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渋谷凛「フロッシュゲザング」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1630208194/

1 : ◆Rin.ODRFYM 2021/08/29(日) 12:36:34.48 ID:8iVJtLSD0
フロッシュゲザング、と言うと大抵の人は首を傾げる。
聞いたこともないと困ったような顔をして、説明を求めてくるのが普通だろう。

私もかつて、そうだった。

その後で、輪唱で有名な両生類の歌が聞こえてくるやつ、なんて説明をしてやれば大抵の人は「ああ」と得心して、最後には鼻で笑う。

最初からそっちで言ってよ、と。

私もかつて、そうだった。

振り返ってみれば、こんなような仕様もない思い出ばかりの気がするが、今更言ってもそれこそ仕様もない。

この思い出についてはいろいろな感情がありすぎて、どう説明したらいいか私自身よくわからないのだけれど、とにもかくにもこの感情を共有すべく順番に語るとしよう。





【モバマス】ハートの融点

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1596982848/

1 : ◆Rin.ODRFYM 2020/08/09(日) 23:20:48.56 ID:S7yVE8bX0

歩いているだけで首筋を汗が伝う、うだるような暑さから逃れ、私は事務所へと入る。

てのひらにぎしぎしと食い込む紙袋の持ち手の圧力に苛まれながら廊下を抜け、メインオフィスに出れば、冷房の効いた涼やかな空気が私を迎えてくれた。

私に気が付いた社員の人たちからの会釈やら「お疲れ様です」の挨拶やらに、こちらも会釈で以て返し、目的の人物がいるであろうデスクを見やれば、残念ながら期待が外れたようだった。

出直すか、待つか。
頭の中に二つの選択肢を浮かべ、さてどちらにしようと考えていると「凛ちゃん、お疲れ様」とのよく知る声を投げかけられる。

声の方向へと体をひねってみれば、そこには事務所一番のスーパー事務員さんである、千川ちひろさんがいた。

蛍光緑の装いに身を包み、笑顔の眩しい彼女はアイドルの私から見ても容姿が整っていて、その上で超人的なまでに仕事ができる。
という、非の打ちどころがないような存在だ。

「今日は撮影終わりでそのまま上がりだったわよね。何かあった? あっ、経費関係かしら」

私の今日のスケジュールまでもを把握しているのには驚いたが、ややあってこれはプロデューサーから聞いたのだろう、と得心する。

アイドルである私、渋谷凛を担当しているプロデューサーのデスクはちひろさんの隣にあるからだ。
それゆえに、ちひろさんとプロデューサーは何かと雑談する機会も多い。
私のスケジュールを把握していても不思議ではなかった。

「いえ、えっと。特に用というほどのことじゃないんですけど」
「そうなの? なら、プロデューサーさん?」
「まぁ、そんなところというか……これ、現場でたくさんもらって」

言って、私はちひろさんに紙袋を見せる。
彼女は袋の中のメロンを見るや「わぁ」と目を輝かせた。

「一個、事務所で食べようかと思って。ちひろさんもどうですか?」
「いいの?」
「はい。重いので、一つ手放したくて」
「ふふ、それで寄ってくれたのね」

じゃあお礼をしないとですね、とちひろさんは笑って、手招きをする。
私はそれに従ってついていって、彼女のデスクの隣の席へと腰かけた。

「プロデューサー、まだ帰って来てないんですね」
「ええ。でも、そろそろじゃないかしら」

彼女は自身のパソコンをかたかたと操作して、プロデューサーの今日の行動予定を表示させる。
「ね」とちひろさんが指で示した帰社予定時刻は、もうあと十五分ほどだった。

「お礼になるかはわからないけど、いただきもので良い紅茶が今あるの。だから、凛ちゃんの持って来てくれたこのメロンと一緒におやつにしましょう!」
「じゃあ、メロンは私が切っておきますね」
「んーん。いいのいいの。凛ちゃんは座って待っててね」

私に有無を言わせず、ちひろさんはメロンを抱え給湯室の方へと行ってしまう。
追いかけても手伝わせてもらえなさそうなのは明白であるので、大人しく待つほかなさそうだった。






渋谷凛「ソールド・アウトマーク」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1565362353/

1 : ◆Rin.ODRFYM 2019/08/09(金) 23:52:33.63 ID:sTJbwKvU0
■ 一章 半分と半分

私の全身がすっぽりと入ってしまうくらい大きな姿見の前で、くるりと一回転。

片方の脚を上げてみたり、腕を広げてみたり、私の動きに伴って、当たり前だけれど鏡の中の私も動く。

そうやってしばらく鏡の中の自分を眺めることに夢中になっていたところ、ノックの音が三度飛び込んできた。

「どうぞ」

私がドアの向こうへ声を投げると、数秒の間があって、その後にゆっくりとドアノブが回る。

おそるおそるとも言うべき控えめな開き方でドアが少しだけ開いて、その隙間に滑り込むようにしてノックの主であろう、一人の男がやってきた。

視線がぶつかる。





[ 2019/08/10 06:55 ] モバマスSS | TB(0) | CM(0)

渋谷凛「前職アイドル、そしていま」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1533826835/

