか、その程度のもの。

 悩む必要なんてない、はずだった。





[ 2019/07/24 09:55 ] 艦これSS | TB(0) | CM(2)

伊8「提督、ローションプレイをしましょう!」

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1 : ◆7UnYqOvxvE 2019/06/03(月) 01:56:12.38 ID:LzMqkbY70

「……」

 俺は額を抑えた。抑えずにはいられなかった。
 様々な言いたいことが瞬時に浮かんでは消え、消えてはまた浮かんでいく。万事において手順は最も重要だ。誤るわけにはいかない。

「同人誌か」

「はい!」

 自信満々な返事。

「このあいだのコミケか」

「提督違います、コミティアです」

 ……俺には違いはわからない。しかしその差は些末で、あくまで枝葉末節に過ぎない。適当な謝罪をして、続ける。

「あー、とりあえず聞くぞ。道具が必要じゃないのか?」

「通販で一揃えしました!」

「部屋は? まさか基地でとか言うなよ」

「ホテルの一室を予約してあります!」

「……いつ」

「四日後です! 木曜日ですね。研修で横須賀鎮首府に出張だとお聞きしましたので、私も非番を申請しました」






[ 2019/06/03 09:55 ] 艦これSS | TB(0) | CM(1)

【艦これ】これからこのことこれからのこと【漣】

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1 : ◆yufVJNsZ3s 2019/05/04(土) 21:54:17.53 ID:J8yp6zh90

 奇跡はない。
 運命はない。

 両手は神への祈りを捧げるためにあるのではない。

 不断の努力。
 練達の作為。

 作戦を成功に導くのは弛まぬ訓練によって作り上げられた自らの身体であって、一度たりとも姿を顕したことのない何者かの存在ではないのである。

 ……と、そんなことを常日頃から口を酸っぱくして言い続けていた甲斐があったのか、はたまたなかったのか、それこそ神のみぞ知るところだった。
 けれども俺は構わない。構いやしない。俺は別段、形無き名誉や名声、形有る徽章や飾緒などのために指揮を振るったわけではないのだ。

 それが正義のためと大声で言えたのならばどれほど格好がつくだろうか。俺は俗物ではなかったが、傑物でもなかった。自らに任された仕事を十全にこなした。そして、こなした分だけ報われた。当たり前のことだ。なんでもない当たり前とは実に素晴らしい。






[ 2019/05/05 13:25 ] 艦これSS | TB(0) | CM(0)

【艦これ】大井「禁煙」

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1 : ◆yufVJNsZ3s 2019/02/14(木) 23:29:51.35 ID:n+jCSGlV0

 煙草をやめてからというもの、よく蜜柑を食べるようになった。

 喫煙は艦娘の嗜みだ。誰も彼もがポケットに箱を押し込んで、紫煙を燻らす。
 しかし、ご時世かな、禁煙の波は我が泊地にまで及んできた。人口に膾炙するためにはまずお上から――そんな、ある種化石的な考えが、いまだに霞が関には蔓延している。
 あちら側だけで済ませておけばよいものを、どうしてこんな寂れた漁村の泊地にまで適用するのか、心底理解ができなかった。きっと仲良くはなれないだろう。

 喫煙室設置を経て、そしてついに敷地内全面禁煙へと至る。最後まで反対していたのは響と那智だ。大淀も裏で暗躍していたのは知っている。が、結局大勢を変えられはしなかった。
 明石は棒付き飴をがりがり噛み砕きながら、今日も図面と向き合っている。川内の夜遊びは酷くなる一方だ。霧島は週末に必ず十冊以上の古本を買い貯めておくようになった。






[ 2019/02/15 17:55 ] 艦これSS | TB(0) | CM(0)

提督「あー……おっぱい触りてぇなぁ……」漣「……」

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1 : ◆yufVJNsZ3s 2018/11/22(木) 01:53:00.99 ID:Gy3FSYbf0

「……」

「……」

「……」

「……」

 漣がいるのは当然だった。なぜなら、俺が執務室の書棚の整理を頼んだからだ。

 彼女は俺を睨んでいた。それもまた当然だった。

 完全に無意識の呟きだったと弁明しても、果たしてどれだけの意味があるだろうか?

 名誉のために言っておくが、俺はロリコンではない。
 世の中には便利な言葉がある。「自分はナントカではない。ただ愛した相手がカントカだっただけだ」。そんなおためごかしの嘯きさえも俺には当てはまらないくらいに、性癖は至って普遍的だ。

 俺はロリコンではないし、俺は決してロリコンなどではないし、俺は断じてロリコンなんかではありえない。





[ 2018/11/22 17:55 ] 艦これSS | TB(0) | CM(0)
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