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【グリマス】萩原雪歩「ココロをつたえる場所」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1514721021/

1 : ◆kiHkJAZmtqg7 2017/12/31(日) 20:50:21.48 ID:bbgcA4Fi0
ミリマスの地の文ssです。LTP12の四人がメインのお話になってます。

2 : ◆kiHkJAZmtqg7 2017/12/31(日) 20:51:26.48 ID:bbgcA4Fi0
「765プロライブ劇場ラジオ、今日は『ココロがかえる場所』CD発売記念特集をお送りしました。お楽しみいただけましたか?」

「ロコたちのセンスとパッションが余すことなく詰め込まれたスペシャルな一枚になってますから、マストでチェックしてくださいね!」

「また、わたくし達が主役の公演も予定されていますわ。もちろん、新曲も盛りだくさんでお送りしますのよ? 詳細は劇場のホームページをご覧になってくださいな!」

「CDでちゃーんと予習して、桃子たちに会いに来てねっ! お兄ちゃんたちに会える日を、楽しみにしてまーす!」

「そ、それでは名残惜しいですが、そろそろお別れの時間ですぅ。お相手は、萩原雪歩と」

「二階堂千鶴と」

「ロコですっ!」

「……と、周防桃子でお送りしました。ばいばーい!」

 BGMがゆっくりとフェードアウトし、全員が一斉に息を吐いた。もっとも、その大きさや込められた感情はそれぞれに違っていたけれど。四人の中で最も小さく、事もなげに呼吸を整えた桃子が、一番に席を立った。

「お疲れ様でーす。桃子、先に荷物取ってきちゃうね」

「あ、それならロコも行きます!」

 二人の声と、ロコが少し慌ただしく席を立つ音が防音壁に囲まれたスタジオに独特な響きを残す。そんな様子を見て、千鶴は椅子に深く腰掛けなおした。

「それでは、わたくしはここに残っていますわ。何か連絡があるかもしれませんから。……雪歩ちゃんはどうしますの?」

「……えっ? あ、えっと、私も残りますぅ。二人とも、いってらっしゃい」

 少し反応が遅れた雪歩の声が、そそくさと出て行ってしまった二人に届いているかは少しばかり怪しいだろう。一仕事終えた感慨に浸っているのは自分だけだと気づいて、彼女は小さく苦笑した。

「雪歩ちゃん、改めてお疲れ様ですわ。率先して進行してくれたから、わたくしも話しやすくて助かりましたわ」

「ううん、こちらこそ……みんな、私なんかよりずっと堂々と話してて、見習わなきゃなって思いました」

「あら、そうだったかしら? 普段は確かに控えめな方かもしれませんが、今日はパーソナリティとしてしっかりとまとめていたように感じましたわよ?」

「いえいえ、私なんてまだまだぜんぜん…………ふふっ」

 このままだとお互い意地になって褒めては謙遜するやり取りの繰り返しになってしまうな、と二人して笑った。
 机の上に散らばったレターやメールを印刷したコピー紙を片付けていると、スタジオの扉が開く音がする。現れたのはスーツに身を包んだ男性……プロデューサーだった。

「二人とも、そっちは大丈夫だから支度して先に車に戻るようにロコと桃子にも伝えてくれ。俺も局のスタッフさんに挨拶したらすぐに行くから」

「わかりました。それでは、お先に失礼しますぅ」

「スタッフの皆様、本日はありがとうございました!」




篠宮可憐「いちばん言いたい恋心」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511437173/

1 : ◆kiHkJAZmtqg7 2017/11/23(木) 20:39:33.56 ID:rdG/2M1Y0
地の文系ssになります。ちいさな恋の足音を聞くとよりお楽しみいただけるかもしれません。

2 : ◆kiHkJAZmtqg7 2017/11/23(木) 20:41:20.33 ID:rdG/2M1Y0

「改めてお疲れ様。握手会は可憐にとって緊張することばっかりだったと思うけど、よく頑張ったな!」

「は、はい……。うまく、話せたときのほうが、め、珍しかったけど……それでも、ファンの皆さんに、喜んでもらえました……! えへへ……」

 声をかけてもらえただけで、心臓がとくん、って跳ねた。それが私を褒めてくれる言葉だったから、胸の奥がぽかぽかとあたたかくなった。
 そして、プロデューサーさんが嬉しそうに笑っていることに気づいて、顔がかあっと熱くなった。

