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◆YenxjkWItQ 2015/04/07(火) 22:08:35.90 ID:
HuuhBpd+O
プシュー。
夜行列車のドアが開くのを待ちかねていたアタシは荷物を抱えてホームに降り立った。
「ここが東京かぁ…、ううやっぱり外は冷えるね」
出発したとこみたいに雪は積もって無いけれどまだ太陽の顔も見えない冬の朝は寒い。
短く切りそろえた髪に冷気が当たるのを感じながらアタシ工藤忍は人の列について改札へと向かう。
アタシは小さい頃からずっとアイドルに憧れていた。
子供の頃にはこの夢を話しても親や友達も笑って応援してくれていた。
でも、成長するにつれてアタシが夢を語り出すと周りの空気が冷めていくのを感じた。
アイドルなんかになれるわけが無い
いつまでも子供みたいな夢を持つな
遠まわしにこんな事を言われているのに気付いた頃からアタシはあまり夢を人に話さなくなった。
その代わり夢を現実に変える為の努力を始めるようにした。
窓辺にラジオを置いて必死に東京からの電波をキャッチしたり、
合唱部の友達に頼んで発声練習に付き合ってもらったり
体力をつけるために朝早くから近所を走ったりした。
アタシが努力をしている事を知っている友人でさえ誰ひとりアイドルになりたいという夢に賛成してはくれなかった。
だからアタシは行動に出たのだ。
三連休の初日、友達の家に泊まると嘘をついてそのまま駅に向かい
あらかじめ切符を買ってあった夜行列車に乗り込んで青森から東京へ向かった。
アリバイ作りに協力してくれた友人は私が単に東京に遊びに行きたいのだと早合点していた。
仲のいい従姉妹には事情を説明して、いざという時には親へ説明してくれるように頼んであるから
行方不明だとは思われることはないだろう。
故郷を離れ一人きりでアタシは今日からアイドルへの第一歩を踏み出すべく東京に降り立ったのだった。