1 : ◆TOYOUsnVr. 2018/08/10(金) 00:00:36.15 ID:OipDTOFK0

周囲を忙しなく動き回る何かの気配で目が覚めた。

のっそりと上体を起こし、まだ重い瞼を瞬かせる。

私の周りをうろちょろとしていた気配の主は十年来の相棒、ハナコだった。

ハナコは私が小学生の頃にこの家にやって来た妹分であり、相棒でもある。

彼女はヨークシャテリアとミニチュアダックスフンドの血を半分ずつ持ち、唯一無二のもふもふ感を誇る。

父による命名であり、曰く、花屋の子だからハナコだとか。

この話を聞いたときは、もしかすると私の名前がハナコになっていたのではないか、と思ったものだ。

そして、ハナコは毎朝こうして私を起こすべく、寝ている私の周囲をうろちょろとする。

時にはお腹の上に乗って来たり、顔を舐めたりするという、そんじょそこらの目覚まし時計にはない機能まである。

人生の半分以上をそうして過ごしたことから、自然と朝には強くなった。

寝坊であるとか、二度寝であるとか、そういった類のものと私が無縁であるのは、ハナコの働きに因るものだ。





渋谷凛「輝くということ」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1502290801/

1 : ◆Rin.ODRFYM 2017/08/10(木) 00:00:01.70 ID:c5e7bYk30

■ 第一章 オリジン



目覚まし時計が私を起こす。

まだ半分眠っている頭で停止ボタンに手を伸ばし、二度寝するべく布団をかぶり直した。

その直後、下の階からはがらがらがらっとシャッターの上がる音が響いて、そこに追い討ちをかけるかのようにお腹の辺りにずしんと衝撃が走った。

あー、もう。

心の中でそう叫んで、布団から顔を出すとお腹の上では愛犬であるハナコが尻尾をぱたぱたとさせていた。

ハナコはミニチュアダックスとヨーキーのミックスで、いわゆる小型犬だからお腹に乗られてもたいして重くはない。

重くはないけれど目が覚めるには十分の衝撃だった。

そして、ハナコが私を起こす理由は朝ご飯と散歩の催促だ。

「はいはい、わかったよ」

くしゃくしゃっと頭を撫でてやると、尻尾のぱたぱたを一層早くして、ハナコはベッドからぴょんと飛び降りた。





[ 2017/08/10 11:55 ] モバマスSS | TB(0) | CM(0)

――――きっと、あの出会いは運命だった【モバマス】

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470758695/

1 : ◆Rin.ODRFYM 2016/08/10(水) 01:04:55.85 ID:ilWf3jvHO

本来、ボクは“ご主人様”みたいなものを持つ予定はなかったんだ。

ボクを使う人とボクとの関係は基本的に1回限り。

多くても片手で足りるくらいの数が関の山だ。

まぁでも、それはボクに限った話じゃなくて、ボクの仲間はだいたいそんな感じの生涯を送ることが多い。

乱暴に扱う人もいるから寿命は長くてせいぜい3年か4年。

メーカー希望小売価格にして4000円ちょっとの消耗品だ。

そうだね。ボクについてはこんなところだ。それ以上でもそれ以下でもない。

だから、長々とボクについて語ってもつまらないだけだし、ある女の子の話をしようか。





[ 2016/08/10 18:55 ] モバマスSS | TB(0) | CM(0)

渋谷凛「ハナコ」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470755785/

1 : ◆Rin.ODRFYM 2016/08/10(水) 00:16:25.73 ID:itJi5WEx0

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五年生になりたい

3年2組 しぶ谷 りん

わたしは犬がかいたいです。
犬をかいたいのにお父さんもお母さんもだめだと言います。

お父さんは「りんが大きくなったらな」と言います。

お母さんは「まださん歩に一人でいけないでしょ」と言います。

二人ともいじわるです。

でも、わたしがおりこうにして、おみせの手つだいをしてたら
わたしが五年生になるころにかってくれるそうです。

なのでわたしはお手つだいをします。

犬は大きいのがいいです。

お父さんより大きいのがいいです。

大きい犬と公園でボールを投げて遊びます。

ちゃんとごはんもあげます。

早く五年生になりたいです。


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[ 2016/08/10 11:55 ] モバマスSS | TB(0) | CM(2)

神谷奈緒「サプライズ?」北条加蓮「サプライズ!」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470754664/

1 : ◆Rin.ODRFYM 2016/08/09(火) 23:57:44.71 ID:G6ukgzYx0

とある八月の蒸し暑い夜のこと。

タオルケットにくるまり、ソファでうつらうつらしていたアタシをケータイが呼ぶ。

やかましい電子音とバイブレーションによって机の上で震えるそれを少し乱暴に取って
ダイヤルボタンをスワイプし、耳に宛がうと聞こえてきたのはよく知った声だった。

『もしもーし。奈緒? 夜遅くにごめんね』

加蓮。北条加蓮、アタシの友達で同じユニットの仲間。

いつもこうだ。ごめんねー、と言いつつも加蓮はちっとも悪びれてない。

そんな加蓮を許しちまうアタシもアタシだけどさ。





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