 帰り道を走る車は私とプロデューサーさんの、二人きりの空間。
 プロデューサーさんのにおいと、沢山のアイドル……大切な仲間の残り香が車特有のにおいに混じって、とても安らげる場所だ。
 だけど、私の頭の中を占めている気持ちは、それだけに収まってくれそうにない。

 私は、プロデューサーさんが、好き。きっと、恋という意味で。

 一緒にいて安心する人は、いつの間にかその心地よさをそのままに、一緒にいると落ち着かなくなってしまう人に変わっていた。
 今だって、胸の鼓動はどきどきと音を感じられるくらいに大きくて、せわしないリズムを刻んでいる。

 何かの拍子に目が合ってしまったらどうしよう。
 そう思うだけで、ミラー越しでしかプロデューサーさんの姿を見ることができなくなってしまう。それくらい、私は臆病なんだ。

 ……臆病だから、私が抱いているこの気持ちをいけないことだって理解して、恐れてしまっている。
 アイドルの恋愛はご法度。プロデューサーさんが私以上にそれを理解してるってことも、すぐに想像できる。

 でも。でも、伝えたいって思ってしまう。

 臆病な私が、私なりに握手会っていうお仕事に挑戦できたことも……ううん、アイドルなんて、私には眩しすぎる存在を目指そうと思えたことも、プロデューサーさんのおかげ。
 そういう気持ちを、やけに意識してしまって仕方がない。

 おっかなびっくりだったけど、沢山の人の手を握りながらお話をして。
 普段とは比べ物にならないくらい近い距離を私の知らない誰かに許す行為は、すごく緊張したし、ちょっとだけ怖かった。
 だけど、来てくれた人はみんな優しくて、熱意があって、触れた手からそれが伝わってくるみたいだった。

 だから、なのかな。プロデューサーさんに感じている気持ちが浮き彫りにされるみたいに思えて、仕方がない。
 交わす言葉も、身体が触れるようなつながりもないのに、今この場所はこんなに安心して、どきどきする。
 そのくせただ隣に座っているだけの距離すらもどかしくて、もっと近づいても私は受け入れられるのに、なんて思ってしまう。

 私たちがこの距離にいられるのは、プロデューサーとアイドルだからだって、わかってるくせに。
 私の恋は、私とプロデューサーさんが築いてきた距離を否定してしまうものなんだ。
 言い聞かせようとすると、胸の奥の方がズキズキと痛むみたいだった。だからって簡単には捨てられない、って、叫ぶように。

 どきどきと頬の熱さ、一緒にいる安心感、そして、恋心とその周りを渦巻く不安。どれも私の中に確かにあって、頭の中はぐちゃぐちゃになってしまっている。
 プロデューサーさんのことを考えるだけで、きゅっと胸が締め付けられて、全部の気持ちがより強まることだけははっきりしていた。

 ……それでもやっぱり、私は恋をしていたい。きっと今以上にそうしようって思える時は、どれだけ待っても来ないと思うから。




松田亜利沙「大好きを繋ぐレスポンス」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509285844/

1 : ◆kiHkJAZmtqg7 2017/10/29(日) 23:04:04.65 ID:s1IKgLXf0
地の文系、ミリマスssです。名前だけのキャラにちょっと言及してます。


2 : ◆kiHkJAZmtqg7 2017/10/29(日) 23:05:32.64 ID:s1IKgLXf0
「合格者は二番、四番の方です。呼ばれなかった方は不合格となりますので、お帰りいただいて結構です」

 吐き出した息がうまく吸い込めなくて、えづいてしまいそうになるのを必死で抑える。
 胸につけた五番の番号札にほんの一瞬だけ視線を向けて、俯き加減で席を立った。


「っぅ、ぁ……っ! はっ、はぁ、あ、うぅ……」

 ガタガタと身体を震わせて、不規則に息と嗚咽を漏らして、きっと真っ青な顔をして。
 プロデューサーさんに謝るよりも先に、ありさは目についたトイレの個室に逃げ込んでいた。

 初めて挑んだ劇場の外でのオーディション、惨敗したことは二の次だった。結果が出るよりも前から、ありさはとうに折れていたのだ。

 怖かった。

 オーディション会場が、その空気感が怖かった。審査員さんの視線と𠮟咤が怖かった。
 そして何よりも、周りのアイドルちゃんの絶対に勝つっていうギラギラした闘志が、怖かった。

 大好きなはずのアイドルちゃんを怖いと思ってしまうことが、いちばんいちばん怖かった……!

