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◆agif0ROmyg 2017/07/11(火) 21:44:43.74 ID:
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アイドルマスターシンデレラガールズの鷺沢文香のR18SSです。
「痴人の愛」という小説があります。
いわゆる耽美派の小説のなかでも最も有名な作品のひとつで、簡単にあらすじを要約すると、「自ら見出して育てようとした美少女に、逆に支配されるようになる男性の話」です。
作品の冒頭、主人公は「あまり世間に類例がないだろうと思われる私たち夫婦の間柄」「恐らくは読者諸君にとっても、きっと何かの参考資料になるに違いない」などと言っています。
私のような内向的な人間が、あのような魔性の魅力に満ち溢れたファムファタルの生き様を参考にするなど、到底不可能だと思ってはいたのですが。
不可能だからと言って心惹かれないわけでもありません。
実際、お気に入りの小説の一つです。
一度、私を担当してくれているプロデューサーさんにお貸ししたこともあります。
「ところどころ感情移入しがたい場面もあったが、ストーリーラインの上では、身につまされることもあった」とのことでした。
女の私とは注目する点が当然異なっていて、2つの視点から小説の内容について語り合うのは大変興味深く、また私の読解力を高めてくれるものでもありました。
聞けば確かに、アイドルのプロデューサーをしている人にとって見れば、地味で目立たなかった女を見つけ出して育てるのは、本業であり本望であることでしょう。
私、アイドル鷺沢文香も、そうやって見つけてもらったものの一人です。
彼に声をかけてもらうまで、私は自分の魅力や女性性について全く意識を向けてきませんでした。
ひたすら自分の好きな本を読みふけり、外へ出ることも少なかった私ですが。
プロデューサーさんの献身的な仕事ぶりのおかげで、近頃人気が出てきているようです。
そんなある日。
大学の廊下を歩いていた時、空き教室の中から話し声が聞こえてきました。
立ち聞きするつもりはなかったのですが、話題がなんと私のことだったので、つい聞き耳を立ててしまいました。
男子学生が数人集まって、話しているのはアイドル鷺沢文香のこと。
いわく、「エロい」「やりたい」「声かけてみろよ」「俺らじゃ相手にされねえよ、ほとんどしゃべらんし」「どうせ業界の、俳優なりエライさんなりが手ぇつけてんだろ」「清純そうなのはフリだけか、芸能人ってのはこれだから」、その他もろもろ。
ほとんど会話したこともない相手に、よくここまで言えるものです。
感心してしまうくらいですが、それ以上に私の心は揺らぎました。
一人ならぬ男性から、女として、性欲のはけ口として見られていると改めて自覚すると、それまでに感じたことのない衝撃があったのです。
確かに、アイドルとして水着や、露出度の高い衣装を着ることはしばしばありましたが。
どちらかというとそういうのはもっと、こう……健康的な人の領分だと思っていました。
普通の女の子なら、たとえアイドルでなくとも、同世代の人間との付き合いの中で女性として見られることに慣れていくものなのでしょう。
しかし私にはそういった経験が全く欠けていて、この年になってやっと、こんな唐突で下世話な形で理解させられてしまったのです。
心臓が高鳴って、気づかれないようそっとその場を立ち去るのも一苦労でした。
よくよく考えてみれば、私はもうアイドルなんですから。
あんな風に扱われるのも、ある意味では当然でしょうね。
私の同僚の中には、自ら煽り立てるような言動を取る方もいらっしゃいます。
自分の良い所、美点をアピールするのが私より上手い人はいくらでもいます。
実際、アイドル鷺沢文香を売り出すにあたって、私が貢献できていることはあまり多くありません。
ほとんどの部分で担当のプロデューサーさんに頼りきりで……
と、いうことは、世間の人が私を欲望の対象として見ているのは、プロデューサーさんの想定通りということでしょうか。
だとしたら当然、プロデューサーさんも、私をそういった……いわば、女性、女として見る視点は持ち合わせているはずで。
そこまで考えて、首筋の毛が逆立ちました。
書店のカウンターで本ばかり読んでいた私に声をかけて、全然縁がないと思っていた世界に連れ出してくれて、見たこともないものをたくさん見せてくれたプロデューサーさん。