http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402834619/
2 :
◆yjyJD3LCYqLz 2014/06/15(日) 21:41:25.57 ID:
3mNd8tf+0
「祖父には後を継げと言われるけれど……私はもっと色々な経験をしたいんです」
「私頑張ります……協力お願いします……!」
そう肇に言われてから数日後、俺は藤原家に来ていた。「娘さんをプロデュースさせてください」そう両親に話を付けるためだ。
まるで結婚の挨拶みたいだな、とか考えている余裕もなく床に頭をこすりつけていた。先日、アイドルになると電話をもらった
ときには手放しで喜んだものだが、詳しく話を聞いてみると説得はまだだった。居ても立ってもいられず、俺はこうして頭を下げにきた。
「こちらこそ、よろしくお願いしますよ」
「あ、ありがとうございます。大切に預からせて頂きます」
俺は慌てて顔を上げた。自分の隣に座っている肇を見ると、意外と余裕のある表情で笑みを浮かべている。どうやら前もってOKを
もらっていたようだ。緊張の糸がゆっくりとほぐれていくのを感じながら。「改めてこれからよろしくな」と声を掛ける。
「はい! プロデューサさん、至らないことだらけでまだまだ不安ですが、精一杯頑張ります」
と肇は元気にそう言って柔らかい微笑みを向けてくれる。そうだ、俺はこの肇を知ってほしい。この柔らかな笑みを前にすると
今まで生きてきてよかった、と思える。他のアイドルにはきっとない。この子だけの個性を育てていこう。俺がそう、決意を
新たにしたところで、肇が思い出したように口を開く。
「そうだ、プロデューサさん。おじ……いえ、祖父が陶房にいると思います。せっかくですし、会って頂けませんか」
そんな肇の気軽なひと言で、俺の心が再び強く張り直されるのを感じた。