 思い出したくないと思えば思うほど、息苦しさがまぶたの裏側を掠めていくようで、両腕で体を抱きながら背中を丸めてうずくまっていた。

 長く、息を吐き出す。まだ気分は重たいけれど、そろそろプロデューサーさんのところへ戻らなきゃ。
 オーディションが終わってから、時計の長針は120度ほど回っていた。




北上麗花「寂しがり屋のLacrima」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1505122688/

1 : ◆kiHkJAZmtqg7 2017/09/11(月) 18:38:08.65 ID:wirdwCM70
地の文系のssとなっております


2 : ◆kiHkJAZmtqg7 2017/09/11(月) 18:39:59.46 ID:wirdwCM70
「麗花、いつもとは勝手が違うステージだけど、緊張してないか?」

「いえ、ぜんぜん! おっきなステージだから、お客さんもたくさんですよねっ。楽しみです!」

「そ、そうか。麗花は流石だな」

 いつもの劇場を離れて、しかもソロステージ。いつもと違った景色を見せてくれる舞台裏で私に気をつかってくれるプロデューサーさんのほうが、むしろ緊張してるみたいだった。なんだかいじらしくて、でもそういう優しさがすごくうれしい。

 ちょっとだけワガママを言っちゃおうか。こうして私を見てくれているから、甘えてしまっても受け入れてもらえる気がした。

「でもでもー……はいっ、プロデューサーさん!」

「……? 麗花、えっと……?」

「はいっ!」

 プロデューサーさんに向けて、ほんの軽くかがみながら頭を差し出す。ちょん、ちょんと強調してみたりなんてして、どうしてほしいかは主張できてると思うけど。

「えーっと……これでいいのか?」

 プロデューサーさんはくしゃくしゃっと頭をなでてくれる。髪型が崩れないくらいの適度な強さが心地よくて、胸の奥がとくん、って高鳴るのを感じた。

「ぴんぽんぴんぽーん! 大正解です、プロデューサーさんっ。ナデナデされるとふにゃーってして安心します。お父さんみたいですね、プロデューサー……ううん、パパデューサーさん!」

「そ、そうか。はは、まあ元気が出てくれたなら何よりだよ」

 麗花はしょうがないな、と言わんばかりの笑み。それでもそういう笑顔をもっと向けてほしいなって思う。ほんとはね、撫でてもらうとほっとする以上に、その何倍も何十倍もドキドキしてるんだよ。……ヒミツだけど。

 だって、おどけて楽しそうにしていればごまかせるってわかっちゃってるから。この気持ちがバレなければ、いつだってこうしてもらえる。やめてほしくなんてないよ。

 ほっぺたがぽかぽかして、幸せいっぱいな気持ちのままお客さんみんなの前に出られることがうれしい。素敵なエールだな、って思ったり。でもちょっとだけザイアク感?

 ゆるやかに笑って、視線だけをプロデューサーさんに向ける。

「それじゃあ、行ってきますね、プロデューサーさん!」



 歓声は止まず、ステージは大成功だった。プロデューサーさんはすごくうれしそうに私を迎えてくれた。だから、つい欲が出て。

「プロデューサーさん、私……今日の公演がうまくいったご褒美がほしいなーって」

「今度のクリスマス、一緒に過ごせませんか?」

 ……なんてなんて。そう言って冗談にしてしまえれば、よかったのに。




周防桃子「Brand New Start Line!」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1500974852/

1 : ◆kiHkJAZmtqg7 2017/07/25(火) 18:27:32.88 ID:P4f8FAPh0
地の文ssです。
歌詞考察的な要素を含んでいるため、桃子のソロ楽曲を聴いておくとよりお楽しみいただけるかと。





橘ありす「その扉の向こう側へと」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491719329/

1 : ◆kiHkJAZmtqg7 2017/04/09(日) 15:28:49.58 ID:L8J356lk0
・地の文
・主に時系列において独自の設定あり
・ほんのりと765要素

以上、ご了承のうえお読みくださいませ。

2 : ◆kiHkJAZmtqg7 2017/04/09(日) 15:30:45.70 ID:L8J356lk0
――おとなになる、ということに、私は強いあこがれを抱いている。
それはきっと、誰しもが持つ……いや、持たなくても、意識したことはあるだろうあこがれ。
私の思う大人は賢く立派で、模範的で。……だって、そうしていれば、ありすちゃんは大人だね、なんて褒められたものだから。
その実何をすれば大人になれるのか、何をもって大人は大人なのか。具体的な定義なんてわからない。
だけど、その扉を見つけた日のことは。
こんな大人になりたい、と。明確なあこがれを見つけたきっかけは、疑いようもないくらいにはっきりと覚えている。




白菊ほたる「幸せ願う」クラリス「笑顔の偶像」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1476364951/

1 : ◆kiHkJAZmtqg7 2016/10/13(木) 22:22:31.58 ID:mzegZ2Br0
このssは以下の要素を含みます
・地の文
・ほどほどにシリアス
・デレステコミュに触れた内容

以上、別段問題ないという方は是非ともお楽しみください

2 : ◆kiHkJAZmtqg7 2016/10/13(木) 22:25:24.24 ID:mzegZ2Br0
――たぶん私は、神様に祈ってはいけないんだと思います。


それは何ヶ月か前より景色が少し寂しくなって、時折吹く風が涼しくも肌寒くも感じられる、そんな季節のこと。

前の事務所から移籍して少し経ち、新しい事務所での最初のお仕事が近づいていた私の中にあるのは、どうしようもない不安だった。

いくつもの事務所にお世話になってきて、その度に初仕事を越えてきたけど、いつだってそれは消えてくれない。

もう既に、何度も移籍を重ねてきた。

そんなの普通じゃない、なんて当然なこと、今更思い返すことじゃないのに。

頭に浮かんでしまう。たくさんのアクシデント、不幸な巡り合わせ、そんな理不尽に対して怒る人、悲しむ人。

私はどうしようもなく、そういう不幸を引き寄せてしまうらしかった。

怖かった。これ以上は後がないような気がして、それなのにステージが台無しになるような不幸が訪れてしまうんじゃないかと思うと。

怖くて、怖くて。だからどんな些細な願掛けでも、それに縋りたかった。

それで私は神様にお祈りなんてしている。作法なんて知らないけど、ただただ必死に。

事務所の寮の近くにある教会に通い始めて、多分1週間くらいは経っていると思う。

何日か通っていると、教会というのは余り人が多く訪れる場所じゃなくて、まして何日も続けて来ている人は私以外に見当たらないことがわかった。

だから、不思議に思われたのかもしれない。

「こんにちは。何か、深刻なお悩みがあるのですか?」

「えっ……?」

言葉をかけてくれた人はまさしく修道女、シスターさんと呼ぶのにふさわしい女性だった。

日本人離れした色素の薄い金髪に、慈愛に満ちた優しい笑顔。

見ているだけで心が安らぐような、清らかできれいな人だ、と。その容姿と立ち振る舞いだけで、そんな風に感じた。

「……すみません、どこか変でしたか?あの、お祈りのしかたとか、よく分からなくて……」

「いえ、そのようなことはありません。ただ、ここ最近よくいらっしゃるようでしたから」

やっぱり目立っていたらしかった。

私が有名なアイドルなら、こんなことできなかったんだろうな、と。そんなことを考えてしまって、ちょっと気落ちする。完全な自爆だった。

「あの……差し支えなければ、お話を聞かせていただけませんか?」

「え、でも……ぜんぜん面白い話なんかじゃ、ないです」

「いいんですよ。話すだけでも気が楽になる、ということはよくあります。そうしてあなたが抱えているものが少しでも軽くなるのなら、それは私たちにとっても幸せですわ」

そう言って、シスターさんは私の隣に座る。

聞いてくれるという姿勢がちょっと嬉しくて、何から話したものかと言葉を探していく。

……うん、唐突な出だしになるけど、でも多分この言葉からが一番いい。

「私、アイドルなんです。駆け出しの」

「まあ、どうりで……」

「……?」

シスターさんはほんの一瞬だけ目を見開くと、すぐにその笑みを深める。

何か得心したらしい彼女の様子に、私の方が首をかしげてしまった。

「とても可憐で、華があると感じたものですから。アイドルであるなら、納得です」

「ぅ、あ、ありがとうございます。話……続けますね。お仕事が貰えて、本番ももうすぐなんです。でも……」

普段なら不安なんて、考えても口に出しても重くのしかかる一方だったのに、どうしてだろう?

この人の前だと、話した分だけ楽になるような気がした。

不幸を引き寄せるような体質、仕事への不安、アイドルへの憧れ。

つい色んなことを話してしまう。だって、つながりなんてない話題のどれもを優しい笑顔で受け止めるように聞いてくれるんだ。

そんな風に話を聞いてもらう経験なんて、ほとんどなかった。





二宮飛鳥「エデンの記憶」乙倉悠貴「思い出を胸にっ」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1475163502/

1 : ◆kiHkJAZmtqg7 2016/09/30(金) 00:38:23.18 ID:uuFYzEsI0
このssは以下の要素を含みます

・地の文

・若干のシリアス


また、2016年8月31日~9月8日に開催されたアイドルプロデュース アロハ!常夏の楽園 の内容に
多く触れたものとなっています。

イベント中のコミュの内容や思い出エピソード、報酬アイドルの台詞について
ある程度の予備知識があると、より楽しめるかもしれません。

2 : ◆kiHkJAZmtqg7 2016/09/30(金) 00:39:58.63 ID:uuFYzEsI0
「ステージイベントのお仕事、ですかっ!?」

「ハワイから帰ってきて早々だね」

「ああ。今回のハワイ特番の宣伝も兼ねて、だ」

悠貴は目を輝かせ、飛鳥は思案するように口元に手を当てる。

プロデューサーの言葉を受けた二人の反応は一見正反対だった。

「フム……しかし、頼子さんとあやめは不在のようだけど?彼女たちだって共にあの場所に行った仲間だ」

飛鳥が気にかけていることと言えば単純で、要するにここには居ないもう二人のこと。

悠貴もそういえば、と改めて辺りを見回す。

「二人には別方面からのアプローチを頼んでいる。あやめはトークバラエティの番組に出て、そっちで番宣を。頼子には雑誌のインタビューを中心に、ハワイの文化にも深く触れた内容であることをアピールしてもらう予定だ」

「なるほど……それで、私たちはステージでのイベントなんですねっ」

「適材適所、いい響きじゃないか」

二人もまた、異なる場所でそれぞれに活躍している。

それを聞いただけで飛鳥と悠貴の目にじわりと闘志が宿る。

それを見て、プロデューサーも言葉を続けた。

「今回、規模はそこまで大きくはないが、いくつかの会場を回ってもらうことになる。内容はトークショーと、出来合いだけど歌を一曲だな」

「歌……ということはレッスンも必要になるんですか?」

「二人とも歌ったことがある曲だから、そこまで厳しいスケジュールじゃないさ。合わせのために時間も取ってある」

間に合うでしょうか、言葉とともに少し不安げに瞳を揺らす悠貴に、心配するなとプロデューサーは言う。

告げられた曲名に悠貴も、飛鳥もまた納得を得たようだった。

「ふむ、把握したよ。トークの方はやっぱりハワイの話かい?」

「そうなるな。ネタバレは程々に、土産話でオーディエンスを楽しませてくれ。さて、概要は以上だ。やれるな?」

「はいっ!アイドルユウキ、プロデューサーさんの期待に応えてみせますっ!」

「フフッ、気合十分のようだね。勿論、ボクだって悠貴に負けるつもりはないさ」

まるで鼓舞するかのような問いに、二人はしっかりと頷く。

悠貴はひたすらに元気よく、飛鳥はそんな悠貴に笑みを漏らしながら。




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